(Translated by https://www.hiragana.jp/)
徳利 - Wikipedia コンテンツにスキップ

徳利とっくり

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
徳利とっくりつう徳利とっくり
様々さまざま徳利とっくり

徳利とっくり(とっくり、とくり)とは、日本酒にほんしゅなどをれてそそぐためのくびほそ下部かぶふくらんだ容器ようき一種いっしゅ徳利とっくりくためのざらはかまばれる。

概要がいよう

[編集へんしゅう]
いちごう徳利とっくりとお猪口ちょこ

さけそそぐための徳利とっくりにはさけをおそなえするための神酒みき徳利とっくり一般いっぱんてきさけ徳利とっくりがある[1]

平安へいあん時代じだいにはさけそそぐためのさけとして、どうまるほそくなったくちをもつつぼじょう瓶子へいじ(へいし)やなべそそこう(つぎぐち)をけた鐺子(さしなべ)があった[2]。このうち瓶子へいじ鎌倉かまくら時代ときよから室町むろまち時代ときよにかけて陶製とうせい瀬戸焼せとやきのものや木製もくせい根来ねごろぬりのものがもちいられたが、それは形態けいたいめん後世こうせい陶器とうき徳利とっくりがれた[2]

一方いっぽう、鐺子(さしなべ)は時代じだいくだると、本体ほんたいつる(つる)をけた提子ひさげ(ひさげ)と本体ほんたい長柄ながえけた銚子ちょうし(ちょうし)に分化ぶんかしたが、両方りょうほうとも銚子ちょうし(ちょうし)としょうすることがおおかった[2]厳密げんみつにはちいさななべ長柄ながえけたものが「銚子ちょうし」、ちいさななべつるをつけた土瓶どびんがたのものは「提子ひさげ」とかれる[3])。そこに江戸えど末期まっきになって陶製とうせいかん徳利とっくり出現しゅつげんし、明治めいじ時代じだいにはこのかん徳利とっくり銚子ちょうししょうされるようになった[1]。なお、陶製とうせい徳利とっくりを「すず」とぶことがあるのは、この徳利とっくりがたさけ本来ほんらいすずせいであったことに由来ゆらいするとされる[2]

用途ようと

[編集へんしゅう]

徳利とっくりにはさけあたためるためのかん徳利とっくりと、さけなどの小売こうり運搬うんぱんもちいられたかよ徳利とっくり徳利とっくり貧乏びんぼう徳利とっくり)がある[3]

かん徳利とっくり

[編集へんしゅう]

かん徳利とっくり使用しようほうにより、につけてもちいるかん直接ちょくせつにかけるちょくかん囲炉裏いろりはいあぶかんがある[3]。また、絵付えつけによって葡萄ぶどうかん海老えび徳利とっくりぐり徳利とっくりなどの名称めいしょうがある[3]形態けいたいでは、すみ徳利とっくりかさ徳利とっくり茶筅ちゃせんがた徳利とっくりもじ徳利とっくりふね徳利とっくりかぶら徳利とっくりよろい徳利とっくり、らっきょう徳利とっくり蝋燭ろうそく徳利とっくりなどがある[3]。また特殊とくしゅなものに細工ざいくほどこした猩々しょうじょう徳利とっくり布袋ほてい徳利とっくりみずくようにしたうわ徳利とっくりがある[3]

19世紀せいき初頭しょとう黄表紙きびょうし滑稽本こっけいぼんにはかん徳利とっくりえがかれておらず、天保てんぽう年間ねんかんになり瀧亭りゅうてい鯉丈りじょうらの『花暦はなごよみはちわらいじんよんへん追加ついかじょうまきにはかん徳利とっくりとみられるさけえがかれ、どうへんじょうまきには屋形船やかたぶねかん徳利とっくりとみられるさけかんする様子ようすえがかれている[1]

小売こうりよう

[編集へんしゅう]

酒屋さかやしていた陶磁とうじせい小売こうりよう容器ようきかよ徳利とっくりばれ江戸えど時代じだい中期ちゅうき一般いっぱんした[4]。このように小売こうりようした陶磁器とうじき容器ようきは、かよ徳利とっくりのほか、貧乏びんぼう徳利とっくり徳利とっくりともしょうされた[3]

なお、江戸えど時代じだいにはさけだけでなく、醬油などの容器ようきとしてももちいられた[1]醤油じょうゆ徳利とっくりあぶら徳利とっくりなど)。蕎麦そばてんなどではそばつゆ徳利とっくり蕎麦そば徳利とっくり)にれてきょうすることもおおい。

文化ぶんか

[編集へんしゅう]

落語らくご

[編集へんしゅう]

徳利とっくり落語らくごにもおお登場とうじょうし、備前びぜん徳利とっくり御神酒おみき徳利とっくりなど、「徳利とっくり」の演目えんもく存在そんざいする。このように、かつて徳利とっくり伝統でんとうてき液体えきたい容器ようきとして生活せいかつ密着みっちゃくした道具どうぐであった。

トックリコロガシ

[編集へんしゅう]

大阪おおさか差別さべつ部落ぶらくおこなわれていた婚姻こんいん習俗しゅうぞくで、徳利とっくりころがす婚約こんやく成立せいりつ儀礼ぎれい[5]仲人なこうどむすめいえって縁談えんだん調ととのえると、おとこがわ仲間なかまたちが簡単かんたん酒肴さけさかなたずさえてむすめいえき、むすめおや親戚しんせき仲人なこうどらとさかずきわし、わると、徳利とっくり(または一升瓶いっしょうびん)をたおしてころころところがす[5]。これがむと原則げんそくとして破談はだんにはできず、おとこ結婚式けっこんしきまでのすうげつ、あるいはいちねん以上いじょう公然こうぜんむすめいえとおって関係かんけいつことができる[5]。また、各地かくち死者ししゃ部屋へや徳利とっくりをまわしたり、ザルをころがすザルコロガシの習俗しゅうぞくがある[5]

どう用途ようとひん

[編集へんしゅう]
銚釐ちろり(ちろり)
京阪けいはん地方ちほうでは、ばば(タンポ)ともいう。
中国ちゅうごくからつたわったさけあたためるのにもちいる金属きんぞくせい徳利とっくり[6]
イカ徳利とっくり
スルメイカを徳利とっくりじょう形成けいせい乾燥かんそうさせたものは「イカ徳利とっくり」とばれ、さけであると同時どうじに、それ自体じたいつまみとして食用しょくようとなる。

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ a b c d 田中たなか利雄としおさけかんうつわ変遷へんせん 中世ちゅうせい後期こうきから近世きんせいにかけて」『日本にっぽん醸造じょうぞう協会きょうかい雑誌ざっしだい82かんだい3ごう公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん 日本にっぽん醸造じょうぞう協会きょうかい、1987ねん、175-181ぺーじ 
  2. ^ a b c d 加藤かとうひゃくいち万葉まんよう古代こだいさけ (6)」『日本にっぽん醸造じょうぞう協会きょうかいだい100かんだい7ごう公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん 日本にっぽん醸造じょうぞう協会きょうかい日本にっぽん醸造じょうぞう学会がっかい、2005ねん、100-105ぺーじ 
  3. ^ a b c d e f g 用語ようご解説かいせつうつわかたち”. 九州きゅうしゅう歴史れきし資料しりょうかん. 2024ねん3がつ16にち閲覧えつらん
  4. ^ かよ徳利とっくり 関ケ原せきがはらまち歴史れきし民俗みんぞく資料しりょうかん
  5. ^ a b c d 婚姻こんいん儀礼ぎれいとトシクリコロガシ大阪おおさか部落ぶらく通信つうしん大阪おおさか部落ぶらく委員いいんかい、1997ねん6がつ、p8
  6. ^ 銚釐ちろり

関連かんれん項目こうもく

[編集へんしゅう]