福音ふくいん的てき勧告かんこく

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福音ふくいん的てき勧告かんこく（ふくいんてきかんこく、ラテン語らてんご: consilia evangelica）とは、カトリック教会きょうかいにおいて貞潔ていけつ・清貧せいひん・従順じゅうじゅんの3つの徳とくをいう[1]。完かん徳とくの勧告かんこくとも呼よばれる[2]。

概要がいよう[編集へんしゅう]

福音ふくいん的てき勧告かんこくは天国てんごくで永遠えいえんの命いのちを得えるために守まもらなければならない十戒じっかいのような教おしえとは異ことなってすべての信者しんじゃに対たいする義務ぎむではなく、より少数しょうすうの、完かん徳とくを求もとめて義務ぎむ以上いじょうのことをしようと願ねがう者ものに対たいする勧すすめである[3]。カトリックの倫理りんり神学しんがくにおいて、福音ふくいん的てき勧告かんこくは義務ぎむ以上いじょう (supererogation) の行為こういと呼よばれ、悪あくに対たいする善ぜんでなく、善ぜんに対たいするよりよい善ぜんとされる[4]。

福音ふくいん的てき勧告かんこくは貞潔ていけつ・清貧せいひん・従順じゅうじゅんの3つである。

  • 貞潔ていけつは結婚けっこんの否定ひていをいう[2]。
  • 清貧せいひんは私的してきな（時ときには共有きょうゆうの）財産ざいさんの否定ひていである[2]。
  • 従順じゅうじゅんは上長じょうちょうの正当せいとうな命令めいれいに従したがうことをいう[2]。

古代こだいの教会きょうかいでは童貞どうてい性せい・禁欲きんよく・殉教じゅんきょうなどが特別とくべつのカリスマ（聖霊せいれいの賜物たまもの）と見みなされた。キリスト教きょうの公認こうにん以降いこうは隠かくれ修士しゅうしにひきつがれ、中世ちゅうせいの修道しゅうどう制度せいどへと発展はってんした[5]。12世紀せいき以降いこう、清貧せいひん・貞潔ていけつ・従順じゅうじゅんの福音ふくいん的てき勧告かんこくが修道しゅうどう誓願せいがんと結むすびつけられ、その後ごの規範きはんになった[1]。インノケンティウス3世せいも清貧せいひん・貞潔ていけつ・従順じゅうじゅんを修道しゅうどう生活せいかつの本質ほんしつとした[6]。

1983年ねんの教会きょうかい法ほうでは、福音ふくいん的てき勧告かんこくの実践じっせんを表明ひょうめいした教会きょうかい共同きょうどう体たいを奉献ほうけん生活せいかつの会かいと称しょうする[7]。

聖書せいしょ上じょうの根拠こんきょ[編集へんしゅう]

貞潔ていけつについて、旧約きゅうやく聖書せいしょではエレミヤが独身どくしんを守まもり、女性じょせいではユディトが再婚さいこんを放棄ほうきした。新約しんやく聖書せいしょでは洗礼せんれい者しゃヨハネが童貞どうていを守まもり、アンナ（ルカによる福音ふくいん書しょ2:36-37）が再婚さいこんせずに神かみに仕つかえた[8]。マタイによる福音ふくいん書しょ19章しょうでは「天てんの国くにのために結婚けっこんしない者ものもいる」[9]と言いっている。コリントの信徒しんとへの手紙てがみ一いち7章しょう7-9節せつでパウロは「人ひとによって生いき方かたが違ちがう」としながらも自分じぶんのように独身どくしんでいることを勧すすめている[1]。

清貧せいひんについてはマタイによる福音ふくいん書しょ19章しょう（マルコによる福音ふくいん書しょ10:21、ルカによる福音ふくいん書しょ18:22も同おなじ）で、イエスは「もし完全かんぜんになりたいのなら、行おこなって持もち物ものを売うり払はらい、貧まずしい人々ひとびとに施ほどこしなさい」[10]といっている。コリントの信徒しんとへの手紙てがみ二に8章しょうには「主おもは豊ゆたかであったのに、あなたがたのために貧まずしくなられた」[11]といい、それに倣ならうように勧すすめている[1]。

従順じゅうじゅんについてはマタイによる福音ふくいん書しょ23章しょう（マルコによる福音ふくいん書しょ10:43-44も同おなじ）に「あなたがたのうちでいちばん偉えらい人ひとは、仕つかえる者ものになりなさい」といい、またフィリピの信徒しんとへの手紙てがみ2:6-8ではキリスト自身じしんが僕ぼくの身分みぶんとなり、へりくだって、死しに至いたるまで従順じゅうじゅんであったと記しるしている[1]。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d e 『新しんカトリック大だい事典じてん』巻まき4 pp.315-316「福音ふくいん的てき勧告かんこく」
  2. ^ a b c d 『オックスフォード キリスト教きりすときょう辞典じてん』p.208「完かん徳とくの勧告かんこく」
  3. ^ Arthur Stapylton Barnes (1913). “Evangelical Counsels”. Catholic Encyclopedia 
  4. ^ 『オックスフォード キリスト教きりすときょう辞典じてん』p.216「義務ぎむ以上いじょうの行為こうい」
  5. ^ 『新しんカトリック大だい事典じてん』巻まき2 pp.8-11「カリスマ」
  6. ^ 『新しんカトリック大だい事典じてん』巻まき3 pp.173-175「修道しゅうどう誓願せいがん」
  7. ^ 『オックスフォード キリスト教きりすときょう辞典じてん』p.763「奉献ほうけん生活せいかつの会かい」
  8. ^ 『新しんカトリック大だい事典じてん』巻まき3 pp.168-173「修道しゅうどう生活せいかつ」
  9. ^ 新しん共同きょうどう訳やく聖書せいしょ、マタイによる福音ふくいん書しょ19:12
  10. ^ 新しん共同きょうどう訳やく聖書せいしょ、マタイによる福音ふくいん書しょ19:21
  11. ^ 新しん共同きょうどう訳やく聖書せいしょ、コリントの信徒しんとへの手紙てがみ二に8:9

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 『オックスフォード キリスト教きりすときょう辞典じてん』教きょう文ぶん館かん、2017年ねん。ISBN 9784764240414。 
  • 『新しんカトリック大だい事典じてん』研究けんきゅう社しゃ、1996-2009。 （4巻かん）

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

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