開山かいさん (仏教ぶっきょう)

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開山かいさん(かいさん)とは、寺院じいん創始そうしすることを仏教ぶっきょう用語ようごである。仏道ぶつどう修行しゅぎょうとして閑静かんせいのぞましいことから、しばしば山間さんかん道場どうじょう寺院じいん建立こんりゅうされ、山号さんごうゆうしたことに由来ゆらいする。てんじて寺院じいんひらけそうした僧侶そうりょ(すなわち初代しょだい住持じゅうじしょく)をかたりともなる[1]

開基かいき[編集へんしゅう]

類義語るいぎごとして「開基かいき」があり、のち同義語どうぎごとしてもちいられるようになった[2][3]が、厳密げんみつには両者りょうしゃ別々べつべつのものである。「開基かいき」は、寺院じいん創始そうしにあたって必要ひつよう経済けいざいてき支持しじあたえたもの、ないし世俗せぞく在家ざいけ実力じつりょくしゃだい檀那だんな)をかたりである[4]たとえば鎌倉かまくら五山ごさん一角いっかく円覚寺えんかくじ場合ばあい寺院じいん建立こんりゅう事業じぎょうになった北条ほうじょう時宗じしゅう開基かいきであり、時宗じしゅう招請しょうせいされて住持じゅうじとなった無学むがくもと開山かいさんである。

ただし、宗旨しゅうし宗派しゅうはによって、これらのかたり用法ようほうには相違そういがある。宗派しゅうはひらくにさいして総本山そうほんざんをひらくことからしょうじる転用てんようとして、宗祖しゅうそとくに「開山かいさん」と宗派しゅうはもある[1]浄土真宗じょうどしんしゅうでは、宗祖しゅうそとされる親鸞しんらんを「開山かいさん」(「開山かいさん」)ともぶことから、末寺まつじ創始そうししゃを「開基かいき」とんで区別くべつする[4]曹洞宗そうとうしゅうでは、道元どうげんを「開山かいさん禅師ぜんじ」とんでいる[1]。また、禅宗ぜんしゅうにおける用法ようほうとして、寺院じいん創始そうしした僧侶そうりょ自身じしんが、への尊崇そんすうねんからみずからではなく開山かいさんとする「勧請かんじょう開山かいさん」(かんじょうかいさん)があり、この場合ばあい実際じっさい創始そうししゃたる僧侶そうりょ自身じしんを「創建そうけん開山かいさん」(そうけんかいさん)としょうする[5]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c 中村なかむら[2001: 183]
  2. ^ 須藤すとう[1993: 57]
  3. ^ たとえば、総合そうごう仏教ぶっきょうだい辞典じてん編集へんしゅう委員いいんかいへん [1988: 168]、須藤すとう[1993: 57]など。
  4. ^ a b 中村なかむら[2001: 178]
  5. ^ 竜谷大りゅうこくだいがくへん、1972、『仏教大ぶっきょうだい辞彙じい だい1かん』(2はん)、冨山とやまぼう p.516

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 総合そうごう仏教ぶっきょうだい辞典じてん編集へんしゅう委員いいんかいへん、1988、『総合そうごう仏教ぶっきょうだい辞典じてん じょう』、法蔵館ほうぞうかん ISBN 4-8318-7060-9
  • 須藤すとう たかしせん、1993、『仏教ぶっきょう用語ようご事典じてん』、新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ ISBN 4-404-01994-7
  • 中村なかむら はじめ、2001、『こうせつ佛教ぶっきょうだい辞典じてん 上巻じょうかん』、東京書籍とうきょうしょせき ISBN 4-487-73176-3