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DMX512-A

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
DMXリピータ/バッファ。DMXの制御せいぎょ対象たいしょう機器ききをコントローラに接続せつぞくするための機器きき

DMX512-A は、EIA-485もとづく通信つうしんプロトコルであり、おも舞台ぶたい照明しょうめい演出えんしゅつ機器きき制御せいぎょ使つかわれている。

米国べいこく劇場げきじょう技術ぎじゅつ協会きょうかい (USITT) の技術ぎじゅつ委員いいんかいが1986ねんから開発かいはつはじめ、1990ねんには USITT DMX512/1990 という規格きかく進化しんかした。1998ねん、ESTA (Entertainment Services and Technology Association) がANSI規格きかくとするべく改訂かいてい開始かいしし、一般いっぱんレビューもおこなった。改訂かいていばん "Entertainment Technology — USITT DMX512–A — Asynchronous Serial Digital Data Transmission Standard for Controlling Lighting Equipment and Accessories" は、2004ねん11月にANSIに承認しょうにんされた。この現在げんざいはんは "E1.11、USITT DMX512–A"、またはたんに "DMX512-A" ともばれ、ESTA が保守ほしゅしている。

DMX512 は当初とうしょ最小さいしょうこう分母ぶんぼ」プロトコルとして各社かくしゃ独自どくじのプロトコルのインタフェースとなるべく開発かいはつされた。しかし、もなくたんにコントローラと調しらべこう接続せつぞくだけでなく、演出えんしゅつ機器きき特殊とくしゅ効果こうかデバイスの接続せつぞくにも使つかわれるようになった。DMX512 はコントローラがわから制御せいぎょ対象たいしょう機器きき信号しんごうおくるだけで、自動じどうあやま検出けんしゅつ訂正ていせいもない。したがって、パイロテクニクス制御せいぎょのような人命じんめいかかわる用途ようと使つかうのは安全あんぜんではない。その用途ようとにはMIDIショーコントロールなどが使つかわれる。

技術ぎじゅつてき解説かいせつ[編集へんしゅう]

制御せいぎょ対象たいしょう機器きき一般いっぱんデイジーチェイン接続せつぞくされる。かく機器ききには DMX512 in コネクタがあり、一般いっぱんDMX512 out コネクタもある(機器ききによっては DMX512 thru表示ひょうじされている)。コントローラの DMX512 out にケーブルを接続せつぞくし、それを最初さいしょ機器ききDMX512 in接続せつぞくする。2番目ばんめ機器ききは1番目ばんめ機器ききDMX512 out接続せつぞくする。通常つうじょう最後さいご機器ききDMX512 out にはターミネータプラグを装着そうちゃくする。これは、インピーダンスを整合せいごうさせるための抵抗ていこう通常つうじょう120Ωおーむ)が2ばんと3ばんのピンのあいだにある単純たんじゅん器具きぐである。機器ききによっては自動じどうターミネート機能きのうがあり、ターミネータプラグが不要ふようである。

コネクタ自体じたいは5ピンのXLRだが、実際じっさい使つかっているのはそのうち3ピンである。機器ききによっては3ピンのXLRコネクタを使つかっており、フォーンプラグのジャックでDMXを接続せつぞくする機器ききもある。ただし、これらは規格きかく違反いはんしており、プロよう機器ききでは DMX512-A 準拠じゅんきょ一般いっぱんしつつある。DMX512-A では5ピンXLR以外いがい使用しよう原則げんそく禁止きんしで、コネクタを設置せっちするスペースがない場合ばあいは、アダプタを付属ふぞくさせることになっている。

ケーブルそのものの規格きかくは DMX512 から除外じょがいされ、2004ねんにケーブルにかんする規格きかく策定さくていプロジェクトがはじまった。ケーブル規格きかくとしては、ポータブルな規格きかく恒久こうきゅうてき設備せつびとしての規格きかくがある。これらは、各地かくち移動いどうしてショーをおこなさい必要ひつようとなるケーブルと劇場げきじょうそなけの配線はいせん対応たいおうしている。さらに、インピーダンスとキャパシタンスの基準きじゅん定義ていぎすることで利用りよう可能かのうなケーブルの手引てびきを提供ていきょうしている。たとえば、マイクやオーディオようケーブルは特性とくせいちがうため、DMX512 に使つかうべきではない。そのようなケーブルはインピーダンスがひくすぎ、キャパシタンスがおおきすぎるため、DMX512 のケーブルとして使つかうとデータのあやまりをこしやすい。

Data Plus(3ばんピン)と Data Minus(2ばんピン)は通常つうじょうとは信号しんごうながれる方向ほうこうぎゃくである(メスが out、オスが in)。DMX512-A のピン配置はいちつぎとお

  1. Data Link Common
  2. Data 1- (しゅデータリンク)
  3. Data 1+ (しゅデータリンク)
  4. Data 2- (補助ほじょデータリンク)
  5. Data 2+ (補助ほじょデータリンク)

規定きていはんして2ばんと3ばんのピンの極性きょくせい逆転ぎゃくてんさせているメーカーもあり、アダプタなどが必要ひつようになる。照明しょうめい制御せいぎょたくには極性きょくせいセレクタがあることがおおく、全体ぜんたいぎゃく極性きょくせいならアダプタは不要ふようである。

DMX512データリンクでは、まずデータがた指定していする開始かいしコードを送信そうしんし、それに512チャンネルに対応たいおうした8ビットコードがつづく。したがって一本いっぽんのケーブルで512までの調しらべひかりまたは制御せいぎょ可能かのうである。それ以上いじょう制御せいぎょ必要ひつようであれば複数ふくすうのDMX「ユニバース」を使用しようする。ユニバースとは、DMX512の1つのデータリンクを意味いみし、そのデータリンクじょうすべての機器きき意味いみする。制御せいぎょ分離ぶんりする目的もくてきでユニバースをけることもある。たとえば、調しらべこう照明しょうめいきの制御せいぎょことなるデータリンクにするなどである(それぞれが512のチャンネル全部ぜんぶ使つかわない場合ばあいけて制御せいぎょする)。

DMX512のデータは EIA-485電気でんきてき仕様しよう使つかっている。DMXの仕様しようでは、電気でんき信号しんごうについては EIA-485 を参照さんしょうすることになっている。データは250kbit/sでシリアル伝送でんそうされ、1連続れんぞく転送てんそうされるのは最大さいだい513バイトのパケットである。1バイトを DMX512-A では「スロット」とぶ。このプロトコルでは1ビットのスタートビットと2ビットのストップビットを使つかい、データはリトルエンディアンである。パケットの先頭せんとうには最低さいていでも88μみゅーびょうのブレーク信号しんごうがあり、それに最低さいていでも8μみゅーびょうの "Mark After Break" (MAB) がつづく(1986ねん規格きかくでは4μみゅーびょうだったが1990ねん拡張かくちょうされた)。ブレーク信号しんごう受信じゅしんがわにデータがのちつづくことを予告よこくするものである。ブレーク信号しんごうのち最大さいだい513スロットが送信そうしんされる。最初さいしょのスロットは「開始かいしコード」であり、のちつづくデータの種類しゅるいらせるものである。照明しょうめい調しらべこうけの開始かいしコードはゼロである。開始かいしコードとしては、Textパケット、System Information Packet (SIP)、システム独自どくじのもの、DMXのRDM (Remote Device Management) 拡張かくちょうようなどがある。

のこりのスロットは実際じっさいのレベルデータである。最大さいだい512スロットを送信そうしんし、受信じゅしんがわがスロットをかぞえて自分じぶんのチャンネルをとらえる必要ひつようがある。DMXにはあやま検出けんしゅつ訂正ていせい機能きのうがないので、受信じゅしんがわがスロットを受信じゅしんしそこなわないことが重要じゅうようである。

最大さいだいちょうのパケットの送信そうしんにはやく23ミリびょうかかるので、リフレッシュレートはやく44Hzへるつである。リフレッシュレートをたかくするには、送信そうしんチャンネルすうらせばよい。これは、512チャンネルをすべ送信そうしんえるまえつぎのパケットを送信そうしんはじめるということを意味いみする。最小さいしょうパケットちょうは24チャンネルぶんである。しかし、受信じゅしんがわみじかいパケットに対応たいおうできないものがおおいため、おおくの送信そうしんは512チャンネルをつね送信そうしんするようになっている。

一般いっぱんてき調しらべこう複数ふくすう照明しょうめい制御せいぎょするので、複数ふくすうスロットを使つかって調しらべこうレベルを決定けっていする。一般いっぱんに、一番いちばんちいさいチャンネル番号ばんごう指定していし、必要ひつようなチャンネルすうぶんをその機器きき使用しようする。たとえば6照明しょうめい調しらべひかりする調しらべこうが2だいあると、1だいはチャンネル1から、2だいはチャンネル7から使用しようする。かくスロットは1つの照明しょうめい調しらべこう対応たいおうしている。スロットでしめされたレベル数値すうち解釈かいしゃく(プロファイル)も様々さまざまである。線型せんけいプロファイルであれば、スロットのがそのまま照明しょうめいつよさに対応たいおうする。たとえば、プレヒート・プロファイルではスロットがしめが5%未満みまんであれば、5%の出力しゅつりょくをキープしておき、5%をえると線型せんけい出力しゅつりょく変化へんかさせる。

照明しょうめい自動的じどうてきうごかす場合ばあい連続れんぞくするチャンネルを使つかって様々さまざま制御せいぎょおこなう。たとえば、つぎのような制御せいぎょならんでいる。

  1. 調しらべこう
  2. いろ
  3. ゴーボー(種板たねいた
  4. 水平すいへい移動いどう(パン)
  5. 垂直すいちょく移動いどう(チルト)

ゴーボーのチャンネルのはグループして種板たねいた選択せんたく使つかう。たとえば、0 - 20 は種板たねいたなし、21 - 40 は種板たねいた1ばん、41 - 60 は種板たねいた2ばんといったふうになる。また、おなじチャンネルで種板たねいた回転かいてん指示しじすることもできる。

DMX512 のケーブルで機器ききをデイジーチェインする場合ばあい、ケーブルちょうながくなると信号しんごう劣化れっかする。そのためDMXバッファをよく使つかう。DMXバッファは DMX512 in は1つだが、DMX512 out複数ふくすうっていて、それぞれに機器ききをデイジーチェイン接続せつぞくできる。DMXバッファを使つかわずにケーブルを二股ふたまたにすることはできない。分岐ぶんきてん信号しんごう反射はんしゃ発生はっせいし、誤動作ごどうさ原因げんいんになる。

実際じっさい利用りよう[編集へんしゅう]

DMX512 は単純たんじゅんであるがゆえに堅牢けんろうせいがある。イーサネットなどの高速こうそくデータケーブルではかんがえられないような乱暴らんぼうあつかいをしても問題もんだいなく運用うんようできる。ターミネートプラグなしでも運用うんよう支障ししょうがない場合ばあいもある。問題もんだいしょうじるのは、機器ききのチャンネル設定せっていミス、ケーブル接続せつぞくミス、コントローラの制御せいぎょデータの間違まちがいがほとんどである。ケーブルに問題もんだいがあると、機器きき間欠かんけつてき誤動作ごどうさするなどの奇妙きみょう現象げんしょう発生はっせいする。

補助ほじょデータリンクようの2つのピンは、2つのユニバースのデータを送信そうしんすることを意図いとしているが、最近さいきんではその用途ようと使つかうことはほとんどない。メーカーによっては規格きかく禁止きんしされている3ピンのコネクタを使つかっている。DMX512-A では、5ピンXLRコネクタだけを使用しよう可能かのうとしている。なぜそのような規定きていがあるかというと、3ピンのXLRは容易よういミキシング・コンソールなどに接続せつぞくできるためである。あやまってそのように接続せつぞくすると、強力きょうりょく音声おんせい信号しんごう照明しょうめいなどの電気でんき回路かいろ損傷そんしょうする危険きけんがある。しかし、一部いちぶメーカーはXLRコネクタのエクストラピンを電力でんりょく(DC24V)の送電そうでん使つかっており、これをDMX512対応たいおう機器きき接続せつぞくすると、やはり回路かいろ損傷そんしょうする可能かのうせいがある。

照明しょうめいきは、ほんのすこ角度かくどえただけで舞台ぶたいじょうにあたるこうおおきく変化へんかする。そのため、なるべく正確せいかく制御せいぎょのぞましいが、DMX512 では1スロットでのレベルは0から255であり、それ以上いじょうこまかい指定していができない。そのためパンやチルトにそれぞれ2チャンネルを使つかい、0 から 65535 の使つかって制御せいぎょする機器ききもある。これをふるいコントローラで制御せいぎょする場合ばあい、2つの連続れんぞくする制御せいぎょチャンネルが1つの動作どうさ対応たいおうすることになる。そして、一方いっぽうおおまかな制御せいぎょ(レベルを256単位たんい変化へんかさせる)で、もう一方いっぽうこまかい制御せいぎょ(256未満みまんこまかいレベル調整ちょうせい)に対応たいおうする。

最近さいきんでは、ケーブルの設置せっち困難こんなん場合ばあい無線むせんLAN技術ぎじゅつ使つかうDMX512アダプタが登場とうじょうしている。無線むせんでEIA-485の信号しんごう送信そうしんすると、理想りそうてき条件下じょうけんかではやく900メートルまで通信つうしん可能かのうだが、メーカーは300メートルから400メートル程度ていど有効ゆうこう範囲はんい設定せっていしている。

発展はってん[編集へんしゅう]

チャンネルすう制限せいげん信号しんごう一方向いちほうこうだけであるてんあやま検出けんしゅつ訂正ていせいができないてんなどDMX512の欠点けってん対処たいしょした拡張かくちょう各種かくしゅ提案ていあんされている。コントローラとブレイクアウトボックスのあいだCAT5ケーブル接続せつぞくして複数ふくすうのDMXユニバースのパケットを送信そうしんし、ブレイクアウトボックスから複数ふくすう機器きき従来じゅうらいおな信号しんごう送信そうしんする。このような方式ほうしきはそれぞれのメーカーが独自どくじ拡張かくちょうしたものだが、ESTAは現在げんざいこの標準ひょうじゅんんでいる。

2004年版ねんばんのDMX512-Aでは、RDM (Remote Device Management) プロトコルが拡張かくちょうとして規定きていされている。RDMはかく機器きき診断しんだんフィードバックをコントローラにおくるもので、双方向そうほうこう通信つうしん実現じつげんしている。2006ねんにはANSIにも承認しょうにんされ、急速きゅうそくひろまりつつある。

ESTA では、Architecture for Control Networks (ACN) というプロジェクトもおこなっている。これは、信頼しんらいできる転送てんそう機構きこう提供ていきょうすることをだいいち目的もくてきとしている。また、ACNには機器ききがコントローラにたいして自身じしん仕様しよう制御せいぎょ方法ほうほうなど)を通知つうちする Device Description Language もふくまれている。

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]