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NTT技術 ぎじゅつ 史料 しりょう 館 かん で保存 ほぞん されているMUSASINO-1B
MUSASINO-1 は、日本電信電話 にほんでんしんでんわ 公社 こうしゃ の電気 でんき 通信 つうしん 研究所 けんきゅうじょ で1957年 ねん に開発 かいはつ された初期 しょき のコンピュータ である。通称 つうしょう M-1。
逓信 ていしん 省 しょう 電気通信研究所 でんきつうしんけんきゅうじょ (通 つう 研 けん )で働 はたら いていた喜安 きやす 善 よし 市 し は、通 つう 研 けん で行 おこな われる様々 さまざま な研究 けんきゅう や開発 かいはつ を続 つづ けていくうち、日本 にっぽん にも汎用 はんよう 性 せい の高 たか いデジタル計算 けいさん 機 き が必要 ひつよう だと考 かんが えたが、開発 かいはつ に必要 ひつよう 不可欠 ふかけつ である安定 あんてい した素子 そし などが当時 とうじ 確保 かくほ できず、誕生 たんじょう したばかりのトランジスタ の国内 こくない 開発 かいはつ を試 こころ みるなどして、機会 きかい をうかがっていた。
それから一 いち 年 ねん もたたない1954年 ねん にパラメトロン が発明 はつめい されると、最初 さいしょ のパラメトロン発表 はっぴょう 会 かい の途中 とちゅう で、すでに喜安 きやす は「機 き は熟 じゅく した」と判断 はんだん 。翌日 よくじつ には通 つう 研 けん の研究 けんきゅう 対象 たいしょう からトランジスタをすべて止 と め、パラメトロン一 いち 本 ほん に絞 しぼ った。やがて初 はつ のコンピュータ開発 かいはつ プロジェクトが始 はじ まった。
当初 とうしょ 喜安 きやす は完全 かんぜん にオリジナルのコンピュータを作 つく る構想 こうそう だったが、一 いち 年間 ねんかん のイリノイ大学 だいがく 留学 りゅうがく から帰国 きこく した室賀 むろが 三郎 さぶろう が、ILLIAC I に関 かん して設計 せっけい 図 ず も持 も ち帰 かえ るなど完璧 かんぺき な把握 はあく をしており「オリジナルなんて無謀 むぼう だ」と進言 しんげん 。開発 かいはつ 人数 にんずう も少 すく なかったので、ILLIAC Iの命令 めいれい セット を実装 じっそう 、ILLIAC I 用 よう のソフトウェアライブラリを利用 りよう することを意図 いと して設計 せっけい された。また室賀 むろが はIBM の売 う り上 あ げ資料 しりょう なども持 も ち帰 かえ り、これを読 よ んだ喜安 きやす は、これから発達 はったつ する分野 ぶんや はコンピュータである事 こと を確信 かくしん したという。
1957年 ねん 3月 がつ に完成 かんせい 、通 つう 研 けん のあった武蔵野 むさしの にちなみ、喜安 きやす がMUSASINO-1と命名 めいめい した。
MUSASINO-1 は5400個 こ のパラメトロン と519本 ほん の真空 しんくう 管 かん で構成 こうせい されている。記憶 きおく 装置 そうち は磁気 じき コアメモリ で当初 とうしょ 32ワード、後 のち に256ワードに拡張 かくちょう された。ワード長 ちょう は 40ビットで、2命令 めいれい が 1ワードに格納 かくのう される。加算 かさん 命令 めいれい にかかる時間 じかん は 1ミリ秒 びょう 、乗算 じょうざん は 6.5ミリ秒 びょう 、除算 じょざん は 26.0ミリ秒 びょう かかった。また連続 れんぞく の稼動 かどう でも安定 あんてい した性能 せいのう を誇 ほこ り、日本 にっぽん 初 はつ の夜間 やかん 無人 むじん 運転 うんてん を開始 かいし 。土曜 どよう 午後 ごご から月曜 げつよう 朝 あさ まで無人 ぶにん でも故障 こしょう しなかったのが自慢 じまん だった。
命令 めいれい セットは ILLIAC I の上位 じょうい 互換 ごかん であった(命令 めいれい が追加 ついか されていた)ため、多 おお くの ILLIAC I 用 よう ソフトウェアを実行 じっこう できた。ただし、ILLIACでは命令 めいれい 語 ご 内 ない の未 み 使用 しよう ビットをデータ格納 かくのう に使用 しよう することがあったため、そのようなプログラムをMUSASINO-1で実行 じっこう すると追加 ついか 命令 めいれい が実行 じっこう されてしまい、そのままでは動作 どうさ しなかった。
MUSASINO-1 は、電気 でんき 通信 つうしん 研究所 けんきゅうじょ 内 ない の計算 けいさん サービスに使 つか われていたが、手作 てづく りの試作 しさく 機 き であったために保守 ほしゅ が困難 こんなん であった。そのため眼鏡 めがね 型 がた パラメトロンを使用 しよう して全 まった く同 おな じアーキテクチャのMUSASINO-1B を1960年 ねん に開発 かいはつ 。これは後 のち には富士通 ふじつう がFACOM 201 として製品 せいひん 化 か した。
現在 げんざい 、NTT技術 ぎじゅつ 史料 しりょう 館 かん に保存 ほぞん ・展示 てんじ されている。