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ISDAマスター契約けいやく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ISDAマスター契約けいやく(いすだ-けいやく:ISDA Master Agreement)は、国際こくさいてきもっともよくもちいられている店頭てんとうデリバティブ取引とりひき基本きほん契約けいやくしょ日本語にほんごでは、ISDAマスター・アグリーメント、ISDAマスター契約けいやくしょとも。一連いちれん文書ぶんしょ枠組わくぐみの一部いちぶで、店頭てんとうデリバティブについて完全かんぜんかつフレキシブルなドキュメンテーションが可能かのうなように設計せっけいされている。この枠組わくぐみは、ISDAマスター契約けいやく、スケジュール(Schedule)、コンファメーション(Confirmation)、定義ていぎしゅうのブックレット、およびクレジット・サポート・アネックス(Credit Support Annex:CSA)から構成こうせいされる。ISDAマスター契約けいやくは、国際こくさいスワップデリバティブ協会きょうかい(ISDA)によって出版しゅっぱんされている。

ISDAマスター契約けいやくは、これを締結ていけつしたりょう当事とうじしゃあいだ締結ていけつされるすべての取引とりひきについて適用てきようされる標準ひょうじゅんてき契約けいやく条件じょうけんさだめる文書ぶんしょである。取引とりひき締結ていけつされるごとに、ISDAマスター契約けいやく契約けいやく条件じょうけんさい交渉こうしょうされることなく自動的じどうてき適用てきようされることとなる。

銀行ぎんこうなどの金融きんゆう機関きかん利用りようするものとられることもあるが、ISDAマスター契約けいやく様々さまざま種類しゅるいのカウンターパーティーとのあいだひろもちいられている。

利点りてん

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ISDAマスター契約けいやくは、きわめて長大ちょうだいで、その交渉こうしょう過程かてい負担ふたんおもいかもしれないが、ひとたびISDAマスター契約けいやく署名しょめいされれば、その当事とうじしゃあいだ将来しょうらい取引とりひきについてのドキュメンテーションは、当該とうがい取引とりひき重要じゅうよう契約けいやく条件じょうけんについてのみじかいコンファメーションでりることとなる。

ISDAマスター契約けいやくはさらに、契約けいやく条件じょうけん定義ていぎ契約けいやく趣旨しゅし説明せつめいするための広範囲こうはんいにわたる資料しりょう提供ていきょうするもので、これによって紛争ふんそう減少げんしょうさせることにも役立やくだつ。そのため、法的ほうてき紛争ふんそう予防よぼうされるとともに、標準ひょうじゅんてき契約けいやく条件じょうけん解釈かいしゃく中立ちゅうりつてき資料しりょうとなる。また、ISDAマスター契約けいやくりょう当事とうじしゃあいだのリスク・マネジメントおよびクレジット・マネジメントにおおいに役立やくだつ。

歴史れきし

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ISDAマスター契約けいやくは、1985ねんにISDAが導入どうにゅうし1986ねん改訂かいていしたスワップ・コード(Swaps Code)が発展はってんしたものである。その初期しょき様式ようしき構成こうせいは、標準ひょうじゅん定義ていぎしゅう表明ひょうめい保証ほしょう期限きげん利益りえき喪失そうしつ事由じゆうおよび救済きゅうさい手段しゅだんであった。

1987ねん、ISDAは3つの文書ぶんしょ作成さくせいした。(i)べいドルだて金利きんりスワップ基本きほん契約けいやく標準ひょうじゅん様式ようしき、(ii)複数ふくすう通貨つうか金利きんり通貨つうかスワップ基本きほん契約けいやく標準ひょうじゅん様式ようしきあわせて「1987ねんISDAマスター契約けいやく」(1987 ISDA Master Agreement)という。)および(iii)金利きんり通貨つうか定義ていぎしゅうである。

1990年代ねんだいになってISDAはおおくの文書ぶんしょ作成さくせいした。たとえば、(i)スワップ・コードの改訂かいていばんとして、1991ねんISDA定義ていぎしゅう(1991 ISDA Definitions)(のち作成さくせいされた2000ねんISDA定義ていぎしゅう(2000 ISDA Definitions)にわった。)、(ii)1987ねんISDAマスター契約けいやく改訂かいていによる1992ねんISDAマスター契約けいやく(1992 ISDA Master Agreement)、(iii)1992ねんISDAマスター契約けいやくユーザーズ・ガイド(User's Guide to 1992 ISDA Master Agreement)(1993ねん作成さくせい。1992ねんISDAマスター契約けいやく逐条ちくじょう解説かいせつしょ)、(iv)コモディティ・デリバティブ定義ていぎしゅう(1993ねん作成さくせい、2000ねんおい)、および(v)アネックス(担保たんぽ取引とりひきのドキュメンテーションのためのもの。1994ねん最終さいしゅうされ、1995ねんにユーザーズガイドも作成さくせい。)がある。

マスター契約けいやくはさらに2002ねんにも改訂かいていされた(2002ねんISDAマスター契約けいやく(2002 ISDA Master Agreement))。1992ねんISDAマスター契約けいやく改訂かいていするうごきは、1990年代ねんだい後期こうきにグローバル金融きんゆう市場いちば影響えいきょうおよぼすいくつもの危機ききつづいたことにはしはっする。これらの危機きき、すなわち、香港ほんこん証券しょうけん会社かいしゃ ペレグリン・インベストメンツ・ホールディングス清算せいさんや、1998ねんのロシア財政ざいせい危機ききなどは、ISDA文書ぶんしょにとっては未曾有みぞうのレベルでの試練しれんであった。ISDA文書ぶんしょはこれらの危機ききこたえたが、ISDAは、これらの危機ききからの教訓きょうくんまなびその文書ぶんしょ戦略せんりゃくてき見直みなおしをおこなうことを決定けっていした。その見直みなおしがやがて1992ねんISDAマスター契約けいやく全面ぜんめん改訂かいていへとつながり、2002ねんISDAマスター契約けいやくへと結実けつじつしたのである。

文書ぶんしょ構造こうぞう

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ISDAマスター契約けいやく中心ちゅうしんとして、その周囲しゅういのISDA文書ぶんしょ構造こうぞう構築こうちくされている。不動ふどう文字もじのマスター契約けいやくは、当事とうじしゃ名称めいしょう記入きにゅうのぞいて一切いっさい変更へんこうはなされない。ただし、マスター契約けいやく別紙べっしたるスケジュール(マスター契約けいやくについての選択せんたく追加ついかおよび変更へんこうさだめる文書ぶんしょ)を利用りようすることによってカスタマイズすることになる。

スケジュールとともに、マスター契約けいやくは、その当事とうじしゃあいだ取引とりひきのリスクを適切てきせつ分配ぶんぱいするために必要ひつよう一般いっぱんてき契約けいやく条件じょうけんすべてをさだめるものであるが、特定とくてい取引とりひき特有とくゆう取引とりひき条件じょうけんについては一切いっさいさだめない。ひとたびマスター契約けいやく締結ていけつされれば、その当事とうじしゃは、電話でんわ重要じゅうよう取引とりひき条件じょうけん合意ごういしコンファメーションで文書ぶんしょとして証拠しょうこするだけで、マスター契約けいやくさだめられた基本きほんてき契約けいやく条件じょうけんにはふたたれることなく、すうおおくの取引とりひき締結ていけつすることができる。

マスター契約けいやくには2つのバージョンがある。単一たんいつ通貨つうかによってのみ取引とりひきするどう一法いっぽう域内いきない当事とうじしゃあいだ取引とりひきのためのローカル・カレンシー・バージョンと、りょう当事とうじしゃことなる法域ほういき位置いちことなる通貨つうか取引とりひきする場合ばあいもちいるマルチカレンシー・バージョンである。マルチカレンシー・バージョンの規定きていは、ローカル・カレンシー・バージョンとはことなり、租税そぜい支払しはらい通貨つうか取引とりひき締結ていけつする複数ふくすう営業えいぎょうしょ利用りよう、および送達そうたつ代理人だいりにん指定していかか事項じこうあつかう。a[›]

単一たんいつ契約けいやくせい

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2002ねんISDAマスター契約けいやくのセクション1(c)はつぎのように規定きていする。

"All transactions are entered into in reliance on the fact that this Master Agreement and all Confirmations form a single agreement between the parties ... and the parties would not otherwise enter into any Transactions."
すべての取引とりひきは、ほんマスター契約けいやくおよびすべてのコンファメーションがりょう当事とうじしゃあいだ単一たんいつ契約けいやく構成こうせいするとの事実じじつ依拠いきょして締結ていけつされ、…りょう当事とうじしゃはそうでないかぎりいかなる取引とりひき締結ていけつしない。)

この単一たんいつ契約けいやく概念がいねんはこの構造こうぞう不可欠ふかけつなものであり、ISDAマスター契約けいやくもとづくネッティングによる保護ほご一部いちぶ構成こうせいするものである。すべての取引とりひきが1つの取引とりひきであるという事実じじつによって、期限きげん利益りえき喪失そうしつに、すべての取引とりひきゆいりょうさせて単一たんいつのネットの支払しはらいがくとすることができるのである。

期限きげん利益りえき喪失そうしつ事由じゆう解約かいやく事由じゆう

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ISDAマスター契約けいやくセクション5が「期限きげん利益りえき喪失そうしつ事由じゆう」(Event of Default)と「解約かいやく事由じゆう」(Termination Event)を規定きていする。これらの事由じゆうは、予定よていされた期限きげんよりまえ取引とりひき終了しゅうりょうさせることとなりるものである。

期限きげん利益りえき喪失そうしつ事由じゆうは、ようするに、一方いっぽう当事とうじしゃ責任せきにん事由じゆうである。たとえば、取引とりひきもとづく履行りこう懈怠けたい表明ひょうめいまたは約束やくそく違反いはん倒産とうさんなどである。

解約かいやく事由じゆうは、それ以外いがい事由じゆうであって、いずれの当事とうじしゃ責任せきにんがあるわけではないが、取引とりひき期限きげんぜん解約かいやく根拠こんきょとなる事由じゆうである。たとえば、取引とりひきへの課税かぜいをもたらすような税法ぜいほう変更へんこう違法いほうせい信用しんようりょく悪化あっかをもたらす一方いっぽう当事とうじしゃ合併がっぺいなどである。

クローズアウト・ネッティング

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ISDAマスター契約けいやくのセクション6は、一方いっぽう当事とうじしゃについて期限きげん利益りえき喪失そうしつ事由じゆうまたは解約かいやく事由じゆう発生はっせいした場合ばあい他方たほう当事とうじしゃ取引とりひき早期そうき解約かいやくすることができるむね規定きていし、かつ、当該とうがい取引とりひき解約かいやく価額かがく算出さんしゅつしネットすることでりょう当事とうじしゃあいだ単一たんいつ支払しはらいがくとする(クローズアウト・ネッティングないし一括いっかつ清算せいさん)ための手続てつづきさだめる。

これらの規定きてい適用てきよう仕方しかたについては、当事とうじしゃがスケジュールにおいてえらぶべき2つのポイントがある。

  • ネット解約かいやく価額かがく責任せきにんのある当事とうじしゃたいして支払しはらうべきものとなった場合ばあいに、責任せきにんわない当事とうじしゃ支払しはら必要ひつようがあるかか。これが、支払しはらいかかる「ファースト・メソッド」(First Method)(責任せきにんのない当事とうじしゃ支払しはら必要ひつようがないもの)と「セカンド・メソッド」(責任せきにんのない当事とうじしゃ支払しはら必要ひつようがあるもの)の選択せんたくである。
  • 取引とりひき解約かいやく価額かがくを、代替だいたい取引とりひきについてのマーケットのディーラーからの見積みつもりによって決定けっていするか、または、責任せきにんのない当事とうじしゃ早期そうき解約かいやくによる利益りえきもしくは損失そんしつ算出さんしゅつすることによって決定けっていするか。これが、支払しはらいかかる「マーケット・クォーテーション」(Market Quotation)または「損失そんしつ」(Loss)の選択せんたくである。

上記じょうき適用てきようがあるのは1992ねんISDAマスター契約けいやくのみである。2002ねんマスター契約けいやくはファースト・メソッドを廃止はいししセカンド・メソッドに一本いっぽんした。実際じっさい、ファースト・メソッドは非常ひじょうにまれにしかえらばれなかった。なぜなら、これをえらんだ場合ばあいには、関連かんれんする金融きんゆう機関きかんは、その(ネットではなく)グロスで当該とうがいマスター契約けいやくもとづくエクスポージャーを報告ほうこくする必要ひつようがあったためである。さらに、2002ねんマスター契約けいやくはマーケット・クォーテーションとロスの区別くべつ単一たんいつ概念がいねんえた。「クローズアウト金額きんがく」(Close-out Amount)である。これは解約かいやく取引とりひき(Terminated Transaction)ごとに決定けっていされるものだが、おおまかにいえば、期限きげんぜん解約かいやく(Early Termination Date)時点じてん同等どうとう取引とりひき締結ていけつした場合ばあいしょうじる利益りえきまたは損失そんしつのことである。クローズアウト金額きんがく未払金みはらいきんがく(Unpaid Amount)の総額そうがくが「期限きげんぜん解約かいやく金額きんがく」(Early Termination Amount)である。これは、解約かいやく取引とりひきかんして一方いっぽう当事とうじしゃから他方たほう当事とうじしゃ支払しはらわれるネットの金額きんがくである。

課税かぜい

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ISDAマスター契約けいやくセクション2(d)は、取引とりひき一方いっぽう当事とうじしゃ租税そぜい支払しはらい義務ぎむされた場合ばあい帰結きけつについて規定きていしている。一定いっていの「補償ほしょうすべき租税そぜい」(Indemnifiable Taxes)についてはグロスアップ義務ぎむがある。これは、ISDAマスター契約けいやくほか規定きていともむすびつくものである。たとえば、セクション3(e)およびどう(f)の表明ひょうめい、セクション4(a)およびどう(d)の約束やくそく、およびセクション5(b)(ii)およびどう(iii)の解約かいやく事由じゆうがある。これらの規定きていは、きわめて複雑ふくざつであるため、交渉こうしょう担当たんとうしゃ通常つうじょう、その結果けっか本当ほんとう意図いとはんするものではないかどうか十分じゅうぶん注意ちゅういはらうものである。

個別こべつのデリバティブ取引とりひき関連かんれんする課税かぜい範囲はんいとしては、たとえば、利子りしたいする源泉げんせん徴収ちょうしゅう課税かぜいや、じゅん源泉げんせん徴収ちょうしゅう課税かぜい物品ぶっぴんサービスぜいおよび印紙いんしぜいがある。

マルチブランチ

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ISDAマスター契約けいやくセクション10は、2つ以上いじょう営業えいぎょうしょないし支店してんかつ2つ以上いじょう法域ほういきつうじて取引とりひきおこな当事とうじしゃかんして問題もんだいとなる事項じこうについてあつかう。

関連かんれんする文書ぶんしょ

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スケジュール

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スケジュール(Schedule)は、マスター契約けいやく添付てんぷされる別紙べっしであり、マスター契約けいやく内容ないよう変更へんこうしてカスタマイズするためにもちいられる。たとえば、マスター契約けいやくにおいて当事とうじしゃしめされた様々さまざま選択肢せんたくしからえらんだり、マスター契約けいやくにはない規定きてい追加ついかしたりすることができる(なお、後述こうじゅつのクレジット・サポート・アネックスのパラグラフ11またはパラグラフ13も同様どうようもちいることができる。)。スケジュールには以下いかのような内容ないよう規定きていされている。

  • マスター契約けいやくにおいて言及げんきゅうされる選択せんたくたとえば、ファースト・メソッドとセカンド・メソッド、マーケット・クォーテーションとロス、一定いってい期限きげん利益りえき喪失そうしつ事由じゆうの閾値、当事とうじしゃもちいる営業えいぎょうしょなど。)
  • マスター契約けいやく契約けいやく条件じょうけんについてりょう当事とうじしゃ合意ごういした変更へんこう
  • りょう当事とうじしゃ規定きていしたい追加ついかてき契約けいやく条件じょうけんたとえば、クローズ・アマウント金額きんがく契約けいやくじょう支払しはらいがく相殺そうさいなど)

印刷いんさつされたマスター契約けいやく様式ようしきは、その文書ぶんしょそれ自体じたい変更へんこうすることは一切いっさいない。交渉こうしょう過程かていにおいては交換こうかんされることすらない。標準ひょうじゅんてき契約けいやく条件じょうけんつねもちいられることが前提ぜんていとなっているからである。

クレジット・サポート・アネックス(Credit Support Annex:CSA)は、当事とうじしゃ選択せんたくによって追加ついかされるものではあるが、ひろもちいられている。CSAが追加ついかされるのは、りょう当事とうじしゃが、一方いっぽう当事とうじしゃ他方たほう当事とうじしゃたいするエクスポージャーが合意ごういされた金額きんがくえた場合ばあいには担保たんぽぶつれるむね合意ごういした場合ばあいである。CSAは担保たんぽぶつ差入さしいれおよび返還へんかんもち担保たんぽぶつ種類しゅるい、ならびに担保たんぽされた当事とうじしゃによる担保たんぽぶつ取扱とりあつかいについて規定きていしている。

コンファメーション

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デリバティブ取引とりひき通常つうじょう口頭こうとう電子でんしてき手段しゅだんによって締結ていけつされ、この時点じてんりょう当事とうじしゃあいだ契約けいやく成立せいりつする。契約けいやく条件じょうけん証拠しょうこはコンファメーション(Confirmation:通常つうじょうみじか書簡しょかんである。)に記載きさいされ、ファックスか電子でんしメールで送付そうふされる。コンファメーションの様式ようしきはマスター契約けいやく規定きていされており、コンファメーションへの異議いぎまたは変更へんこうはその受領じゅりょう限定げんていされた時間じかんにおいてのみゆるされるのが通常つうじょうである。コンファメーションは通常つうじょうはとてもみじかく(複雑ふくざつ取引とりひきのぞく。)、日付ひづけ金額きんがくおよび利率りりつ以外いがいにはわずかしか記載きさいされていない。コンファメーションは取引とりひき条件じょうけんかんする紛争ふんそう可能かのうせい最小さいしょうするために交換こうかんされる。

定義ていぎしゅう

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ISDAは、様々さまざま種類しゅるいのマスター契約けいやく補足ほそくする資料しりょう出版しゅっぱんしており、そのれいとして定義ていぎしゅうやユーザーズガイドがある。これらは、紛争ふんそう予防よぼうし、マスター契約けいやく一貫いっかんした使用しようおよび解釈かいしゃく促進そくしんするように設計せっけいされている。これらの資料しりょうはISDAによって出版しゅっぱんされ、直近ちょっきん規制きせい市場いちば変化へんか反映はんえいするために定期ていきてき改訂かいていされている。

取引とりひき種類しゅるいクレジット・デリバティブ通貨つうかデリバティブエクイティ・デリバティブなど。)ごとに、それぞれの定義ていぎしゅうのブックレットがある。

法的ほうてき観点かんてん

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準拠じゅんきょほう

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ISDAマスター契約けいやくは、契約けいやく準拠じゅんきょほうとして、ニューヨーク州法しゅうほうまたはイングランドほうのいずれかがスケジュールにおいて選択せんたくされることを想定そうていしている。

ペイメント・ネッティング

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ISDAマスター契約けいやくにより、当事とうじしゃ店頭てんとうデリバティブ取引とりひきのエクスポージャーをネット・ベースで計算けいさんすることができる。すなわち、当事とうじしゃは、ISDAマスター契約けいやくもとづいて自身じしんがカウンターパーティーにたいして金額きんがくと、どう契約けいやくもとづいてカウンターパーティーが自身じしんたいして金額きんがく差額さがく計算けいさんするのである。

この計算けいさんは、かく取引とりひきのその時点じてんでのポジションを反映はんえいすべく、時価じかベースでおこなわれる。

ISDAマスター契約けいやくによりどういちにちしょうじたどういち取引とりひきもとづく支払しはらいのネッティングが可能かのうであり、そのため、りょう当事とうじしゃあいだでは、どういち取引とりひきについては、いち金額きんがく交換こうかんり、複数ふくすう支払しはらいをする必要ひつようはない。さらに、おおくのカウンターパーティーは、1つの取引とりひき複数ふくすう取引とりひきかをわずどういちにちしょうじたすべての金額きんがくをネットすることにも合意ごういしている。

クローズアウト・ネッティング

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前述ぜんじゅつのとおり、期限きげんぜん解約かいやくさいにはクローズアウト・ネッティングによって単一たんいつ期限きげんぜん解約かいやく金額きんがく一本いっぽんされることになる。ただし、当事とうじしゃ一方いっぽう倒産とうさんした場合ばあいなどに法域ほういきによってはこれが有効ゆうこうみとめられない可能かのうせいがあることに留意りゅういようする。このため、そのような場合ばあいでもクローズアウト・ネッティングを有効ゆうこうとすべく、法域ほういきによっては倒産とうさんほうじょう特別とくべつ規定きていかれていることがある(たとえば、日本にっぽん場合ばあいは、破産はさんほう58じょう5こう金融きんゆう機関きかんとうおこな特定とくてい金融きんゆう取引とりひき一括いっかつ清算せいさんかんする法律ほうりつ3じょうなど。)。

相殺そうさい

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相殺そうさいとは、りょう当事とうじしゃ相互そうご負担ふたんするすで弁済べんさいにある負債ふさい消滅しょうめつさせて差額さがく相当そうとうする弁済べんさいにある負債ふさい一本いっぽんするという決済けっさい方法ほうほうである。なお、当事とうじしゃ弁済べんさい経過けいか支払しはらいについては遅延ちえん利息りそくされるため、期限きげんどおりに支払しはらうよう動機どうきづけられる。

店頭てんとうデリバティブ取引とりひきりょう当事とうじしゃあいだにおける期限きげんぜん解約かいやく金額きんがくとこれと対立たいりつする債権さいけんとの相殺そうさい支援しえんするため、たとえば、米国べいこく連邦れんぽう倒産とうさんほうは、店頭てんとうデリバティブ取引とりひき当事とうじしゃどうほうもとづく自動じどう停止ていし(automatic stay)の対象たいしょうから除外じょがいし、倒産とうさんによる停止ていし命令めいれい最中さいちゅうであっても、倒産とうさん債権さいけんしゃたる当事とうじしゃ倒産とうさんしゃたる当事とうじしゃあいだ相殺そうさい許容きょようしている。

権限けんげん能力のうりょく

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ある個人こじんがその会社かいしゃ拘束こうそくする権限けんげんゆうするかかという問題もんだい解決かいけつするための原則げんそくは、デリバティブに特殊とくしゅなものではない。伝統でんとうてき代理だいりほうもとづいてさだまるのである。基本きほんてきには、当該とうがい個人こじんが、当該とうがい取引とりひきについて当該とうがい会社かいしゃ拘束こうそくするための権限けんげん実際じっさいにまたは外観がいかんじょうゆうしているかどうかを判断はんだんするために、関連かんれんする状況じょうきょうをきちんと確認かくにんすることが必要ひつようである。通常つうじょうは、りょう当事とうじしゃはコンファメーションに署名しょめいする権限けんげんのあるもの署名しょめいリストを交換こうかんし、これをISDAマスター契約けいやくのスケジュールで参照さんしょうする。マーケットの慣行かんこうとして、この問題もんだいは、組織そしき自身じしん内部ないぶの授権について責任せきにんい、また、店頭てんとうデリバティブ取引とりひき締結ていけつすることができることを約束やくそくされたものはそのような権限けんげん外観がいかんじょうゆうしている、との理解りかいもとづいてあつかわれているのである。

依拠いきょ適合てきごうせい

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店頭てんとうデリバティブ取引とりひきおこないち当事とうじしゃが、当該とうがい取引とりひき失敗しっぱいにカウンターパーティーによって責任せきにん追及ついきゅうされ場合ばあいの1つとして、当該とうがいカウンターパーティーが当該とうがい取引とりひきかんして当該とうがい当事とうじしゃ依拠いきょしており、かつ、当該とうがい当事とうじしゃが、当該とうがいカウンターパティーにたいして、なんらかの信認しんにん義務ぎむっていたか、または当該とうがい取引とりひき締結ていけつ勧誘かんゆうたって誤解ごかいまねくような行動こうどうった、という場合ばあいがある。この場合ばあい衡平こうへいほう契約けいやくほうおよび不当ふとう取引とりひき規制きせいのルールが、契約けいやく場合ばあい同様どうように、店頭てんとうデリバティブにも適用てきようされることになる。

この責任せきにん制限せいげんしたい当事とうじしゃは、その契約けいやくにおいて依拠いきょしていないむね表明ひょうめい規定きていし、かく当事とうじしゃ相手方あいてがた当事とうじしゃ依拠いきょせずにみずか独立どくりつ判断はんだんおこなったことをあきらかにする。この表明ひょうめい便利べんりではあるが、当事とうじしゃ行動こうどうがこの表明ひょうめい矛盾むじゅんする場合ばあいには、不当ふとう取引とりひき規制きせいする法令ほうれいなどを理由りゆうとする訴訟そしょうさまたげることはできない。

期限きげんぜん解約かいやく

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相殺そうさい規定きていは、カウンターパーティーとのあいだ履行りこう到来とうらいした債権さいけん債務さいむ相殺そうさいによってカウンターパーティーの倒産とうさんからの債権さいけんしゃ救済きゅうさいはかっているが、まだ弁済べんさいにない将来しょうらいのポジションについてのエクスポージャーについての救済きゅうさいられない。この問題もんだいたいして、ISDAマスター契約けいやくは、カウンターパーティーが倒産とうさんそののISDAマスター契約けいやくじょうのデフォルトとなった場合ばあいに、当事とうじしゃ取引とりひき解約かいやく清算せいさんすることができるようにしている。

ISDAマスター契約けいやくは、当事とうじしゃがISDAマスター契約けいやくどう契約けいやくもとづくすべての取引とりひき解約かいやくできる事由じゆうとして、期限きげん利益りえき喪失そうしつ事由じゆう解約かいやく事由じゆう規定きていしている。一方いっぽう当事とうじしゃ期限きげん利益りえき喪失そうしつ事由じゆう影響えいきょうけた場合ばあい他方たほう当事とうじしゃはマスター契約けいやく解約かいやくし、どう契約けいやくもとづくすべての取引とりひき清算せいさんすることができる。これにたいして、解約かいやく事由じゆう両方りょうほう当事とうじしゃ影響えいきょうるものであり、通常つうじょう第三者だいさんしゃ行為こうい結果けっかとしてしょうじるものであるが、影響えいきょうけた当事とうじしゃは、他方たほう当事とうじしゃがISDAマスター契約けいやく解約かいやく清算せいさんできるようになるまでに解約かいやく事由じゆう治癒ちゆするための猶予ゆうよ期間きかんあたえられている。

関連かんれん項目こうもく

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脚注きゃくちゅう

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^ a: このちがいにかかわらず、マルチカレンシー・バージョンは、どういち法域ほういき取引とりひきどういち通貨つうか支払しはらいがなされる場合ばあいにもしばしばもちいられる。これは、マルチカレンシー・バージョンにある包括ほうかつてき規定きていもちいるためである。

外部がいぶリンク

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