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やなぎまち隆造りゅうぞう

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やなぎまち隆造りゅうぞう
やなぎまち隆造りゅうぞう(2014)
生誕せいたん (1928-08-27) 1928ねん8がつ27にち
日本の旗 日本にっぽん 北海道ほっかいどう
死没しぼつ 2023ねん9月27にち(2023-09-27)(95さいぼつ
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく ハワイしゅうホノルル
国籍こくせき 日本の旗 日本にっぽん
出身しゅっしんこう 北海道大学ほっかいどうだいがく
おも受賞じゅしょうれき 国際こくさい生物せいぶつがくしょう(1996)
京都きょうとしょう先端せんたん技術ぎじゅつ部門ぶもん(2023)
プロジェクト:人物じんぶつでん
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やなぎまち 隆造りゅうぞう(やなぎまち りゅうぞう、1928ねん8がつ27にち - 2023ねん9月27にち[1])は、日本にっぽん出身しゅっしん生殖せいしょく生物せいぶつ学者がくしゃアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくハワイしゅう在住ざいじゅう)。理学りがく博士はかせハワイ大学はわいだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ北海道ほっかいどう札幌さっぽろ出身しゅっしん[2]江別えべつまれ[3][4])。

哺乳類ほにゅうるい受精じゅせい過程かていについて一連いちれん機構きこうあきらかにした。生殖せいしょく医療いりょうひろもちいられる体外たいがい受精じゅせい(IVF)・顕微けんび授精じゅせい(ICSI)などの開発かいはつしゃとしてられ、これらの技術ぎじゅつ今日きょう世界中せかいじゅうひろ臨床りんしょう応用おうようされている。また哺乳類ほにゅうるいにおけるクローン動物どうぶつ作製さくせいにおいてもその先駆せんくしゃ一人ひとりである。1997ねん世界せかいはつクローンマウス作製さくせいすることに成功せいこうし、開発かいはつハワイ大学はわいだいがくマノアこう)にちなみその方法ほうほうは「Honolulu technique」とばれている[5]最初さいしょまれたクローンマウスはその由来ゆらいたい細胞さいぼう(cumulus cells: たまごおか細胞さいぼう)にちなみ「Cumulina」と名付なづけられた。

来歴らいれき人物じんぶつ

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北海道ほっかいどう江別えべつまれ[3][4]、4さいから札幌さっぽろそだ[4]長岡ながおかはんだった祖父そふだいから北海道ほっかいどううつり、商人しょうにんとなった。北海道大学ほっかいどうだいがく附属ふぞく土木どぼく専門せんもんげん室蘭工業大学むろらんこうぎょうだいがく)をて、1952ねん北海道大学ほっかいどうだいがく理学部りがくぶ卒業そつぎょう。1960ねん理学りがく博士はかせ動物どうぶつ発生はっせいがく北海道大学ほっかいどうだいがく)。研究けんきゅうしょくくことが出来できなかったため、札幌さっぽろ市内しない高校こうこう理科りか教諭きょうゆとして就職しゅうしょく[6]

1年間ねんかん高校こうこう教師きょうしつとめたのち退職たいしょくし、米国べいこくウースター財団ざいだん実験じっけん生物せいぶつがく研究所けんきゅうじょ英語えいごばん(Shrewsbury, Massachusetts)、M. C. Chang英語えいごばん博士はかせ研究けんきゅうしつにポストドクトラルフェローとして採用さいようされた。このあいだ、Chang博士はかせのもとでハムスターをもちいた体外たいがい受精じゅせい成功せいこう、この研究けんきゅう以後いごのヒトや哺乳類ほにゅうるい体外たいがい受精じゅせいほう確立かくりつつながる先駆せんくてき研究けんきゅうであった。

1964ねん北海道大学ほっかいどうだいがく非常勤ひじょうきん講師こうしとしてもどり、助教授じょきょうじゅ採用さいようされる予定よていであったが、教授きょうじゅかいによる選考せんこうべつひと採用さいようされしょくることは出来できなかった[6]

1966ねんハワイ大学はわいだいがく新設しんせつされた医学部いがくぶ (John A. Burns School of Medicine)に助教授じょきょうじゅとして採用さいようされ、教授きょうじゅとなった(解剖かいぼうがく生化学せいかがく生理学せいりがく生殖せいしょく生物せいぶつがく)。38年間ねんかんにわたりハワイ大学はわいだいがく研究けんきゅうしゃ生活せいかつおくったのち、2004ねんまつだいいちせん退しりぞ名誉めいよ教授きょうじゅとなった。しかし、その若手わかて研究けんきゅうしゃ研究けんきゅう生活せいかつつづけている。

博子ひろこ夫人ふじんはもともと児童じどう心理しんり学者がくしゃであった。おっと渡米とべいさい語学ごがくじょう限界げんかいのため児童じどう心理しんりがく分野ぶんやしょくることはできなかったが、でんあらわ技術ぎじゅつしゃ転向てんこうやなぎまちとともに仕事しごとをしている[6]

2023ねん9がつ27にち死去しきょ。95さいぼつ[1]

からだ細胞さいぼうクローン研究けんきゅう

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1998ねんやなぎまち研究けんきゅうグループはNatureマウスたい細胞さいぼうクローン作製さくせいについての論文ろんぶん発表はっぴょうした。やなぎまちはそのあたらしいからだ細胞さいぼうクローン作製さくせいほうを、開発かいはつにちなみ「Honolulu technique」と名付なづけた[5]最初さいしょまれたマウスはたまごおか細胞さいぼうかくもちいて作製さくせいされ、たまごおか細胞さいぼう(cumulus cells)にちなみ「Cumulina」と名付なづけられた。この論文ろんぶんたときには、このあたらしいからだ細胞さいぼうクローン技術ぎじゅつもちいて3世代せだい、50ひき以上いじょうのクローンマウスがすで誕生たんじょうしていた。

ハワイ大学はわいだいがく研究けんきゅうしつまど倉庫そうこ改造かいぞうした場所ばしょに30ねん以上いじょうあったが、そこから医学部いがくぶ新築しんちくされたInstitute for Biogenesis Researchない異動いどうした。このあたらしい研究所けんきゅうじょへの異動いどうはこれまでの地道じみちかつ革新かくしんてき研究けんきゅう業績ぎょうせきによって一層いっそう有名ゆうめいり、大型おおがた研究けんきゅう獲得かくとくできたために実現じつげんした。

やなぎまち研究けんきゅうチーム(過去かこ在籍ざいせきしゃふくむ)は現在げんざいまでからだ細胞さいぼうクローン動物どうぶつ作製さくせい技術ぎじゅつ革新かくしんんでいる[7]最初さいしょ成体せいたい細胞さいぼう由来ゆらい動物どうぶつのクローンを発表はっぴょうしたのは1999ねんだが、2004ねんには研究けんきゅうチームはゆうせいにん動物どうぶつからのクローン作製さくせいんだ。このにん動物どうぶつからのクローン作成さくせい技術ぎじゅつはヒト不妊症ふにんしょう基礎きそ研究けんきゅう応用おうよう期待きたいされている[8]

からだ細胞さいぼうクローンマウス作製さくせいほう「Honolulu technique」はハワイしゅうホノルルにあるBishop Museum とイリノイしゅうシカゴにあるMueum of Science and Industryで展示てんじされている。

おも業績ぎょうせき(1960ねん以前いぜん以後いご

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やなぎまち哺乳類ほにゅうるい生殖せいしょく研究けんきゅうを1960ねん(M.C. Chang博士はかせ師事しじ)からはじめたが、それ以前いぜん魚類ぎょるいさけにしん)の生殖せいしょく甲殻こうかくるい寄生きせいせいフジツボ)のせい生活せいかつ研究けんきゅうおこなった。

ニシン研究けんきゅうでは精子せいしはCa2+濃度のうど依存いぞんてき運動うんどうせい獲得かくとく生殖せいしょくあなから侵入しんにゅう受精じゅせい成立せいりつすることを発見はっけんした。寄生きせいせいフジツボ(フクロムシ)の研究けんきゅうでは、それまで雌雄しゆう同体どうたいおもわれていたこの生物せいぶつの「精巣せいそう」が退化たいかしたゆうであることを発見はっけんした。この発見はっけんはこのたね関連かんれんしゅ生活せいかつ、あるいはせい本質ほんしつ理解りかいするじょう画期的かっきてきなものであった。

1960ねん以後いごやなぎまち業績ぎょうせきおも哺乳類ほにゅうるい生殖せいしょく過程かてい機構きこう解析かいせきおよびそれらを基盤きばんとした生殖せいしょく補助ほじょ技術ぎじゅつ開発かいはつげられる。やなぎまちあらわした総説そうせつ哺乳類ほにゅうるい受精じゅせい」(In: Physiology of Reproduction, Knobil & Neill eds, Raven Press, 1994)はこの分野ぶんやにおける古典こてんてき名著めいちょとされる。

やなぎまち研究けんきゅうグループが開発かいはつした「顕微けんび授精じゅせい」はいろいろなタイプのヒトゆうせい不妊症ふにんしょうたいする有用ゆうよう治療ちりょう戦略せんりゃくとなっている。その基礎きそ研究けんきゅうとして、やなぎまちらは未熟みじゅくゆうせい配偶はいぐう円形えんけいせい細胞さいぼう精子せいし細胞さいぼう)あるいは凍結とうけつ乾燥かんそう精子せいしもちいた顕微けんび授精じゅせいもちいて世界せかい先駆さきが正常せいじょう新生しんせいることに成功せいこうしている。

やなぎまちは2005ねん研究けんきゅうだいいちせんからは退しりぞいたが、名誉めいよ教授きょうじゅになってからも毎日まいにちオフィスへ出勤しゅっきんし、哺乳類ほにゅうるい受精じゅせい生殖せいしょく、あるいは魚類ぎょるい昆虫こんちゅうるい受精じゅせいについて仕事しごとつづけた[9]

受賞じゅしょうとう

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  • 日本にっぽん動物どうぶつ学会がっかいしょう (1977; 日本にっぽん)
  • Research Award, Society for Study of Reproduction (1982; USA)
  • University of Hawaii Regents' Medal for Excellence in Research, (1988; USA)
  • Recognition Award, Serono Symposia (1989; USA)
  • Marshall Medal, Society for the Study of Fertility (1994; UK)
  • 国際こくさい生物せいぶつがくしょう (1996; 日本にっぽん)
  • Honorable Degree of Philosophy from the University of Rome (1997; Italy)
  • Distinguished Andrologist Award, American Society of Andrology (1998; USA)
  • Induction to the Polish Academy of Scicnes (1998; Poland)
  • Carl G. Hartman Award, Society for the Study of Reproduction (1999; USA)
  • Honorable Degree of Philosophy from the University of Pavia (1999; Italy)
  • Honorary Member, European Society of Human Reproduction and Embryology (1999)
  • Pioneer Award, International Embryo Transfer Society (2000)
  • Induction to the National Academy of Sciences (2001; USA)
  • 名誉めいよ哲学てつがく博士はかせごう北海道大学ほっかいどうだいがく (2002; 日本にっぽん)
  • Induction to Hall of Honor, the National Institute of Child Health and Human Development (2003; USA)
  • Donald Henry Barron Lecture, University of Florida (2003; USA)
  • Pioneer in Reproduction Research Leadership Award(2012)
  • 京都きょうとしょう先端せんたん技術ぎじゅつ部門ぶもん (2023; 日本にっぽん)

脚注きゃくちゅう参考さんこう文献ぶんけん

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  1. ^ a b In memoriam: Ryuzo Yanagimachi, cloning, fertilization pioneer” (英語えいご). University of Hawaiʻi System News (2023ねん9がつ28にち). 2023ねん9がつ29にち閲覧えつらん
  2. ^ 読売よみうり年鑑ねんかん 2016年版ねんばん』(読売新聞よみうりしんぶん東京とうきょう本社ほんしゃ、2016ねん)p.435
  3. ^ a b 【インタビュー かがやひとハワイ大学はわいだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ 生物せいぶつ学者がくしゃ やなぎまち 隆造りゅうぞう 博士はかせ”. 2020ねん8がつ4にち閲覧えつらん
  4. ^ a b c 読売新聞よみうりしんぶん、1998ねん7がつ30にち朝刊ちょうかん34めん
  5. ^ a b Honolulu Star-Bulletin Local News
  6. ^ a b c GINA KOLATA (July 24, 1988) Man in the News; Pushing the Boundaries of Reproductive Biology New York Times
  7. ^ Cloning Pioneer Is Focused and Creative in His Research
  8. ^ UH team makes cloning advance - The Honolulu Advertiser - Hawaii's Newspaper
  9. ^ Wakayama, Teruhiko; Ogura, Atsuo (2024). “In memory of Dr. Ryuzo Yanagimachi (Yana) (1928–2023)”. Journal of Reproduction and Development 70 (2): i–iv. doi:10.1262/jrd.2024-E01. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrd/70/2/70_2024-E01/_article. 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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