Cabal

Cabal（カバル）とは、かつてイングランドに存在そんざいしていたグループ。イングランド・スコットランド・アイルランド王おうチャールズ2世せいに取とり立たてられた5人にんの政治せいじ家かを指さして名付なづけられた。

由来ゆらい

Cabal（カバル）は元々もともとユダヤ教きょうのカバラを語源ごげんとする言葉ことばで、英語えいごでは「意見いけんを同おなじくする者ものたちの集団しゅうだん」、「政治せいじ的てき陰謀いんぼう団だん」といった意味いみの言葉ことばであるが、この5人にんの政治せいじ家かの頭文字かしらもじもちょうどCabalになることから、この5人にんを指さして「Cabal Ministry」（カバル内ない閣かく）と呼よぶようになった。

一覧いちらん

• 
  クリフォード男爵だんしゃくトマス・クリフォード
  （1630年ねん - 1673年ねん）
• 
  アーリントン伯はくヘンリー・ベネット
  （1618年ねん - 1685年ねん）
• 
  バッキンガム公こうジョージ・ヴィリアーズ
  （1628年ねん - 1687年ねん）
• 
  シャフツベリ伯はくアントニー・アシュリー＝クーパー
  （1621年ねん - 1683年ねん）
• 
  ローダーデイル公こうジョン・メイトランド
  （1616年ねん - 1682年ねん）

概要がいよう

チャールズ2世せいの治世ちせい初期しょきはクラレンドン伯爵はくしゃくエドワード・ハイドが政権せいけんを運営うんえいしていたが、1665年ねんから1667年ねんの第だい二に次じ英えい蘭らん戦争せんそうでイングランドが劣勢れっせいのまま終戦しゅうせんに至いたると反対はんたい派はの突つき上あげに遭あい失脚しっきゃく、フランスへ亡命ぼうめいした。

このため、チャールズ2世せいは新あらたにトマス・クリフォード、アーリントン男爵だんしゃくヘンリー・ベネット、バッキンガム公こうジョージ・ヴィリアーズ、アントニー・アシュリー＝クーパー、ローダーデイル伯はくジョン・メイトランドの5人にんを側近そっきんに取とり立たてた。政権せいけんは5人にんの頭文字かしらもじを取とってCabalと名付なづけられた（クリフォード（Clliford）、アーリントン（Arlington）、バッキンガム（Buckingham）、アシュリー（Ashley）、ローダーデイル（Lauderdale））。

5人にんはイングランド国教こっきょう会かいに属ぞくさない非ひ国くに教徒きょうとであること、宗教しゅうきょうに寛容かんようであること以外いがいに共通きょうつう点てんは無なかったが、クリフォードとアーリントンはイングランド議会ぎかいで国王こくおう派はを結集けっしゅうしてクラレンドンの外交がいこう政策せいさくを攻撃こうげき、チャールズ2世せいに議会ぎかい内部ないぶの支持しじ者しゃとして登用とうようされた。アシュリーはクリフォードと共ともに大蔵おおくら委員いいん会かいの委員いいんとして財政ざいせいを担当たんとう、バッキンガムは枢密すうみつ顧問こもん官かん、ローダーデイルはスコットランドにおけるチャールズ2世せいの代理だいりとしてスコットランドを統治とうちした。

外交がいこうでは国務大臣こくむだいじんのアーリントンが主導しゅどうして親おやオランダを掲かかげ、1667年ねんにフランス王おうルイ14世せいがスペイン領りょうネーデルラントを侵略しんりゃくすると（ネーデルラント継承けいしょう戦争せんそう）、1668年ねんにウィリアム・テンプルと組くんでオランダ・スウェーデンと三さん国こく同盟どうめい (1668年ねん)を締結ていけつ、フランスの進軍しんぐんを阻止そしした。しかし、親しんフランスのチャールズ2世せいは1670年ねんに独断どくだんでルイ14世せいとドーヴァーの密約みつやくを結むすび、クリフォードとアーリントンがイングランド代表だいひょうとして調印ちょういんしたことは政府せいふの外交がいこう政策せいさくが一貫いっかんしていないことを表あらわし、議会ぎかいから不信ふしん感かんを抱いだかれた。

1672年ねん3月がつにチャールズ2世せいが第だい三さん次じ英えい蘭らん戦争せんそうを始はじめ、続つづいて4月がつにルイ14世せいがオランダ侵略しんりゃく戦争せんそうを勃発ぼっぱつさせると議会ぎかいの反感はんかんを更さらに買かう結果けっかとなった。戦争せんそうに先立さきだちチャールズ2世せいは1月がつにクリフォードの提案ていあんで国庫こっこ支払しはらい停止ていしを行おこない、3月に宗教しゅうきょうの寛容かんようを唱となえた信仰しんこう自由じゆう宣言せんげんの発布はっぷにアシュリーが賛成さんせい、クリフォードは男爵だんしゃくに叙じょされ大蔵おおくら卿きょうに就任しゅうにん、アシュリーもシャフツベリ伯爵はくしゃくに叙じょされ大だい法官ほうかんに任命にんめいされたが、これらの政策せいさくに反発はんぱつした議会ぎかいは英えい蘭らん戦争せんそうの続行ぞっこうに難色なんしょくを示しめした。

議会ぎかいは1673年ねんに戦費せんぴ承認しょうにんと引ひき換かえに信仰しんこう自由じゆう宣言せんげんの撤回てっかい及および非ひ国くに教徒きょうととカトリックの公職こうしょく排除はいじょを記しるした審査しんさ法ほうの制定せいていをチャールズ2世せいに求もとめ、チャールズ2世せいが屈服くっぷくして両方りょうほうとも承諾しょうだくするとCabalの影響えいきょう力りょくは弱よわまり、クリフォードはカトリックだったため同年どうねんに大蔵おおくら卿きょうを辞任じにんして急死きゅうし、シャフツベリはドーヴァーの密約みつやくで親おやカトリックの裏うら条項じょうこうを知しるとチャールズ2世せいに反発はんぱつ、審査しんさ法ほうに賛成さんせいしたため大だい法官ほうかんを追おわれて下野げや、翌よく1674年ねんにアーリントンも議会ぎかいに弾劾だんがいされ国務大臣こくむだいじんを辞任じにん、バッキンガムとローダーデイルは残のこったがCabalは実質じっしつ的てきに崩壊ほうかいした。以後いご、クリフォード辞任じにん後ごに大蔵おおくら卿きょうとなったダンビー伯はくトマス・オズボーンが親しんオランダ政策せいさくを掲かかげ政権せいけんを率ひきいていった。

参考さんこう文献ぶんけん

• 浜はま林はやし正夫まさお『イギリス名誉めいよ革命かくめい史し 上巻じょうかん』未来社みらいしゃ、1981年ねん。
• 松村まつむら赳たけし・富田とみた虎男とらお編へん『英えい米べい史し辞典じてん』P112、研究けんきゅう社しゃ、2000年ねん。
• 友清ともきよ理り士し『イギリス革命かくめい史し（上うえ）』研究けんきゅう社しゃ、2004年ねん。