長崎ながさき製鉄せいてつ所しょ

長崎ながさき製鉄せいてつ所しょ（ながさきせいてつしょ）は、江戸えど時代じだい末期まっき（幕末ばくまつ）に作つくられた製鉄せいてつと船舶せんぱくの修理しゅうり・建造けんぞうを行おこなう工場こうじょうである。

概要がいよう[編集へんしゅう]

江戸えど幕府ばくふは、安政あんせい2年ねん10月24日にち（1855年ねん12月3日にち）に長崎ながさき海軍かいぐん伝習でんしゅう所しょを開ひらいたが、総そう監かんの永井ながい尚志ひさしは幕府ばくふに大型おおがた船せん造づくり修おさむ所しょ建設けんせつの必要ひつよう性せいがあることを説といた。しかし、幕府ばくふからの指示しじがなかったため、永井ながいはオランダに対たいし、独断どくだんで建設けんせつ要員よういんの派遣はけん要請ようせいと機械きかい類るい・資材しざいの発注はっちゅうを行おこなった。同年どうねん11月がつに帰国きこくするオランダ海軍かいぐん中佐ちゅうさヘルハルドゥス・ファビウス（Gerhardus Fabius）にそれを託たくし、翌年よくねん帰国きこくしたファビウスから報告ほうこくを受うけたオランダ政府せいふは、当時とうじ凋落ちょうらくしつつあった日ひ蘭らん貿易ぼうえきを挽回ばんかいする一策いっさくとして製鉄せいてつ所しょ建設けんせつに協力きょうりょくすることになった^[1]。

安政あんせい4年ねん6月がつには資材しざいが到着とうちゃく、続つづいて8月がつ5日にち（1857年ねん 9月22日にち）には、ヤーパン号ごう（咸臨丸かんりんまる）と共ともにヘンドリック・ハルデスを始はじめとする建設けんせつ要員よういん11人にんも到着とうちゃくした。同年どうねん8月がつ23日にち（10月がつ10日とおか）に、長崎ながさき・浦上うらかみ村むら淵ふち字じ飽あくの浦うらの9040坪つぼの土地とちに建設けんせつが始はじめられ、文久ぶんきゅう元年がんねん3月25日にち（1861年ねん5月がつ4日にち）に完成かんせいした。25馬力ばりきの蒸気じょうき機関きかんで、工作こうさく機械きかい約やく20台だいを稼動かどうさせた。

創設そうせつ時じは「長崎ながさき鎔鉄所しょ」という名なであった。文久ぶんきゅう3年ねん、神戸こうべに海軍かいぐん操みさお練ねり所しょ造艦ぞうかん局きょくが新設しんせつされ、長崎ながさき製鉄せいてつ所しょはその所属しょぞくとなった。

名前なまえの通とおり、幕府ばくふの意図いととしては兵器へいき生産せいさんなどに必要ひつような製鉄せいてつ所しょとしての機能きのうを期待きたいしたのであるが、実際じっさいには艦船かんせんの修理しゅうりを行おこなう造船ぞうせん所しょとしての機能きのうが大おおきかった。なお、工作こうさく機械きかいや製鉄せいてつ機能きのうを有ゆうする造船ぞうせん所しょとしては、幕府ばくふのものは長崎ながさき製鉄せいてつ所しょのほか横須賀よこすか製鉄せいてつ所しょが造つくられた。

長崎ながさき製鉄せいてつ所しょの能力のうりょくは限定げんてい的てきであった。幕府ばくふが建造けんぞうした日本にっぽん最初さいしょの蒸気じょうき軍艦ぐんかん「千代田ちよだ形がた」の蒸気じょうき機関きかんは、当初とうしょは長崎ながさき製鉄せいてつ所しょだけでの製造せいぞうが計画けいかくされていたが、より有力ゆうりょくな設備せつびを持もつ佐賀さが藩はん（三重みえ津つ海軍かいぐん所しょ）の支援しえんを受うけることになった。