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ナチスの刑法 (プロシヤ邦司法大臣の覚書) - Wikisource コンテンツにスキップ

ナチスの刑法けいほう (プロシヤくに司法しほう大臣だいじん覚書おぼえがき)

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序文じょぶん

 本号ほんごうはナチスの刑法けいほう(プロシアくに司法しほう大臣だいじん覚書おぼえがき) Nationalsozialistisches Strafrecht, Denkschrift des Preuszischen Justizministers, 1933の邦訳ほうやく収録しゅうろくしたものである。

 この覚書おぼえがき本文ほんぶんにもあらわれているとおり、プロシアくに司法しほう大臣だいじんハンス・ケルのそう指揮しきした起草きそうせられたもので、かく項目こうもくにわたり理由りゆうづけがなされているけれども、何処どこまでもナチス刑法けいほう骨組ほねぐみであり、準備じゅんび工作こうさくまるのであるから、これが刑法けいほう草案そうあん形成けいせいされさらすすんで刑法けいほうてんとなるまでには、もとより相当そうとう経緯けいいまねばならぬとおもわれる。しかし、わたしどもはこの覚書おぼえがきによってドイツ刑法けいほう改正かいせいかんするナチスのかなり具体ぐたいてき思想しそう動向どうこう汲取くみとることが出来できるわけである。

 覚書おぼえがき内容ないようについては、まずしき紹介しょうかいをなすよりも、覚書おぼえがき自体じたいによって理解りかいすべきものとかんがえるから、このしょにせらるる方々かたがた是非ぜひとも通読つうどくろうしまれざらんことをのぞむ。ただ、うまでもないことではあるが、ナチスは刑事けいじ立法りっぽう政治せいじ一部いちぶなりとする立場たちばから、覚書おぼえがき一貫いっかんする指導しどう精神せいしんもまた、いわゆる国民こくみん社会しゃかい主義しゅぎであることが注意ちゅういされねばならぬ。ナチスはそのいわゆる有機ゆうきてき国民こくみんてき共同きょうどうたいをきずきあげることをもって現在げんざいおよび将来しょうらいにおけるドイツこく政治せいじ最高さいこう目標もくひょうとし、国家こっかにおける諸々もろもろ処置しょちすべてこの目的もくてきから割出わりだされなければならんとする国家こっか観念かんねん基礎きそいて政治せいじ組織そしきしようとしているから、刑法けいほう改正かいせいもまたそれによって国民こくみんてき共同きょうどうたい自然しぜんてき精神せいしんてきならびに道徳どうとくてき生活せいかつりょく維持いじしかつ助長じょちょうしようとする立場たちばから構成こうせいされねばならぬとするのである。

 そのところでこの覚書おぼえがきにおいては、一方いっぽうにおいては従来じゅうらい個人こじん主義しゅぎてき刑法けいほうだいゆるに共同きょうどうたい主義しゅぎほうをもってせんとし、他方たほうにおいてはまた、従来じゅうらい実害じつがい刑法けいほう Verletzungestrnfrecht を放棄ほうきして危険きけん主義しゅぎ Gefahrdungespringsip をもってこれにえんことを主張しゅちょうしているばかりでなく、犯罪はんざい重罪じゅうざいけいざいおよびたがえ警罪のさん種類しゅるいかつ伝統でんとうてきさんふん主義しゅぎをもって、処罰しょばつ結果けっかにのみとらわれたる形式けいしきてき機械きかいてき分類ぶんるい方法ほうほうなりとしてこれを排斥はいせきし、むし個々ここばっ行為こうい国民こくみんてき共同きょうどうたい存立そんりつにとっての意義いぎいてそれぞれ区分くぶんすることを適当てきとうなりとしている。さらにまた、刑法けいほう編制へんせいにしても、法律ほうりつてき素養そようとぼしき国民こくみん大衆たいしゅうたいして権威けんいある刑法けいほうたらしむるため、従来じゅうらい刑法けいほうてんにおけるかくのりさきにし、つぎごと組織そしきすることを要求ようきゅうしている。

だい一部いちぶ つみ

 だいいちへん 国民こくみんてき共同きょうどうたい保護ほご

  だいいちしょう 国家こっか秩序ちつじょ保護ほご

  だいしょう 民族みんぞくおよび国民こくみん精神せいしん保護ほご

  だいさんしょう 家庭かてい保護ほご

  だいよんしょう 国家こっかてき財産ざいさん保護ほご

 だいへん 国民こくみん各個かっこ保護ほご

  だいしょう 個人こじん保護ほご

  だいろくしょう 労働ろうどうりょく保護ほご

  だいななしょう 経済けいざいてき活動かつどう保護ほご

だい 通則つうそく

  だいいちしょう ばっせい一般いっぱん条件じょうけん

  だいしょう 犯罪はんざいとその形式けいしき

  だいさんしょう けいならびにその処分しょぶん

その諸種しょしゅ項目こうもくについてナチスてき立場たちばからの改正かいせい主張しゅちょう展開てんかいされているが、それらのてんしょうまえにも一言いちげんしたとおり、この覚書おぼえがきにせらるる方々かたがた通読つうどくわずらわすのそとはない。訳語やくごいたらざるてんについてもこのさい諒恕りょうじょいたいとおもう。ここに筆写ひっしゃえてはいしるす。

昭和しょうわきゅうねんがつ

司法しほう大臣だいじん官房かんぼう調査ちょうさ


以下いかりゃく

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  1. 法律ほうりつ命令めいれい官公かんこう󠄁ぶん󠄁しょ
  2. 新聞紙しんぶんし及定刊行かんこうぶつ記載きさいシタル雜報ざっぽう政事せいじじょう論說ろんせつわか時事じじ記事きじ
  3. おおやけ󠄁ひらきセル裁判さいばん󠄁しょ󠄁、議會ぎかいなみ政談せいだん集會しゅうかいニ於󠄁テためシタルえんじじゅつ󠄁

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