離はなれ角かく

内うち惑星わくせい・外そと惑星わくせいと地球ちきゅうの位置いち関係かんけい 図ず中央ちゅうおうが太陽たいよう、図ず中央ちゅうおう下かが地球ちきゅうである。地球ちきゅうから内うち惑星わくせいに伸のびる点線てんせんが最大さいだい離はなれ角かくを示しめしている。点線てんせんは地球ちきゅうから見みた内うち惑星わくせいの軌道きどうに対たいする接線せっせんでもある。左上ひだりうえに伸のびる点線てんせんは東方とうほう最大さいだい離はなれ角かく、右みぎ上じょうに伸のびる点線てんせんは西方せいほう最大さいだい離はなれ角かくを現あらわしている。内うち合ごうのほか、外そと惑星わくせいに対たいする外そと合あい、東ひがし矩のりと西にし矩のりの位置いちも記入きにゅうされている。

離はなれ角かく（りかく）とは、位置いち天文学てんもんがくにおいて、ある点てんから見みた2つの天体てんたいのなす角度かくどである。とりわけ「惑星わくせいの離はなれ角かく」と言いった場合ばあいは、地球ちきゅうの中心ちゅうしんから見みた太陽たいようと惑星わくせいのなす角度かくど（地ち心こころ真しん角かく距離きょり）をさす。太陽たいようと惑星わくせいの黄き経けいの差さと説明せつめいされることもあるが正ただしくない（一致いっちしない）。

天体てんたいの位置いちを、基準きじゅん点てんを中心ちゅうしんとする天球てんきゅう上うえの経緯けいい度どで表あらわした場合ばあい、天体てんたい1の経度けいど・緯度いどを $(\lambda _{1},\beta _{1})$ とし、天体てんたい2の経度けいど・緯度いどを $(\lambda _{2},\beta _{2})$ とすると、天体てんたい1と天体てんたい2の離はなれ角かく$p$は

$p=\arccos \left(\sin \beta _{1}\sin \beta _{2}+\cos \beta _{1}\cos \beta _{2}\cos \left(\lambda _{1}-\lambda _{2}\right)\right)$

で表あらわされる。この場合ばあいの経緯けいい度どは、黄き経けい・黄き緯ぬきでも、赤あか経けい・赤あか緯ぬきでも良よい。

天体てんたい1と天体てんたい2の経度けいどが等ひとしい（$\lambda _{1}=\lambda _{2}$）場合ばあい、上うえ式しきの$p$は緯度いどの差さに等ひとしい。また、天体てんたい1と天体てんたい2の緯度いどがともに0度どの場合ばあい、上うえ式しきの$p$は経度けいどの差さに等ひとしい。すなわち、太陽たいようと惑星わくせいの離はなれ角かくが黄き経けいの差さと等ひとしいのは、太陽たいようと惑星わくせいがともに黄き緯ぬき0度どの場合ばあいに限かぎられる。

2つの天体てんたいの地ち心しん視し黄き経けいの差さが容易よういに0度どになるのに比くらべると、離はなれ角かくが0度どになるのは極きわめて稀まれである。なぜならば、離はなれ角かくが0度どの時ときは視み黄き経けいも視み黄き緯ぬきも（あるいは視し赤あか経けいも視み赤あか緯ぬきも）どちらも厳密げんみつにピッタリ一致いっちすることが必要ひつようだからである。例たとえば、2012年ねん6月がつ6日にちの金星きんぼしの太陽たいよう面めん通過つうかにおいて、金星かなぼしは太陽たいようとの地ち心しん視し黄き経けいの差さが0度どになる合ごうを迎むかえたが、離はなれ角かくの最小さいしょう値ち（最小さいしょう角かく距離きょり）は約やく0.153度ど（約やく550秒びょう角かく）でゼロにはならない。

最大さいだい離はなれ角かく

ある惑星わくせいから見みて、それよりも内側うちがわに軌道きどうのある惑星わくせい（内うち惑星わくせい）は、太陽たいようとその惑星わくせいとの離はなれ角かくがある一定いっていの値ね以上いじょうにはならない。これを最大さいだい離はなれ角かくといい、太陽たいようよりも内うち惑星わくせいが東側ひがしがわにある場合ばあいを東方とうほう最大さいだい離はなれ角かく、西側にしがわにある場合ばあいを西方せいほう最大さいだい離はなれ角かくという。ここでいう「東方とうほう」「西方せいほう」とは、内うち惑星わくせいが太陽たいように対たいして相対そうたい的てきに位置いちする方角ほうがくであり、地上ちじょうから観望かんぼうできる方位ほういとは関係かんけいがない。もし東方とうほう最大さいだい離はなれ角かくの内うち惑星わくせいを眼め視しで観望かんぼうするには、太陽たいようが沈しずんだ後のちの西にしの空そらに残のこる内うち惑星わくせいを観望かんぼうすることになる。また、内うち惑星わくせいの離はなれ角かくあるいは最大さいだい離はなれ角かくは、地上ちじょうから観望かんぼうできる高度こうどとも関係かんけいがない（離はなれ角かくが大おおきいほど、太陽たいようから離はなれているので、より高たかい高度こうどで観望かんぼうできる、という点てんはあるが）。

水星すいせいと金星かなぼしの太陽たいようからの平均へいきん距離きょり（それぞれ0.3871 au、0.7233 au）を用もちいると、地球ちきゅうから見みた水星すいせいと金星きんぼしの最大さいだい離はなれ角かくはそれぞれ22.8度ど、46.3度どとなる。しかし、地球ちきゅうと内うち惑星わくせいの軌道きどうがともに楕円だえんをなし、また互たがいの公転こうてん面めんが一致いっちしていないために、毎まいサイクルにおける最大さいだい離はなれ角かくは同おなじではなく、毎回まいかい異ことなる。特とくに水星すいせいは軌道きどうの離はなれ心しん率りつが約やく0.2と大おおきいため、近日きんじつ点てんと遠日点えんじつてんの距離きょりに大おおきな隔へだたりがあり、最大さいだい離はなれ角かくの範囲はんいも約やく18度ど～28度どと広ひろい（すなわち、水星すいせいの最大さいだい離はなれ角かくの最大さいだい値ちは、約やく28度どである）。金星きんぼしの最大さいだい離はなれ角かくは、約やく45度ど～47度どの範囲はんいに収おさまる。

次つぎ表ひょうに2013年ねん以降いこうの直近ちょっきんの水星すいせいと金星きんぼしの最大さいだい離はなれ角かくを掲かかげる。

		東方とうほう最大さいだい離はなれ角かく		西方せいほう最大さいだい離はなれ角かく
水星すいせい	2013年ねん	2月がつ16日にち 21:35頃ごろ (UTC)	18.13°	3月31日にち 21:50頃ごろ (UTC)	27.83°
		6月12日にち 16:40頃ごろ (UTC)	24.28°	7月がつ30日にち 8:50頃ごろ (UTC)	19.63°
		10月 9日にち 10:10頃ごろ (UTC)	25.34°	11月18日にち 2:25頃ごろ (UTC)	19.48°
	2014年ねん	1月がつ31日にち 10:05頃ごろ (UTC)	18.37°	3月14日にち 6:30頃ごろ (UTC)	27.55°
		5月25日にち 7:10頃ごろ (UTC)	22.68°	7月がつ12日にち 18:25頃ごろ (UTC)	20.91°
		9月21日にち 22:05頃ごろ (UTC)	26.40°	11月 1日にち 12:40頃ごろ (UTC)	18.66°
	2015年ねん	1月がつ14日にち 20:30頃ごろ (UTC)	18.90°	2月がつ24日にち 16:20頃ごろ (UTC)	26.75°
		5月 7日にち 4:50頃ごろ (UTC)	21.18°	9月 4日にち 10:15頃ごろ (UTC)	27.14°
		10月16日にち 3:15頃ごろ (UTC)	18.12°	12月29日にち 3:10頃ごろ (UTC)	19.72°
金星かなぼし	2013年ねん	11月 1日にち 7:55頃ごろ (UTC)	47.07°	(なし)
	2014年ねん	(なし)		3月22日にち 19:45頃ごろ (UTC)	46.56°
	2015年ねん	6月 6日にち 18:30頃ごろ (UTC)	45.39°	10月26日にち 7:15頃ごろ (UTC)	46.44°
	2016年ねん	(なし)		(なし)

外側そとがわに軌道きどうのある惑星わくせい（外そと惑星わくせい）の離はなれ角かくは理論りろん的てきには0度ど～180度どの値ねをとりうる。最大さいだい離はなれ角かくという言葉ことばは、内うち惑星わくせいにのみ用もちいる。

合ごう・衝・矩のり・留とめと最大さいだい離はなれ角かく

惑星わくせいと太陽たいようが同おなじ方向ほうこうにあるときを合ごう（ごう）と言いうが、こちらは地ち心しん視し黄き経けいが等ひとしくなる瞬間しゅんかんであり、必かならずしも離はなれ角かくが0度どとは限かぎらず（地ち心しん視し黄き緯ぬきが等ひとしくないこともあるため）、また地ち心しん視し黄き経けいが等ひとしいときに離はなれ角かくが最小さいしょうとも限かぎらない。太陽たいようと惑星わくせいが反対はんたいの方向ほうこうにあるときを衝（しょう）と言いうが、こちらも地ち心しん視し黄き経けいの差さが180度どになる瞬間しゅんかんであって、離はなれ角かくが180度どとは限かぎらないので注意ちゅういが必要ひつようである。同様どうように、矩のり（く）も、地ち心しん視し黄き経けいの差さが90度ど・270度どになる瞬間しゅんかん（東ひがし矩のり（とうく）・西にし矩のり（せいく））であるから、内うち惑星わくせいから見みて外そと惑星わくせいが東ひがし矩のりのときに同時どうじに、外そと惑星わくせいからみて内うち惑星わくせいが西方せいほう最大さいだい離はなれ角かくであるとは限かぎらない（前者ぜんしゃが地ち心しん視し黄き経けいの差さで定義ていぎするのに対たいし、後者こうしゃが地ち心こころ真しん角かく距離きょりで定義ていぎするため）。国立こくりつ天文台てんもんだい『こよみ用語ようご解説かいせつ』によると、惑星わくせいの運行うんこうや相対そうたい位置いちを表あらわす用語ようごでは、「留とめ」は地ち心しん視し赤あか経けいで、「合ごう」「衝」「矩のり」は地ち心しん視し黄き経度けいどで、「最大さいだい離はなれ角かく」は地ち心こころ真しん角かく距離きょりで定義ていぎされているので注意ちゅういが必要ひつようである。