幻想 交響曲
概要
[ベルリオーズ
レナード・バーンスタインはこの
作曲 の経緯 と初演
[1827
1830
曲 の構成
[
| |
アンドレス・オロスコ=エストラーダ | |
アラン・アルティノグリュ | |
H. Berlioz:Symphonie fantastique - ディーマ・スロボデニューク(Dima Slobodeniouk) | |
BERLIOZ:Symphonie fantastique,op.14 - | |
Hector Berlioz:Symphonie fantastique - エサ=ペッカ・サロネン | |
Berlioz:Symphonie Fantastique - チョン・ミョンフン |
病的 な感受性 と激 しい想像 力 に富 んだ若 い音楽家 が、恋 の悩 みによる絶望 の発作 からアヘンによる服毒 自殺 を図 る。麻酔 薬 の量 は、死 に至 らしめるには足 りず、彼 は重苦 しい眠 りの中 で一連 の奇 怪 な幻想 を見 、その中 で感覚 、感情 、記憶 が、彼 の病 んだ脳 の中 に観念 となって、そして音楽 的 な映像 となって現 われる。愛 する人 その人 が、一 つの旋律 となって、そしてあたかも固定 観念 のように現 われ、そこかしこに見出 され、聞 こえてくる[注 4]。
第 1楽章 「夢 、情熱 」 (Rêveries, Passions)
[彼 はまず、あの魂 の病 、あの情熱 の熱病 、あの憂鬱 、あの喜 びをわけもなく感 じ、そして、彼 が愛 する彼女 を見 る。そして彼女 が突然 彼 に呼 び起 こす火山 のような愛情 、胸 を締 めつけるような熱狂 、発作 的 な嫉妬 、優 しい愛 の回帰 、厳 かな慰 み[注 5]。
ハ
第 2楽章 「舞踏 会 」 (Un bal)
[第 3楽章 「野 の風景 」 (Scène aux champs)
[ある夏 の夕 べ、田園 地帯 で、彼 は2人 の羊 飼 いが「ランツ・デ・ヴァッシュ」(Ranz des vaches)を吹 き交 わしているのを聞 く。牧歌 の二重奏 、その場 の情景 、風 にやさしくそよぐ木々 の軽 やかなざわめき、少 し前 から彼 に希望 を抱 かせてくれているいくつかの理由 [主題 ]がすべて合 わさり、彼 の心 に不慣 れな平安 をもたらし、彼 の考 えに明 るくのどかな色合 いを加 える。しかし、彼女 が再 び現 われ、彼 の心 は締 めつけられ、辛 い予 感 が彼 を突 き動 かす。もしも、彼女 に捨 てられたら……1人 の羊 飼 いがまた素朴 な旋律 を吹 く。もう1人 は、もはや答 えない。日 が沈 む……遠 くの雷鳴 ……孤独 ……静寂 ……[注 7]
ヘ
第 4楽章 「断頭 台 への行進 」 (Marche au supplice)
[彼 は夢 の中 で愛 していた彼女 を殺 し、死刑 を宣告 され、断頭 台 へ引 かれていく。行列 は行進曲 にあわせて前進 し、その行進曲 は時 に暗 く荒々 しく、時 に華 やかに厳 かになる。その中 で鈍 く重 い足音 に切 れ目 なく続 くより騒々 しい轟音 。ついに、固定 観念 が再 び一瞬 現 われるが、それはあたかも最後 の愛 の思 いのように死 の一撃 によって遮 られる[注 8]。
この
第 5楽章 「魔女 の夜宴 の夢 」 (Songe d'une nuit du Sabbat)
[ハ
演奏 時間
[楽器 編成
[Fl. | 2(2 |
Hr. | 4 | Timp. | 4 |
Vn.1 | 15 |
Ob. | 2(2 |
Trp. | 2,(ピストン |
シンバル、 |
Vn.2 | 15 | |
Cl. | 2(1 |
Trb. | アルト 1, テナー 2 | Va. | 10 | ||
Fg. | 4 | オフィクレイド 2 | Vc. | 11 | |||
Cb. | 9 | ||||||
その | ハープ( |
(コルネットのオブリガートの | |
オブリガートなしの | |
オブリガートありの いずれもレナード・スラットキン |
1844
2
ティンパニを
さらに、
脚注
[注釈
[- ^ 『ハムレット』
観劇 を通 じて、この公演 を開 いていた英国 シェイクスピア劇団 の看板 女優 だったハリエット・スミスソンに一目惚 れとなったベルリオーズが、のちに彼 自身 が当 楽曲 を書 き上 げて初演 するに際 して、彼女 の知名度 を利用 して初演 のプロモーションを実行 したのではないか、と指摘 する音楽 関係 者 も存在 する。その指摘 によると、このプロモーションの結果 、当 楽曲 の初演 は当時 のマスコミの大 注目 の的 になったという[3]。 - ^ ベルリオーズ
自身 が当 楽曲 の作曲 に着手 するようになった要因 の一 つとして、ベートーヴェンの交響 曲 に生 で接 したこと、を挙 げる者 も存在 する。のちに当 楽曲 の初演 で指揮 することになるフランソワ・アブネックが指揮 してのベートーヴェン交響曲 演奏 会 がパリで開催 された際 、先 記 の『ハムレット』観劇 で感動 したばかりのベルリオーズがこのベートーヴェン交響曲 演奏 に接 していて、このとき彼 は声楽 曲 から器楽 曲 の分野 へと関心 を広 げ、交響曲 作曲 を決意 するに至 ったという。のちに彼 は「シェイクスピアが詩 の新 しい宇宙 を見 せたように、ベートーヴェンは新 たな音楽 の世界 を開 いてくれた」と述懐 している[4][5][6]。 - ^ この
初演 開催 の日付 について、当 楽曲 の作曲 をベルリオーズに決意 させるもととなったベートーヴェンが亡 くなってから約 3年 後 、そしてベートーヴェンが遺 した最後 の完成 交響 曲 「第 九 」が初演 されてから約 6年 後 となっている。ベートーヴェンが「第 九 」で自由 と博愛 を高 らかに歌 い上 げてからわずか約 6年 後 、同 じ交響 曲 という絶対 音楽 中心 のフォーマットを用 いてベルリオーズは自 らの失恋 体験 とアヘン中毒 者 の幻覚 、つまり赤裸々 で危 ない個人 体験 を描 き上 げるという時代 を先取 りするかのような行動 を起 こしていたことになる[3][4][5]。 - ^
原文 :Un jeune musicien d'une sensibilité maladive et d'une imagination ardente, s'empoisonne avec de l'opium dans un accès de désespoir amoureux. La dose de narcotique, trop faible pour lui donner la mort, le plonge dans un lourd sommeil accompagné des plus étranges visions, pendant lequel ses sensations, ses sentiments, ses souvenirs se traduisent dans son cerveau malade, en pensées et en images musicales. La femme aimée, elle-même, est devenue pour lui une mélodie et comme une idée fixe qu'il retrouve et qu'il entend partout. 1845年版 のプログラムでは、アヘン服毒 については第 4楽章 ではじめて登場 する。 - ^
原文 :Il se rappelle d'abord ce malaise de l'âme, ce vague des passions, ces mélancolies, ces joies sans sujet qu'il éprouva avant d'avoir vu celle qu'il aime, puis l'amour volcanique qu'elle lui inspira subitement, ses délirantes angoisses, ses jalouses fureurs, ses retours de tendresse, ses consolations religieuses. - ^
原文 :Il retrouve l'aimée dans un bal au milieu d'une fête brillante. - ^
原文 :Un soir d'été, à la campagne, il entend deux pâtres qui dialoguent un Ranz des vaches. Ce duo pastoral, le lieu de la scène, le léger bruissement des arbres doucement agités par le vent, quelques motifs d'espoir qu'il a conçus depuis peu, tout concourt à rendre à son cœur un calme inaccoutumé, à donner à ses idées une couleur plus riante, mais Elle apparaît de nouveau, son cœur se serre, de douloureux pressentiments l'agitent: si elle le trompait... L'un des pâtres reprend sa naïve mélodie, l'autre ne répond plus. Le soleil se couche... Bruit éloigné du tonnerre... Solitude... Silence... - ^
原文 :Il rêve qu'il a tué celle qu'il aimait, qu'il est condamné à mort, conduit au supplice. Le cortège s'avance, aux sons d'une marche tantôt sombre et farouche, tantôt brillante et solennelle, dans laquelle un bruit sourd de pas graves succède sans transition aux éclats les plus bruyants. A la fin, l'idée fixe reparaît un instant comme une dernière pensée d'amour interrompue par le coup fatal. - ^
原文 :Il se voit au sabbat, au milieu d'une troupe affreuse d'ombres, de sorciers, de monstres de toute espèce réunis pous ses funérailles. Bruits étranges, gémissements, éclats de rire, cris lointains auxquels d'autres cris semblent répondre. La mélodie-aimée reparaît encore, mais elle a perdu son caractère de noblesse et de timidité, ce n'est plus qu'un air de danse ignoble, trivial et grotesque, c'est Elle qui vient au sabbat... Rugissements de joie à son arrivée... Elle se mêle à l'orgie diabolique... Glas funèbre, parodie burlesque du Dies Irae. Ronde du sabbat. La Ronde du sabbat et le Dies Irae ensemble. - ^ コルネットのオブリガートを
含 む演奏 として、例 えばクラウディオ・アバド指揮 シカゴ交響 楽団 の録音 (1983年 )やジョン・エリオット・ガーディナー指揮 オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティックの録音 (1991年 )がある。 - ^ オフィクレイドは1820
年 から1890年 頃 まで、フランスやイタリアの教会 音楽 でよく使 われていただけに、この楽器 によって怒 りの日 の旋律 が演奏 される事 で、より大 きな効果 を生 んだのではと見 る向 きもある。 - ^ チューブラーベルが
発明 されるのは1867年 のことであり、『幻想 交響曲 』が作曲 された1830年 にはまだ存在 しない。 - ^ スコアの5
楽章 冒頭 部分 に記 された作曲 者 による脚注 [11]: "If 2 bells are not available which are large enough to produce one of the 3 Cs and one of the 3 Gs as written, it is better to use the pianofortes. In such event the bell-part must be played with double-octaves as written."/和訳 (角 括弧 [ ]内 は引用 者 による補足 ): "楽譜 に書 かれた3つのC音 いずれかと3つのG音 いずれかを出 せる充分 に大 き[く音程 の低 ]い2つの鐘 を調達 できなければ、[音程 の高 い小 さな鐘 よりも]複数 のピアノフォルテを用 いる方 がよい。ピアノフォルテを使 う場合 には、楽譜 通 りにダブルオクターブで[書 かれた3つの音 すべてを同時 に]演奏 すること。" - ^
鐘 ではなくあえてピアノを用 いた演奏 として、例 えばヨス・ファン・インマゼール指揮 アニマ・エテルナの録音 (2008年 )がある。
出典
[- ^
出典 :"Leitmotiv"ならびに"idée fixe"の項 , The Concise Oxford Dictionary of Music, 4th Edition, (Eds. Michael Kennedy and Joyce Bourne), Oxford University Press, 1996. - ^
出典 :Leonard Bernstein (1969年 ). “Young People's Concert: Berlioz Takes a Trip” (英語 ). 2024年 5月 9日 閲覧 。 - ^ a b c
野本 由紀夫 (2018年 1月 24日 ). “楽曲 解説 ”.第 114回 東京 オペラシティ定期 シリーズ.東京 フィルハーモニー交響 楽団 . 2023年 5月 2日 閲覧 。 “→第 114回 東京 オペラシティ定期 シリーズ(公演 案内 ページ。曲目 解説 へのリンク付 き)” - ^ a b c
遠山 菜穂美 (2019年 6月 22日 ). “ベルリオーズ:幻想 交響 曲 Op.14”.曲目 解説 (みなとみらいシリーズ第 349回 ).神奈川 フィルハーモニー管弦楽 団 . 2023年 5月 2日 閲覧 。 “→みなとみらいシリーズ第 349回 (公演 案内 ページ。曲目 解説 へのリンク付 き)” - ^ a b
飯尾 洋一 (音楽 ライター) (2019年 1月 18日 ). “PROGRAM NOTE曲目 解説 ~演奏 をより深 く楽 しむために”.第 111回 定期 演奏 会 PROGRAM.兵庫 芸術 文化 センター管弦楽 団 . 2023年 5月 2日 閲覧 。 “→第 111回 定期 演奏 会 佐渡 裕 オーケストラのエスプリ!〔公演 案内 ページ。プログラム冊子 電子 版 (曲目 解説 )へのリンク付 き〕” - ^ “エクトル・ベルリオーズ【クラシック
音楽 界 の一発 屋 】”. otomamire. アラミークス合同 会社 (2019年 10月 19日 ). 2023年 5月 2日 閲覧 。 - ^ a b “「
幻想 交響曲 を聴 く」5・・・作曲 と出版 の経過 ”. コラム:「~を聴 く」シリーズ.沼津 交響 楽団 (2004年 4月 19日 ). 2023年 5月 2日 閲覧 。 - ^ 《トロイアの
人 びと》作曲 の経緯 と上演 史 、そして日本 のベルリオーズ受容 における日本 初演 の意義 について(森 佳子 、音楽 学者 ) - ^
引用 元 は Berlioz, Hector, Notes of "Symphonie fantastique, op. 14," Complete works v. 1, New York: E.F. Kalmus [n.d.] pp. 1-2 (reprint; originally published Leipzig: Breitkopf & Härtel, [19--]) http://purl.dlib.indiana.edu/iudl/variations/score/BHS9470 - ^ a b 「Berlioz: Symphonie Fantastique Op. 14 (Edition Eulenburg No. 422)」Kindle
版 、オイレンブルク、ASIN B0716GS3DP、Nicholas Temperleyによる楽曲 解説 のIVページ(Google Booksプレビュー)。 - ^ a b c d Hector Berlioz (Comp.) (1900). “V. Songe d'une nuit du Sabbat”. In Charles Malherbe and Felix Weingartner (Eds.). Symphonie Fantastique. Breitkopf & Härtel. pp. 97, 108 (Online version at IMSLP, retrieved on 2018-10-18)
- ^ a b Norman Del Mar (1983). Anatomy of the Orchestra. University of California Press. p. 403. ISBN 978-0520050624
- ^ D. Kern Holoman (1989-11-06). Berlioz. Harvard University Press. p. 307. ISBN 0674067789 2018
年 10月 10日 閲覧 。 - ^ Peter Bloom, ed (2000-8-24). The Cambridge Companion to Berlioz. Cambridge University Press. p. 177. ISBN 978-0521596381 2020
年 7月 19日 閲覧 。 - ^ a b Hector Berlioz and Hugh Macdonald (2002), Berlioz's Orchestration Treatise: A Translation and Commentary, Cambridge University Press, ISBN 0521239532, p.275.
参考 文献
[旧 全集 版 のリプリント(gifファイル。インディアナ大学 図書館 )- Hector Berlioz Website スコアや、ベルリオーズによるプログラムノート(1845
年 、1855年 それぞれ)のテキストなどが閲覧 可能 (フランス語 ・英語 訳 )
外部 リンク
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