バス (コンピュータ)

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

バス (えい: bus) とは、コンピュータ内外ないがいかく回路かいろデータ交換こうかんするための共通きょうつう経路けいろコンピュータ用語ようごである。

バスがたトポロジー[編集へんしゅう]

矩形くけいがデバイス、太線ふとせんがバス。複数ふくすうのデバイスで1つの通信つうしん共有きょうゆうして信号しんごう送受信そうじゅしんおこなう。

コンピュータにおいて、1つの信号しんごうせん通信つうしんせん複数ふくすうデバイスがぶらがる構造こうぞうを「バスがたトポロジー」とう。(詳細しょうさいネットワーク構成こうせい参照さんしょう。)ほん項目こうもくの「バス」の由来ゆらいはこれである(もしくはそのもの)。

そのため、1たい1で接続せつぞくする専用せんよう経路けいろ(「ポイントツーポイント」)の場合ばあいはバスとわない。バスに用語ようごとしてチャネルがある。チャネルは「入出力にゅうしゅつりょくチャネル」のように、メモリ入出力にゅうしゅつりょくとのあいだ通信つうしんことおおい。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

おおくのコンピュータは、CPUなど、コンピュータの中心ちゅうしん機能きのうと、周辺しゅうへん機器きき各種かくしゅ制御せいぎょつなぐためにバスを使つかっている。アーキテクチャが単純たんじゅんだった黎明れいめいのコンピュータでは、かく要素ようそ単一たんいつのバスに接続せつぞくされていた。たとえば、サン・マイクロシステムズ初期しょきワークステーションでは、VMEバスマルチバス使つかっていた。しかし、コンピュータの性能せいのう向上こうじょうするにつれて、CPUとかく機器ききとをつなぐバスの伝送でんそう容量ようりょう向上こうじょうさせる必要ひつようがあり、次々つぎつぎあたらしいバスにわっていった。

マイクロプロセッサのメモリバスもこれまではバスがたトポロジが主流しゅりゅうだったが、メモリの高速こうそく対応たいおうしてチャネルへと移行いこうしつつある。また、マルチプロセッサ構成こうせいワークステーション性能せいのう最大さいだいするために複数ふくすうのプロセッサとメモリーとのあいだでのたい同時どうじ通信つうしんおこなえるようにしたクロスバースイッチ採用さいようしてきたように、マルチコアメニーコアそなえたしん世代せだい高性能こうせいのうマイクロプロセッサの内部ないぶでも、おおくのコアとキャッシュメモリーや外部がいぶとの高速こうそくだい容量ようりょう伝送でんそう可能かのうにするために、チャネルにわってクロスバースイッチやリングバスが採用さいようされるようになっている。

内部ないぶバスと外部がいぶバス[編集へんしゅう]

機器きき内部ないぶ構成こうせい要素ようそ接続せつぞくされるものを内部ないぶバス外部がいぶ機器きき接続せつぞくするものを外部がいぶバスという。この分類ぶんるいはどこに視点してんくかで、たとえばマイクロプロセッサ、コンピュータの内部ないぶ基板きばん(マザーボードとう)、コンピュータ装置そうち筐体きょうたいとう分類ぶんるい仕方しかたわる。位置いち明示めいじした「CPU内部ないぶバス」とうといった表現ひょうげんや、メーカーの「標準ひょうじゅん機器きき」と「拡張かくちょう機器きき」といったしょうさくじょう分類ぶんるいなどから拡張かくちょうバスといったようにばれるものもある。

シリアルバスとパラレルバス[編集へんしゅう]

シリアルバス[編集へんしゅう]

1ビットずつ順番じゅんばんにデータを転送てんそうするバスをシリアルバスとぶ。通常つうじょうはクロック信号しんごうせん存在そんざいせず、受信じゅしんがわでの復調ふくちょう必要ひつようクロックのタイミングはデータ信号しんごうじゅうせきしておくっている。通信つうしん線路せんろ本数ほんすうすくなければシールドを充実じゅうじつさせたり、平衡へいこう接続せつぞく比較的ひかくてき容易よういになるため高周波こうしゅうは信号しんごうあつかいやすくなる。複数ふくすう通信つうしん線路せんろではたがいの信号しんごうあいだでのタイミングがずれるタイミング・スキュー問題もんだいきるがシリアルによって回避かいひできる。クロストーク(干渉かんしょう)の問題もんだい減少げんしょうする。もとめられる通信つうしん容量ようりょう増大ぞうだい対応たいおうしてシリアルバスを複数ふくすうぐみたばねるものがあらわれているが、それぞれの伝送でんそうながれているのは個別こべつのシリアル信号しんごうであってたがいの信号しんごうあいだにクロックの同期どうきはない。シリアルバスのおおくが通信つうしん線路せんろりょうはし送信そうしんはし受信じゅしんはしつチャネルであり、物理ぶつりてきには本来ほんらいのバスがたトポロジーではない。チャネルであれば原理げんりてきにはせんはし反射はんしゃやスタブの影響えいきょうけずにノイズのすくない高周波こうしゅうは動作どうさてきした通信つうしんられる。初期しょきのシリアルバスは、パラレルバスよりもはるかに低速ていそくだった。

など

パラレルバス[編集へんしゅう]

シリアルバスが1ビットずつデータを転送てんそうするのにたいして、もとデータそのものやもとデータからした複数ふくすうビットをひとかたまりにして、同時どうじ複数ふくすうほん通信つうしん情報じょうほう伝送でんそうするバスである。パラレルバスがかならずバスがたトポロジーをるとはかぎらないが、バスがたトポロジーを採用さいようするものがおおい。クロック信号しんごう専用せんようせんがデータせん平行へいこうしてもうけられており、受信じゅしんがわでのデータ復調ふくちょう同期どうき使つかわれる。

信号しんごうせん本数ほんすうおおいので、一般いっぱんてきには平衡へいこう接続せつぞく採用さいようされており、シールドの不足ふそく線路せんろあいだのクロストーク、路線ろせんちょう・LRC特性とくせいちがいなどによるスキューによって高速こうそく伝送でんそうにはあまりかない。

ビットすうすなわち平行へいこうする線路せんろすうは、8・16・32がおおい。

コンピュータで使用しようされるデータバスやアドレスバスに採用さいようれいおおく、外部がいぶデバイスをつなぐバスとしてももちいられ、GPIB、IDE/(パラレル)ATASCSIPCIなどがある。高速こうそく限界げんかいがあるため、PCIの改良かいりょうばんPCI ExpressやパラレルATAの改良かいりょうばんシリアルATAでは、データラインはシリアルバスとなっている。

制御せいぎょ[編集へんしゅう]

バスがたトポロジーをるバスでは、複数ふくすう送信そうしん回路かいろ存在そんざいするために同時どうじ送信そうしんおこなわないよう、伝送でんそう信号しんごうおく権利けんり調停ちょうていする回路かいろもうけられるのが一般いっぱんてきである。このような回路かいろはバス・アービターとばれ、バス・アービトレーションをおこなう。調停ちょうてい回路かいろもうけずにバスの使用しようけんかく送信そうしん回路かいろ順番じゅんばんあたえる方式ほうしきもあるが、バスの伝送でんそう効率こうりつわるくなる。

信号しんごう劣化れっか[編集へんしゅう]

チャネルとことなり、複数ふくすう送受信そうじゅしん回路かいろ存在そんざいするバスがたトポロジーをるバスでは、かりりょうはし終端しゅうたん処理しょりまさしくっても、途中とちゅう送受信そうじゅしん回路かいろ接続せつぞくせんやコネクタるいは「スタブ」とばれる部分ぶぶん構成こうせいしてこの部分ぶぶん信号しんごう波形はけい劣化れっかする。かり途中とちゅうのコネクタがそらのまま放置ほうちされればコネクタのせん部分ぶぶんから反射はんしゃしょうじる。路線ろせんちょうちがいや伝送でんそう特性とくせいちがいなどを補正ほせいするために、伝送でんそう使用しようするまえにトレーニングをおこなって平行へいこうするデータせん信号しんごう特性とくせい最適さいてきするような工夫くふうおこなわれたが、なが配線はいせんまわしながら十分じゅうぶんなシールドをおこなうことはむずかしく、コモンモードノイズは平衡へいこう伝送でんそうではけず、外来がいらいノイズやクロストークをおさえながら高速こうそく信号しんごう波形はけいみださないようにあつかうには限界げんかいがある。

おもなコンピュータようバス[編集へんしゅう]

CPU内部ないぶバスの構造こうぞう[編集へんしゅう]

CPUのマイクロチップ内部ないぶ信号しんごうせん。CPUアーキテクチャによりしめされることがおおい。

CPU外部がいぶバスの構造こうぞう[編集へんしゅう]

バスのれい

CPU外部がいぶのバスあるいはたんCPUバスう。ここでは、CPUとメモリ・入出力にゅうしゅつりょく装置そうち直接ちょくせつバスで接続せつぞくされる簡単かんたん構成こうせいかんがえてみる(今日きょうのパソコンはもうすこ複雑ふくざつである。比較的ひかくてきふる時代じだいのコンピュータでは、かく要素ようそが1つのバスに接続せつぞくされていた。SUNのVMEバスやMULTIBUSなど。)

基本きほんてきれいとしてのバスの構造こうぞう下記かきのようになる。

アドレスバス[編集へんしゅう]

アドレスを転送てんそうするために使つかわれるせん使つかわれるせん本数ほんすうをアドレスバスはばう。メモリのアドレスや入出力にゅうしゅつりょく装置そうち (I/O) のアドレスが出力しゅつりょくされる。たとえば、Z80ではピン(信号しんごう)A00 - A15がアドレスバスである。アドレスバスはばは16bitで、64KBのメモリをあつかえる。

メモリアドレスバスとI/Oアドレスバスは、ピンを共用きょうようする場合ばあいも、独立どくりつしている場合ばあいもある。

データバス[編集へんしゅう]

CPUと、メモリやI/Oとのあいだでデータを転送てんそうするために使つかわれるせん基本きほんてきには双方向そうほうこう通信つうしん基本きほんだが、S100バスのように、コンピュータ→周辺しゅうへん機器きき周辺しゅうへん機器きき→コンピュータのデータの転送てんそうけたバスもある。使つかわれるせん本数ほんすうをデータバスはばという。

データバスもメモリようとI/Oようとで、ピンを共用きょうようする場合ばあいも、独立どくりつしている場合ばあいもある。

制御せいぎょせん[編集へんしゅう]

コントロールバスともぶ。

アドレスバスやデータバスで実際じっさい入出力にゅうしゅつりょくおこなうタイミングや、そのCPUと外部がいぶとのあいだでの必要ひつよう制御せいぎょ情報じょうほうりする信号しんごうせん入力にゅうりょく出力しゅつりょく用途ようとおうじてべつ

れいとして、かくバスに有効ゆうこうデータっていることしめす。制御せいぎょ信号しんごうのエッジ(変化へんかてん)で実際じっさい転送てんそう動作どうさおこなわれる。たとえば、Z80ではMREQピンがアクティブになることによりメモリとの転送てんそうであることしめし、RDピンはCPUへの入力にゅうりょくみ)、WRピンはCPUからの出力しゅつりょくみ)にアクティブになる。

単純たんじゅん構成こうせいでは上記じょうきのようになるが、今日きょうのより詳細しょうさい技術ぎじゅつについてはCPUバス参照さんしょうのこと。

コンピュータ内部ないぶのバス(外部がいぶバス)[編集へんしゅう]

コンピュータ内部ないぶ、すなわちCPUの外側そとがわから装置そうち内部ないぶまでのあいだでは、色々いろいろなバスが使つかわれている。上記じょうきのCPU外部がいぶバスをふくめてたんに「外部がいぶバス」とうこともある。

単純たんじゅんなマイコンでは上記じょうきのCPU外部がいぶバスの延長線えんちょうせん構成こうせいることがおおいが、今日きょうではパソコンでもチップセットによりシステムバス、メモリバスや入出力にゅうしゅつりょくバスが統合とうごうされたチャネル構成こうせいる。

システムバス[編集へんしゅう]

コンピュータないかくコンポーネントが接続せつぞくされるバスである。上記じょうきのCPU外部がいぶバス、すなわちCPUから直接ちょくせつ信号しんごうせんすこともある。

フロントサイドバスともばれるがこの用語ようごには諸説しょせつある。今日きょうのパソコンではCPUからたシステムバスは「ノースブリッジ」とばれるチップセットに集約しゅうやくして接続せつぞくされるのが一般いっぱんてきである。

メモリバス[編集へんしゅう]

メインメモリ接続せつぞくするバスである。

入出力にゅうしゅつりょくバス[編集へんしゅう]

I/Oバス。入出力にゅうしゅつりょく装置そうち接続せつぞくされるバスである。DMAによりチャネルバス構成こうせい場合ばあいもある。今日きょうのパソコンでは周辺しゅうへん機器ききとの入出力にゅうしゅつりょくのうち、PCI / IDE / USBなどの比較的ひかくてき低速ていそくなI/Oバスについては、「サウスブリッジ」とばれるチップセットが制御せいぎょする。AGPPCI Expressなどの比較的ひかくてき高速こうそくなI/Oバスはノースブリッジに直接ちょくせつ接続せつぞくされる。

総論そうろんとして、現在げんざいのPCの構成こうせいでは、バス構成こうせいよりもチャネル構成こうせいちかいので、外部がいぶ機器きき(カード)を接続せつぞくするバス(外部がいぶバス、拡張かくちょうバス)がおも使つかわれる。I/Oバスやメモリバスは、1990年代ねんだい以前いぜんのPCや、現在げんざいマイコンなどによく使つかわれている。

拡張かくちょうバス[編集へんしゅう]

拡張かくちょうバスとは、PCIなどの拡張かくちょうカードを直接ちょくせつ接続せつぞくするバスをす。拡張かくちょうバス項目こうもく参照さんしょうのこと。

バックプレーンバス[編集へんしゅう]

コンピュータのかくモジュールを対称たいしょう結合けつごうするバックプレーンにバスを構成こうせいもある。そのようなバスをバックプレーンバスとう。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]