国務大臣こくむだいじん（読よみ）コクムダイジン

日本国にっぽんこく憲法けんぽうにおける内閣ないかくの構成こうせい員いん（閣僚かくりょう）。広義こうぎでは内閣ないかく総理そうり大臣だいじんを含ふくみ（憲法けんぽう99条じょうなど），狭義きょうぎでは内閣ないかく総理そうり大臣だいじんを除のぞいた他ほかの構成こうせい員いんを指さす（68条じょうなど）。狭義きょうぎの国務大臣こくむだいじんは内閣ないかく総理そうり大臣だいじんによって任命にんめいされ，内閣ないかく総理そうり大臣だいじんによって任意にんいに罷免ひめんされうる。任免にんめんには天皇てんのうの認証にんしょうを要ようする。国務大臣こくむだいじんの数かずは1984年ねん現在げんざい，内閣ないかく総理そうり大臣だいじんを除のぞいて20名めい以内いないと定さだめられ，その過半数かはんすうは国会こっかい議員ぎいんでなければならない（内閣ないかく法ほう2条じょう，憲法けんぽう68条じょう1項こう）。また，内閣ないかく総理そうり大臣だいじんその他たの国務大臣こくむだいじんは文民ぶんみんでなければならない（憲法けんぽう66条じょう2項こう）。また，その在任ざいにん中ちゅうは，内閣ないかく総理そうり大臣だいじんの同意どういがなければ訴追そついされない（75条じょう）。国務大臣こくむだいじんは内閣ないかくを構成こうせいして行政ぎょうせい権けんを行使こうしし，国会こっかいに対たいして連帯れんたいして責任せきにんを負おう。内閣ないかく総理そうり大臣だいじんは国務大臣こくむだいじんの中なかから各省かくしょうの長ちょうである各省かくしょう大臣だいじんを任命にんめいする（内閣ないかく総理そうり大臣だいじんと各省かくしょう大臣だいじんとを特とくに〈主任しゅにんの大臣だいじん〉という）。この国務大臣こくむだいじん各省かくしょう長官ちょうかん同どう一人ひとり制せいによって合議ごうぎ体たいである内閣ないかくとその統轄とうかつ下かにある行政ぎょうせい組織そしきとが結むすびつけられるが，各かく大臣だいじんが各省かくしょう長官ちょうかんの立場たちばにとらわれ，内閣ないかくにおける総合そうごう調整ちょうせいを困難こんなんにしているとの批判ひはんがなされることがある。なお（広義こうぎの）国務大臣こくむだいじんがすべて主任しゅにんの大臣だいじんになるわけではなく，内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかん，各かく庁ちょう長官ちょうかんになるほか，特定とくていの行政ぎょうせい事務じむを分担ぶんたん管理かんりしない大臣だいじんも認みとめられている（〈無任所むにんしょ大臣だいじん〉の項こう参照さんしょう）。国務大臣こくむだいじんは両りょう議院ぎいんに出席しゅっせきし，発言はつげんしたり，閣議かくぎを求もとめ，閣議かくぎに出席しゅっせきするなどの権限けんげんを有ゆうし，各省かくしょう大臣だいじんなど行政ぎょうせい機関きかんの長ちょうであれば，行政ぎょうせい機関きかんの事務じむを統括とうかつするなどの権限けんげんを有ゆうする。

　国務大臣こくむだいじんの名称めいしょうは明治めいじ憲法けんぽうから継承けいしょうしたものであるが，その性格せいかくはまったく異ことなる。すなわち，明治めいじ憲法けんぽうにおける国務大臣こくむだいじんは，統治とうち権けんの主体しゅたいである天皇てんのうの権能けんのうの行使こうしを補佐ほさするものであったが，日本国にっぽんこく憲法けんぽうの国務大臣こくむだいじんは行政ぎょうせい権けんの主体しゅたいである内閣ないかくを構成こうせいするものである。統治とうち機構きこうにおける行政ぎょうせい部ぶの機構きこうは国くにによって異ことなり，日本にっぽんの国務大臣こくむだいじんに相当そうとうする職しょくについても，その数かずや地位ちいなどが各国かっこくで多おおかれ少すくなかれ異ことなっている。日本にっぽんと同おなじ議院ぎいん内ない閣かく制せいのイギリスでは20余よ名めいの閣かく内大臣ないだいじんの外そとに閣外かくがい大臣だいじんが存在そんざいする。大統領だいとうりょう制せいのアメリカでは各省かくしょう長官ちょうかんなどの合議ごうぎ体たいである内閣ないかくではなく，大統領だいとうりょうが行政ぎょうせい権けんの主体しゅたいである。
→内閣ないかく
執筆しっぴつ者しゃ：橋本はしもと 信之のぶゆき