(Translated by https://www.hiragana.jp/)
化学親和力 - Wikipedia コンテンツにスキップ

化学かがく親和力しんわりょく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

化学かがく親和力しんわりょく(かがくしんわりょく)または化学かがくてき親和しんわせい(かがくてきしんわせい)とは、化学かがく物理ぶつりがくおよび物理ぶつり化学かがく概念がいねんで、ことなる化学かがくしゅあいだでの化合かごうぶつ形成けいせいしやすさをあらわ電子でんしてき特性とくせいである[1]化学かがく親和力しんわりょくはまた、原子げんし化合かごうぶつことなる構成こうせい原子げんし化合かごうぶつ化学かがく反応はんのうしやすい傾向けいこうしめ指標しひょうでもある。

化学かがく史家しかヘンリー・レスターによれば、ギルバート・ルイスマール・ランドールによる1923ねん著書ちょしょねつ力学りきがく化学かがく反応はんのう自由じゆうエネルギー』の影響えいきょうで、英語えいごけんでは「親和力しんわりょく (affinity)」という言葉ことばわりに「自由じゆうエネルギー (free energy)」という言葉ことば使つかうようになった。

近代きんだいにおける概念がいねん[編集へんしゅう]

近代きんだいてき用法ようほうでは、親和力しんわりょくとは特定とくてい原子げんし分子ぶんし集合しゅうごうまたは接合せつごうする傾向けいこうである。たとえば、医師いしジョージ・キャリーの1919ねん著書ちょしょ人間にんげん生命せいめい化学かがく』では、「健康けんこう血液けつえきちゅうリンさんてつ Fe3(PO4)2適量てきりょう存在そんざいすることに依存いぞんする。このしお分子ぶんし酸素さんそとの化学かがく親和力しんわりょくがあり、酸素さんそ生体せいたいのあらゆる部分ぶぶんはこ機能きのうがある」としるしている。このようなやや古典こてんてき文脈ぶんみゃくでは、化学かがく親和力しんわりょくは「磁力じりょく」とほぼ同義どうぎ使つかわれている。1925ねんごろまでの文献ぶんけんには「化学かがく親和力しんわりょく法則ほうそく」という用法ようほうおおられる。

ねつ力学りきがく[編集へんしゅう]

IUPACによる現在げんざい定義ていぎでは、定圧ていあつおよび定温ていおんでの反応はんのう進行しんこう対応たいおうしたギブズ・エネルギーのまけへん微分びぶん親和力しんわりょく定義ていぎしている[2]。すなわち、つぎのようになる。

ここで反応はんのう開始かいしにおける成分せいぶん1の物質ぶっしつりょう成分せいぶん 1 の化学かがくりょうろん係数けいすうである。

定圧ていあつ定温ていおん条件じょうけんでは、ギブズエネルギーが最小さいしょうになったときがねつ力学りきがくてき平衡へいこう状態じょうたいである。よって自発じはつてき反応はんのうすすむにつれて親和力しんわりょくせいから減少げんしょうしていき、平衡へいこう状態じょうたいになったとき

となる。

1923ねん、ベルギーの数学すうがくしゃ物理ぶつり学者がくしゃテオフィル・ド・ドンデは、化学かがく反応はんのうにおける親和力しんわりょく Aギブズの自由じゆうエネルギー G関係かんけいあきらかにした。一連いちれん導出どうしゅつとおして、ド・ドンデは化学かがくしゅ混合こんごうぶつにおける化学かがく反応はんのう可能かのうせいかんがえたとき、つぎ関係かんけいつことを証明しょうめいした[3]

ド・ドンデにつづいて、イリヤ・プリゴジンとR・デフェイの著書ちょしょ化学かがくねつ力学りきがく』では、化学かがく親和力しんわりょく A化学かがく反応はんのう補正ほせいねつ増分ぞうぶん dQ'反応はんのう進行しんこう勾配こうばい dξくしー関数かんすうとして定義ていぎした。

この定義ていぎは、平衡へいこうけい状態じょうたい平衡へいこうけい状態じょうたい変化へんか両方りょうほう決定けっていける要因よういん定量ていりょうするのに役立やくだつ。

歴史れきし[編集へんしゅう]

化学かがく親和力しんわりょく」は歴史れきしてきには化学かがく反応はんのう発生はっせいさせる電磁気でんじきてきちから」を意味いみしていた[4]なが使つかわれてきたよりひろ定義ていぎとしては、物質ぶっしつ分解ぶんかいされやすさまたは分解ぶんかいされにくさを化学かがく親和力しんわりょくとしていた[5]

イリヤ・プリゴジン化学かがく親和力しんわりょくについて「すべての化学かがく反応はんのうにおいて、けい化学かがく反応はんのう親和力しんわりょく消滅しょうめつする平衡へいこう状態じょうたいへといやられる」とした。

親和力しんわりょく」という言葉ことばは、1600ねんごろから化学かがく文献ぶんけんがくにおける構造こうぞうてき関係かんけいろんじるさい比喩ひゆてきもちいられている。

親和力しんわりょくかんがかたはかなりふるくからある。おおくの人々ひとびとがその根源こんげん特定とくていすることをこころみてきた[5]科学かがく先行せんこうして存在そんざいしたすべての魔術まじゅつ基礎きそには「親和力しんわりょく」があり、それをさらに解明かいめいしようとするこころみはほとんど失敗しっぱいしてきた[6]。しかし、「親和力しんわりょく理論りろん」を定式ていしきして研究けんきゅうする科学かがくいち分野ぶんやとして物理ぶつり化学かがくまれた。「親和しんわせい」という用語ようご化学かがくてき関係かんけいという意味いみ最初さいしょ使つかったのはドイツじん哲学てつがくしゃアルベルトゥス・マグヌスで、1250ねんごろのことである。その燃焼ねんしょうという化学かがく反応はんのうでのねつしょうかた説明せつめいしようとして、ロバート・ボイルジョン・メーヨーヨハン・ルドルフ・グラウバーアイザック・ニュートンゲオルク・シュタールといった人々ひとびと選択せんたくてき親和しんわせいかんがかた提唱ていしょうした[7]

現代げんだい化学かがく親和力しんわりょくという用語ようごは、18世紀せいきスウェーデンの化学かがくしゃトルビョルン・ベリマン著書ちょしょ選択せんたくアトラクション』で使つかった造語ぞうご選択せんたくてき親和しんわせい 」または「選択せんたくてき誘引ゆういんりょく」が変化へんかしたものである。アントワーヌ・ラヴォアジエの1789ねん著書ちょしょ 化学かがく原論げんろんでは、ベリマンの選択せんたくてき親和しんわせい概念がいねんについてもろんじている。

ゲーテは、その概念がいねん使つかって『親和力しんわりょく』という小説しょうせついている。

ジョフロアの親和しんわせいひょう[編集へんしゅう]

1718ねん、フランスの化学かがくしゃエティエンヌ・F・ジョフロア置換ちかん反応はんのうもとづく世界せかいはつの「親和しんわせいひょう」を発表はっぴょうした。この親和しんわせいひょうはジョフロア最大さいだい業績ぎょうせきとされており、1718ねんと1720ねんアカデミー・フランセーズ発表はっぴょうしたのが最初さいしょである。それはつぎのようなひょうだった。

ジョフロアの「親和しんわせいひょう」(1718)。れつ先頭せんとうにある物質ぶっしつが、そのしたにある物質ぶっしつ結合けつごうでき、うえにあるものほど「親和力しんわりょく」がつよい。

これは、物質ぶっしつ同士どうし化学かがく反応はんのう比較ひかく観察かんさつした結果けっかしめした一覧いちらんひょうであり、たような物質ぶっしつことなる試薬しやくしめ親和しんわせい度合どあいをあらわしている。クロード・ルイ・ベルトレーによるさらに深化しんかした概念がいねんってわられるまで、親和しんわせいひょう研究けんきゅうひろ流行りゅうこうした。

脚注きゃくちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ パブリックドメイン Chisholm, Hugh, ed. (1911). "Chemical Affinity". Encyclopædia Britannica (英語えいご) (11th ed.). Cambridge University Press.
  2. ^ IUPAC Green Book and Gold Book in .pdf
  3. ^ 日本にっぽん学会がっかいへん化学かがく原典げんてん3 化学かがくねつ力学りきがく」8-2 親和力しんわりょく(Th. de Donderちょつつみ和男かずおやく学会がっかい出版しゅっぱんセンター ISBN 4-7622-7383-X
  4. ^ Thomas Thomson. (1831). A System of Chemistry, vol. 1. p.31, 7th ed., 2 vols. - 化学かがく親和力しんわりょくを「未知みちちから」としている。
  5. ^ a b Levere, Trevor, H. (1971). Affinity and Matter – Elements of Chemical Philosophy 1800-1865. Gordon and Breach Science Publishers. ISBN 2881245838 
  6. ^ Malthauf, R. P. (1966). The Origins of Chemistry. Pg. 299. London.
  7. ^ Partington, J.R. (1937). A Short History of Chemistry. New York: Dover Publications, Inc. ISBN 0-486-65977-1

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]