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竹たけ阿弥あみ

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竹たけ阿弥あみ
時代じだい 戦国せんごく時代じだい
生誕せいたん 不ふ詳しょう
死没しぼつ 不ふ詳しょう
別名べつめい 筑阿弥あみ、弥わたる助すけ
主君しゅくん 織田おだ信秀のぶひで
氏族しぞく 水野みずの氏し?[1]
父母ちちはは 父ちち：水野みずの為春ためはる?
妻つま 大政所おおまんどころ（なか）
子こ 豊臣とよとみ秀長ひでなが、小四郎こしろう、朝日あさひ姫ひめ
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竹たけ阿弥あみ（ちくあみ）は、戦国せんごく時代じだいの人物じんぶつ。太閤たいこう豊臣とよとみ秀吉ひでよし（藤吉郎とうきちろう）の生母せいぼ仲なか（大政所おおまんどころ）の再婚さいこん相手あいてで、通説つうせつでは秀吉ひでよしの継父けいふ、小一郎こいちろう（豊臣とよとみ秀長ひでなが）と旭あさひ（駿河するが御前ごぜん）の実父じっぷである。ただし後述こうじゅつするように通説つうせつには矛盾むじゅん点てんがある。名前なまえは筑阿弥あみとも書かく。

略歴りゃくれき[編集へんしゅう]

竹たけ阿弥あみの出自しゅつじは諸説しょせつある[2]が、ほとんど手てがかりとなるような情報じょうほうは残のこされていない。『太閤たいこう素生すじょう記き』では、下記かきのように、竹たけ阿弥あみは（木下きのした弥わたる右みぎ衛門えもんと同おなじく）尾張おわり国こく中村なかむら（中なか々村むら）[3]生うまれで、織田おだ信秀のぶひでの同朋どうほう衆しゅであったとし、病気びょうきで職しょくを辞じして故郷こきょうに退しりぞいていて、前夫ぜんふと死別しべつした仲なかと再婚さいこんし、入婿いりむことなったと書かかれている。

一いち　織田おだ信秀のぶひで備後びんご守もり家かニ竹ちく阿弥あみト云うん同朋どうほう衆しゅアリ、中なか々村むらノ生なまレノ者しゃナリ、病気びょうき故こ中なか々村むらヘ引込ひきこめム、所ところノ者しゃ是ぜヲ幸こうニ木下きのした弥わたる右みぎ衛門えもん後家ごけ秀吉ひでよし母ははノ方ほうヘ入にゅうル丶、其後男子だんし一いち人にん女子じょし一いち人にん秀吉ひでよしト種しゅ替がえリノ子こヲ持じツ — 『太閤たいこう素生すじょう記き』[4]

『太閤たいこう素生すじょう記き』では、竹たけ阿弥あみは秀吉ひでよしととも（瑞みず龍りゅう院いん日秀ひびり）の継父けいふにあたるとし、小一郎こいちろうと旭あさひの実父じっぷとするが、その親子おやこ関係かんけいの記述きじゅつには問題もんだいがある。小一郎こいちろうこと豊臣とよとみ秀長ひでながの生年せいねんは天文てんもん9年ねん（1540年ねん）で、朝日あさひ姫ひめの生年せいねんは天文てんもん12年ねん（1543年ねん）であり、同おなじ天文てんもん12年ねんに弥わたる右みぎ衛門えもんは亡なくなっているので、『太閤たいこう素生すじょう記き』がこれを異父いふ弟妹ていまいとするのは誤伝ごでんである可能かのう性せいがあるためである[5]。生なま没年ぼつねんから考かんがえれば、弥わたる右みぎ衛門えもんの子こであると考かんがえた方ほうが筋すじが通とおり、とも・秀吉ひでよし・小一郎こいちろう・旭あさひの全員ぜんいんが弥わたる右みぎ衛門えもんの子こであるという説せつが存在そんざいする[5]。

また、『尾お州しゅう志しむら略りゃく』では竹たけ阿弥あみを継父けいふとするものの、秀吉ひでよしを蜂須賀はちすか郷きょう蓮華寺れんげじ（蓮華れんげ院いん[6]）の僧そうの私生児しせいじとして実父じっぷ不明ふめいとしている[7][8]。曲亭馬琴きょくていばきんの『平たいら豊ゆたか小説しょうせつ弁べん』では、秀吉ひでよしは母ははの野合やごうの子こ（未婚みこんの子この意味いみ）あり、生来せいらい父ちちなし子こであって、木下きのした弥わたる右みぎ衛門えもんを継父けいふ、竹たけ阿弥あみを假かり父ちち（かふ）としている[9]。『平たいら豊ゆたか小説しょうせつ弁べん』で竹たけ阿弥あみは「織田おだ家かの茶坊主ちゃぼうず」と描写びょうしゃされる。

一方いっぽう、『甫はじめ庵あん太閤たいこう記き』（所謂いわゆる、太閤たいこう記き）では、秀吉ひでよしの父ちちは竹たけ阿弥あみとされている[10]が、母ははが懐中かいちゅうに日輪にちりんを入いれる夢ゆめをみて懐妊かいにんしたという日輪にちりん受胎じゅたい伝説でんせつが書かかれており、厳密げんみつには誰だれの子こなのかよくわからない記述きじゅつである。竹たけ阿弥あみを秀吉ひでよしの父ちちとするのは、もっと簡素かんそな記述きじゅつであるが『朝日あさひ物語ものがたり』も同おなじである[11]。太閤たいこう記きでは、竹たけ阿弥あみは同おなじく尾張おわり国こく愛知あいち郡ぐん中村なかむらの住人じゅうにんとされているが、織田おだ大和やまと守もりの家来けらいとなっている。竹たけ阿弥あみは日吉ひよし丸まる（秀吉ひでよし）を「類るいい希まれなる稚やや立りつ（おさなだち）にして尋常じんじょうの嬰児えいじにはかはり、利根とね聡明さとあきなり」[10]がために、出家しゅっけさせて学問がくもんを修得しゅうとくさせようとして光明寺こうみょうじ[13]の門弟もんていとしたとされている。秀吉ひでよしは寺てらで騒動そうどうを起おこして家いえに送おくり返かえされると、父ちちの折檻せっかんを恐おそれて報復ほうふくに僧そう達たちを打殺うちころして寺てらを焼やき払はらったが、竹たけ阿弥あみとの親子おやこ関係かんけいは特とくに悪わるいようには書かかれておらず、家いえが貧まずしがゆえに10歳さいの頃ころより放浪ほうろうすることになったとしている。その後ご、遠江とおとうみ国こくの松下まつした之の綱つなに仕つかえた後のち、織田おだ信長のぶながに仕つかえる際さいにも「竹たけ阿弥あみ入道にゅうどうの子こ」として秀吉ひでよしは自みずからを紹介しょうかいしている[14]。

他方たほうで、『絵本えほん太閤たいこう記き』は、『太閤たいこう素生すじょう記き』と『甫はじめ庵あん太閤たいこう記き』両りょう記きの折衷せっちゅうのような内容ないようで、秀吉ひでよしの実父じっぷを弥わたる右みぎ衛門えもんと同どう一人物いちじんぶつと考かんがえられる「弥わたる助すけ」として、弥わたる助じょ昌吉しょうきちという人物じんぶつとする。ちなみに弥わたる右みぎ衛門えもんを弥わたる助すけとするのは『尾お陽ひ雑記ざっき』などでも見みられる記述きじゅつである。この弥わたる助すけは織田おだ家かの足軽あしがるとしてとして戦たたかい、膝ひざ口こうを射いられて負傷ふしょうで働はたらけなくなったために、郷里きょうりに戻もどり、弥わたる助すけ（弥わたる右みぎ衛門えもん）が出家しゅっけして「竹たけ阿弥あみ」と名乗なのったとされている[15]。弥わたる助すけが竹たけ阿弥あみとなったする説せつは、『豊臣とよとみ系圖けいず』も同様どうようである[11]。

秀吉ひでよしと継父けいふ・竹たけ阿弥あみの不和ふわを描えがくのは、「竹たけ阿弥あみ継父けいふナレハ心こころニ不ふ合ごうコト有ゆうテ[16]」という記述きじゅつがある『太閤たいこう素生すじょう記き』である。本来ほんらいの『太閤たいこう記き』にはない内容ないようであるが、講談こうだんとなってさらに通俗つうぞく化かされた『真書しんしょ太閤たいこう記き』では、竹たけ阿弥あみを継父けいふとする内容ないようが途中とちゅうに加くわわり、継父けいふと馬うまが合あわなかった秀吉ひでよしが（再度さいど）家かを飛とび出だすという筋書すじがきに変かわっており、竹たけ阿弥あみの出番でばんも増ふえて細こまかな内容ないようが加筆かひつされた[17]。これが広ひろまって竹たけ阿弥あみには秀吉ひでよしに辛からくあたった継父けいふというイメージが付ついているが、大半たいはんは講談こうだんの創作そうさくに過すぎない。

竹たけ阿弥あみは弥わたる右みぎ衛門えもんとの混同こんどうがあるため、没年ぼつねんも不明ふめいである[18]。別人べつじんであるとしても、以後いご登場とうじょうしないので、秀吉ひでよしの立身出世りっしんしゅっせの前まえに亡なくなったと考かんがえられる。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
  1. ^ 『諸しょ系譜けいふ 第だい2冊さつ』による。
  2. ^ 『日本にっぽん家紋かもん研究けんきゅう会かい』の高澤たかさわ等ひとしは『太閤たいこう素生すじょう記き』を参照さんしょうにして、秀吉ひでよし一族いちぞくが用もちいる沢瀉おもだか紋もんと秀吉ひでよしの通称つうしょう「藤吉郎とうきちろう」、また姉あね日秀ひびり、妹いもうと朝日あさひの夫おっとの出身しゅっしん地ちなどの関係かんけいから、織田おだ信秀のぶひでの同朋どうほう衆しゅあるいは水野みずの氏し説せつのある継父けいふ・竹たけ阿弥あみを含ふくめ、秀吉ひでよし自身じしんも水野みずの氏し族ぞくを意識いしきしていたのではないかとの推測すいそくの説せつを『歴史れきし読本とくほん』に寄稿きこう[要よう追加ついか記述きじゅつ]しているが、真偽しんぎの程ほどは不明ふめいである。一説いっせつに竹たけ阿弥あみは水野みずの昌あきら盛もりと言いい、父ちちは水野みずの藤次郎とうじろう為春ためはる、祖父そふは水野みずの為信ためのぶ、曾祖父そうそふは大だい高城たかぎ城主じょうしゅの水野みずの甚五右衛門ごえもん為ため善ぜんで為ため善ぜんは尾張おわり・三河みかわの水野みずの氏しの家いえ祖そ・水野みずの貞さだ守もりの弟おとうととする。[要よう出典しゅってん]
  3. ^ 現在げんざいの名古屋なごや市し中村なかむら区く。
  4. ^ 小和田こわだ 1985, p. 36.
  5. ^ a b 小和田こわだ 1985, pp. 66–67.
  6. ^ 今いまの愛知あいち県けん知多ちた郡ぐん武豊たけとよ町まちにある。
  7. ^ 渡辺わたなべ 1919, p. 11.
  8. ^ 名古屋なごや市しの郷土きょうど史し研究けんきゅう家か・藤川ふじかわ清きよしはこの『尾お州しゅう志しむら略りゃく』の伝承でんしょうに従したがって、秀吉ひでよしの実父じっぷは蓮華寺れんげじ十じゅう二に世せい珪秀であるとの説せつを唱となえている。
  9. ^ 滝沢たきざわ解かい 遺のこ草くさ「国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション 平たいら豊ゆたか小説しょうせつ弁べん」『曲きょく亭てい雑記ざっき. 第だい１ 上じょう』渥美あつみ正幹まさみき、1889年ねん。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/992968/28 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション。 
  10. ^ a b 小瀬こせ 1919, p. 18
  11. ^ a b 渡辺わたなべ 1919, p. 27
  12. ^ 小和田こわだ 1985, p. 70.
  13. ^ この光明寺こうみょうじがどの寺てらであったのかは史学しがく的てきには不明ふめいである[12]が、一般いっぱん的てきには、愛知あいち県けん海部かいふ郡ぐん甚目寺じもくじ町まちにある横笛よこぶえ山さん光明寺こうみょうじに見立みたてられている。
  14. ^ 小瀬こせ 1919, pp. 19–20.
  15. ^ 法橋ほっきょう 1917, p. 3.
  16. ^ 豊臣とよとみ秀吉ひでよし公おおやけ治世ちせい諸侯しょこう分限ぶげん帳ちょう・太閤たいこう素生すじょう記き
  17. ^ 栗原くりはら柳やなぎ庵あん『国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション 真書しんしょ太閤たいこう記き』 巻まき之の1、博文ひろぶみ館かん〈帝国ていこく文庫ぶんこ ; 第だい1-4編へん〉、1909年ねん。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1882621/43 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション。 
  18. ^ 没年ぼつねん不明ふめいのため、1996年ねんに放送ほうそうされたNHK大河たいがドラマ『秀吉ひでよし』のように、秀吉ひでよしの晩年ばんねんまで登場とうじょうさせるドラマもある。

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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