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有機ゆうき農産物のうさんぶつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

有機ゆうき農産物のうさんぶつ(ゆうきのうさんぶつ)は、一定いってい基準きじゅんたす有機ゆうき栽培さいばいによって生産せいさんされた農産物のうさんぶつ有機ゆうき畜産ちくさんぶつ有機ゆうき加工かこう食品しょくひんなどとともに有機ゆうき食品しょくひんふくまれる[1]

下記かきとお定義ていぎ運用うんようされる共同きょうどうたいによってことなる。また、共同きょうどうたいによって「有機ゆうき農産物のうさんぶつ」や「オーガニック」という言葉ことば一般いっぱん用語ようごではなく共同きょうどうたい指定していした認証にんしょう意味いみする用語ようごとなっている場合ばあいがある(たとえば日本にっぽんでの「有機ゆうき農産物のうさんぶつ」は一般いっぱんてき言葉ことばではなく、明確めいかく有機ゆうきJASの認証にんしょうけた農産物のうさんぶつ意味いみする。)。

定義ていぎ

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日本にっぽん農林のうりん規格きかくの「有機ゆうき農産物のうさんぶつ

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日本にっぽん農林のうりん規格きかく(JAS)では2000ねん4がつ1にちから「有機ゆうき農産物のうさんぶつ」についての規格きかくもうけている[2]有機ゆうき農産物のうさんぶつには有機ゆうきJASマークが表示ひょうじされる[2]

かつては有機ゆうき資材しざい利用りようして栽培さいばいされた農産物のうさんぶつ有機ゆうき農産物のうさんぶつばれることがあったが、1992ねん農林水産省のうりんすいさんしょうによって「有機ゆうき農産物のうさんぶつおよ特別とくべつ栽培さいばい農産物のうさんぶつかか表示ひょうじガイドライン」が制定せいていされ、「化学かがくてき合成ごうせいされた肥料ひりょうおよ農薬のうやくけることを基本きほんとして、播種はしゅまたは植付うえつまえ2ねん以上いじょう多年生たねんせい作物さくもつにあっては、最初さいしょ収穫しゅうかくまえ3ねんまえ)のあいだ堆肥たいひとうによるづくりをおこなったほじょうにおいて生産せいさんされた農産物のうさんぶつ」と定義ていぎされた。

1992ねんのガイドラインは法的ほうてき拘束こうそくりょくたなかったため、この定義ていぎてはまらないものも有機ゆうきげん農薬のうやく栽培さいばいなどと表示ひょうじしていたものもあった。

2000ねん日本にっぽん農林のうりん規格きかく (JAS) が改正かいせいされ、農産物のうさんぶつについて有機ゆうき農産物のうさんぶつまたはそれに類似るいじした表示ひょうじをするためには、農林水産省のうりんすいさんしょう登録とうろくけた第三者だいさんしゃ機関きかん登録とうろく認証にんしょう機関きかん)の認証にんしょうによる有機ゆうきJASの格付かくづ審査しんさ合格ごうかくすることが必要ひつようとなった。

これにより、有機ゆうき農産物のうさんぶつ、また有機ゆうき農産物のうさんぶつ加工かこうしてつくられた食品しょくひん名称めいしょう有機ゆうき○○、オーガニック○○)の表示ひょうじは「日本にっぽん農林のうりん規格きかくとうかんする法律ほうりつ(JASほう)」の適用てきようけ、認証にんしょうさきしるした「有機ゆうきJASマーク」の表示ひょうじ必要ひつようとなり、違反いはんした場合ばあいには罰則ばっそくけることになった。

農林水産省のうりんすいさんしょうさだめる「有機ゆうき農産物のうさんぶつ日本にっぽん農林のうりん規格きかく」においては、3じょうで「有機ゆうき農産物のうさんぶつ」が定義ていぎされており、その具体ぐたいてき内容ないようが4じょうにおいて詳細しょうさいさだめられている。

日本にっぽん有機ゆうき農業のうぎょう研究けんきゅうかい

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日本にっぽん有機ゆうき農業のうぎょう研究けんきゅうかいは、「有機ゆうき農産物のうさんぶつ定義ていぎ」として,「有機ゆうき農産物のうさんぶつとは、生産せいさんから消費しょうひまでの過程かていつうじて化学かがく肥料ひりょう農薬のうやくひとし合成ごうせい化学かがく物質ぶっしつ生物せいぶつ薬剤やくざい放射ほうしゃせい物質ぶっしつ、(遺伝子いでんしぐみ種子しゅしおよ生産物せいさんぶつとう)をまったく使用しようせず、その地域ちいき資源しげんをできるだけ活用かつようし、自然しぜん本来ほんらいゆうする生産せいさんりょく尊重そんちょうした方法ほうほう生産せいさんされたものをいう」とさだめている[3]

中国ちゅうごく緑色みどりいろ食品しょくひん有機ゆうき農産物のうさんぶつ

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中国ちゅうごくでは農家のうか所得しょとく向上こうじょう生態せいたい環境かんきょう維持いじ消費しょうひしゃ需要じゅようへの対応たいおう目的もくてきに1990ねん緑色みどりいろ食品しょくひん制度せいど導入どうにゅうされていたが、1993ねん国際こくさい有機ゆうき農業のうぎょう運動うんどう連盟れんめい(IFOAM)に加盟かめいしたことで翌年よくねん有機ゆうき食品しょくひん相当そうとうするAAきゅう新設しんせつされた(従来じゅうらい基準きじゅん緑色みどりいろ食品しょくひんはAきゅうとされた)[4]。これとはべつに2002ねん公害こうがい農産物のうさんぶつ制度せいど導入どうにゅうされた[4]

これらにはちがいがあり、通常つうじょう緑色みどりいろ食品しょくひん認証にんしょう機関きかん中国ちゅうごく緑色みどりいろ食品しょくひん発展はってんセンター(中国ちゅうごく農業のうぎょう所管しょかん)であるが、有機ゆうき食品しょくひん(AAきゅう緑色みどりいろ食品しょくひん)の認証にんしょう機関きかん中国ちゅうごく有機ゆうき発展はってんセンター(中国ちゅうごく国家こっか環境かんきょう保護ほごきょく所管しょかん)、公害こうがい農産物のうさんぶつ認証にんしょう機関きかん農産物のうさんぶつ品質ひんしつ安全あんぜんセンター(中国ちゅうごく農業のうぎょう所管しょかん)である[4]。また有機ゆうき食品しょくひんとはことなり国際こくさいてき認証にんしょうである[4]

有機ゆうき食品しょくひん認証にんしょう対象たいしょう農産物のうさんぶつのほか、畜産ちくさんぶつ水産物すいさんぶつ加工かこう食品しょくひん飼料しりょう配合はいごう飼料しりょう蜂蜜はちみつおよ蜂蜜はちみつ加工かこうひん野生やせい食物しょくもつ製品せいひんである[4]通常つうじょう緑色みどりいろ食品しょくひん認証にんしょう対象たいしょう農産物のうさんぶつ畜産ちくさんぶつ水産物すいさんぶつ加工かこう食品しょくひんのみである[4]。また公害こうがい農産物のうさんぶついち農産物のうさんぶつ対象たいしょうとした認証にんしょう制度せいどのため、おも農産物のうさんぶつ畜産ちくさんぶつ水産物すいさんぶつかぎられ、加工かこう食品しょくひんとうふくまない[4]

CODEXの「オーガニック」規格きかく

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国連こくれん食糧しょくりょう農業のうぎょう機関きかん世界せかい保健ほけん機関きかん合同ごうどう組織そしきであるCODEXでは「オーガニック」についての規格きかくもうけており、検査けんさけた商品しょうひんにはオーガニック表示ひょうじ使用しよう許可きょかされている[2]

品質ひんしつ

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有機ゆうき農産物のうさんぶつ慣行かんこう農産物のうさんぶつとを比較ひかくした研究けんきゅう数多かずおおくある。

栄養えいよう

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有機ゆうき栽培さいばいしたホウレンソウの成分せいぶん慣行かんこう農産物のうさんぶつくらべてしょう窒素ちっそ節水せっすい農法のうほう農産物のうさんぶつのそれと一致いっちする[5]有機ゆうき栽培さいばいホウレンソウの水分すいぶんそう窒素ちっそりょうはよりちいさい。糖度とうど有機ゆうき栽培さいばいしたホウレンソウでよりたかい。ただし、ビタミンC含量のはほとんどない。

2003ねん英国えいこく食品しょくひん基準きじゅんちょう(Food Standards Agency: FSA)は「有機ゆうき食品しょくひんのほうがいというエビデンス研究けんきゅうによる科学かがくてき根拠こんきょ)がまったくない」という見解けんかいをした[6]。しかし、2006ねん9がつ飼料しりょうとして有機ゆうき農産物のうさんぶつあたえた乳牛にゅうぎゅうから採取さいしゅされた牛乳ぎゅうにゅうではωおめが-3脂肪酸しぼうさん含量がよりたかいというエビデンスがあったと見解けんかいした[7]

ニューカッスル大学だいがく (イングランド)研究けんきゅう[注釈ちゅうしゃく 1]によると、だいいちに、有機ゆうき農産物のうさんぶつこう酸化さんか物質ぶっしつをよりおおふくみ、かつ、脂質ししつをよりすくなくふくむという一般いっぱんてき傾向けいこうがあった[8]だいに、小麦こむぎ、トマト、ジャガイモ、キャベツ、タマネギは栄養素えいようそを20-40% おおふくんでいた。だいさんに、飼料しりょう有機ゆうき農産物のうさんぶつあたえて飼育しいくされた乳牛にゅうぎゅうから採取さいしゅされる牛乳ぎゅうにゅうこう酸化さんか物質ぶっしつ含量は50-80% たかかった[8]。ただし、有機ゆうき農法のうほう栽培さいばいされた小麦こむぎ、トマト、ジャガイモ、キャベツ、タマネギで20-40% おおふくまれるという栄養素えいようそなにかも、有機ゆうき農業のうぎょう牛乳ぎゅうにゅうでよりおおふくまれるというこう酸化さんか物質ぶっしつ物質ぶっしつめいも、当時とうじ報道ほうどう公表こうひょうされなかった。

2006ねん、スイスの200以上いじょう農場のうじょうおこなわれただい規模きぼ調査ちょうさでは、有機ゆうき農産物のうさんぶつフィトケミカルやビタミンCがおおふくまれ、硝酸しょうさんのようなのぞましくない物質ぶっしつについてもメリットがあり、保存ほぞんせいたかいと報告ほうこくされた[9]

2007ねん10がつカリフォルニア大学だいがくのAlyson E. Mitchellらは10年間ねんかん調査ちょうさ結果けっか有機ゆうき食品しょくひん慣行かんこう食品しょくひんくらべて、こう酸化さんか物質ぶっしつであるフラボノイドおおふくんでいたと報告ほうこくした[10]正確せいかくには、フラボノイドのうちのケルセチンケンフェロール、およびナリンゲニンアグリコン有機ゆうき食品しょくひんでよりおお含有がんゆうすることがわかった。この理由りゆうについて筆者ひっしゃらは、有機ゆうき栽培さいばい慣行かんこう栽培さいばいでそれぞれもちいられた肥料ひりょう窒素ちっそぶん動態どうたいりょう最大さいだい要因よういん推定すいていした。さらに、慣行かんこう農法のうほうであれ、有機ゆうき農法のうほうであれ、過剰かじょう施肥せひはトマトがもたらす健康けんこうめんでの利点りてんらすことになるだろうと警告けいこくした。

2009ねん7がつ29にち英国えいこく食品しょくひん基準きじゅんちょう(Food Standards Agency (FSA))は、有機ゆうき食品しょくひんたいする包括ほうかつてきなレビューをふた発表はっぴょうした[11]ふたつのレビューの内容ないようは、FSAの「消費しょうひしゃのための食生活しょくせいかつ選択せんたく部門ぶもん部長ぶちょうGill Fineによる、有機ゆうき食品しょくひん慣行かんこう農法のうほうによる食品しょくひんあいだには栄養素えいようそ含有がんゆうりょう健康けんこうじょう利点りてんにおいて重要じゅうようちがいがないというものであった[12][13]。さらに、ロンドン大学だいがく公衆こうしゅう衛生えいせいがく熱帯ねったい医学いがく大学院だいがくいんのDangourは「有機ゆうき農法のうほうおよび慣行かんこう農法のうほうによって生産せいさんされた穀物こくもつ畜産ちくさんひんあいだには、栄養素えいようそ含有がんゆうりょうにおいて少数しょうすうちがいが見受みうけられるが、そのちがいは公衆こうしゅう衛生えいせいにおいて意味いみたない。我々われわれのレビューは栄養えいようじょう優秀ゆうしゅうさによって慣行かんこうてきより有機ゆうきてき生産せいさんされた食品しょくひん選択せんたくすることを支持しじする証拠しょうこ現時点げんじてんにおいてないことをしめす」とべた。

FSAのレビューは、ニューキャッスル大学だいがく報告ほうこく[14]まえていなかった。

保存ほぞんせい

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1995ねん露地ろじものとハウスものの両方りょうほう有機ゆうき栽培さいばいホウレンソウは慣行かんこう栽培さいばいホウレンソウよりも保存ほぞんせいたかいという結果けっかしめされた[5]。すなわち、4で1週間しゅうかん貯蔵ちょぞうのビタミンC含量の減少げんしょう割合わりあい有機ゆうき栽培さいばいホウレンソウの露地ろじものとハウスもので非常ひじょうちいさかったのにたいし、慣行かんこう栽培さいばいホウレンソウでおおきかった。

安全あんぜんせい

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有機ゆうき農産物のうさんぶつは「安全あんぜんせい」がたかいと一般いっぱんてき認識にんしきされている[15]。その理由りゆうひとつとして、有機ゆうき農業のうぎょう農薬のうやくもちいないことがある。すなわち、有機ゆうき農産物のうさんぶつ摂取せっしゅすることにより、農薬のうやく暴露ばくろ回避かいひすることができるという認識にんしき一般いっぱん消費しょうひしゃにある。農薬のうやく健康けんこうわるいイメージがあるため、農薬のうやく残留ざんりゅうりょう消費しょうひしゃにとって食品しょくひん安全あんぜんせい指標しひょうのひとつである。

有機ゆうき農産物のうさんぶつ摂取せっしゅが、農薬のうやく暴露ばくろ回避かいひになることをしめした研究けんきゅうがアメリカで発表はっぴょうされた。有機ゆうき農産物のうさんぶつ日常にちじょうてき摂取せっしゅしたアメリカの子供こどものグループは、慣行かんこう農産物のうさんぶつ日常にちじょうてき摂取せっしゅしたグループよりも有機ゆうきリンけい農薬のうやく暴露ばくろひくかったことが2003ねん研究けんきゅう報告ほうこくされた[注釈ちゅうしゃく 2][16]。この研究けんきゅうでは、シアトルワシントン就学しゅうがくまえ子供こどもたちを対象たいしょうに、24あいだ採取さいしゅされた尿にょう分析ぶんせきおよび、採尿さいにょうまえからの3日間にちかん食事しょくじ内容ないよう評価ひょうか(有機ゆうき農法のうほうてき慣行かんこう農法のうほうてきか)がおこなわれた。調査ちょうさ結果けっか尿にょうちゅうのジメチル代謝たいしゃ産物さんぶつ濃度のうど中央ちゅうおうは、有機ゆうき農産物のうさんぶつ食事しょくじをした子供こどもでよりも慣行かんこう農産物のうさんぶつ食事しょくじをしたどもでやく6ばいたかかった(それぞれ、0.17および0.03μみゅーmol/ L; p=0.0003)。

一方いっぽうで、1988年度ねんど4がつ-1994年度ねんど3がつ東京とうきょう販売はんばいされていた、農薬のうやくおよびげん農薬のうやく栽培さいばい表示ひょうじ農産物のうさんぶつ30品種ひんしゅ農薬のうやく残留ざんりゅう実態じったい調査ちょうさでは、野菜やさいるい有機ゆうき農産物のうさんぶつ慣行かんこう農産物のうさんぶつ平均へいきんてき検出けんしゅつりつ検出けんしゅつ濃度のうど統計とうけいてき有意ゆういはなかったと報告ほうこくされた[17]例外れいがいとして、げん農薬のうやく栽培さいばいのなす作物さくもつ(ナス、レタス、ピーマン、トマト)で慣行かんこう栽培さいばいのものより検出けんしゅつりつおよび検出けんしゅつりょうひく傾向けいこうみとめられた。この調査ちょうさでは、基準きじゅんえた残留ざんりゅう濃度のうどおよび、一部いちぶ慣行かんこう農産物のうさんぶつられる極端きょくたんたか残留ざんりゅう濃度のうど検出けんしゅつされなかった。この調査ちょうさ結果けっかけ、堀田ほったひろしは、残留ざんりゅう農薬のうやく分析ぶんせきではその農産物のうさんぶつ有機ゆうき農産物のうさんぶつかどうか証明しょうめいできず、有機ゆうき農法のうほうげん農薬のうやく農法のうほう栽培さいばいしたという履歴りれき信用しんようするしかないと主張しゅちょうした[18]

農法のうほう農産物のうさんぶつ比較ひかくした有機ゆうき農産物のうさんぶつあじ評価ひょうかした研究けんきゅうおおい。一般いっぱんてき食品しょくひんあじ食味しょくみ成分せいぶん分析ぶんせき官能かんのう試験しけんにより科学かがくてき評価ひょうかされる。

有機ゆうき農産物のうさんぶつ慣行かんこう農産物のうさんぶつとのあじちがいはおおくの研究けんきゅう解析かいせきされているが、トマト、ホウレンソウ、べい場合ばあいがあるとする研究けんきゅうとないとする研究けんきゅう両方りょうほう存在そんざいする。

トマトの比較ひかく研究けんきゅう以下いかしめす。1976ねん発表はっぴょうされたSvecらの研究けんきゅうでは、有機ゆうき肥料ひりょう無機むき肥料ひりょうでそれぞれ栽培さいばいしたトマト(以下いか、それぞれ、有機ゆうきほどこせようトマト、慣行かんこうほどこせようトマト)に官能かんのう試験しけんじょう差異さいはなかった[19]。しかし、日本にっぽんおこなわれた、官能かんのう評価ひょうかふく有機ゆうきほどこせようトマトと慣行かんこうほどこせようトマトとの比較ひかく研究けんきゅうでは観測かんそくされている。有機ゆうき肥料ひりょう(おも菜種なたね油粕あぶらかす骨粉こっぷん)と無機むき肥料ひりょう(化成かせい肥料ひりょう)でそれぞれ露地ろじ栽培さいばいしたトマト(品種ひんしゅ:サターン)を比較ひかくした吉田よしだくわだて世子せいしらの研究けんきゅうでは、いろごたえにはないが、有機ゆうき肥料ひりょう露地ろじ栽培さいばいしたトマトはかおり、あじおよび総合そうごう評価ひょうか有意ゆういすぐれていた(p>0.01)[20][21]。1994ねん発表はっぴょうされた北海道ほっかいどう文教ぶんきょう短期大学たんきだいがくのトマト(品種ひんしゅ:ハウス桃太郎ももたろう)の研究けんきゅうでは、官能かんのう試験しけんでは赤色あかいろさおよび旨味うまみつよさは有機ゆうきほどこせようトマトでたかく、これにそれぞれ対応たいおうするように成分せいぶん分析ぶんせきではリコピンアミノ酸あみのさんの含量もたかかった[22]

ホウレンソウの比較ひかく研究けんきゅう以下いかしめす。1995ねん農林水産省のうりんすいさんしょう農業のうぎょう研究けんきゅうセンターがおこなった研究けんきゅうでは、有機ゆうきほどこせようおよび慣行かんこうほどこせようホウレンソウの食味しょくみはなかった[23]一方いっぽうで、同年どうねん発表はっぴょうされた荒川あらかわ義人よしひとらの研究けんきゅうでは、有機ゆうき栽培さいばいホウレンソウは慣行かんこう栽培さいばいホウレンソウよりも食味しょくみがよりたか評価ひょうかされた[5]有機ゆうき栽培さいばいホウレンソウのなかでも、露地ろじものはハウスものよりもあまみとごたえの評価ひょうかたかかった。

外観がいかん

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いろ測定機そくていきにより容易ようい測定そくてい可能かのうであるため、有機ゆうき農産物のうさんぶつ慣行かんこう農産物のうさんぶついろ比較ひかくした研究けんきゅうおおくある。有機ゆうき農法のうほう栽培さいばいしたホウレンソウとネギの葉色はいろは、慣行かんこう農法のうほうくらべてかった[23]有機ゆうき栽培さいばいされたトマトのいろについては、よりかったとする報告ほうこく[24]差異さいはなかったという報告ほうこく[23]とがある。中国ちゅうごくのうためし畑地はたち利用りよう青野あおの圃場ほじょうおこなわれた栽培さいばい試験しけんでは、大根だいこん葉色はいろは、有機ゆうき肥料ひりょうほどこせようよりも化学かがく肥料ひりょうほどこせようでよりかった[25]。また、有機ゆうき肥料ひりょうでも化学かがく肥料ひりょうでも施肥せひりょうおおきいほどくなる傾向けいこうられた。

浅野あさの次郎じろうらによる1980年代ねんだい初頭しょとう報告ほうこくによると、トマト、ナス、キュウリ、レタス、キャベツ、大根だいこんかく有機ゆうき農産物のうさんぶつ慣行かんこう農産物のうさんぶつくらべてかった[26][27]。ただし、キュウリの場合ばあいほどこせようした有機ゆうき肥料ひりょう種類しゅるいによってはぎゃく結果けっかとなったこともこの報告ほうこく指摘してきしている。

さだ光弘みつひろは、農薬のうやく栽培さいばいげん農薬のうやく栽培さいばい慣行かんこう栽培さいばいした温州うんしゅうミカンのそれぞれの外観がいかん品質ひんしつ商品しょうひんりつ比較ひかくした。その結果けっか農薬のうやく栽培さいばいした温州うんしゅうミカンの商品しょうひんりつは、農薬のうやく散布さんぷして栽培さいばいしたものと比較ひかくしていちじるしくひくかった[28]。この商品しょうひんりつ低下ていかは、外観がいかん品質ひんしつそこなう黒点こくてんびょうそうかやまい発症はっしょうりつ農薬のうやく栽培さいばい非常ひじょうたかかったためである。一方いっぽう黒点こくてんびょう防除ぼうじょおも目的もくてきとした3-4かい散布さんぷげん農薬のうやく栽培さいばいでは6-10かい散布さんぷ慣行かんこう栽培さいばいおなじか、それ以上いじょう商品しょうひんりつられた。

認証にんしょうかかわる問題もんだい

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日本にっぽん農林のうりん規格きかく改正かいせいによって、有機ゆうきJAS規格きかくたす農産物のうさんぶつ加工かこう食品しょくひんければ「有機ゆうきとう表示ひょうじした(=有機ゆうきJASマークをした)商品しょうひん販売はんばいすることは出来できなくなった。しかし、この規格きかく広告こうこくとうに「有機ゆうき栽培さいばい」「農薬のうやく」といった表記ひょうきをすることを制限せいげんするものではないため、生産せいさんしゃ業者ぎょうしゃがホームページやパンフレットで「有機ゆうき栽培さいばい」として販売はんばいしていても(それが虚偽きょぎ表示ひょうじかぎり)問題もんだいとされない状況じょうきょうにある。そのため、認証にんしょうけていない生産せいさんしゃ団体だんたいはそれぞれ独自どくじ規格きかくもうけるなどして安全あんぜんせい妥当だとうせいたせる場合ばあいられるものの、有機ゆうきJAS規格きかくのように第三者だいさんしゃ機関きかん関与かんよ公的こうてきみとめたものではないことに注意ちゅうい必要ひつようである。実際じっさい化成かせい肥料ひりょうもちいて栽培さいばいしたため農林水産省のうりんすいさんしょうから改善かいぜん命令めいれいされたケース[29]もある。

消費しょうひしゃたいして適正てきせい有機ゆうき農産物のうさんぶつ提供ていきょうするための規格きかくであるが、厳密げんみつ規格きかくをクリアするための圃場ほじょうやその設備せつび整備せいび改修かいしゅう認証にんしょう手続てつづきなどに多額たがく出費しゅっぴ必要ひつようとなり、生産せいさんしゃにとってはおおきな負担ふたんとなる。このため、認証にんしょうけずに販売はんばいつづける生産せいさんしゃすくなくない。さらに、有機ゆうきたね有機ゆうきなえ使つかうことをさだめておきながら、入手にゅうしゅ困難こんなん場合ばあいはそのかぎりでない、といった矛盾むじゅんふく規定きていたいして疑問ぎもんこえがっている[30]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ ニューカッスル大学だいがく (イングランド)の研究けんきゅうプロジェクトはEUから1200まんポンド(28~29おくえん)の資金しきん提供ていきょうけて4年間ねんかんおこなわれた。この研究けんきゅう結果けっかは2007ねん10がつ29にちBBCニュースで報道ほうどうされた。ニューキャッスル大学だいがく研究けんきゅう結果けっかは、英国えいこく食品しょくひん基準きじゅんちょうの「エビデンスがまったくない」という姿勢しせい疑問ぎもんていしていると指摘してきされた。一方いっぽう正式せいしき論文ろんぶんとして発表はっぴょうされていないともつたえられた。
  2. ^ 実際じっさいに、ちゅう残留ざんりゅう農薬のうやく濃度のうどたかどもは注意ちゅうい欠陥けっかんどうせい障害しょうがい(ADHD)の発症はっしょうリスクが通常つうじょうの2ばいであるという報告ほうこくがある。ジアルキルリンさんしお尿にょうちゅう濃度のうどとくにジメチルアルキルホスフェート(DMAP)濃度のうどたかかった子供こどもがADHDと診断しんだんされる傾向けいこうがあった。もっと一般いっぱんてき検出けんしゅつされたDMAP代謝たいしゃぶつチオリンさんジメチルについては、検出けんしゅつされなかった子供こどもくらべて、検出けんしゅつ可能かのう濃度のうどレベルよりも中央ちゅうおうたかかった子供こどもはADHDのばいのオッズがあった(補正ほせいオッズ:1.93[95%信頼しんらい区間くかん:1.23ー3.02])。出典しゅってんMaryse F. Bouchard; David C. Bellinger; Robert O. Wright; Marc G. Weisskopf (May 2010). “Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Urinary Metabolites of Organophosphate Pesticides”. PEDIATRICS. doi:10.1542/peds.2009-3058. 

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 有機ゆうき農産物のうさんぶつ有機ゆうき加工かこう食品しょくひん有機ゆうき飼料しりょうおよ有機ゆうき畜産ちくさんぶつについての小分こわ業者ぎょうしゃおよ外国がいこく小分こわ業者ぎょうしゃ認定にんてい技術ぎじゅつてき基準きじゅん”. 公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん自然しぜん農法のうほう国際こくさい研究けんきゅう開発かいはつセンター. 2021ねん2がつ26にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c 増尾ますお きよし最新さいしんばん 家庭かていでできる食品しょくひん添加てんかぶつ農薬のうやくとす方法ほうほう』PHP研究所けんきゅうじょ、2015ねん、62ぺーじ
  3. ^ 有機ゆうき農業のうぎょうかんする基礎きそ基準きじゅん2000 日本にっぽん有機ゆうき農業のうぎょう研究けんきゅうかい
  4. ^ a b c d e f g そうたんあきら中国ちゅうごくにおける緑色みどりいろ食品しょくひん認証にんしょう制度せいど展開てんかいおよ地域ちいき農業のうぎょう地域ちいき政策せいさく研究けんきゅう』(高崎経済大学たかさきけいざいだいがく地域ちいき政策せいさく学会がっかいだい10かんだい3ごう 2008ねん2がつ 65ぺーじ~76ぺーじ 2022ねん2がつ25にち閲覧えつらん
  5. ^ a b c 荒川あらかわ義人よしひと; 渡部わたなべしおり; 小林こばやし奈美子なみこ; 笹田ささだ真衣子まいこ; 豊島としまことめぐみ (1995). 有機ゆうき栽培さいばいホウレンソウの品質ひんしつについて”. 日本にっぽん食品しょくひん科学かがくこう学会がっかいだい42かい大会たいかい講演こうえん要旨ようししゅう: 158. https://www.jsfst.or.jp/nenzi/Proceedings/42taikai.pdf. 
  6. ^ Is organic food better for you 英語えいご (英国えいこく食品しょくひん基準きじゅんちょう Food Standards Agency)
  7. ^ Nutritional differences between organic and non-organic milk 英語えいご (英国えいこく食品しょくひん基準きじゅんちょう Food Standards Agency)
  8. ^ a b Organic produce 'better for you' (BBC NEWS - Health, 29 October 2007)
  9. ^ Food quality: Clear benefits of organic products. (FiBL, 2006-10-31)
  10. ^ Alyson E. Mitchell et al. (2007.10). “Ten-Year Comparison of the Influence of Organic and Conventional Crop Management Practices on the Content of Flavonoids in Tomatoes”. J. Agric. Food Chem 55 (15): 6154-6159. http://pubs.acs.org/cgi-bin/abstract.cgi/jafcau/2007/55/i15/abs/jf070344+.html. 
  11. ^ Organic review publishedWednesday 29 July 2009
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  13. ^ Second review: Organic health effects review Archived 2009ねん10がつ15にち, at the Wayback Machine.
  14. ^ Niggli, Urs et al. (2009)。"QLIF Integrated Research Project: Advancing Organic and Low-Input Food."
  15. ^ 斎藤さいとうかおる (1999). フレッシュフードシステム 28 (1): 4. 
  16. ^ Cynthia L. Curl; Richard A. Fenske; Kai Elgethun (2003 March). “Organophosphorus pesticide exposure of urban and suburban preschool children with organic and conventional diets”. Environ Health Perspect 111 (3): 377–382. PMC 1241395. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=1241395. 
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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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