ABARA

『ABARA』（アバラ）は弐に瓶びん勉つとむによる漫画まんが作品さくひん。『ウルトラジャンプ』（集英社しゅうえいしゃ）2005年ねん6月がつ号ごうから2006年ねん4月がつ号ごうに掲載けいさい。

単行本たんこうぼんは上うえと下したの全ぜん2巻かん。下したの巻末かんまつには本ほん作さくとの関かかわりがある短編たんぺん「DIGIMORTAL」が収録しゅうろくされている。

物語ものがたり舞台ぶたい

その塊かたまりはあまりにも古ふるくから　そこに存在そんざいしたために

殆ほとんどの人々ひとびとが　地形ちけいの一部いちぶだと信しんじていた

どんな仕掛しかけがあるかなど　知しっている者ものはいない

人工じんこう物ぶつなのか自然しぜん物ぶつなのかもわからない巨大きょだいな廟びょうのある世界せかい。

そこに突如とつじょ現あらわれた、ヒトの目めでは捉とらえられない速度そくどで人間にんげんを食くらい殺戮さつりくする、白しろい異形いぎょう。

養殖ようしょく場じょう従業じゅうぎょう員いん、駆動くどう電でん次じは黒くろガウナに変身へんしんして怪異かいいに立たち向むかう。

謎なぞが謎なぞを呼よぶダークハードSF。

登場とうじょう人物じんぶつ

駆動くどう電でん次じ（くどうでんじ）: 本ほん作さくの主人公しゅじんこうの青年せいねん。かつては検眼けんがん寮りょうに所属しょぞくしており、タドホミらとも親したしかった。自身じしんが黒くろ奇き居きょ子こにされたことを知しり検眼けんがん寮りょうと袂たもとをわかつ。その際さいに多数たすうの職員しょくいんを殺害さつがいしている。伊東いとうという偽名ぎめいを用もちいて主しゅ油あぶら養殖ようしょくに身みを隠かくしている。; 黒くろ奇き居きょ子こ化かすると背中せなかから十じゅう数すう本ほんの紐ひも状じょうの物体ぶったいが飛とび出でるので、これで那由なゆ多たとの見分みわけがつく。大おおきさ数すうメートルの建物たてものの破片はへんを拳こぶしの一いち撃げきで粉砕ふんさいし、ビルが密集みっしゅうした建造けんぞう物ぶつ郡ぐんを一瞬いっしゅんで全壊ぜんかいさせる戦闘せんとう力りょくで白しろ奇き居きょ子こを度々たびたび圧倒あっとうする。
阿おもね由よし多た（あゆた）: 車くるまいすに乗のった少女しょうじょ。駆動くどうらと同どう時期じきに黒くろ奇き居きょ子こを移植いしょくされるが、直接ちょくせつ戦闘せんとうを行おこなう様子ようすはない。彼女かのじょと那由なゆ多た（妹いもうと：黒くろ奇き居きょ子こ）は「同調どうちょう」しており、戦闘せんとう時じの指示しじは一種いっしゅのテレパシーで伝つたえられる。物語ものがたりの中盤ちゅうばんにおいて、那由なゆ多たの負傷ふしょうに「同調どうちょう」してしまい意識いしき不明ふめいの重体じゅうたいに陥おちいる。; 奇き居きょ子こを移植いしょくされた時点じてんで、記憶きおくや知能ちのうに幾許いくばくかの欠損けっそんが生しょうじた模様もようである。かつては駆動くどうとも面識めんしきがあった。; 最終さいしゅう的てきには示現じげん体たい連鎖れんさの一環いっかんで白しろ奇き居きょ子こ化かし、駆動くどう電でん次じと互角ごかくに渡わたり合あうも倒たおされる。その後ご停止ていししていた巨きょ大白たいはく奇き居きょ子こと融合ゆうごうし、活動かつどうを再開さいかいする。最後さいごは妹いもうとである那由なゆ多たと駆動くどう電でん次じを庇かばいつつ胞子ほうし船せん射出しゃしゅつ時じの爆発ばくはつに巻まき込こまれ消滅しょうめつした。
那由なゆ多た（なゆた）: 阿おもね由よし多たの妹いもうと。検眼けんがん寮りょうの擁ようする黒くろ奇き居きょ子こであり、「0078」と刻印こくいんされている。厳重げんじゅうに封印ふういんされていたが、駆動くどうを捕獲ほかくするためにそれを解とかれた。通常つうじょうは阿おもね由よし多たと同調どうちょうすることにより行動こうどうをコントロールされているが、完全かんぜんではない。安全あんぜん装置そうちとして頸椎剥離はくり装置そうちが埋うめ込こまれており、これを起動きどうすれば那由なゆ多たは行動こうどう不能ふのうとなる。; 黒くろ奇き居きょ子こになる過程かていで知能ちのうや情緒じょうちょが大幅おおはばに失うしなわれており、人間にんげんを殺ころすことに対たいして一切いっさい躊躇ちゅうちょが無ない。; 黒くろ奇き居きょ子こ化かすると後頭部こうとうぶから三さん本ほんの紐ひも状じょうの物体ぶったいが飛とび出でるので、駆動くどう電でん次じとの見分みわけがつく。戦闘せんとう力りょくは駆動くどう電でん次じと同等どうとう以上いじょうで、捕獲ほかく時じには手てから伸のばした金属きんぞく線せんのようなもので彼かれの両りょう腕うでを切断せつだんし、背骨せぼねごと頭あたまを引ひき抜ぬいて一時いちじ的てきに戦闘せんとう不能ふのうにしている。
タドホミ: かつて駆動くどうと親したしかった検眼けんがん使し。権けん眼め寮りょう最高さいこう責任せきにん者しゃの娘むすめでもある。一見いっけん穏おだやかだが、目的もくてきのためには自みずからが実力じつりょくを行使こうしすることも厭いとわない。; 検眼けんがん寮りょうを脱走だっそうした駆動くどうの潜伏せんぷく先さきを知しりながらそれを上層じょうそう部ぶに報告ほうこくしなかった。また、示しめせ顕あらわ体たい出現しゅつげんにおいては独断どくだんで駆動くどうに接触せっしょく、その駆除くじょを依頼いらいした。これらの行動こうどうを問題もんだい視しされ組織そしき内ないにおける権限けんげんを剥奪はくだつされた。さらには「検けん罰ばつ」と称しょうして左腕さわんを切断せつだんされてしまう。
先さき島とう: 刑けい兵部ひょうぶ省しょうの捜査そうさ官かん。典型てんけい的てきな熱血漢ねっけつかんである。
第だい四よん紀き連れん社員しゃいん: 600年ねん前まえに滅ほろびた第だい四よん紀き連れんの社員しゃいんの生いき残のこり達たち。もはや肉体にくたいは残のこっておらず、ロボットの様ような機械きかいにその精神せいしんを宿やどしている。作中さくちゅうでは三さん人にん（？）登場とうじょうしており、それぞれ骸骨がいこつ、鳥とり、カプセルの外観がいかんをしている。

用語ようご解説かいせつ

奇き居きょ子こ（ガウナ）

「第だい四よん紀き連れんの時代じだいによく現あらわれた、人ひとの眼めに写うつらない正体しょうたい不明ふめいの生物せいぶつ。人ひとを喰くえべて大おおきくなり、最終さいしゅう的てきには恒つね差さ廟びょうを喰くえべる。かつては、その模造もぞう品ひんに退治たいじされた。」（「異相いそうの書しょ」による）

彼かれら以外いがいの時間じかんが静止せいししているように見みえるほどの速度そくどで活動かつどうできる。また示しめせ隔へだた空間くうかんと呼よばれるものを展開てんかいすることで人間にんげんの目めに写うつらなくなると推察すいさつされる。機関きかん銃じゅうやレーザー、ミサイル等とうの兵器へいきでも全まったく対処たいしょ出来できない。踏ふみ台だいにしただけのビルが真まっ二ぷたつになる等ひとし、筋力きんりょくも通常つうじょうの生物せいぶつに比くらべて並外なみはずれている。個体こたいによっては羽はねや翼つばさのようなものを背中せなかから広ひろげ、飛行ひこうする。

検眼けんがん寮りょうにおいては｢人類じんるいの領域りょういきを侵犯しんぱんし、破壊はかいにふける化ばけ物もの｣と教おしえられている。

「胞」（えな）と呼よばれる外そと骨格こっかく様ようの装甲そうこうに身みを包つつみ、その大おおきさや、形状けいじょうは様々さまざまである。何なんらかの要因よういんによって人間にんげんが変態へんたいすることによっても出現しゅつげんする。黒くろ奇き居きょ子こと対比たいひして、白しろ奇き居きょ子ことも呼よばれる。また、人間にんげんが変化へんかしたものは示現じげん体たいとも呼よばれることがある。

春はるの季語きごである「寄居よりい虫ちゅう（ごうな：ヤドカリの意い）」の古名こみょう「がうな」がモチーフではないかと推察すいさつされる。

同どう作者さくしゃの『戦せん翅甲蟲ちゅう天てん蛾が』や『シドニアの騎士きし』にも同おなじ名前なまえの生物せいぶつが登場とうじょうする。

黒くろ奇き居きょ子こ（クロガウナ）

示現じげん体たいに対たいする検眼けんがん寮りょうの最終さいしゅう兵器へいき。「聖せい遺物いぶつ」として封印ふういんされていたが、その詳細しょうさいは内部ないぶにも知しらされていなかった。; その実態じったいは第だい四よん紀き連れんがかつて白しろ奇き居きょ子こをもとにして開発かいはつした生物せいぶつ兵器へいきである。甲殻こうかくを持もった虫むしのような生いき物もの（これも黒くろ奇き居きょ子こと呼よばれる）を人間にんげんに移植いしょくすることで生うまれる。; 戦闘せんとう時じには、移植いしょく者しゃの背骨せぼねの両りょう脇わきよりあたかも「アバラ」のような黒くろい胞（えな）を生しょうじさせ、全身ぜんしんを包つつむ。白しろ奇き居きょ子こと同等どうとうの速度そくどや、手足てあしが切断せつだんされても瞬時しゅんじに治なおる再生さいせい能力のうりょく等とうを持もつ。白しろ奇き居きょ子ことは異ことなり、重力じゅうりょくを無視むししたような軌道きどうを描えがく。
示現じげん体たい（しげんたい）: 示現じげんとは「神仏しんぶつが霊験れいけんを示しめし現あらわす（衆生しゅじょうを救すくうために様々さまざまな姿すがたに身みを変かえてこの世よに出現しゅつげんする）こと」の意い。; 人間にんげんがなんらかの要因よういんによって変容へんようした存在そんざい。作中さくちゅうにおいては、白しろ奇き居きょ子ことほぼ同おなじ文脈ぶんみゃくで用もちいられる。示現じげん体たいが連続れんぞく発生はっせいすることを示現じげん体たい連鎖れんさと呼よぶ。
第だい四よん紀き連れん: かつて存在そんざいした大だい企業きぎょう。600年ねん前まえに発生はっせいした示現じげん体たい連鎖れんさの際さいに滅ほろびる。
異相いそうの書しょ: 第だい四よん紀き連れんの社しゃ典てん。この世界せかいについての様々さまざまなことが記述きじゅつされている。; 同どう著者ちょしゃの「DIGIMOTAL」には異相いそう教会きょうかいと呼よばれる組織そしきが描えがかれており、本ほん作さくとの関連かんれんをうかがわせる。
禁きん籠こめ（きんろう）: 「閉とじこめて外そとに出ださないこと、押おし込こめること」の意い。; 物語ものがたりの終盤しゅうばん近ちかくで限定げんてい的てきに禁きん籠かごが解とけてしまう。空そらには光ひかりの渦うずが発生はっせいし、巨大きょだいな構造こうぞう物ぶつが姿すがたを覗のぞかせる。中なかより出現しゅつげんしたのは大量たいりょうの白しろ奇き居きょ子こだった。
恒つね差さ廟びょう（ごうさびょう）: 第だい四よん紀き連れん以前いぜんの時代じだいに建築けんちくされた建造けんぞう物ぶつ。廟びょうとは霊れい（祖先そせん）を鎮しずめ祀まつる場所ばしょの意い。; かつては何なん百ひゃく基きも存在そんざいしていたが、とある理由りゆうによりその殆ほとんどが失うしなわれ、作中さくちゅうにおいては二に基きのみが残のこっている。全すべての恒つね差さ廟びょうが失うしなわれると禁きん籠かごが解とけてしまう。
胞子ほうし船せん: 一種いっしゅの脱出だっしゅつ装置そうち。恒つね差さ廟びょうは胞子ほうし船せんの発射はっしゃ装置そうちの役割やくわりも果はたす。
検眼けんがん寮りょう（けげんりょう）: 大だい政官せいかん直轄ちょっかつの組織そしき。その業務ぎょうむ内容ないようは一般いっぱんには非公開ひこうかいとされている。第だい四よん紀き連れんとも繋つながりを持もっている。; かつて恒つね差さ廟びょうと胞子ほうし船せんの秘密ひみつを守まもる為ために作つくられた組織そしきを起源きげんとしている。これは最高さいこう位いの検眼けんがん使しにのみ伝つたえられる機密きみつである。
刑けい兵部ひょうぶ省しょう（けいひょうぶしょう）: この世界せかいにおける警察けいさつ組織そしき。
主しゅ油あぶら養殖ようしょく（あぶらのようしょく）: 検眼けんがん寮りょうを離はなれた駆動くどうが半年はんとし間あいだほど身みを寄よせていた。巨大きょだいな油槽ゆそうを擁ようする。
はらぺこゴウナ: この世界せかいに伝つたわる童話どうわ。内容ないようはかつて発生はっせいした示現じげん体たい連鎖れんさに近ちかい。「最後さいごはみんな白しろいゴウナに食たべられてしまう」ことにより終おわるという。