『Doctor Who Magazine』が行ったエグゼクティブ・プロデューサー兼脚本家ラッセル・T・デイヴィスとのインタビューによると、本エピソードは元々彼の友人で元同僚であった、極めて名声の高く賞も受賞している脚本家ポール・アボットにオファーが送られていた[1]。彼は受諾してストーリーラインを提出し、ローズは完璧なコンパニオンを作ろうとドクターが行った実験で生み出されたことを明かした[1]。このエピソードのタイトルは "The Void" であった[2]。しかしアボットは他に委託された脚本があったためプロジェクトを放棄せざるを得ず[3][1]、デイヴィスが代わりに「悲しきスリジーン」を執筆した。彼は少ない台詞ではあったものの「UFO ロンドンに墜落」と「宇宙大戦争の危機」でブレインを演じたバッドランドの演技を気に入り、彼女を再出演させた[4]。ミスター・クリーバーを演じた俳優ウィリアム・トーマスは以前にクラシックシリーズの Remembrance of the Daleks にマーティン役で出演していた[5]。彼は新旧『ドクター・フー』のいずれにも出演した初めての役者となった[5]。後に彼は『ドクター・フー』のスピンオフシリーズ『秘密情報部トーチウッド』でグウェン・クーパーの父ゲラント・クーパーを演じた[3][6]。
デイヴィスは元々本作のタイトルを "Dining with Monsters" にするつもりだったと述べ[7]、もっと良いタイトルは "What should we do with Margaret?" だろうとジョークを飛ばした[7]。デイヴィスは「悲しきスリジーン」をドクターに誰かを死に追いやる権利があるかを深掘りするエピソードにしようとし、さらにマーガレットに最後に対面するドクターの行動の結果を示そうともした[7]。このストーリーラインは戦争の雰囲気を帯びたエクルストンのドクターに合致していた[7]。ドクターがもたらす結果はローズのボーイフレンドであるミッキーを通しても探求がなされており、彼はローズが近くに居ないために振り回されていた[7]。本エピソードの解決策はマーガレットをターディスの力で卵に退行させて新たな人生を歩ませるという明らかなデウス・エクス・マキナであったが、ターディスのサイキックリンクが既に確立されていたため、どこからともなくアイディアが湧いたわけではないとデイヴィスは強調した[7]。
「悲しきスリジーン」のシーンの多くは2005年2月[8]にカーディフ湾で撮影され、特にウェールズ・ミレニアム・センターの正面で撮影されたシーンもある[7]。ドクターがウェールズの新聞Western Mail を読むシーンも見られ、これはシリーズがウェールズで制作されクルーメンバーにもウェールズ人が多いことから、ウェールズの文化を取り入れたかったためであるとデイヴィスは語った[9]。また、彼は風景の美しさも可能な限り視聴者に見せようとも考えた[8]。ローズとミッキーが Roald Dahl Plass(ウェールズ・ミレニアム・センターの前に広がる広場)でウォータータワーの前にいる夜のシーンは、気温の低さゆえに噴水が自動的に止まってしまい、撮影に二晩を要した[10]。ドクターとマーガレットの夕食のシーンは2005年1月にカーディフのレストランであるビストロ10で撮影され、これは他のシーンに先駆けての収録であった。同時期にパイパーとバロウマンは「空っぽの少年」の収録を行っていた[10][11]。これはバッドランドのスケジュールとの兼ね合いであった[10]。スケジュールの一部はパイパーの叔父の逝去のため再編成され、エピソード終盤近くの一部シーンでは彼女とエクルストンに代わって他の俳優が演技を行った[10]。マーガレットが変化した卵は「地球最後の日」に登場した卵を再利用したものであった[10]。
2013年に『ラジオ・タイムズ』誌のパトリック・マルケーンはバッドランドと夕食のシーンを特に称賛したものの、本作をスティーヴン・モファットの『ドクター・フー』デビューとラッセル・T・デイヴィスのドラマチックなフィナーレに挟まれた妙なショートスーリーで、低カロリーの充填剤と表現した[11]。『The A.V. Club』誌の批評家アラスター・ウィルキンスは本作にBの評価を与え、普段よりも信じることを止める必要があると綴った。エピソードが登場人物に焦点を当てている間にもプロットは必然性に組み込まれるものだが、マーガレットの運命に明確な動機付けがなされていないため「父の思い出」ほど上手く機能しなかったと彼は感じた。一方でウィルキンスはローズとミッキーのストーリー展開を「悲しきスリジーン」で最も効果的に処理された部分であるとした[22]。新シリーズのガイドブック Who Is the Doctor では、著者ロバート・スミスがデウス・エクス・マキナな結末を良いプロットではないとして不満を抱いたものの、「悲しきスリジーン」を非常に面白く考えさせられるエピソードであると表現した。彼はキャラクター要素とコメディを称賛した[23]。彼の共著者グレアム・バークはそこまで熱意がなく、面白いドタバタ劇に過ぎないと表現した。彼は本作に数多くの良いシーンがあると認めた上でリアルな物語ではないと感じ、決定がドクターの手に委ねられていないため道徳的ジレンマの重要性が低いことを指摘した[24]。
^Arnopp, Jason (22 August 2013). “The Fact of Fiction: Remembrance of the Daleks”. Doctor Who Magazine (Royal Tunbridge Wells, Kent: Panini Comics) (464): 66.
Burk, Graeme; Smith, Robert (6 March 2012). “Series 1”. Who Is the Doctor: The Unofficial Guide to Doctor Who-The New Series (1st ed.). ECW Press. pp. 3–62. ASIN1550229842. ISBN1550229842. OCLC905080310