林はやし雄一郎ゆういちろう

林はやし 雄一郎ゆういちろう（はやし ゆういちろう、1912年ねん（大正たいしょう元年がんねん）12月31日にち - 2004年ねん（平成へいせい16年ねん）8月がつ19日にち）は、昭和しょうわ時代じだいから平成へいせい時代じだいにかけての合唱がっしょう指揮しき者しゃ、作曲さっきょく家か。

経歴けいれき

大阪おおさか市し・船場ふなばで紙かみ箱ばこ製造せいぞう業ぎょうを営いとなむ家庭かていの五ご男おとことして生うまれる。汎愛はんあい小学校しょうがっこう、明星みょうじょう商業しょうぎょう学校がっこうを経へて1930年ねん（昭和しょうわ5年ねん）関西学院かんせいがくいん高等こうとう商業しょうぎょう部ぶに入学にゅうがく。在学ざいがく中ちゅうは関西学院かんせいがくいんグリークラブに所属しょぞくし、3年生ねんせいより学生がくせい指揮しき者しゃを務つとめる。在籍ざいせき中ちゅうに後のちに「関学かんがくトーン」と呼よばれる独自どくじの響ひびきを編あみ出だし、1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）第だい7回かい競演きょうえん合唱がっしょう祭さいに初はつ出場しゅつじょうで優勝ゆうしょう。

卒業そつぎょう後ごは合唱がっしょう指揮しき、作曲さっきょく・編曲へんきょくで活動かつどう。特とくに宗教しゅうきょう曲きょく、歌曲かきょく、流行りゅうこう曲きょく等とう多岐たきにわたる合唱がっしょう編曲へんきょくに力ちからを入いれ、また師事しじした山田やまだ耕筰こうさくから山田やまだの全ぜん歌曲かきょくを合唱がっしょうに編曲へんきょくするよう依頼いらいされ精力せいりょく的てきに取とり組くんだ。1934年ねん（昭和しょうわ9年ねん）新月しんげつ会かいの結成けっせいに寄与きよし、初代しょだい指揮しき者しゃを務つとめる。関西かんさい合唱がっしょう連盟れんめい最高さいこう顧問こもん、新月しんげつ会かい会長かいちょうを歴任れきにん。1979年ねん（昭和しょうわ54年ねん）長井ながい賞しょう受賞じゅしょう。

音楽おんがく・エピソード

近代きんだいの船場ふなばは、大阪おおさか商人しょうにんの財力ざいりょくを背景はいけいとして豊富ほうふな伝統でんとう文化ぶんかと新出にいでの大正たいしょう文化ぶんかとを採とり入いれた地域ちいきであり、林はやしはその自由じゆう闊達かったつな雰囲気ふんいきの中なかで育そだった。家いえでは長兄ちょうけいがピアノを弾ひき、オペラ曲きょくをよく歌うたった。その影響えいきょうを受うけて林はやしも幼少ようしょう期きから音楽おんがくが好すきであった。関学かんがく入学にゅうがく後ご、それまで米べい英えいの合唱がっしょう曲きょくをとりあげることが多おおかった関学かんがくグリーに、ドイツの合唱がっしょう曲きょくを持もち込こむことを構想こうそうする。林はやしは高価こうかな本ほんであったドイツの合唱がっしょう曲きょく集しゅう2冊さつ組ぐみを早速さっそく購入こうにゅうし、全ぜん600曲きょく超ちょうを何なん度ども足踏あしぶみオルガンで繰くり返かえし弾ひいてみた。やがて全曲ぜんきょくを覚おぼえてしまうと、「まず、その曲きょくを隅すみから隅すみまで研究けんきゅうすることだ。すると、作曲さっきょく家かの意図いとが自然しぜんと理解りかいできる。いきおい、その曲きょくがおもしろくなる。自分じぶん自身じしんがおもしろいと思おもってこそ、いい演奏えんそうができるのだ。」と悟さとる。そして次々つぎつぎに楽譜がくふやレコードを買かい求もとめ、男声だんせい合唱がっしょうの理解りかいを深ふかめ、「西洋せいよう音楽おんがくの実践じっせん的てき指導しどう要領ようりょう」を確立かくりつしていく。3年生ねんせいになるころには、林はやしは関学かんがくグリー内ないでも群ぐんを抜ぬいた存在そんざいとなっていた。

学生がくせい指揮しき者しゃに就任しゅうにんして間あいだもなく、純じゅん正調せいちょうハーモニーの存在そんざいを知しる。横山よこやま大観たいかんの水墨すいぼく画が「雲くもと波なみ」を見みて、墨ぼく一色いっしょくのその画がから受うけたすさまじい動的どうてき迫力はくりょくからヒントを得え、林はやしはこれを関学かんがくグリーに導入どうにゅうしようと試こころみるが、部員ぶいんの理解りかいは容易よういでなかった。そこで林はやしは、関学かんがくの伝統でんとうである部員ぶいん同士どうしの音楽おんがく的てき友情ゆうじょう（メンタルハーモニー）を拠より所どころに練習れんしゅうを通とおして部員ぶいんに会得えとくさせることに成功せいこうした。メンタルハーモニーと純じゅん正調せいちょうのハーモニーとを結むすび付つけて生うみ出だした「関学かんがくトーン」はその後ごの関学かんがくグリーの大だい躍進やくしんの源みなもととなり、平成へいせいの時代じだいに至いたってもなお受うけ継つがれている。

第だい7回かい競演きょうえん合唱がっしょう祭さいに出場しゅつじょうした合唱がっしょう団だんは、関学かんがくグリー以外いがいはすべて関東かんとうの合唱がっしょう団だんであった。上京じょうきょうの列車れっしゃの中なかで、横浜よこはまを過すぎたあたりから乗のり込こんできた東京とうきょうリーダーターフェル・フェラインの団員だんいんから関学かんがくグリーは田舎者いなかもの扱あつかいの嘲笑ちょうしょうを受うける。これをこらえると、不思議ふしぎに、これまでの不安ふあん感かんが消きえ、必かならず勝かつと激はげしい闘志とうしがわいてきた。結果けっかは優勝ゆうしょうを果はたし（東京とうきょうリーダーターフェル・フェラインは5位い）、鼻はなをあかすことに成功せいこうした。後日ごじつ「音楽おんがく之の友とも」に掲載けいさいされた記事きじでは、多おおくの賞牌しょうはいを抱かかえて大だい喜よろこびする関学かんがくグリーの写真しゃしんとともに「…嗚呼ああ」と記しるされ、「田舎いなか者しゃ」に賞しょうをさらわれた関東かんとう勢ぜいの無念むねんさが表あらわれている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 山中やまなか源はじめ也『関西学院かんせいがくいんグリークラブ八はち十じゅう年ねん史し』関西学院かんせいがくいんグリークラブ部ぶ史し発行はっこう委員いいん会かい、1981年ねん
• 「賛さん・林はやし雄一郎ゆういちろう先生せんせい」- 社団しゃだん法人ほうじん全日本ぜんにほん合唱がっしょう連盟れんめい機関きかん誌し「ハーモニー」No.131、2005年ねん1月がつ10日とおか発行はっこう。