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気持きも

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

気持きも(きもち)は、物事ものごとせっしたさいそれにたいしてかんじたしん状態じょうたいしんのありかた[1]。からだの状態じょうたいからくる快適かいてき不快ふかいかんじを場合ばあいにも使つかわれる。歴史れきしてきには「心持こころもち(こころもち)」という言葉ことばほうふるく、江戸えど時代じだい中期ちゅうきはこちらがおも使用しようされていたが、徐々じょじょ心持こころもち使用しよう頻度ひんどすくなくなり、昭和しょうわ以降いこうは「気持きもち」が圧倒的あっとうてき優勢ゆうせいとなった[1]

心理しんりがくではこの用語ようご感情かんじょう密接みっせつ関連かんれんしており、感情かんじょうにかかる意識いしきうえ主観しゅかんてき経験けいけん用語ようごである。気持きもちをはか神経しんけい生理学せいりがくうえ手法しゅほうおおくあるものの、それが一様いちようにかつ個人こじんえて有効ゆうこうだとはみとめられていない。これはまた、気持きもちが個人こじんてきまたは主観しゅかんてき意識いしき状態じょうたい[2]自我じが状態じょうたいとしても解釈かいしゃくされることを示唆しさしている[3]気持きもちは、我々われわれ感覚かんかく器官きかん由来ゆらいする刺激しげき処理しょりされてうまれたものである。その感覚かんかく我々われわれ取巻とりま光景こうけいだけでなく、我々われわれ自身じしんからだきている事象じしょうをもつたえてくれる。気持きもちは、外的がいてき事実じじつだけでなく我々われわれ自身じしん価値かち判断はんだんあらわれたものでもある[4]

言葉ことば微細びさい波紋はもん、"すこしばかり"のやさしさ、 "わずかに"かんじる、そのたくみなニュアンス。

感情かんじょうとのちが

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神経しんけい科学かがくしゃアントニオ・ダマシオ気持きもちと感情かんじょうつぎのように区別くべつしている。「感情かんじょう」とは心象しんしょう(mental images)とそれにともな身体しんたいてき変化へんかすのにたいし、「気持きもち」とは身体しんたいてき変化へんか知覚ちかくしている。いいかえるなら、感情かんじょうには主観しゅかんてき要素ようそのほか第三者だいさんしゃえる要素ようそたとえば表情ひょうじょう仕草しぐさなど)がふくまれるが、気持きもちは主観しゅかんてきかつ私的してきなものである[5][6]

内臓ないぞうとの関係かんけい

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ちょう

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物事ものごとせっしたさい感情かんじょうてき反応はんのうちょうはたらきに反映はんえいされることがあり、これを英語えいごけんではgut feeling(ちょう感覚かんかく[注釈ちゅうしゃく 1]やgut reaction(ちょう反応はんのう)などとぶ。不安ふあん気持きもちなどで具合ぐあいわるくなったり、気持きもちがやすらぐと具合ぐあいくなったりもする。たとえば、緊張きんちょうは「がよじれる」ような感覚かんかくをもたらすことがある[8]のうはたらきがちょう影響えいきょうおよぼすように、ちょう状態じょうたいもまたのう影響えいきょうおよぼすことがられており、これをのうちょう相関そうかんという[9]。これらの思想しそう長年ながねんがれてきたもので、19世紀せいき西洋せいよう医師いしおおくが精神せいしん疾患しっかん起源きげんちょうから派生はせいするものだとかんがえていた[10]

心臓しんぞう

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様々さまざま気持きもちをしんからだのどこにあるのか、という命題めいだい古代こだいよりろんじられている。きなひとといればむね高鳴たかなったり、かなしいことがあるとむねけられるような感覚かんかくおぼえるため、しん心臓しんぞう付近ふきんにあるとこたえるひとおおい(そもそも心臓しんぞうは「しんつかさど臓器ぞうき」が名称めいしょう由来ゆらいである)[11]古代こだいギリシアではアリストテレスがこの心臓しんぞうせつとなえ、中世ちゅうせいいたるまで人々ひとびと影響えいきょうあたえた[12]。ただしその心臓しんぞうよりものうしつせつ優勢ゆうせいとなり、「しん」がはたらくにはのう活動かつどう不可欠ふかけつである、と現代げんだいではかんがえられている[13]

知覚ちかくとの関連かんれん

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他人たにん感情かんじょう表現ひょうげん気持きもちを理解りかいすることが、自分じぶんたち応対おうたい方法ほうほうめることになる。個人こじん状況じょうきょう対応たいおう方法ほうほう心情しんじょうそく (feeling rulesもとづく。事情じじょうらされたひとらないひととではいがまったことなる。たとえば悲劇ひげきてき事件じけんきた場合ばあい、それをっている人達ひとたち反応はんのう同情どうじょうてきになるが、事情じじょうらない人達ひとたちでは無関心むかんしん反応はんのうしめ場合ばあいもある。事件じけんかんする知識ちしき情報じょうほう有無うむが、事柄ことがらたいする個人こじん見解けんかいはんおう形成けいせいしうる[8]

心理しんりがく教授きょうじゅティモシー・D・ウィルソンらは、確信かくしんてない気持きもち(feeling of uncertainty)にかんして状況じょうきょう確定かくていまたは不明瞭ふめいりょうときほど、よりおおくのおかねとうじられることを発見はっけんした[注釈ちゅうしゃく 2]物語ものがたり背景はいけい結末けつまつらないがゆえ、ひとつねしんなか事件じけん再生さいせいして、悲喜ひきこもごもじった気持きもちをいだく。

ひと安心あんしんかんなどをるために(自分じぶんかかわる)事柄ことがらについて詳細しょうさいすべりたいとかんがえるが、確実かくじつせいかんじるとそこになぞめいた感覚かんかくがあるためよりたのしい事柄ことがらにつながる場合ばあいもあることをウィルソンは発見はっけんした[注釈ちゅうしゃく 3]実際じっさいからないという気持きもちはなにっているのかをつねかんがえたりかんじるように人々ひとびとみちびくことができる[14]

気持きもちにかんする考察こうさつ

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繊細せんさいおんな(Sensitiva)』ミゲル・ブレイによる1910ねんごろ彫刻ちょうこく

社会しゃかい生活せいかつをおくる人々ひとびとは、なにかが自分じぶんにとってのぞましい結果けっか気持きもちをあたえてくれるのではと未来みらい期待きたいすることがある。自分じぶんしあわせや興奮こうふんさせてくれるとおもえる事柄ことがら熱中ねっちゅうすることは、一時いちじてきなスリルをこすだけにすぎなかったり、のぞんでいたこととぎゃく結果けっかになる場合ばあいもある。イベントや体験たいけん自分じぶん気持きもちをたすためにおこなわれてつい体験たいけんされる。

過去かこ経験けいけんした気持きもちが、現在げんざい意思いし決定けってい将来しょうらいおなごとこったとき気持きもちに影響えいきょうあたえる傾向けいこうがある。ギルバートとウィルソンによるはな購入こうにゅう実験じっけんでは、過去かこはな購入こうにゅう経験けいけんがあるひとのほうが記念きねんはな購入こうにゅうすることで幸福こうふくかんじ、その幸福こうふくかんが(はな購入こうにゅう経験けいけんがこれまでかったひとくらべて)ながつづいたことがしめされた[15]

社会しゃかい学者がくしゃ作家さっかアービング・ゴフマンによると、ひと俳優はいゆうのように感情かんじょう表現ひょうげん方法ほうほう制御せいぎょできるが、うちなる感情かんじょう気持きもちを制御せいぎょすることはできない。内面ないめん気持きもちは、そと人々ひとびとてほしい表現ひょうげんおこな場合ばあいであればめることが可能かのうである。こうした感情かんじょうてき経験けいけん個人こじん意識いしきてきかつ積極せっきょくてきんでいる継続けいぞくてきなものだと、ゴフマンは説明せつめいする。かく個人こじんは、内面ないめん外面がいめん気持きもち(いわゆる本音ほんね建前たてまえ)をって社会しゃかいもうとする[16]

きず行為こうい

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気持きもちは害悪がいあくがわにも作用さようしうる。人生じんせいにおいて猛烈もうれつなストレスや問題もんだいかかえているとき当人とうにんきず行為こういおよんでしまうことがある。気持きもちがれとしているとき人々ひとびと絶対ぜったいにそれをわらせたくないとおもう。ぎゃく気持きもちが憂鬱ゆううつだったりんでいる場合ばあい人々ひとびとはその気持きもちをりたいとおもう。自分じぶん自身じしん危害きがいいたみをくわえることはおおくのひとにたまにられる反応はんのうで、なぜなら人々ひとびと現実げんじつ問題もんだい一旦いったんわすれるためのなにかをのぞんでしまうからである。こうした人達ひとたちは、そのいたみが自身じしん現実げんじつ問題もんだいほどわるいものではないとかんがえているので、現在げんざい自分じぶんかんじているものとはべつなにかをかんじるために、自分じぶん自身じしんったり、したり、食事しょくじをとらずにいる。おおくのひときず行為こうい選択せんたくするのは、気持きもちをまぎらわすことだけが理由りゆうではない。一部いちぶ人々ひとびと自身じしんばっするためにきず行為こういいた[17]軽微けいびれいだと、初歩しょほてきなミスにって自分じぶんあたま小突こづいたりする)。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ のうないとはべつ場所ばしょからかんじる本能ほんのうてき感覚かんかく、という解釈かいしゃくからしばしば「直感ちょっかん」「第六感だいろっかん」「むしらせ」などとやくされる[7]
  2. ^ 近年きんねんでは新型しんがたコロナウィルス収束しゅうそく不明瞭ふめいりょうなため、日本にっぽん政府せいふ補助ほじょきん拠出きょしゅつして飲食いんしょくぎょう休業きゅうぎょう要請ようせいしたり、希望きぼうしゃ全員ぜんいんがワクチン接種せっしゅできるよう予算よさんてて対策たいさくした。
  3. ^ さきからないミステリーツアーなどが代表だいひょうれいギャンブルにのめりんでしまう心理しんりてき要因よういんひとつ(たるかはずれるか確実かくじつだからこそ、一攫千金いっかくせんきんのスリルやたのしみを幾度いくどとなくあじわえる)でもある。

出典しゅってん

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  1. ^ a b コトバンク「気持きもち精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてんおよびデジタル大辞泉だいじせん解説かいせつより。
  2. ^ VandenBos, Gary (2006) APA Dictionary of Psychology. Washington, DC: American Psychological Association
  3. ^ Wilhelm Arnold u. a. (Hrsg.): Lexikon der Psychologie. Bechtermünz, Augsburg 1996, ISBN 3-86047-508-8, Spalte 684–691.
  4. ^ Peter R. Hofstätter (Hrsg.): Psychologie. Das Fischer Lexikon, Fischer-Taschenbuch, Frankfurt a. M. 1972, ISBN 3-436-01159-2; (a) zur „Definition“ S. 124; (b) zum Stw. „Gefühl und Vegetative Organfunktionen“: S. 125 f.; (c) zum Stw. „Die Zerknirschung und Schuldfrage bei körpernahen Gefühlen“: S. 125, 206; (d) zum Stw. „Ethische Konsequenzen“: S. 125.
  5. ^ Damasio, Antonio (1994). Descartes error. United States: Penguin Books. ISBN 0-399-13894-3 
  6. ^ Domasio, Antonio. The feeling of what happens 
  7. ^ IHCWAY「Gut feeling(直感ちょっかん)マンツーマン英会話えいかいわ」2021ねん8がつ30にち閲覧えつらん
  8. ^ a b Hochschild, Arlie Russell. “The Managed Heart: Commercialization of Human Feeling”. 2021ねん9がつ3にち閲覧えつらん
  9. ^ ヤクルト中央ちゅうおう研究所けんきゅうじょのうちょう相関そうかん」『健康けんこう用語ようご基礎きそ知識ちしき』2021ねん9がつ15にち閲覧えつらん
  10. ^ Manon Mathias and Alison M. Moore (eds), Gut Feeling and Digestive Health in Nineteenth-Century Literature, History and Culture. New York: Palgrave, 2018. ISBN 978-3-030-01857-3:
  11. ^ 大隅おおすみ典子のりこしんからだのどこにある?東北大学とうほくだいがく大学院だいがくいん、Neuro genesis、2005ねん3がつ3にち
  12. ^ しんカトリックだい事典じてん だいかん研究けんきゅうしゃ、2002ねん 
  13. ^ 石井いしいたつてんだい7 しんはどこにあるのか?:しん知覚ちかく東京とうきょう成徳しげのり大学だいがく、2015ねん
  14. ^ Outi Horne; Emese Csipke (2009). “From Feeling Too Little and Too Much, to Feeling More and Less? A Nonparadoxical Theory of the Functions of Self-Harm”. Qualitative Health Research 19 (5): 655-667. doi:10.1177/1049732309334249. PMID 19380501.  (Paid subscription requiredよう購読こうどく契約けいやく)
  15. ^ Wood, Stacy L.; Bettman, James R. (2007-07-01). “Predicting Happiness: How Normative Feeling Rules Influence (and Even Reverse) Durability Bias”. Journal of Consumer Psychology 17 (3): 188?201. doi:10.1016/S1057-7408(07)70028-1. 
  16. ^ Hochschild, Arlie (1979). “Emotion Work, Feeling Rules, and Social Structure”. American Journal of Sociology 85 (3): 551?575. doi:10.1086/227049. https://campus.fsu.edu/bbcswebdav/institution/academic/social_sciences/sociology/Reading%20Lists/Social%20Psych%20Prelim%20Readings/II.%20Emotions/1979%20Hochschild%20-%20Emotion%20Work.pdf. 
  17. ^ Bar-Anan, Y; Wilson, T. D.; Gilbert, D. T. (2009). “The feeling of uncertainty intensifies affective reactions”. Emotion 9 (1): 123-7. doi:10.1037/a0014607. PMID 19186925. http://nrs.harvard.edu/urn-3:HUL.InstRepos:3153298. 
  18. ^ a b c 英語えいご学習がくしゅう徹底てってい攻略こうりゃく「emotion」「feeling」「mood」「sentiment」の意味いみちがいとは?」2020ねん1がつ19にち
  19. ^ コトバンク「フィーリング精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん解説かいせつより。

外部がいぶリンク

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