建議けんぎ要目ようもく

建議けんぎ要目ようもく（けんぎようもく、英えい：Heads of Proposals）とは、清教徒せいきょうと革命かくめい（イングランド内戦ないせん）下したのイングランドで1647年ねんに独立どくりつ派はが起草きそう・発表はっぴょうした国政こくせい改革かいかくの草案そうあん。中心ちゅうしん人物じんぶつはヘンリー・アイアトンとジョン・ランバート。1653年ねんに制定せいていされた統治とうち章典しょうてんの参考さんこうにされた。提案ていあん条項じょうこう（ていあんじょうこう）とも呼よばれる。

経過けいか

第だい一いち次じイングランド内戦ないせんでチャールズ1世せいら王おう党派とうはに勝かった議会ぎかい派はだが、戦後せんごは長期ちょうき議会ぎかい内部ないぶで多数たすう派はの長老ちょうろう派はと少数しょうすう派はの独立どくりつ派はに分裂ぶんれつし宗教しゅうきょう問題もんだいや捕とらえた国王こくおうの扱あつかいについて対立たいりつ、独立どくりつ派はが連携れんけいしていたニューモデル軍ぐんを長老ちょうろう派はが議会ぎかいの名なの下したで解体かいたいを目論もくろんだことで一層いっそう対立たいりつが激はげしくなった。軍ぐんでも独立どくりつ派はと平等びょうどう派はが混在こんざいしていたが、急進きゅうしん的てきな社会しゃかい改革かいかくを掲かかげるジョン・リルバーンら平等びょうどう派はを支持しじした兵士へいし・下士官かしかん層そうが議会ぎかいへのクーデターを計画けいかく、対立たいりつは複雑ふくざつさを増ましていった。

こうした中なか、ニューモデル軍ぐん副ふく司令しれい官かんで議員ぎいんでもあったオリバー・クロムウェル（ただし、辞退じたい条例じょうれいで1646年ねん7月がつから1647年ねん6月がつまで軍務ぐんむを終おえていた）は軍ぐんと議会ぎかいの対立たいりつを懸念けねん、数すう多おおくの戦功せんこうを立たて軍ぐんを支持しじ基盤きばんにしながら議会ぎかいを尊重そんちょうしていたが、次第しだいに長老ちょうろう派はが支配しはいする議会ぎかいに反感はんかんを抱いだき、3月に議会ぎかいが軍ぐん解体かいたいを進すすめそれに反発はんぱつした軍ぐんが5月に下士官かしかんを中心ちゅうしんに団結だんけつ、議会ぎかいへの対決たいけつ姿勢しせいを取とると同調どうちょうし軍ぐんとの協調きょうちょうを選えらび、6月がつに軍ぐんに身みを投とうじて議会ぎかいから離はなれた。

軍ぐんは平等びょうどう派はに引ひきずられ議会ぎかいへ政治せいじ改革かいかくを要求ようきゅうしながらロンドンへ行進こうしんしたが、独立どくりつ派はで慎重しんちょうなクロムウェルは武力ぶりょく行使こうしに反対はんたいで、議会ぎかいと軍ぐんの妥協だきょうを探さぐっていた。彼かれの意いを受うけた婿むこのヘンリー・アイアトンと腹心ふくしんのジョン・ランバートは軍ぐんの要求ようきゅうを取とり纏まとめ8月がつ1日にちに「建議けんぎ要目ようもく」を公表こうひょう、軍ぐんの威嚇いかくに怯おびえた議会ぎかいが譲歩じょうほしたこともあり、8月がつ6日にちに軍ぐんはクロムウェルらの同意どういを取とり付つけロンドンを占領せんりょうした。辛かろうじて流血りゅうけつ沙汰ざたは避さけられたが、長老ちょうろう派はは議会ぎかい多数たすう派はという状態じょうたいは変かわらず軍ぐんも長老ちょうろう派はへの不信ふしんを抱いだき続つづけ、和解わかいとは程遠ほどとおかった。

建議けんぎ要目ようもくは王権おうけんを制限せいげん、議会ぎかいの権利けんりを拡大かくだいし宗教しゅうきょうの寛容かんようを書かいた憲法けんぽう草案そうあんになっていた。内容ないようは以下いかの通とおり。

1. 長期ちょうき議会ぎかいは下院かいん解散かいさん、選挙せんきょで新あらたに下院かいんを選出せんしゅつ（上院じょういんは維持いじ）。選挙せんきょ区く改正かいせいと財産ざいさんに基もとづく選挙せんきょ権けんの分配ぶんぱいを提案ていあん（制限せいげん選挙せんきょ）。
2. 2年ねんに1回かい議会ぎかいを開ひらく。
3. 王政おうせいは存続そんぞくさせるが軍ぐん統帥とうすい権けん・外交がいこう権けんは制限せいげんされ軍ぐん統帥とうすい権けんと官僚かんりょう任命にんめい権けんは議会ぎかいが掌握しょうあく（10年間ねんかん）。
4. 議会ぎかいによる国王こくおう政治せいじ顧問こもんたちの指名しめい（10年間ねんかん）、外交がいこう権けんは国務こくむ会議かいぎと国王こくおうが共有きょうゆう（7年間ねんかん）。
5. 宗教しゅうきょうの寛容かんように基もとづき、教会きょうかいの個人こじんへの儀式ぎしき強要きょうようや抑圧よくあつ禁止きんし。ただしカトリック教会きょうかいは除のぞく。

しかし、7月がつ23日にちに建議けんぎ要目ようもくを受うけ取とったチャールズ1世せいは拒絶きょぜつ、平等びょうどう派はも現実げんじつと妥協だきょうした内容ないように不満ふまんを抱いだき、兵士へいしの要求ようきゅうを採とり入いれより急進きゅうしん的てきな草案そうあんを作つくり上あげた。『人民じんみん協定きょうてい』と呼よばれた草案そうあんは建議けんぎ要目ようもくと共ともにパトニー討論とうろんで提出ていしゅつされ、兵士へいしや平等びょうどう派は代表だいひょうとアイアトンが論戦ろんせんに出向でむき、クロムウェルも出席しゅっせきして討論とうろんに加くわわり、イングランドの将来しょうらいについて話はなし合あうことになった。

参考さんこう文献ぶんけん

• 今井いまい宏ひろし『クロムウェルとピューリタン革命かくめい』清水しみず書院しょいん、1984年ねん。
• 松村まつむら赳たけし・富田とみた虎男とらお編へん『英えい米べい史し辞典じてん』研究けんきゅう社しゃ、2000年ねん。
• 清水しみず雅夫まさお『王冠おうかんのないイギリス王おう オリバー・クロムウェル―ピューリタン革命かくめい史し』リーベル出版しゅっぱん、2007年ねん。