溶出ようしゅつ

クロマトグラフィーカラム

分析ぶんせき化学かがくや有機ゆうき化学かがくにおいて、溶出ようしゅつ（ようしゅつ、英語えいご: Elution）は、溶媒ようばいで洗浄せんじょうすることによりある材料ざいりょうを別べつの材料ざいりょうから抽出ちゅうしゅつする過程かていである。溶離（ようり）ともいう。

例たとえば、液体えきたいクロマトグラフィー実験じっけんにおいて、分析ぶんせき物ぶつは一般いっぱん的てきに液体えきたいクロマトグラフィーカラム内ないの吸着きゅうちゃく剤ざいに吸着きゅうちゃくされるまたは「結合けつごう」される。吸着きゅうちゃく剤ざいである固かた相しょう（固定こてい相しょう）は固体こたい支持しじ体たい上じょうに被覆ひふくされた粉末ふんまつである。吸着きゅうちゃく剤ざいの組成そせいに基もとづいて、他たの分ぶん枝えだを「保持ほじ」するための様々さまざまな親和しんわ性せいを持もち、粒子りゅうしの表面ひょうめんに薄膜うすまくを形成けいせいすることができる。溶出ようしゅつはそのとき、「溶離液えき」と呼よばれる溶媒ようばいを吸着きゅうちゃく剤ざい/分析ぶんせき物ぶつ複ふく合体がったいを通過つうかさせることにより、吸着きゅうちゃく剤ざいから分析ぶんせき物ぶつを除去じょきょするプロセスである。溶媒ようばい分子ぶんしが「溶出ようしゅつ」する、またはクロマトグラフィーカラムを通過つうかすると、吸着きゅうちゃく剤ざい/分析ぶんせき物ぶつの複ふく合体がったいを通過つうかするまたは代かわりに吸着きゅうちゃく剤ざいに結合けつごうして分析ぶんせき物ぶつと置換ちかんすることができる。溶媒ようばい分子ぶんしが分析ぶんせき物ぶつを置換ちかんした後のち、分析ぶんせき物ぶつをカラムから取とり出だして分析ぶんせきすることができる。これにより、移動いどう相しょうがカラムを通過つうかするときに、通常つうじょう、検出けんしゅつ器きに流入りゅうにゅうするか組成そせい分析ぶんせきのために収集しゅうしゅうされる理由りゆうである。

溶出ようしゅつの順番じゅんばんの予測よそくと制御せいぎょは、カラムクロマトグラフィー法ほうの重要じゅうような側面そくめんである。

溶出ようしゅつ系列けいれつ

溶出ようしゅつ系列けいれつは、所与しょよの吸着きゅうちゃく剤ざいの溶出ようしゅつ力りょくの順番じゅんばんに様々さまざまな化合かごう物ぶつを一覧いちらんにしたものである。溶媒ようばいの「溶出ようしゅつ力りょく」は、主おもに付着ふちゃくしている吸着きゅうちゃく剤ざいから分析ぶんせき物ぶつを「引ひき抜ぬく」ことができるかという尺度しゃくどである。これは溶出ようしゅつ剤ざいが固定こてい相しょうに吸着きゅうちゃくして分析ぶんせき物ぶつを置換ちかんするときによく生しょうじる。この系列けいれつは化合かごう物ぶつのクロマトグラフィーに必要ひつような溶媒ようばいを決定けっていするのに役立やくだつ。通常つうじょう、このような系列けいれつはn-ヘキサンなどの非ひ極性きょくせいの溶媒ようばいからメタノールや水みずなどの極性きょくせい溶媒ようばいに進すすむ。溶出ようしゅつ系列けいれつにおける溶媒ようばいの順番じゅんばんは、固定こてい相しょうと順番じゅんばんを決定けっていするために使用しようされる化合かごう物ぶつの両方りょうほうに依存いぞんする。

吸着きゅうちゃく力りょく（弱じゃく→強つよし）
飽和ほうわ炭化たんか水素すいそ; ハロゲン化かアルキル	不ふ飽和ほうわ炭化たんか水素すいそ; ハロゲン化かアルケニル	芳香ほうこう族ぞく炭化たんか水素すいそ; ハロゲン化かアリール	ポリハロゲン化か炭化たんか水素すいそ	エーテル	エステル	アルデヒド、ケトン	アルコール	酸さん、塩基えんき（アミン）

溶出ようしゅつ力りょく（弱じゃく→強つよし）
ヘキサン、ペンタン	シクロヘキサン	ベンゼン	ジクロロメタン	クロロホルム	エーテル（無水むすい）	酢酸さくさんエチル（無水むすい）	アセトン（無水むすい）	メタノール	エタノール	ピリジン	酢酸さくさん	水みず

溶出ようしゅつ剤ざい

溶出ようしゅつ剤ざい（溶離液えきや溶離剤ざいなどとも、英語えいご: Eluent）は、移動いどう相しょうの「キャリア」の部分ぶぶんである。これは分析ぶんせき物ぶつをクロマトグラフに通とおす。液体えきたいクロマトグラフィーにおいては、溶出ようしゅつ剤ざいは液体えきたい溶媒ようばいであり、ガスクロマトグラフィーにおいては、キャリアガスである。

溶出ようしゅつ物ぶつ

溶出ようしゅつ物ぶつ（英語えいご: Eluate）は、クロマトグラフから出でてくる分析ぶんせき物ぶつである。具体ぐたい的てきにはカラムを通過つうかする分析ぶんせき物ぶつと溶質ようしつの両方りょうほうが含ふくまれるが、溶出ようしゅつ剤ざいはキャリアのみである。

溶出ようしゅつ時間じかんと溶出ようしゅつ体積たいせき

溶質ようしつの「溶出ようしゅつ時間じかん」は、分離ぶんりの開始かいし（溶質ようしつがカラムに入はいる時間じかん）と溶質ようしつが溶出ようしゅつするときの間あいだの時間じかんである。同様どうように、溶出ようしゅつ体積たいせきは溶出ようしゅつに必要ひつような溶出ようしゅつ剤ざいの量りょうである。特定とくていの手法しゅほうでの既知きちの溶質ようしつ混合こんごう物ぶつの標準ひょうじゅん条件じょうけんのもとでは、溶出ようしゅつ体積たいせきはようしつを特定とくていするのに十分じゅうぶんな情報じょうほうである可能かのう性せいがある。例たとえば、アミノ酸あみのさんの混合こんごう物ぶつは、イオン交換こうかんクロマトグラフィーにより分離ぶんりされうる。特定とくていの条件下じょうけんかでは、アミノ酸あみのさんは同おなじ順番じゅんばんで同おなじ溶出ようしゅつ体積たいせきで溶出ようしゅつする。

抗体こうたい溶出ようしゅつ

抗体こうたいの溶出ようしゅつは、赤血球せっけっきゅうの表面ひょうめんなど、標的ひょうてきに付着ふちゃくしている抗体こうたいを除去じょきょするプロセスである。この手法しゅほうには熱ねつ、超ちょう音波おんぱ、酸さんまたは有機ゆうき溶媒ようばいを使用しようすることが含ふくまれる。全すべての状況じょうきょうで最適さいてきな方法ほうほうは1つではない。

参考さんこう文献ぶんけん

• Brown, Phillis (2001). Advances in chromatography. CRC Press. pp. 36. ISBN 0-8247-0509-2 

関連かんれん項目こうもく

• クロマトグラフィー
• 脱着だっちゃく
• 高速こうそく液体えきたいクロマトグラフィーにおける勾配こうばい溶離
• 浸出しんしゅつ

外部がいぶリンク

• Chemistry glossary
• Eluotropic series