御ご庭にわ番ばん（読よみ）オニワバン

…江戸えど時代じだいに入はいると，幕府ばくふ，諸しょ藩はんは隠密おんみつを用もちいて諸しょ方面ほうめんにわたる情報じょうほう収集しゅうしゅうにつとめたが，彼かれらはいずれも軽かるい身分みぶんの者ものであった。幕府ばくふには目付めつけの指揮しき下かに徒と（かち）目付めつけ，小人こども（こびと）目付めつけがあって表裏ひょうりの活動かつどうをし，また将軍しょうぐん以下いか老中ろうじゅう，若年寄わかどしより，側がわ衆しゅ，大目おおめ付づけ，目付めつけなどの命いのちをうけて探索たんさくに従事じゅうじした者ものに御ご庭にわ番ばんがあった。このほかにも，江戸えどの町奉行まちぶぎょう配下はいかには隠密おんみつ廻まわりと称しょうする同心どうしんがあって，市中しちゅうの動静どうせいを探索たんさくした。…

…それは一種いっしゅの直訴じきそ（じきそ）制度せいどで，奉行ぶぎょう人じん，代官だいかんなどを経へずに，直接ちょくせつ，裁判さいばん権けん者しゃ(将軍しょうぐん，大名だいみょうなど)に訴うったえる点てんに特徴とくちょうがあり，1458年ねん(長禄ちょうろく2)，〈無縁むえんの仁じんに於おいては庭にわ中ちゅうすべきの由よし〉ともいわれている。室町むろまち時代じだい，天皇てんのう家か，将軍家しょうぐんけに直属ちょくぞくして作さく庭にわ，造園ぞうえんに携たずさわり〈禁裏きんり御ご庭にわ者しゃ(庭にわ者しゃ)〉〈仙洞せんとう御ご庭にわ者しゃ〉〈公方くぼう御ご庭にわ者しゃ〉といわれた河原者かわらもの，江戸えど時代じだい，将軍しょうぐん直属ちょくぞくの密偵みってい，隠密おんみつで，幕府ばくふの諸しょ機関きかんを通とおさず，後こう庭にわから出入でいりして直接ちょくせつ将軍しょうぐんの命いのちをうけた御ご庭にわ番ばん（おにわばん）のあり方かたも，こうした庭にわの特質とくしつと関係かんけいがある。　現在げんざいでも農作業のうさぎょうを行おこなう平たいらな場ばとしての〈庭にわ〉は，広ひろく民俗みんぞく語彙ごいの中なかに残のこっており，脱穀だっこく，調整ちょうせいをする家いえの外そとの仕事場しごとば，家いえの中なかの土間どまを庭にわというが，なかには共同きょうどう作業さぎょうを行おこなう組織そしきそのものを意味いみしている場合ばあいもある。…

…室町むろまち時代じだいに活躍かつやくした河原者かわらもの（かわらもの）の別称べっしょうの一ひとつ。また，江戸えど時代じだいには徳川とくがわ将軍家しょうぐんけに仕つかえ，白衣はくいで江戸城えどじょうの奥おく庭にわの清掃せいそうや将軍しょうぐんの身みの警備けいびに従事じゅうじするとともに，秘密ひみつ情報じょうほうの収集しゅうしゅう･提供ていきょうを行おこなった〈御ご休息きゅうそく御ご庭にわ之これ者しゃ（ごきゆうそくおにわのもの）〉(ふつうには庭にわ番ばん（にわばん），御ご庭にわ番ばん（おにわばん）といった)のことをさし，さらには〈猿楽さるがく師し(能役者のうやくしゃ)〉に対たいする軽侮けいぶの念ねんのこもった言葉ことばとして使つかわれた語かたり。別べつにまた，江戸えど時代じだいに各地かくちの農家のうかに代々だいだい隷従れいじゅう奉仕ほうしした貧農ひんのうをさす〈庭にわ子こ（にわこ）〉の語かたりとも同義どうぎに用もちいられた場合ばあいがある。…