近藤こんどう虎とら五ご郎ろう

近藤こんどう虎とら五ご郎ろう

近藤こんどう 虎とら五ご郎ろう（こんどう とらごろう、1865年ねん7月がつ23日にち〈慶応けいおう元年がんねん6月1日にち〉 - 1922年ねん〈大正たいしょう11年ねん〉7月がつ17日にち）は、明治めいじ-大正たいしょう時代じだいの土木どぼく技師ぎし。戦前せんぜん前期ぜんきの土木どぼく界かいを代表だいひょうする人物じんぶつの一人ひとり。日本にっぽん初はつの工学こうがく博士はかせ。

経歴けいれき

村上むらかみ藩はん士し・近藤こんどう金彌きんやの長男ちょうなんに生うまれ、新潟にいがた学校がっこうを卒業そつぎょう。1878年ねん（明治めいじ11年ねん）9月がつ明治天皇めいじてんのう北越ほくえつ御ご巡行じゅんこうの折おり、特とくに学術がくじゅつ優秀ゆうしゅうということで、目録もくろくを贈おくられている。その後ご、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく工科こうか大学だいがく土木どぼく工学科こうがっかに進学しんがく。常つねに主席しゅせきを通とおし、特待とくたい生せいとして1887年ねん（明治めいじ20年ねん）に卒業そつぎょう。私費しひで2年間ねんかん米国べいこく留学りゅうがくし土木どぼく工学こうがくの先進せんしん技術ぎじゅつを学まなび帰国きこく。1890年ねん（明治めいじ23年ねん）内務省ないむしょう土木どぼく局きょくに入はいり内務ないむ技師ぎしとなり、1896年ねん（明治めいじ29年ねん）の河川かせん法ほう制定せいてい後ご国費こくひによる河川かせん改修かいしゅう工事こうじや湾岸わんがん・上下水道じょうげすいどうの新設しんせつ工事こうじの監督かんとく指導しどうに当あたる。なお、国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざいに指定していされている1911年ねん（明治めいじ44年ねん）竣工しゅんこうの秋田あきた県けん藤倉ふじくらダム（藤倉ふじくら水源すいげん地ち）は、虎とら五ご郎ろうの指導しどうを受うけて完成かんせいしたものである。傍かたわら、約やく24年間ねんかん母校ぼこうの東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく教授きょうじゅとして土木どぼく工学こうがくを講義こうぎ、後進こうしんの指導しどうに当あたり、鉄道てつどう省しょう技師ぎしなども兼務けんむした。

虎とら五ご郎ろうは、日本にっぽんに初はじめて計算尺けいさんじゃくを紹介しょうかいした人物じんぶつの一人ひとりでもある。1894年ねん、当時とうじ内務省ないむしょう土木どぼく課長かちょうだった虎とら五ご郎ろうは、工学こうがく博士はかせ廣田ひろた理太郎りたろうとともに欧米おうべい視察しさつに向むかい、視察しさつの土産みやげとしてドイツ製せいマンハイム型がた計算尺けいさんじゃくを持もち帰かえった。翌よく1895年ねん、二人ふたりはこれを東京とうきょう猿楽さるがく町まちの中村なかむら測量そくりょう計器けいき製作所せいさくしょに持もち込こみ、 国内こくないでの大量たいりょう生産せいさんを発注はっちゅう。その設計せっけいと生産せいさんの担当たんとうについたのが、ヘンミ計算けいさん尺じゃくの生うみの親おやとなった逸見いつみ治郎じろう（へんみ じろう）であった。当時とうじ18歳さいで入社にゅうしゃまもなかった逸見いつみ治郎じろうは、当時とうじ日本一にっぽんいちの目盛めもり工こうといわれていたという。逸見いつみは、計算尺けいさんじゃくの素材そざいによっては、四季しきそれぞれの気候きこうによって目盛めもりが狂くるってしまうことに着目ちゃくもく。特とくに日本にっぽんの夏季かきは、温度おんど・湿度しつどが高たかいことから計算尺けいさんじゃくの全長ぜんちょうや分ぶん長ちょうが変化へんかしてしまうため、桜さくら・黄楊つげ・花梨かりん・マホガニーなど様々さまざまな材質ざいしつで試行錯誤しこうさくごを繰くり返かえし、1909年ねんに日本にっぽん固有こゆうの竹たけ材ざい「孟宗竹もうそうちく」を使用しようした、竹たけ製せいの計算尺けいさんじゃくを完成かんせいさせる。第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせんにより、それまで世界せかい標準ひょうじゅんだったドイツ製せい計算尺けいさんじゃくの生産せいさんが途絶とだえると、国内外こくないがいを問とわず計算尺けいさんじゃくの注文ちゅうもんが激増げきぞう。日本にっぽん製せいバンブー計算けいさん尺じゃくとして広ひろく名声めいせいを博はくすことになった。電子でんし計算けいさん機きが普及ふきゅうし始はじめる1970年代ねんだいまでの間あいだ、ヘンミ計算尺けいさんじゃくは世界中せかいじゅうで利用りようされ、1960年代ねんだい後半こうはんには、ヘンミ計算けいさん尺じゃくのシェアが日本にっぽんで約やく98％、世界せかいでは約やく80％を占しめることもあった。

なお、虎とら五ご郎ろうが生うまれた村上むらかみ藩はん（新潟にいがた県けん村上むらかみ市し）は、「鮭さけのまち」として知しられる。藩はんの下級かきゅう武士ぶし・青砥あおと武平たけひら次じ（あおと ぶへいじ）が世界せかいではじめて鮭さけの「母はは川かわ回帰かいき性せい」を発見はっけんし、この性質せいしつを利用りようした鮭さけの天然てんねん繁殖はんしょく法ほう「種川たねかわの制せい」を考案こうあん。「種川たねかわの制せい」の導入どうにゅうにより、市内しないを流ながれる三面川みおもてかわ（みおもてがわ）の鮭さけの漁獲ぎょかく量りょうは飛躍ひやく的てきに増ふえ、村上むらかみ藩はんの財政ざいせいに大おおきく貢献こうけんした。鮭さけ漁りょうにより財政ざいせいが潤うるおった村上むらかみ藩はんは、これを財源ざいげんに藩校はんこう・克かつ従したがえ館かんを中心ちゅうしんに藩士はんし子弟していの教育きょういくに大おおいに力ちからを入いれていた。明治めいじに入はいると、旧きゅう藩士はんしたちが「村上むらかみ鮭さけ産さん育そだて養やしなえ所しょ」（1882年ねん（明治めいじ15年ねん））を設立せつりつ。それまでの天然てんねん増殖ぞうしょくに加くわえ、人工じんこうふ化かにも成功せいこうし、莫大ばくだいな収益しゅうえきを上あげることになるが、藩はん時代じだいの育英いくえいの精神せいしんを受うけ継つぎ、小学校しょうがっこうや中学校ちゅうがっこうの設立せつりつ、中なかでも優秀ゆうしゅうな藩士はんしの子弟していには奨学しょうがく金きんを支給しきゅうし、多おおくの優すぐれた人材じんざいを世よに送おくり出だした。村上むらかみではこうした奨学しょうがく金きんの恩恵おんけいを受うけ、勉学べんがくに励はげんだ人ひとたちを、やがて村上むらかみに帰かえって郷土きょうどの発展はってんに尽つくしてくれるだろうという願ねがいをこめて「鮭さけの子こ」と呼よんでおり、虎とら五ご郎ろうもこの「鮭さけの子こ」の一人ひとりであった。そのほかにも、皇子おうじ傅育ふいく官かん長ちょうとして秩父宮ちちぶのみや・高松宮たかまつのみやの教育きょういく係がかりを務つとめた「三好みよし愛吉あいきち」や、乃木のぎ希典まれすけ大将たいしょうの通訳つうやくを務つとめた外交がいこう官かん「川上かわかみ俊彦としひこ」、法務大臣ほうむだいじんで中央大学ちゅうおうだいがく教授きょうじゅの「稲葉いなば修おさむ」、雅子まさこ皇后こうごうの祖父そふ・小和田こわだ毅あつし夫おっとなどがいる。

出典しゅってん：土木どぼく学会がっかい附属ふぞく土木どぼく図書館としょかん　デジタルアーカイブス 土木どぼく貴重きちょう写真しゃしんコレクション。左前ひだりまえから岡野おかの昇のぼる、原田はらだ貞さだ介かい。中央ちゅうおう後ご、直木なおき倫太郎りんたろう。右前みぎまえから3番目ばんめ、近藤こんどう虎とら五ご郎ろう。時期じき詳細しょうさい不明ふめい

出典しゅってん：土木どぼく学会がっかい 真田さなだ秀吉ひでよし 所蔵しょぞう写真しゃしん。箱根はこね塔とうノ沢さわ環たまき翠みどり楼ろう■庭にわニテ 三さん一いち会かい三さん十じゅう年ねん記念きねん会かい 近藤こんどう先生せんせいヲ迎むかえヘテ 1928年ねん（昭和しょうわ3年ねん）10月がつ13日にち。下段げだん左ひだりから5番目ばんめに近藤こんどう虎とら五ご郎ろう。6番目ばんめに真田さなだ秀吉ひでよし。

家族かぞく

• 妻つまは、幕末ばくまつ・明治めいじの国法こくほう学がく者ものであり、東京大学とうきょうだいがく初代しょだい総理そうりでもある加藤かとう弘之ひろゆきの三さん女じょ・幸子こうじ。
• 長男ちょうなんの近藤こんどう光之みつゆき（こんどう みつゆき）は、農学のうがく博士はかせで、栄養えいよう研究所けんきゅうじょに勤務きんむ。その妻つま繁子しげこは男爵だんしゃく西村にしむら精一せいいちの娘むすめ。
• 次男じなんは洋画ようが家かの近藤こんどう光紀みつのり（こんどう みつのり）。
• 三男さんなんの泰やすしは、高田商たかだしょう会かい2代目だいめ社長しゃちょうの高田たかだ釜がま吉きちに養子ようし入いりしている。

来歴らいれき

• 1865年ねん（慶応けいおう元年がんねん）6月がつ1日にち：村上むらかみ藩はん士し・近藤こんどう金彌きんやの長男ちょうなんとして、越後えちご国こく岩船いわふね郡ぐん村上むらかみ本町ほんまち（新潟にいがた県けん村上むらかみ市し）に生うまれる
• 1887年ねん（明治めいじ20年ねん）：東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく工科こうか大学だいがく土木どぼく工学科こうがっかを首席しゅせきで卒業そつぎょう
• 1890年ねん（明治めいじ23年ねん）：内務省ないむしょう土木どぼく局きょくに内務ないむ技師ぎしとして入省にゅうしょう
• 1906年ねん（明治めいじ42年ねん）〜1916（大正たいしょう5年ねん）：東京とうきょう工科こうか学校がっこう、第だい2代だい校長こうちょうを務つとめる
• 1917年ねん〜（大正たいしょう6年ねん〜）：東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく工科こうか大学だいがく教授きょうじゅを兼任けんにん
• 1919年ねん（大正たいしょう8年ねん）：内務省ないむしょう土木どぼく局きょく第だい一いち技術ぎじゅつ課長かちょう
• 1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）：東京とうきょう市し臨時りんじ下水道げすいどう調査ちょうさ会かい委員いいん
• 1922年ねん（大正たいしょう11年ねん）7月がつ17日にち：58歳さいで死去しきょ

著書ちょしょ

『計算尺けいさんじゃく』廣田ひろた理太郎りたろう、近藤こんどう虎とら五ご郎ろう、中村なかむら商店しょうてん、1895年ねん〈明治めいじ28年ねん〉1月がつ 国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション（国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん書誌しょしID：000000468642）