神品しんぴん機密きみつ

至いたり聖ひじり所しょでの輔祭叙じょ聖ひじりの場面ばめん。叙じょ聖ひじりされる新しん輔祭は宝たから座ざ前まえに跪ひざまずき、その頭あたまの上うえに主教しゅきょうが手てを置おいて（按手して）いる。宝たから座ざの上うえに祈祷きとう書しょを広ひろげて主教しゅきょうに見みせているのは司祭しさい。宝たから座ざ向むこう側がわに同様どうようの祭服さいふくを着用ちゃくようした司祭しさいが二に人にんいる。（フィンランド正教会せいきょうかい）

至いたり聖ひじり所しょでの司祭しさい叙じょ聖ひじりの場面ばめん。叙じょ聖ひじりされる新しん司祭しさいは宝たから座ざ前まえに跪ひざまずき、その頭あたまの上うえに主教しゅきょうが手てを置おいて（按手して）いる。（在外ざいがいロシア正教会せいきょうかい）

神品しんぴん機密きみつ（しんぴんきみつ、ギリシア語ご: Ιερωσύνη, ロシア語ご: Священство, 英語えいご: Holy Orders）とは、正教会せいきょうかいにおいて神品しんぴん（主教しゅきょう・司祭しさい・輔祭）を任にんずる機密きみつのこと。主教しゅきょうが神品しんぴん機密きみつを執行しっこうして新あらたに神品しんぴんに任にんずることを叙じょ聖きよし（じょせい）という。聖体せいたい礼儀れいぎにおいて行おこなわれる。

正教会せいきょうかいの聖職せいしょく者しゃ・教きょう役者やくしゃのシステム・位階いかいについては神品しんぴん (正教会せいきょうかいの聖職せいしょく)・教きょう衆しゅを参照さんしょう。

カトリック教会きょうかいにおける叙じょ階かい（じょかい）の秘跡ひせきに相当そうとうする。

神品しんぴん・神品しんぴん機密きみつ

正教会せいきょうかいの聖職せいしょく者しゃは神品しんぴん（しんぴん）と呼よばれる。神品しんぴんには主教しゅきょう、司祭しさい、輔祭の三さん職しょくがある。

神品しんぴんはいずれもイイスス・ハリストス（イエス・キリスト）の代役だいやくや代理人だいりにんではなく、ハリストスの臨在を証しょうする役割やくわりを果はたすと位置付いちづけられる。

神品しんぴんは主教しゅきょうが神品しんぴん機密きみつを執行しっこうして任にんじる。執行しっこうの際さいには主教しゅきょうが新あたらしく叙じょ聖ひじりされる者ものの頭あたまの上うえに手てを置おく（按手）。主教しゅきょうは教会きょうかいの監督かんとく役やくであり、そのさらに上位じょういの教きょう役者やくしゃはおらず、新あたらしい主教しゅきょうは複数ふくすうの主教しゅきょうによって叙じょ聖ひじりされる。

神品しんぴん機密きみつは聖体せいたい礼儀れいぎの中なかで行おこなわれる。それぞれの教きょう役やくごとに、聖体せいたい礼儀れいぎのどの部分ぶぶんで神品しんぴん機密きみつを執とり行おこなうかが定さだめられており、一いち日にちで二ふたつ以上いじょうの役やくに叙じょされることは起おこりえない。神品しんぴん機密きみつのなかでは、主教しゅきょうが教きょう役者やくしゃを任にんじたのち、教きょう衆しゅ・信徒しんとが三さん度ど「アクシオス」（ギリシア語ごで「適任てきにん」の意い）と唱となえて承認しょうにんを示しめす。

「神品しんぴん (正教会せいきょうかいの聖職せいしょく)」も参照さんしょう

「叙じょ聖きよし」と「昇叙しょうじょ」

神品しんぴん機密きみつが執行しっこうされて、主教しゅきょう、司祭しさい、輔祭とされることを「叙じょ聖きよし」（じょせい）という。この際さい、

• 「主教しゅきょう甲かぶとが乙おつを叙じょ聖ひじりする」
• 「（主教しゅきょう甲かぶとによって）乙おつが主教しゅきょう（ないし司祭しさい、輔祭）に叙じょ聖ひじりされる」

などと記述きじゅつする（「神品しんぴん機密きみつする」「神品しんぴん機密きみつされる」とは言いわない）。

これに対たいし、「昇叙しょうじょ」（しょうじょ）とは、

• 主教しゅきょう（→大だい主教しゅきょう）→府ふ主教しゅきょう
• 修道しゅうどう司祭しさい→典てん院いん→掌てのひら院いん
• 司祭しさい→長ちょう司祭しさい→首くび司祭しさい
• 輔祭→長ちょう輔祭→首くび輔祭

というように、主教しゅきょう品ひん・司祭しさい品ひん・輔祭品ひんの、それぞれ三さん職しょく内ないで称号しょうごうが与あたえられる場合ばあいに使つかわれる用語ようごである。この際さい主教しゅきょうによって行おこなわれるのは神品しんぴん機密きみつではなく昇叙しょうじょの祝福しゅくふくである（ただし昇叙しょうじょも聖体せいたい礼儀れいぎの中なかで行おこなわれる）。

叙じょ聖せい前まえの婚こん配はいによる妻帯さいたい司祭しさい・妻帯さいたい輔祭

輔祭および司祭しさいは妻帯さいたいを許ゆるされる。ただし神品しんぴん機密きみつを受うけた後のちに妻帯さいたいすることは出来できない。死別しべつの場合ばあいの再婚さいこんも許ゆるされない。

「婚こん配はい機密きみつ」も参照さんしょう

正せい教徒きょうとの習慣しゅうかんとして、司祭しさいの敬称けいしょうである「神父しんぷ」に対たいし、神品しんぴんの妻つまは各国かっこく語ごで母ははを意味いみする言葉ことばで呼よばれる。日本にっぽんの場合ばあいロシア語ご由来ゆらいの「マトシカ」（マトーシュカはロシア語ごで「お母かあさん」）が用もちいられる。マトシカは正式せいしきな教会きょうかいの役職やくしょくではないが、多おおくの信徒しんとコミュニティにおいて一定いっていの尊敬そんけいを払はらわれている。

主教しゅきょう・修道しゅうどう司祭しさい

中世ちゅうせい以来いらい、正教会せいきょうかいでは、修道しゅうどう士しのみが主教しゅきょうとなることができる（「フォティオス」の項こうを参照さんしょう）。逆ぎゃくに修道しゅうどう士しとならないものは、妻帯さいたいするのが一般いっぱんである。妻帯さいたい司祭しさいが妻つまと死別しべつした後のち、修道しゅうどう士しとなる場合ばあいもある。

高位こういの修道しゅうどう司祭しさいの位くらいとして掌てのひら院いん（しょういん）と典てん院いん（てんいん）がある。

掌てのひら院いんは元来がんらい修道院しゅうどういんを監督かんとくする職しょくを意味いみする。ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟きょうだい』に登場とうじょうするゾシマ長老ちょうろうはしばしば掌てのひら院いんの理想りそう像ぞうであるといわれる。現在げんざいの正教会せいきょうかいでは、主教しゅきょうに叙じょされる前まえに掌てのひら院いんに任にんぜられるのが慣例かんれいである。

参考さんこう文献ぶんけん

• 編著へんちょ：司祭しさい ダヴィド水口みずぐち優ゆう明あきら『正教会せいきょうかいの手引てびき』発行はっこう：日本にっぽんハリストス正教会せいきょうかい 全国ぜんこく宣教せんきょう委員いいん会かい、改訂かいてい：2013年ねん5月がつ

関連かんれん項目こうもく

• 教きょう衆しゅ
• 誦経じゅきょう者しゃ
• 堂どう役やく