APIC

APIC（えいぴっく）はAdvanced Programmable Interrupt Controllerの略りゃくで、インテルにより開発かいはつされた、x86アーキテクチャにおける割わり込こみコントローラのことである。

それまでのLegacyの割わり込こみコントローラとして知しられるPIC (Programmable Interrupt Controller) に対たいし、マルチプロセッサ対応たいおう、プライオリティ制御せいぎょなどの機能きのうが付加ふかされている。APICはインテルアーキテクチャの進歩しんぽと共ともに高機能こうきのう化かしており、いくつかのバージョンが存在そんざいする。

概要がいよう

APICにはCPUに内蔵ないぞうされるLocal APICと、I/Oからの割わり込こみを管理かんりするIOAPICの2種類しゅるいが存在そんざいする。Local APICとIOAPICは独自どくじのプロトコルで通信つうしんを行おこない、割わり込こみの通知つうちを行おこなう。Pentium Pro世代せだいでは、APIC Busと呼よばれる割わり込こみ専用せんようのバスが使用しようされていたが、NetBurst世代せだい以降いこう、APIC Busは廃止はいしされ、FSBを介かいして割わり込こみの通知つうちが行おこなわれる。

Local APIC

CPU内部ないぶに実装じっそうされ、外部がいぶからの割わり込こみの全すべてを管理かんりする。I/Oからの割わり込こみ以外いがいにもIPI (Inter-Processor Interrupt) と呼よばれる、マルチプロセッサによる割わり込こみを使用しようしたCPU間あいだ通信つうしんにも使用しようされる。

IOAPIC

IOAPICはI/Oデバイスから受うけ取とった割わり込こみを、CPUへ通知つうちするためのリダイレクション･テーブルを持もつ。

全すべてのI/O割わり込こみは一旦いったんIOAPICで受信じゅしんされる。IOAPICは、オペレーティングシステム (OS) やBIOSによって適切てきせつに設定せっていされたリダイレクション･テーブルを参照さんしょうし、それに従したがいCPUに割わり込こみの通知つうちを行おこなう。リダイレクション･テーブルには、エッジ/レベル･トリガーの種別しゅべつ、割わり込こみベクタ（優先ゆうせん度ど）、割わり込こみ先さきCPUなどの設定せっていが可能かのうである。

特徴とくちょう

以下いかに、PCIをI/Oデバイスに持もつ一般いっぱん的てきなIA-32アーキテクチャにおける、実装じっそう、割わり込こみ時じの振ふる舞まいを例れいとして解説かいせつする。

実装じっそう

PCIバスにおいては、1本ほんのバスにはINT_A,B,C,Dの、最大さいだい4本ほんのI/O割わり込こみ線せんが存在そんざいし、それら割わり込こみ線せんはIOAPICに接続せつぞくされる。IOAPICには、それぞれの割わり込こみ線せんに対たいするリダイレクション･テーブルが割わり当あてられており、割わり込こみ種別しゅべつ、割わり込こみベクタなど、CPUのLocal APICと通信つうしんを行おこなうための設定せっていがなされる。

I/Oデバイスの数かずが多おおい場合ばあい、4本ほんの割わり込こみ線せんでは足たりずに、1本ほんの割わり込こみ線せんを複数ふくすうのI/Oデバイスで共有きょうゆうする場合ばあいがある。これらの管理かんりもIOAPICが負おっている。なお、IOAPICはシステムで複数ふくすう存在そんざいしていてもかまわない。

PCIのI/OデバイスによってはMSI (Message Signaled Interrupts（英語えいご版ばん）) をサポートするものがあり、これらのデバイスは割わり込こみ線せんを使用しようしないが、チップセットによりMSIメッセージは一旦いったんIOAPICにルーティングされ、リダイレクション･テーブル介かいしてからCPUへ割わり込こみ通知つうちされる。

動作どうさ

IOAPICがPCIの割わり込こみ信号しんごうの変化へんかを検知けんちすると、リダイレクション･テーブルに従したがい、CPUに対たいし割わり込こみメッセージを発行はっこうする。CPUのLocal APICがこれを受信じゅしんすると、自じCPUの割わり込こみ処理しょりの仕掛しかけかり、優先ゆうせん度どなどをチェックし、割わり込こみハンドラをコールする。割わり込こみハンドラは、割わり込こみを発生はっせいさせたI/Oデバイスをチェックし、割わり込こみ信号しんごう通知つうちを停止ていしさせ、それぞれの処理しょりに入はいる。

一連いちれんの割わり込こみ処理しょりが完了かんりょうすると、CPUはEOI (End of Interrupt)というコマンドをIOAPICに対たいして発行はっこうする。EOIには対応たいおうする割わり込こみベクタ情報じょうほうが含ふくまれており、IOAPICは、該当がいとうするベクタの割わり込こみ処理しょりが完了かんりょうしたことを認識にんしきする。なおこの時とき、PCIデバイスより依然いぜんとして当該とうがい割わり込こみ信号しんごうによる通知つうちが行おこなわれている場合ばあい、即座そくざに再度さいどCPUに対たいして割わり込こみを発行はっこうする。これらの一連いちれんの動作どうさにより、割わり込こみのロスト防止ぼうし、割わり込こみ線せんの共有きょうゆう制御せいぎょなどが行おこなわれる。

プライオリティ制御せいぎょ

高たかい優先ゆうせん度どの割わり込こみ処理しょりを実行じっこうしているCPUに対たいし、低ひくい優先ゆうせん度どの割わり込こみを通知つうちしても、その処理しょりは一旦いったん待またされる。であれば、割わり込こみ処理しょりを行おこなっていない、または低ひくい優先ゆうせん度どの割わり込こみ処理しょりを行おこなっているCPUに割わり込こみを通知つうちすべきである。

NetBurst世代せだい後期こうきのLocal APICには、割わり込こみ処理しょりに出入でいりするたびに、その割わり込こみ優先ゆうせん度どを、FSBを介かいして定期ていき的てきにチップセットに通知つうちする機能きのうが実装じっそうされており、OSがこの機能きのうを利用りようして、マルチプロセッサ・システムでの適切てきせつな割わり込こみ分散ぶんさんが可能かのうとなっている。ただし、本ほん機能きのうに対応たいおうしたIOAPICおよび、ノースブリッジが必要ひつようとされる。