国会こっかい議員ぎいん（読よみ）コッカイギイン

日本にっぽんで，全国ぜんこく的てきレベルでの政治せいじ的てき課題かだいに関かんする立法りっぽう的てき機能きのうの遂行すいこう，国家こっか予算よさんの審議しんぎ・議決ぎけつ，中央ちゅうおう政府せいふの監督かんとく・批判ひはんを任務にんむとする全国ぜんこく的てき議会ぎかいとしての国会こっかいの構成こうせいメンバーをいい，衆議院しゅうぎいん議員ぎいんと参議院さんぎいん議員ぎいんを含ふくむ。衆議院しゅうぎいん議員ぎいんは代議士だいぎしとも呼よばれる。ともに国民こくみんの直接ちょくせつ選挙せんきょで選えらばれる。

地位ちい

国会こっかい議員ぎいんは他たの議院ぎいんの議員ぎいんとなったり，被ひ選せんの資格しかくを失うしなったときは当然とうぜん退職たいしょくとなる（国会こっかい法ほう108，109条じょう）。その他た，辞職じしょく，除名じょめい，資格しかく争訟そうしょうで資格しかくなしと決定けっていされたとき（日本国にっぽんこく憲法けんぽう58，55条じょう）などに，議員ぎいんは身分みぶんを失うしなう。国会こっかい議員ぎいんは全ぜん国民こくみんを代表だいひょうする（43条じょう1項こう）。このことは，議員ぎいんが選挙せんきょ民みんの指示しじに法的ほうてきに拘束こうそくされず，みずからの自由じゆう意思いしで良心りょうしんに従したがって行動こうどうできる意味いみと解かいされてきた（代表だいひょう委任いにんまたは自由じゆう委任いにん）。しかし，国会こっかい議員ぎいんが政党せいとうおよび選挙せんきょ民みんの意思いしに事実じじつ上じょう拘束こうそくされることは認みとめざるをえない。汚職おしょくなど国民こくみんの意思いしから乖離かいりする議員ぎいんの行為こういは，全ぜん国民こくみんの代表だいひょう性せいに違反いはんする（国民こくみん代表だいひょう）。また，選挙せんきょの得票とくひょう率りつと議席ぎせき率りつがかなり異ことなるような選挙せんきょ制度せいど（小しょう選挙せんきょ区く制せいはその例れい）も，議員ぎいんの全ぜん国民こくみん代表だいひょう性せいと適合てきごうしない。

議員ぎいん特権とっけん

国会こっかい議員ぎいんは，その所属しょぞくする議院ぎいんが，国会こっかいの構成こうせい機関きかんとして十じゅう分ふん職責しょくせきを果はたしうるよう，特別とくべつの権利けんりを憲法けんぽうで保障ほしょうされている。その一いちは不ふ逮捕たいほ特権とっけんといわれるもので，議員ぎいんは，院外いんがいで現行げんこう犯罪はんざいを犯おかす場合ばあいを別べつとして，国会こっかいの会期かいき中ちゅうは，その所属しょぞくする議院ぎいんの許諾きょだくがなければ逮捕たいほされず，また，会期かいき前まえに逮捕たいほされた議員ぎいんは，その所属しょぞくする議院ぎいんの要求ようきゅうがあれば，会期かいき中ちゅう釈放しゃくほうされなければならないことになっている（日本国にっぽんこく憲法けんぽう50条じょう，国会こっかい法ほう33条じょう）。これは，政府せいふが検察けんさつ権力けんりょくをもって，野党やとう議員ぎいんを拘束こうそくし，議院ぎいんの活動かつどうに圧力あつりょくを及およぼさぬようにとの配慮はいりょからのもので，議院ぎいん本位ほんいの制度せいどというべきである。その二には，議院ぎいんの中なかで議員ぎいんが行おこなった演説えんぜつ，討論とうろんまたは，案件あんけんについての賛否さんぴの意思いし表示ひょうじ（表決ひょうけつ）について，院外いんがいで，民事みんじ上じょう（たとえば〈名誉めいよ毀損きそん〉），刑事けいじ上じょう（たとえば〈秘密ひみつ漏洩ろうえい〉）などの責任せきにんを問とわれないという，発言はつげん・表決ひょうけつの免責めんせき特権とっけんである（日本国にっぽんこく憲法けんぽう51条じょう）。これは，院内いんないの職務しょくむ上じょうの行為こういにかかわる特権とっけんであるが，院外いんがいの政治せいじ批判ひはんを免まぬかれることを意味いみしない。また院内いんないで責任せきにんを問とわれることはありうるし（懲罰ちょうばつ），この特権とっけんも議院ぎいん本位ほんいのものといってよい。議員ぎいん特権とっけんは多おおくの立憲りっけん国家こっかに共通きょうつうして認みとめられ，明治めいじ憲法けんぽうでも認みとめられていた。

議員ぎいんの権限けんげん

法ほうが国家こっか機関きかんとしての議員ぎいんに認みとめる行動こうどう範囲はんい（権限けんげん）で，おもなものは次つぎのとおりである。（1）議案ぎあん発議はつぎ権けん（議員ぎいん立法りっぽう）　議員ぎいんはその議院ぎいんの権限けんげんが及およぶ事項じこうについて議案ぎあんを発議はつぎし，修正しゅうせいの動議どうぎを提出ていしゅつできるが，その場合ばあい，衆議院しゅうぎいんでは議員ぎいん20人にん以上いじょう，参議院さんぎいんでは議員ぎいん10人にん以上いじょうの賛成さんせいを要ようする。予算よさんおよび予算よさん措置そちを伴ともなう法律ほうりつ案あんの場合ばあい，衆議院しゅうぎいんでは議員ぎいん50人にん以上いじょう，参議院さんぎいんでは議員ぎいん20人にん以上いじょうの賛成さんせいを必要ひつようとする（国会こっかい法ほう56，57条じょう，57条じょうの2）。（2）質問しつもん権けん　議長ぎちょうの承認しょうにんを得えて，文書ぶんしょをもって内閣ないかくに質問しつもんできる。内閣ないかくは質問しつもん主意しゅい書しょを受うけ取とれば7日にち以内いないに答こたえなければならない。緊急きんきゅう質問しつもんは口頭こうとうでもできる（74～76条じょう）。（3）質疑しつぎ権けん　議員ぎいんは口頭こうとうで，議題ぎだいになっている案件あんけんについて，委員いいん長ちょう，発議はつぎ者しゃ，国務大臣こくむだいじん等ひとしに対たいし説明せつめいを求もとめることができる。そのほか，討論とうろんに参加さんかし，表決ひょうけつに加くわわる権能けんのう等とうをもっている。また，国会こっかい議員ぎいんは，〈国会こっかい議員ぎいんの歳費さいひ，旅費りょひ及および手当てあて等とうに関かんする法律ほうりつ〉（1947公布こうふ）により，一般いっぱん公務員こうむいんの最高さいこう給料きゅうりょう額がくを下したまわらない歳費さいひを国費こくひから受うける（日本国にっぽんこく憲法けんぽう49条じょう，国会こっかい法ほう35条じょう）。そのほか，諸しょ手当てあて，議員ぎいん会館かいかん，秘書ひしょの便宜べんぎが保障ほしょうされている。議員ぎいんはその権能けんのうに対応たいおうし義務ぎむを負おうが，召集しょうしゅうに応おうじ，委員いいん会かいを含ふくめ会議かいぎに出席しゅっせきし，表決ひょうけつに参加さんかすることは最小限さいしょうげんの義務ぎむである。院内いんないの秩序ちつじょを乱みだす議員ぎいんは，その議院ぎいんによって，その程度ていどにより，公開こうかい議場ぎじょうにおける戒告かいこく・陳謝ちんしゃ，一定いってい期間きかんの登院とういん停止ていし，除名じょめい等とうの懲罰ちょうばつに付ふせられることがある（日本国にっぽんこく憲法けんぽう58条じょう2項こう，国会こっかい法ほう122条じょう）。

議員ぎいん定数ていすう

衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの定数ていすうは，戦後せんご466人にんで出発しゅっぱつし，沖縄おきなわ復帰ふっきと定数ていすう増加ぞうか（1964年ねんと75年ねん，86年ねん）をみたが，1994年ねんに公職こうしょく選挙せんきょ法ほうの改正かいせいで，500人にんとなっている。うち300人にんが小しょう選挙せんきょ区く選出せんしゅつであり，残のこりの200人にんは，全国ぜんこくを11の区くに分割ぶんかつしたブロックごとに比例ひれい代表だいひょうで選出せんしゅつされる（1998現在げんざい）。任期にんきは4年ねんだが，衆議院しゅうぎいんの解散かいさんのときはそれまでとなる（日本国にっぽんこく憲法けんぽう45条じょう）。参議院さんぎいん議員ぎいんの定数ていすうは当初とうしょ250人にん。うち全国ぜんこく区く100人にん，地方区ちほうく150人にん。沖縄おきなわ復帰ふっきで地方区ちほうくが2人にん増ふえ252人にんとなった（1998現在げんざい）。任期にんきは6年ねんだが，3年ねんごとに半数はんすうずつ改選かいせんする。1982年ねんに公職こうしょく選挙せんきょ法ほうの改正かいせいで従来じゅうらいの全国ぜんこく区くが政党せいとうおよび政治せいじ団体だんたいを選えらぶ比例ひれい代表だいひょう選出せんしゅつ区くに変かわった。なお，議員ぎいん定数ていすうの選挙せんきょ区別くべつ配分はいぶんが人口じんこう比ひと不ふ均衡きんこうになっている問題もんだいがあるが，これについては〈議員ぎいん定数ていすう〉の項こうを参照さんしょうされたい。
執筆しっぴつ者しゃ：清水しみず 睦あつし

社会しゃかい的てき特性とくせい

国会こっかい議員ぎいんの資格しかくについては，被選挙権ひせんきょけんを衆議院しゅうぎいん議員ぎいんの場合ばあい満まん25歳さい以上いじょう，参議院さんぎいん議員ぎいんの場合ばあい満まん30歳さい以上いじょうとする（公職こうしょく選挙せんきょ法ほう10条じょう）ほかは，被選挙権ひせんきょけんの欠格けっかく者しゃは，禁治産者きんちさんしゃや禁錮きんこ以上いじょうの刑けいに処しょせられその執行しっこうを終おわるまでの者ものなどごく小しょう範囲はんいに限定げんていされ（公職こうしょく選挙せんきょ法ほう11条じょう），人種じんしゅ，信条しんじょう，性別せいべつ，社会しゃかい的てき身分みぶん，門地もんち，教育きょういく，財産ざいさん，収入しゅうにゅうによる差別さべつは禁きんじられている（日本国にっぽんこく憲法けんぽう44条じょう）。

　しかし，このような制度せいど的てき前提ぜんていにもかかわらず，大衆たいしゅうデモクラシー下かの膨大ぼうだいな数かずの選挙せんきょ民みんを対象たいしょうとする選挙せんきょ運動うんどう，政治せいじ的てき課題かだいの高度こうどの専門せんもん化か・技術ぎじゅつ化か，国会こっかい議員ぎいんの常勤じょうきん職しょく化かなどの結果けっか，今日きょう，国会こっかい議員ぎいんの現実げんじつ上じょうの供給きょうきゅう源げんは，むしろ著いちじるしく限定げんていされており，国会こっかい議員ぎいんの年齢ねんれい構成こうせいや男女だんじょ別べつ構成こうせいも，それによって大おおきな影響えいきょうをうけている。まず，日本にっぽんの国会こっかい議員ぎいんの社会しゃかい的てき背景はいけいにみられるきわだった特徴とくちょうは，元もと官僚かんりょう，労働ろうどう組合くみあい元もと幹部かんぶ，政治せいじ家か二に世せいなどがきわめて数多かずおおいということである。1983年ねん総そう選挙せんきょの結果けっかによると，当選とうせん者しゃ中ちゅう，中央ちゅうおう官僚かんりょう出身しゅっしん66人にん，労働ろうどう組合くみあい幹部かんぶ出身しゅっしん61人にんで，自民党じみんとう衆議院しゅうぎいん議員ぎいん中ちゅうの約やく4分ぶんの1が官僚かんりょう出身しゅっしん者しゃ，社会しゃかい，民社みんしゃ各党かくとう議員ぎいん中ちゅうの4割わり前後ぜんこうが労働ろうどう組合くみあい出身しゅっしん者しゃによって占しめられ，さらに，本人ほんにんまたは妻つまの親おやが国会こっかい議員ぎいんか閣僚かくりょうの経験けいけん者しゃである者ものは，総計そうけい105人にん（自民党じみんとう議員ぎいん84人にん）を数かぞえた（朝日新聞社あさひしんぶんしゃ調しらべ）。対照たいしょう的てきに，1982年ねん中間ちゅうかん選挙せんきょ後ごのアメリカ連邦れんぽう議会ぎかい議員ぎいんの場合ばあい，上院じょういんではおよそ6割わり，下院かいんではおよそ4割わり5分ぶんの議員ぎいんが弁護士べんごしの経歴けいれきをもち，他方たほう，労働ろうどう組合くみあい幹部かんぶ出身しゅっしん者しゃは，上院じょういんでは皆無かいむ，下院かいんでは2人ふたりにすぎなかった。

　国会こっかい議員ぎいんの年齢ねんれいの点てんでは，高齢こうれい化かの進行しんこうが目めだつ。83年ねん総そう選挙せんきょの結果けっかによると，当選とうせん者しゃの平均へいきん年齢ねんれいは56歳さいで，1955年ねん総そう選挙せんきょでの当選とうせん者しゃの平均へいきん年齢ねんれい53歳さいに比ひして3歳さいアップしている。また，83年ねん参議院さんぎいん議員ぎいん選挙せんきょでの当選とうせん者しゃの平均へいきん年齢ねんれいは58歳さいであった。これに対たいして，アメリカ連邦れんぽう議会ぎかい議員ぎいんの平均へいきん年齢ねんれいは，最近さいきんむしろ下降かこう傾向けいこうにあり，1982年ねん中間ちゅうかん選挙せんきょ後ごについてみると，上院じょういん議員ぎいん，下院かいん議員ぎいんの平均へいきん年齢ねんれいは，それぞれ53.4歳さい，45.5歳さいである。さらに，日本にっぽんの国会こっかい議員ぎいん中ちゅうの婦人ふじん議員ぎいんは，39人にんが進出しんしゅつした戦後せんご第だい1回かい総そう選挙せんきょ（1946）の場合ばあいを除のぞき，総そう選挙せんきょごとに10人にん内外ないがいで，衆議院しゅうぎいん議員ぎいん中ちゅうの2%前後ぜんごを占しめるにすぎず，83年ねん総そう選挙せんきょでの婦人ふじん当選とうせん者しゃは8人にんで，全ぜん当選とうせん者しゃ中ちゅうの1.6%であった。また，同年どうねんの参議院さんぎいん議員ぎいん選挙せんきょでの婦人ふじん当選とうせん者しゃは10人にんで，前回ぜんかいの80年ねん参議院さんぎいん議員ぎいん選挙せんきょで当選とうせんした婦人ふじん議員ぎいん9人にんに加くわえて，83年ねん参議院さんぎいん議員ぎいん選挙せんきょ後ごの婦人ふじん参議院さんぎいん議員ぎいんは（死亡しぼう議員ぎいん1人にんを引ひいて）18人にんで，全ぜん参議院さんぎいん議員ぎいん中ちゅうの8%であった（その後ごの89年ねんの参院さんいん選せんでは22人にんが当選とうせん）。ちなみに，アメリカ連邦れんぽう議会ぎかいでは，日本にっぽんの場合ばあいとは逆ぎゃくに，婦人ふじん議員ぎいんは下院かいんに多おおく，上院じょういんには少すくなく，1982年ねん中間ちゅうかん選挙せんきょ後ごの婦人ふじん議員ぎいんは，下院かいんで21人にん，上院じょういんで2人にんであった。
執筆しっぴつ者しゃ：内田うちだ 満みつる