詩的 で宗教 的 な調 べ
『
概要 [編集 ]
アルフォンス・ド・ラマルティーヌの
カロリーネ・ザイン=ヴィトゲンシュタイン
曲 集 の変遷 の概要 [編集 ]
1834
各 曲 [編集 ]
祈 り Invocation- アヴェ・マリア Ave Maria
彼 自身 による同名 の合唱 曲 より編曲 [3]。
孤独 の中 の神 の祝福 Bénédiction de Dieu dans la solitude亡 き人 たちの思 い Pensée des morts聖歌 第 129番 「深 き淵 」の歌詞 が付与 された部分 の楽譜 - S.154 の
単 一 曲 「詩的 で宗教 的 な調 べ」が原曲 。「死者 の追憶 」という邦題 が知 られているが、フランス語 の"Pensée"には「追憶 」のような意味 はなく、古 い時代 の日本 での創作 的 誤訳 である。 後半 より聖歌 第 130番 「深 き淵 」が引用 される(この部分 には聖歌 のラテン語 歌詞 が書 き添 えられている)。この聖歌 は数 多 くの作曲 家 たちが作曲 を施 している有名 な旋律 であり、彼 の未完 曲 であるピアノと管弦楽 のための詩篇 「深 き淵 」でも扱 われた素材 であった[3]。聖歌 の内容 は、亡 き人々 が死 の淵 から主 に呼 びかける内容 で、標題 は、死者 たちが主 に対 して呼 び語 る思 いを意味 している。-
聖歌 第 130番 "De profundis" 「深 き淵 」 - De profundis clamavi, ad te Domine;
- Domine, exaudi vocem meam.
- fiant aures tuae intendentes
- in vocem deprecationis meae.
-
深 い淵 の底 から、主 よ、あなたを(次 のように)呼 び求 めます; -
主 よ、この声 を き取 ってください。 -
嘆 き祈 るわたしの声 に -
耳 を傾 けてください。 - また、
本 作 では以下 のように当時 の音楽 から大 きく逸脱 した革新 的 な手法 が数多 く用 いられている。 - ・
曲 の中 ほどまで調 号 が用 いられない、和音 が未 解決 のまま終結 する等 、意図 的 に調 性 を明 らかにしないようにしている部分 がある。 - ・
調 性 音楽 の機能 和声 では断定 し辛 い偶成 和音 が多用 され、それにより多彩 な音響 効果 が実現 されている(調 性 音楽 において最 も遠隔 である増 4度 の関係 にある和音 へ進行 する箇所 すらある)。 - ・5
拍子 、7拍子 という奇数 拍子 、シンコペーションの多用 、拍 頭 ・拍 尾 の休 符 によって拍子 が不明瞭 な音楽 に仕上 がっている。聖歌 を引用 した箇所 には拍子 すら書 かれていない。 - ・
旋法 の変容 の果 てに全音 音階 へ至 る部分 が設 けられている。 - ・
聖歌 の冒頭 に含 まれるたった3音 というミクロな動機 で約 15分 の音楽 全体 が展開 されており、これまでの明快 な主題 提示 を基本 とした音楽 に対 して非常 に珍 しい存在 である。 - ・ソナタ
形式 を代表 とする西洋 音楽 における「展開 」と逆行 するように、終結 には主題 をシンプル化 する(鶏 から卵 へ帰結 するかのような)終 わり方 を目指 している。
- S.154 の
主 の祈 り Pater Noster彼 自身 による同名 の合唱 曲 より編曲 [3]。
眠 りから覚 めた子供 への賛歌 Hymne de l'enfant à son réveil彼 自身 による同名 の合唱 曲 より編曲 [3]。
葬送 曲 Funérailles曲 集 の中 で最 もよく知 られた作品 で、リストの全 作品 の中 で最高 傑作 とみなして愛 奏 するピアニストも多 い。弔 いの鐘 を模 したと言 われる序奏 や中 間 部 の強烈 な連続 オクターブが有名 [6]。「1849年 10月 」との副題 が掲 げられているが、1848年 革命 の余波 を受 けたハンガリー革命 の失敗 により、1849年 10月 にリストの知人 が多 く処刑 され、祖国 のために命 を散 らした者 たちへの葬送 曲 と見 なされている[4]。標題 は複数 形 で”Funérailles”と表記 されており、複数 の知人 にたむけられた葬送 曲 であるという意味 以外 に、同 じ1849年 10月に死去 したショパンへの葬送 曲 という意味 を重 ねられているとも見 做されている。曲 の構成 を見 ると、ショパンの葬送 曲 (ピアノソナタ第 2番 変 ロ短調 作品 35第 3楽章 )と同 じくショパンのポロネーズ第 6番 変 イ長調 作品 53 「英雄 」の2作品 を連想 させる音楽 となっている。曲 の全体 を通 して、偶成 和音 により増 3和音 を多用 することで、短調 の中 では悲劇 的 に、長調 の中 では幻想 的 に、印象 的 な効果 を出 すことに成功 している。- <
全体 の構成 > - 001 - 023
小節 :前奏 部 。鐘 の音 と共 に葬送 の歩 みが視覚 的 に描写 され、死 の悲 しみが爆発 する。トゥッティで悲 しみの絶頂 に至 った後 、トランペットによるファンファーレと共 に葬送 の会場 へと歩 みが進 められる。 - 024 - 055
小節 :葬送 行進曲 。低音 の旋律 と葬送 行進曲 の伴奏 で静 かに始 められ、旋律 が上声 に移 り高揚 する。 - 056 - 108
小節 :亡 き人 との生前 の美 しい思 い出 の回想 部分 。ショパンの夜想曲 を彷彿 とさせる中 間 部分 。ショパンの葬送 曲 (ピアノソナタ第 2番 変 ロ短調 作品 35第 3楽章 )と同 じく、悲劇 的 な葬送 曲 の中間 に、幸 せだった時 の回想 を挟 むという構成 が採 られている。旋律 A(ソプラノ)、旋律 B(アルト)、旋律 A(ソプラノ)の構成 で盛 り上 がる。 - 109 - 155
小節 :亡 き人 の生前 の栄光 を讃 えるファンファーレ。ショパンのポロネーズ第 6番 変 イ長調 作品 53 「英雄 」の有名 な中 間 部 と非常 に酷似 しており、真 のバス音 でない和音 の第 5音 に至 る行進 の伴奏 形 、オクターヴの連続 による技巧 的 な伴奏 パッセージ、伴奏 から始 まり遠 くから長 いクレッシェンドで近 づいて来 るラッパの音 、3度 転調 で高揚 する手法 (「英雄 ポロネーズ」と異 なる種 の3度 転調 を用 いている)から、「英雄 ポロネーズ」を暗示 させる多 くの要素 が認 められる。最後 に、オクターヴの連続 による5小節 のカデンツァを経 る。 - 156 - 176
小節 :前奏 部 の後 の葬送 行進曲 の展開 。今回 は最初 からトゥッティで、亡 き人 に対 する悲 しみの感情 の大 きさを表現 する。 - 177 - 184
小節 :回想 部分 の再帰 。今回 は音域 が更 に高 く、「非常 に遅 く」と書 かれ、フェルマータを挟 み、時間 の流 れが弛緩 する。 - 185 - 192
小節 :終結 部 。中間 のファンファーレ部分 を用 い、短 い時間 で劇的 なクレッシェンドをさせることで悲 しみを再度 露呈 させ、亡失 感 を残 して終 わる。
- パレストリーナによるミゼレーレ Miserere, d'après Palestrina
無題 (アンダンテ・ラクリモーソ) (Andante lagrimoso)- ラマルティーヌの
詩 「涙 、または慰 め」が掲 げられている[3]。
- ラマルティーヌの
愛 の賛歌 Cantique d'amour技巧 的 な曲 で、リストは各地 で好 んで演奏 したとされる[7]。また、リストのピアニズムを意欲 的 に学 んで吸収 したチャイコフスキーがそのピアノ協奏曲 第 1番 において、この曲 の華麗 で演奏 効果 の高 いピアニズム(上 行 するアルペジオと和音 によって奏 でられる旋律 、広 い音域 で奏 でられる和音 による盛 り上 がりなど)と非常 に似 たピアニズムが発揮 されている。
改訂 の歴史 [編集 ]
- 1834
年 単独 作品 「詩的 で宗教 的 な調 べ」 S.154 - 1845
年 曲 集 「詩的 で宗教 的 な調 べ」第 1稿 (初稿 ) S.171d保管 されていたスケッチブックから発見 され、2001年 に出版 された。第 1曲 に〈孤独 の中 の神 の祝福 〉の原形 となる素材 が見受 けられるが、以降 の稿 に受 け継 がれていない曲 が多 い[8]。
- 1847
年 曲 集 「詩的 で宗教 的 な調 べ」第 2稿 S.172a- カロリーネ・ザイン=ヴィトゲンシュタイン
侯爵 夫人 の私有地 があったウクライナ・ヴォロニンツェで作曲 された[9]。1997年 に初 出版 [4]。曲目 については以下 の表 を参照 。
- カロリーネ・ザイン=ヴィトゲンシュタイン
- 1853
年 曲 集 「詩的 で宗教 的 な調 べ」第 3稿 (最終 稿 ) S.173
第 2稿 と第 3稿 の比較 [編集 ]
1. |
1. |
2. |
|
3. |
|
4.マリアの |
1. |
5. |
4. |
6. Pater noster, d'après la Psalmodie de l'Église |
5. |
7. Hymne de l'enfant à son réveil |
6. Hymne de l'enfant à son réveil |
8. |
|
9. |
9. (Andante lagrimoso) |
10. |
|
11. |
3. Bénédiction de Dieu dans la solitude 8.パレストリーナのミゼレーレ |
2.アヴェ・マリア Ave Maria | |
7. | |
10. |
出典 [編集 ]
- ^ 『
名曲 ガイド・シリーズ12器楽 曲 下 』音楽之友社 、1984年 、230頁 。 - ^ a b Victor and Marina A. Ledin (1997). Philip Thomson "Liszt Complete Piano Music, Volume 3" (CD booklet). Naxos.
- ^ a b c d e f g h Leslie Howard (1990). Leslie Howard "Harmonies poétiques et religieuses" (CD booklet). Hyperion.
- ^ a b c d
福田 弥 『作曲 家 人 と作品 シリーズ リスト』音楽之友社 、2005年 、166-168頁 。 - ^
小石 忠男 『クラウディオ・アラウ:ピアノソナタ ロ短調 』CD解説 、フィリップス、1978年 。 - ^ Ben Arnold (2002). The Liszt Companion. Greenwood Publishing Group. pp. 90-91
- ^ 『
最新 名曲 解説 全集 15独奏 曲 II』音楽之友社 、1981年 、435頁 。 - ^
曲 数 、曲 順 、タイトル等 が資料 によって異 なっており、不明 な点 が多 い。 - ^ a b Leslie Howard (1997). Leslie Howard "Litanies de Marie" (CD booklet). Hyperion.
外部 リンク[編集 ]
詩的 で宗教 的 な調 べ S.173(最終 稿 )の楽譜 -国際 楽譜 ライブラリープロジェクト詩的 で宗教 的 な調 べ S.154(単一 作品 としての原曲 )の楽譜 -国際 楽譜 ライブラリープロジェクト詩的 で宗教 的 な調 べ - ピティナ・ピアノ曲 事典