金春こんぱる八はち条じょう

戦前せんぜんの光太郎こうたろうによる「卒そつ都と婆ばば小町こまち」。1939年ねん、本ほん曲きょくで見みせた好演こうえんは識者しきしゃに光太郎こうたろうの芸げい力りょくを再さい認識にんしきさせる機会きかいとなった。1955年ねんにも古稀こきを祝しゅくしてこの曲きょくを舞まい、高たかい評価ひょうかを受うけている

金春こんぱる 八はち条じょう（こんぱる はちじょう、1886年ねん9月30日にち - 1962年ねん5月17日にち）はシテ方かた金春こんぱる流りゅう七なな十じゅう八はち世せい宗家そうけ。能楽のうがく師し。本名ほんな光太郎こうたろう。隠居いんきょ後ご八はち条じょうを名乗なのった。

七なな十じゅう六ろく世せい宗家そうけ金春こんぱる七郎しちろう広こう運うんの長男ちょうなんとして奈良ならに生うまれる。弟おとうとに金春こんぱる栄治郎えいじろう（七なな十じゅう七なな世せい宗家そうけ）。

1870年ねん、「望月もちづき」の子方こかたで初舞台はつぶたいを踏ふむが、19歳さいのときに足あしを負傷ふしょうし、ハコビになめらかさを欠かくようになった。このため1910年ねんに父ちちが逝去せいきょした際さいには、弟おとうと・栄治郎えいじろうが宗家そうけを相続そうぞくするものの、後のちに辞退じたいし、改あらためて1914年ねんに光太郎こうたろうが七なな十じゅう八はち世せい宗家そうけとなった。

奈良ならを離はなれることなく演えんじ能のう活動かつどうをつづけたこと、長ながらく金春こんぱる流りゅうの流りゅう勢ぜいがふるわなかったこと、東京とうきょうでは同流どうりゅうの桜さくら間あいだ伴とも馬ば・弓ゆみ川がわ親子おやこの活躍かつやくに注目ちゅうもくが集あつまっていたことなどから、一般いっぱん的てきな知名度ちめいどはかならずしも高たかくなかったが、晩年ばんねんその芸げいを武智たけち鉄二てつじが高たかく評価ひょうかしたところから玄人くろうと筋すじでの評判ひょうばんが高たかくなり、意気いきに感かんじた光太郎こうたろうは戦後せんご10年ねんほどのあいだに充実じゅうじつした舞台ぶたいを勤つとめる。1951年ねんに長男ちょうなん・金きむ春信はるのぶ高だかに宗家そうけを譲ゆずり、1954年ねんからは八はち条じょうを名乗なのり、間まもなく舞台ぶたいを退しりぞいて、　1962年ねんに没ぼっした。

次男じなんの金春こんぱる欣三きんぞうも能楽のうがく師しとなった。脚本きゃくほん家かの金春こんぱる智子さとこは欣三きんぞうの娘むすめで、八はち条じょうの孫まごに当あたる。