ワルツ

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ワルツ（英えい: waltz、英語えいご発音はつおん: [wɔːlts] （ウォールツ）、仏ふつ: valse（ヴァルス）、独どく: Walzer（ヴァルツァー））もしくは円舞曲えんぶきょく（えんぶきょく）とはテンポの良よい淡々たんたんとした舞曲ぶきょく、及およびそれに合あわせて踊おどるダンスを言いう（→ワルツ (ダンス) ）。舞曲ぶきょくは3拍子ひょうしが一般いっぱん的てきである。

歴史れきし

西にしオーストリア・南みなみドイツ（ハプスブルク帝国ていこく）起源きげんで、13世紀せいき頃ごろから今日きょうのチロル州しゅうとバイエルン州しゅうの農民のうみんが踊おどっていたヴェラー (Weller) というダンスから成立せいりつした。単純たんじゅんなリズムなので平行へいこうしてフランスでも類似るいじした踊おどりは存在そんざいしていたと思おもわれるが（ワルツ発祥はっしょうの地ちを主張しゅちょうする言論げんろんは他たにポーランドなどにも存在そんざいする）、前身ぜんしん形態けいたいのドイツ舞曲ぶきょくからモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトら名なだたる大だい作曲さっきょく家かが手てがけて発展はってんさせ、シュトラウス父子ふしが爆発ばくはつ的てきに普及ふきゅうさせたことからドイツ民族みんぞくを代表だいひょうする舞曲ぶきょくとして位置いちづけられることが多おおい。音楽おんがく用語ようごの「アラ・テデスカ」（ドイツ風ふうに）も、おおむねワルツ風ふうのリズムを指さし示しめす。

ヴェラーは、ゲルマン文化ぶんか初はつの男女だんじょが体からだを接せっして共ともに回まわるダンスであったが、汚けがらわしいという理由りゆうからハプスブルク帝国ていこく時代じだい、長年ながねんに亘わたって法律ほうりつ的てきに禁止きんしされていた。しかし監視かんしの目めが届とどかないアルプスの渓谷けいこくの奥おくでは、厳きびしい生活せいかつの中なか、ヴェラーは農民のうみんの数少かずすくない娯楽ごらくであった。このヴェラーが16世紀せいきに入はいってからインスブルックなどの都市としに住すむ住民じゅうみんにも伝つたわり、渓谷けいこくに住すむ農民のうみんのみではなく、各かく町村ちょうそんの住民じゅうみんも踊おどるようになる。しかし都市としの住民じゅうみんは当時とうじ農民のうみんが躍おどっていたような激はげしい動うごきは好このまず優雅ゆうがさを好このんだことから、ヴェラーを段々だんだんと上品じょうひん化かしていき、ヴァラー、そしてワルツに発展はってんしていく。あまりの人気にんきのため、ハプスブルク帝国ていこくは法律ほうりつの改正かいせいを余儀よぎなくされ、当初とうしょはチロル州しゅうでのみ、最終さいしゅう的てきにはオーストリア、そしてハプスブルク帝国ていこく全体ぜんたいで解禁かいきんされる。

18世紀せいきにはインスブルックやウィーンのホーフブルク王宮おうきゅうでも踊おどられるようになり、正式せいしきにハプスブルク宮廷きゅうてい文化ぶんかに取とり入いれられるようになる。

この段階だんかいでヴェラーから別べつの発展はってんを成なし遂とげて有名ゆうめいになったのがレントラーである。また今日きょうも「チロルの夕ゆうべ」などで踊おどられているチロリアンダンスでもヴェラーのステップが歴史れきしの面影おもかげとして見みられる。

国際こくさい的てきな場ばに初はじめてワルツが登場とうじょうしたのは1814年ねん、「会議かいぎは踊おどる、されど進すすまず」で有名ゆうめいなウィーン会議かいぎでのことで、これを機きにウィンナ・ワルツとして世界中せかいじゅうに広ひろまった。

舞曲ぶきょくとしては19世紀せいき前半ぜんはんのヨーゼフ・ランナーやヨハン・シュトラウス1世せい、さらにそれに続つづくヨハン・シュトラウス2世せいら兄弟きょうだいのウィンナ・ワルツが人気にんきを博はくした。シュトラウス一家かずやのワルツは、オーケストラによる演奏えんそう会かい用ようの作品さくひんとしても有名ゆうめいである。

またロマン派はの作曲さっきょく家かたちによって、どちらかというと舞曲ぶきょくではない純粋じゅんすいの音楽おんがく作品さくひんとしても多数たすう作曲さっきょくされ、特とくにピアノによるものが有名ゆうめいである。このジャンルで最初さいしょのものは、カール・マリア・フォン・ウェーバーの『舞踏ぶとうへの勧誘かんゆう』とされている（ワルツでなく形式けいしきに基もとづいて「ロンド」の名なが付つけられている）。続つづいてオーケストラ曲きょくであるエクトル・ベルリオーズの『幻想げんそう交響曲こうきょうきょく』第だい2楽章がくしょう「舞踏ぶとう会かい」も有名ゆうめいであるが、これらは舞踏ぶとう会かいの様子ようすを表現ひょうげんした標題ひょうだい音楽おんがく的てき作品さくひんである。ベルリオーズは「回想かいそう録ろく」においてウィンナ・ワルツの流行りゅうこうを「ドイツ以外いがいの民衆みんしゅうが（ここでいうドイツの民衆みんしゅうとは主おもにオーストリア人じんやバイエルン人じんのこと）リズムの結合けつごう、または対照たいしょうから時折ときおり起おきる異常いじょうな魅力みりょくを理解りかいできるとすれば、それはシュトラウス（ここではヨハン1世せいのこと）のおかげであろう」と記しるし、強つよい関心かんしんを寄よせている。ドイツ風ふうワルツをもっとも積極せっきょく的てきに自作じさくに導入どうにゅうした外国がいこく人じん作曲さっきょく家かとしては、ヨハン・シュトラウス2世せいより少すこし若わかい世代せだいのチャイコフスキーがおり、彼かれはロシアのワルツ王おうと呼よばれることがある。一方いっぽう、ショパンは出版しゅっぱん社しゃが自分じぶんの曲きょくよりもワルツの出版しゅっぱんを優先ゆうせんしたことや、ウィーンで冷遇れいぐうされたことなどから、ウィンナワルツについて「ウィーンの聴衆ちょうしゅうの堕落だらくした趣味しゅみの証明しょうめい」と批判ひはんしている。もっとも、この批判ひはんが書かかれた当時とうじはヨハン・シュトラウス1世せいやランナーもまだまだ若書わかがきの時代じだいであり（ヨハン2世せいは生うまれたばかり）、今日きょうも演奏えんそうされるような彼かれらの代表だいひょう作さくが書かかれるのは後年こうねんである。

演奏えんそう会かい用ようの作品さくひんとしては、有名ゆうめいなショパンの一連いちれんの作品さくひんに続つづき、リストやブラームスらのピアノ曲きょくが書かかれた。

その後ご、スペイン経由けいゆで中南米ちゅうなんべいにもバルス (Vals) の名なで導入どうにゅうされた。

ジャズでは、「ワルツ」とは、ダンスのための音楽おんがくを意図いとしているかにかかわらず、3/4拍子ひょうしの音楽おんがくを意味いみする。ダン＆ハーヴェイ・ジャズバンドの「ミズーリ・ワルツ」（1918年ねん）やメンフィス・ジャグ・バンドの「ジャグ・バンド・ワルツ」や「ミシシッピ・ワルツ」）1928年ねん）などの初期しょきの例れいもあるが、それらは例外れいがい的てきな作品さくひんである。1955年ねん以前いぜんはほとんどのジャズが2拍子ひょうしだったからである。クラシック作曲さっきょく家かであるドミトリー・ショスタコーヴィチがジャズの影響えいきょうを受うけて1938年ねんに作曲さっきょくした「ジャズ組曲くみきょく」の中なかには「ワルツ」と言いう題名だいめいの曲きょくがある。1950年代ねんだい初頭しょとうに「バップ・ワルツ」が登場とうじょうし（1952年ねんにセロニアス・モンクが「カロライナ・ムーン(Carolina Moon)」を、1956年ねんにソニー・ロリンズが「ヴァルス・ホット(Valse Hot)」を録音ろくおん）、ジャズでも3拍子ひょうしが一般いっぱん的てきになった。