水野みずの正名まさな

凡例はんれい 水野みずの 正名まさな
水野みずの正名まさな
時代じだい	江戸えど時代じだい末期まっき（幕末ばくまつ） - 明治めいじ時代じだい初期しょき
生誕せいたん	文政ぶんせい6年ねん（1823年ねん）5月がつ
死没しぼつ	明治めいじ5年ねん11月9日にち（1872年ねん12月9日にち）
改名かいめい	岩次郎いわじろう（初はつ名な）、丹後たんご（通称つうしょう）
別名べつめい	渓けい雲斎うんさい（号ごう）
墓所はかしょ	久留米くるめ市し野中のなか町まちの隈くま山さん墓地ぼち
主君しゅくん	有馬ありま頼よりゆき咸
藩はん	筑後ちくご国こく久留くる米べい藩はん参政さんせい→大だい参事さんじ
父母ちちはは	父ちち：水野みずの正芳まさよし　母はは：鶴子つるこ（稲次いなつぎ成なり興きょうの娘むすめ）
兄弟きょうだい	正名まさな、吉田よしだ博文ひろぶみ、稲次いなつぎ正訓せいくん、水野みずの正ただし剛つよし

水野みずの 正名まさな（みずの まさな）は、江戸えど時代じだい末期まっき（幕末ばくまつ期き）から明治めいじ初期しょきにかけての武士ぶし。久留くる米べい藩はん重臣じゅうしん。

真木まき保たもつ臣しん死後しごの藩はん内ないの尊王そんのう攘夷じょうい派はの領袖りょうしゅうであり、明治維新めいじいしん後ごの藩政はんせいを主導しゅどうするが、久留くる米べい藩はん難事件なんじけんにより失脚しっきゃくし獄死ごくしした。

生涯しょうがい

文政ぶんせい6年ねん（1823年ねん）、久留くる米べい藩はん重臣じゅうしん（中老ちゅうろう）・水野みずの文三郎ぶんざぶろう正芳まさよしの二男じなん（長男ちょうなんは早世そうせい）として久留くる米べいに生うまれる。母はは・鶴子つるこは、同おなじく久留くる米べい藩はん重臣じゅうしん・稲次いなつぎ縫ぬい殿どの成なり興きょうの娘むすめ。次つぎ弟おとうと・道之みちゆき助すけは番頭ばんがしら・吉田よしだ俊しゅん喬たかしの養子ようしとなって吉田よしだ博文ひろぶみを称しょうし、三さん弟おとうと・恭之きょうすけ進しんは家老がろう・稲次いなつぎ正せい誠まことの家いえを継ついで稲次いなつぎ正訓せいくんを称しょうした。

天保てんぽう14年ねん（1843年ねん）、奏者そうしゃ番ばんとなる。真木まき保たもつ臣しん・木村きむら三郎さぶろう（重任じゅうにん）と交まじわり尊王そんのう攘夷じょうい派はとして活動かつどう、藩政はんせいの改革かいかくを主張しゅちょうした。嘉よしみ永なが5年ねん（1852年ねん）3月がつ、久留くる米べい藩はんにおける尊王そんのう攘夷じょうい派はの失脚しっきゃく・弾圧だんあつ（嘉よしみ永ながの大獄たいごく）により正名まさなも職しょくを解とかれて永えい蟄居ちっきょを命めいぜられ、以後いご12カ年かねんにわたって幽閉ゆうへいされた。嘉よしみ永ながの大獄たいごくに際さいしては、同志どうしであった弟おとうとの稲次いなつぎ正訓せいくん（家老がろう脇わき1000石せき）も家いえ禄ろく没収ぼっしゅう・幽閉ゆうへいの処分しょぶんを受うけ、自刃じじんしている。

文久ぶんきゅう3年ねん（1863年ねん）5月がつに幽閉ゆうへいを解とかれ、真木まき保たもつ臣しんとともに京都きょうとに上のぼり、学習がくしゅう院いん御用ごよう掛かけとなる。同年どうねん8月がつ、八はち月がつ十じゅう八はち日にちの政変せいへんが発生はっせいすると、三条さんじょう実美みみ・四条しじょう隆たかし謌・東ひがし久世くせ通どおり禧ら七なな卿きょうに従したがって長州ちょうしゅうに入はいる（七なな卿きょう落おち）。元治もとはる元年がんねん（1864年ねん）、五ご卿きょう（七なな卿きょうのうち錦にしき小路しょうじ頼よりゆき徳とく・澤さわ宣嘉のぶよしを除のぞく）とともに大宰府だざいふに入はいってその側近そっきんに仕つかえ、警護けいごに当あたるとともに久留くる米べい藩はん尊王そんのう攘夷じょうい派はとの連絡れんらくを持もった。慶応けいおう3年ねん（1867年ねん）、五ご卿きょうとともに上京じょうきょう。

明治めいじ元年がんねん（1868年ねん）2月がつ、大坂おおさかにおいて奏者そうしゃ番ばんに復帰ふっきし、参政さんせいとなる。3月、藩主はんしゅとともに久留米くるめに入はいり、中老ちゅうろうに進すすんで藩政はんせいを担にない、尊王そんのう攘夷じょうい派は政権せいけんを組織そしきした。この際さい、嘉よしみ永ながの大獄たいごくに報復ほうふくする形かたちで佐幕さばく開明かいめい派はに対たいして弾圧だんあつを加くわえ、有馬ありま監かん物ぶつらを幽閉ゆうへいし、今井いまい栄さかえらに切腹せっぷくを命めいじた。

明治めいじ元年がんねん5月がつ、佐々ささ金平きんぺい（真ま武ぶ）の提案ていあんにより、武士ぶし・町民ちょうみん・農民のうみんを混成こんせいした「応変おうへん隊たい」を編成へんせいし、義弟ぎていの水野みずの又蔵またぞう（正せい剛つよし）を隊長たいちょう、佐々ささ金平きんぺいを参謀さんぼうとした。応変おうへん隊たいは戊辰戦争ぼしんせんそうに従軍じゅうぐんし、箱はこ館かん戦争せんそうに参加さんかする。明治めいじ2年ねん（1869年ねん）6月がつ17日にち、版籍はんせき奉還ほうかんにともない久留米くるめ藩はん大だい参事さんじとなる。

明治めいじ3年ねん（1870年ねん）9月がつ、長州ちょうしゅう藩はんで奇き兵隊へいたいの反乱はんらん（脱だつ隊たい騒動そうどう）を起おこして敗やぶれた大だい楽らく源太郎げんたろうが久留米くるめに逃のがれると、小河おがわ真しん文ぶんら応変おうへん隊たい幹部かんぶはこれを庇護ひごした。大だい楽らくらによるクーデター計画けいかくが発覚はっかくすると（二に卿きょう事件じけん）、明治めいじ4年ねん（1871年ねん）、明治めいじ政府せいふは久留くる米べい藩はんに対たいして巡察じゅんさつ使し四条しじょう隆たかし謌少将しょうしょう率ひきいる軍ぐんを派遣はけんした（久留くる米べい藩はん難事件なんじけん、辛からし未ひつじの藩はん難なん）。水野みずの正名まさなは藩はん知事ちじ有馬ありま頼よりゆき咸の命いのちを受うけて事態じたいの収拾しゅうしゅうにあたったが、3月13日にち免官めんかんの上うえ捕とらえられて東京とうきょうに護送ごそうされた。12月には終身しゅうしん禁錮きんこに処しょせられ、青森あおもり県けん弘前ひろさきの監獄かんごくに移送いそう。明治めいじ5年ねん（1872年ねん）11月、同地どうちで獄死ごくしした。享年きょうねん50。

水野みずの正名まさなの国事こくじへの奔走ほんそうを顕彰けんしょうする石碑せきひが、篠山しのやま神社じんじゃ境内けいだいにある。これは、1933年ねんに建立こんりゅうされたものである。

参考さんこう文献ぶんけん

• 篠原しのはら正一しょういち『久留くる米べい人物じんぶつ誌し』（久留くる米べい人物じんぶつ誌し刊行かんこう委員いいん会かい、昭和しょうわ56年ねん（1981年ねん））
• 内藤ないとう一成いっせい著ちょ『三条さんじょう実美みみ』中公新書ちゅうこうしんしょ、2019年ねん、129p