海鳥うみどりの詩し

「海鳥うみどりの詩し」（うみどりのうた）は、廣瀬ひろせ量平りょうへいの合唱がっしょう組曲くみきょく。混声こんせい合唱がっしょう組曲くみきょくとしてまず発表はっぴょうされ、後のちに男声だんせい合唱がっしょう、女声じょせい合唱がっしょうにも編曲へんきょくされた。作詩さくしは更科さらしな源蔵げんぞう。

概説がいせつ

1977年ねん（昭和しょうわ52年ねん）度ど文化庁ぶんかちょう芸術げいじゅつ祭さい参加さんか作品さくひんとして、NHKの委嘱いしょくにより混声こんせい合唱がっしょう版ばんが発表はっぴょうされた。その後ご1981年ねん（昭和しょうわ56年ねん）には男声だんせい合唱がっしょう版ばんが、1983年ねん（昭和しょうわ58年ねん）には女声じょせい合唱がっしょう版ばんが発表はっぴょうされている。

廣瀬ひろせはこの曲きょくの成立せいりつに際さいしては、NHKの担当たんとうディレクター・須田すだ潔きよしの尽力じんりょくが大おおきいとしている。廣瀬ひろせと須田すだのコンビは1972年ねんに混声こんせい合唱がっしょう組曲くみきょく『カムイの森もりで』で芸術げいじゅつ祭さい合唱がっしょう部門ぶもんで優秀ゆうしゅう賞しょうを受賞じゅしょうしていて、それに続つづくものである。NHKは当初とうしょ、「ある高名こうみょうな作家さっかに」詩しを委嘱いしょくし書かき下おろしてもらったが、「どうしても合唱がっしょう曲きょくにならない」として没ぼつにし、須田すだは急遽きゅうきょ、詩人しじん・郷土きょうど史家しかであった更科さらしなを起用きようすることとした（更科さらしなの娘むすめの夫おっとがNHKに勤務きんむしていたという縁えんがあった）。更科さらしなの第だい3詩集ししゅう『無明むみょう』から2編へん（オロロン鳥とり、海うみ鵜う）を選えらび、さらに更科さらしなの書かき下おろしの詩し1編へん（エトピリカ）を加くわえ、全ぜん3楽章がくしょうの組曲くみきょくとして発表はっぴょうした。作曲さっきょくに際さいし廣瀬ひろせは「三日みっかで一いち楽章がくしょうずつ、九きゅう日間にちかんでできた」「やっとできてスタジオに行いったら、やっぱり前奏ぜんそうがいるなあというので、スタジオで十分じゅうぶんくらいであの海辺うみべの岩いわみたいな前奏ぜんそうを作つくった」と、真しんに急きゅうごしらえだった事情じじょうを明あかしている。初演しょえんはNHK札幌さっぽろ放送ほうそう合唱がっしょう団だん、指揮しき・宍戸ししど悟さとる郎ろう、ピアノ・高岡たかおか立子たつこ。「海鳥うみどりの詩し」はこの年としの芸術げいじゅつ祭さい合唱がっしょう部門ぶもんで優秀ゆうしゅう賞しょうを受賞じゅしょう。出版しゅっぱんに際さいしてはさらに更科さらしながもう1編へん（北きたの海鳥うみどり）詩しを書かき下おろし、全ぜん4楽章がくしょうとして出版しゅっぱんした。

詩しは『無明むみょう』という題だいから示しめすように、「暗くらくわびしい日本にっぽんの運命うんめい的てきな時代じだいを生いきた私わたし（更科さらしな）自みずからの姿すがたを、荒あらくきびしい風土ふうどの中なかで生いきる北きたの海鳥うみどりの姿すがたに託たくしてうたったもの」である。出版しゅっぱんから一いち年間ねんかんで十じゅう数すう刷さつ版ばんを重かさね、発表はっぴょうから40年ねん以上いじょうたった現在げんざいでも世代せだいを問とわず多おおくの合唱がっしょう団だんに歌うたわれている。

曲目きょくもく

全ぜん4楽章がくしょうからなる。

1. オロロン鳥とり

   断崖だんがいの岩いわの上うえにとまり、黙々もくもくと海うみを見みるオロロン鳥とり。孤独こどくな漂泊ひょうはくの思おもいと彼方かなたへのあこがれ。

2. エトピリカ

   霧きりの中なかをまっしぐらに飛とぶ不思議ふしぎな鳥とりエトピリカ。その狂きょう熱ねつ的てきなひたむきさ。りんりんと風ふうは鳴なり、今いまもまたエトピリカは一心不乱いっしんふらんに飛翔ひしょうする。

3. 海うみ鵜う

   じっとうずくまる海うみ鵜う。あおく冷つめたくうねる寒流かんりゅうは磯いそに砕くだけて、その流ながれは行方ゆくえも知しれない。鵜うは風ふうや潮騒しおさいの音おとをきいているのだろうか。

4. 北きたの海鳥うみどり

   きらめく北きたの海うみを飛とぶ海鳥うみどりたち。風雪ふうせつをものともせず生なまと死しのゆれ動うごくさなかを、力ちから一いち杯はいに飛とぶ海鳥うみどりたちへの賛歌さんか。

   なおこの曲きょくは3拍子ひょうしであるが、初演しょえんの際さいに「ワルツみたいになって全然ぜんぜん北海道ほっかいどうの感かんじがしなくなっちゃった」ことから、楽譜がくふには「ワルツではない」と注意ちゅうい書がきが添そえられていた（現在げんざいの出版しゅっぱん譜ふでは「あのリズム感かんはワルツのように軽快けいかいだと変へんなのです。もっと重おもく、しかしまた、ときには少すこしはずんで、という微妙びみょうなリズム感かんですが、今いまはもうこれが行いきわたってます。」として当該とうがい注意ちゅうい書がきは削除さくじょされている）。

楽譜がくふ

いずれもカワイ出版しゅっぱんから出版しゅっぱんされている。

• （混声こんせい版ばん）ISBN 9784760910311
• （男声だんせい版ばん）ISBN 9784760918447
• （女声じょせい版ばん）ISBN 9784760914487

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの合唱がっしょう作品さくひん100選せん

参考さんこう文献ぶんけん

• 「日本にっぽんの作曲さっきょく家かシリーズ11 廣瀬ひろせ量平りょうへい」（『ハーモニー』No.95、全日本ぜんにほん合唱がっしょう連盟れんめい、1996年ねん）