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日本画(ニホンガ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

日本にっぽんみ)ニホンガ

デジタル大辞泉だいじせん日本にっぽん」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

にほん‐が〔‐グワ〕【日本にっぽん

古代こだい以来いらい中国ちゅうごく朝鮮ちょうせんからの影響えいきょうけながら日本にっぽん発達はったつした、独自どくじ様式ようしきゆうする絵画かいがきぬかみ毛筆もうひつえがき、しゅとしていわ顔料がんりょう)をもちいる。西洋せいよう洋画ようが)にたいしていう。
[類語るいご]大和絵やまとえ浮世絵うきよえ錦絵にしきえ鳥羽絵とばえ俳画はいが

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精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん日本にっぽん」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

にほん‐が‥グヮ日本にっぽん

  1. 名詞めいし 日本にっぽん発達はったつした絵画かいがきぬ毛筆もうひつき、おおいわもちい、独特どくとく技法ぎほう形式けいしき様式ようしきをもつ。とくに、油絵あぶらえ水彩すいさいなどの洋画ようがたいして明治めいじ以後いごのものをいう場合ばあいおおい。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「油絵あぶらえしげる錯にして、日本にっぽん簡潔かんけつなり」(出典しゅってん美術びじゅつしんせつ(1882)〈フェノロサ〉)

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改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん日本にっぽん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

日本にっぽん (にほんが)

ふる中国ちゅうごくからつたえられ,なが歴史れきしなか形成けいせいされた絵画かいがにかわにかわ)を接着せっちゃくざいとして天然てんねんさんいろりょう近代きんだい以降いこう人造じんぞうしょくりょうあらわれた)やすみもちいて表現ひょうげんされる。明治めいじ以後いご西洋せいよう伝来でんらい油絵具あぶらえのぐ使つか油絵あぶらえ洋画ようが)と区別くべつして,これにたいしてもちいられた言葉ことばである。しかし現在げんざい日本にっぽんおおきくわりつつあり,あたらしい表現ひょうげん技術ぎじゅつ採用さいようなどによって洋画ようがとの区別くべつはつけにくくなってきている。にもかかわらず,日展にってんでも日本にっぽん洋画ようがことにしているし,院展いんてん日本にっぽん美術びじゅついん展覧てんらんかい)のように日本にっぽんだけの展覧てんらんかいもあり,社会しゃかい通念つうねんとしてははっきりと区別くべつされている。それゆえ日本にっぽん洋画ようがけて説明せつめいするには,〈材料ざいりょう〉と〈技法ぎほう〉を中心ちゅうしんかんがえてみるのがよい。日本にっぽん歴史れきし状況じょうきょうについては,〈明治めいじ大正たいしょう時代じだい美術びじゅつ〉および〈日本にっぽん美術びじゅつ〉の項目こうもく参照さんしょうされたい。

日本にっぽんでは古代こだいからさまざまな素材そざいうええがかれてきた。和紙わしきぬえがかれたもののほかに,古墳こふん石室いしむろ法隆寺ほうりゅうじ金堂こんどうなど寺院じいんいたかべ皮革ひかくなどにえがかれたものがのこされている。このように日本にっぽんにかわによる絵具えのぐ定着ていちゃくさえ可能かのうならば,さまざまな材料ざいりょうえがくことができるてん特色とくしょくといえる。しかし,なかでもきぬかみとにえがかれたものが数量すうりょうてきにもおおい。現在げんざいおお使つかわれている和紙わしコウゾこうぞ),ガンピ雁皮がんぴ),ミツマタ三椏みつまた),あさなどを漉(す)いた,雁皮紙がんぴし麻紙ましとり子紙こがみなどである(和紙わし)。きぬ東洋とうよう絵画かいがなが歴史れきしなか主流しゅりゅうをなした素材そざいで,そのうつくしい光沢こうたく絵具えのぐいろきだしている。絵画かいがようきぬ衣服いふく使用しようされているものと基本きほんてきにはわらないが,含有がんゆう成分せいぶんセリシンをのぞいていない生絹きぎぬったものである。

すみ絵具えのぐなおしがしにくいため,えがまえ十分じゅうぶん構想こうそうり,下図したずつくるのが普通ふつうである。ねん下図したずほんよう基底きてい材料ざいりょううつすためのかみである。うす丈夫じょうぶ和紙わしまつけむりさけなどでいてよくしみませたもので,下図したずしたき,うえからほねひつでなぞって基底きていぶつうつす。そのぼくなどでさらに絵描えかきし,のこったまつけむりなどをはねぼうきではらう。ほかに,しゅや,胡粉ごふん(ごふん)をったのも使つかわれる。

日本にっぽん絵具えのぐ大別たいべつすると,古代こだいより使つかわれていた天然てんねん産出さんしゅつする鉱物こうぶつくだいたいわ絵具えのぐと,動植物どうしょくぶつから抽出ちゅうしゅつした色素しきそ顔料がんりょうとする絵具えのぐ,そして近代きんだい以降いこう開発かいはつされた人造じんぞう絵具えのぐとにかれる。ここでは天然色てんねんしょくりょう中心ちゅうしんべる。

 青色あおいろには群青ぐんじょう(ぐんじよう),しろぐんなどのいわ絵具えのぐあい(あい)がもちいられる。赤色あかいろにはたつすな硫化りゅうか水銀すいぎん),しゅ硫黄いおう水銀すいぎん混合こんごう加熱かねつしてるもので,赤口しゃっくしゅこうしゅ鎌倉かまくらしゅ古代こだいしゅ鶏冠けいかんしゅくろしゅなどの種類しゅるいがある),しゅ酸化さんかてつ),臙脂えんじえんじ)(動物どうぶつせい),あかるいオレンジしょくをうるよん酸化さんかさんなまり)がもちいられる。緑色みどりいろ緑青ろくしょうはくみどりいわ絵具えのぐとうあい混合こんごうくさしるなどからる。黄色おうしょくには黄土おうどとうせきめす)が使つかわれ,白色はくしょくにはおもに胡粉ごふんはまぐり),また白土しらつちなまりしろなどのいわ絵具えのぐ使つかわれる。その雲母うんも(きら)などがもちいられる。以上いじょうすみくわえたものが日本にっぽん絵具えのぐ主要しゅようなものである。いろすうすくないが,こんしょくかさしょくかずし,また天然てんねんがん絵具えのぐいていろ変化へんかあたえることもある。これら天然てんねん絵具えのぐのほかに,現在げんざいでは日本にっぽん絵具えのぐ大半たいはんめるしんいわ絵具えのぐがある。これは高温こうおん溶解ようかいしたときガラスしつになるフリットに,高温こうおん発色はっしょくする金属きんぞく酸化さんかぶつくわえて坩堝るつぼ(るつぼ)などで混合こんごうし,それをくだいて粒子りゅうしべつけたものである。ほかに合成ごうせい絵具えのぐぼう絵具えのぐ泥絵具どろえのぐかおいろどりなどがある。
絵具えのぐ

はく(はく)にはきむぎんをはじめとし,プラチナなどがもちいられる。金箔きんぱくにはあつさのちがいと,ぎんどうとの合金ごうきんによるいろがあり,じゅん金箔きんぱく山吹やまぶきあおきん(あおきん),水金みずかねなどとばれる。これを画面がめんったり,らして文様もんよう表現ひょうげんすることはふるくからおこなわれた。その方法ほうほうは,まずたけバレンにツバキなどをつけ,それをはくごうはくはくあいだにはさんである)にのばし,このかみはくかる接着せっちゃくさせる。この作業さぎょうはくを〈あかす〉という。このようにしてあつかいやすくなったはくを,すうにかわえきったかみきぬ画面がめんじょうに,どうさ(礬水どうさえきなどでってゆく。

 古代こだいから仏画ぶつがなどにみられるきり(截)きむ(きりかね)は,仏師ぶっしはくとよばれるぎんおおふくんだあつはく金箔きんぱく炭火すみびわせたのちやわらかな鹿しかがわうえにのせ,竹刀しないほそり,2ほんふで使つかって文様もんようえがいてゆく技術ぎじゅつである。砂子すなご(すなご)は粗密そみつかく種類しゅるいあみった竹筒たけづつ切廻きりまわはく粒状りゅうじょうにしたのちふたた竹筒たけづつぼうなどで竹筒たけづつをたたいて画面がめんとしてゆく技法ぎほうで,装飾そうしょく効果こうかたかめるためのものである。どろ(でい)ははくをつくるさい切廻きりまわはくなどをわせたもので,金泥きんでいにかわり,うえきつけてはきかえすという作業さぎょうをくりがえしながら使つかうとうつくしい発色はっしょくられる。また金泥きんでいったのち貝殻かいがら動物どうぶつきばなどで上面うわつらをこすり,かがやきをしたりもする。銀箔ぎんぱく空気くうきれると酸化さんかくろ変色へんしょくするので,うえからどうさえきって保護ほごする。

すみ五彩ごさいあり〉といわれるように,日本にっぽんにおいてすみたす役割やくわり水墨すいぼくかぎらず重要じゅうようである。まつけむりせいすみあおすみともばれあおあじをおび,絵画かいがではこのんで使つかわれる。またどんな絵具えのぐにもけやすい性質せいしつ利用りようして,胡粉ごふんぜたかいすみ(かいずみ)などをかくいろ混入こんにゅうし,日本にっぽん表現ひょうげんひろげている。またりょうすみ粒子りゅうしをきれいに水分すいぶん分散ぶんさんさせ,発色はっしょく効果こうかきだす用具ようぐとしてすずり(すずり)も重要じゅうようである。

にかわ

日本にっぽんささえる大切たいせつ接着せっちゃくざいであり,ふるくから使つかわれてきた。一貫いっかん(3.75kg)で3000ほんぐらいになるためさんせんほんにかわばれるものや鹿しかにかわつぶにかわおににかわなどがある。まずみずひたして十分じゅうぶん膨潤したのち湯煎ゆせんなどによってやく70℃でかす。これをぬのして使つかう。濃度のうどかく作家さっかによってことなるがおおよそさんせんほんにかわ5ほんみず200㏄ぐらいが標準ひょうじゅんである。

にかわえきミョウバン硫酸りゅうさんアルミニウムカリウム)をかした混合こんごうえきで,日本にっぽんえがうえでさまざまに使用しようされる。一般いっぱんには基底きてい材料ざいりょうである和紙わしきぬうえられる。これは基底きていぶつ吸湿きゅうしつせいをおさえてにかわ絵具えのぐ画面がめん定着ていちゃくさせるためであるが,いたなどではいたふくまれる樹脂じゅしがにじみるのを防止ぼうしする。そのきむ銀箔ぎんぱく接着せっちゃく銀箔ぎんぱく銀泥ぎんでい表面ひょうめんられるなどその用途ようとひろい。しかし,どうさはミョウバンをふくみ,使用しようあやまるとかえって素材そざいりょう劣化れっかはやめることもあるので,過度かど使用しようはいましめるべきである。

ふで用途ようとべつにさまざまの種類しゅるいがあるが,もとはしょ同一どういつで,明治めいじはいりヨーロッパの多様たよう表現ひょうげんほう影響えいきょうけて,種類しゅるいしてきた。にはひつじ鹿しかうまうさぎ,イタチ,タヌキ,テン,ねこ,ネズミなどがあり,それぞれの特性とくせいかして使つかわれている。づけりつ(つけたて)ふで面相めんそうひつ線描せんがひつ彩色さいしきひつ隈取くまどりひつなどがある。づけりつひつ線描せんがきやぼつこつ(もつこつ)技法ぎほうなどに用途ようとひろく,墨絵すみえ便利べんり面相めんそうひつ線描せんびょうひつほそせんくためにもちいる。彩色さいしきひつ絵具えのぐにかわふくみがよいもの,隈取くまどりひつはぼかしやくまをとるのに使つかう。刷毛はけにははば1すんから8すんまで各種かくしゅあり,一定いっていはば均一きんいつ刷毛ばけひろ面積めんせきをぼかしたりするカラ刷毛ばけ,どうさをるどうさ刷毛ばけと,ふでよこなんほんもつなげたれんひつ大別たいべつされる。

えがげ,作家さっかをしるし,しるしして日本にっぽん完成かんせいである。しるしどろしゅヒマシ松脂まつやにしろ蠟などとわせたもので,時間じかんをかけて十分じゅうぶんられたものがよい。印材いんざい作家さっか名前なまえごうったもので,いしたけ陶器とうきつくられる。石材せきざいにはにわとりせきなどさまざまなうつくしいいしもちいられる。しるしのりしるしすとき印材いんざい固定こていする定規じょうぎである。

おおきく単色たんしょく彩色さいしきけられる。単色たんしょくおおくはすみ一色いっしょくである(まれにしゅ一色いっしょくあい一色いっしょくがある)が,この場合ばあい下図したず相当そうとうするデッサンのぞいてタブローとしてのみいうと,せんだけで表現ひょうげんするものを〈白描はくびょう〉,すみ濃淡のうたんめんあらわすものを〈水墨すいぼく〉という。白描はくびょうは〈しらえ〉ともいい,日本にっぽんでもふるくからある技法ぎほうで,清潔せいけつで,流動りゅうどうかんあらわすに好適こうてきである。正倉院宝物しょうそういんほうもつの《とりたておんな屛風》や,鳥羽とばそう正覚しょうがく猷筆とつたえられる《鳥獣ちょうじゅう戯画ぎが》などがその好例こうれいである。また輪郭りんかくせん物象ぶっしょうかたちかこむのをかぎ勒(こうろく)ほうといい,仏画ぶつがなどのようにふとほそいのないせんでくくるのをてつ線描せんびょう反対はんたい抑揚よくようおおいのをこえ瘦(ひそう)のあるせんなどという。水墨すいぼくすみ物体ぶったいめんをとらえ,マッスをつくり,また空間くうかんふかみ,奥行おくゆきをあらわす。そのためにすみ濃淡のうたん駆使くしするというものである。いずれにしても単色たんしょくは,直截ちょくせつはしてき表現ひょうげんほうで,この簡素かんそ直接ちょくせつほう表現ひょうげんは,東洋とうようことに日本にっぽんてき性情せいじょうてきして発展はってんし,せんすみ意味いみ価値かちおもたくして,色彩しきさいあつかいにまでその意味いみ方法ほうほう延長えんちょうしていったとおもわれる。いまでも日本にっぽん生命せいめいせんすみにあるが,現代げんだい日本にっぽん完全かんぜんてはまるというわけにはいかない。

 洋画ようがのようなそく物的ぶってき執拗しつよう表現ひょうげん能力のうりょくけ,簡素かんそ素朴そぼくな,また暗示あんじてき表現ひょうげんほういま特徴とくちょうであるが,すみせんだけではとうていしきれぬ感覚かんかく今日きょうでは経験けいけんしている。今日きょう日本にっぽんは,彩色さいしき圧倒的あっとうてきである。彩色さいしきにはつぎの種類しゅるいがある。(1)平安へいあん時代じだい後期こうきに〈(だみえ)〉としょうし,後世こうせい極彩色ごくさいしょく〉としょうしたいろどり。(2)絵巻物えまきものなどにみる〈せん〉を没却ぼっきゃくしない程度ていど濃度のうどまたはせん並行へいこうする濃淡のうたんうごきのある彩色さいしきほう。(3)室町むろまち時代じだい以後いご,あくまですみおもにして,あいみどり透明とうめい水絵具みずえのぐ,あるいは胡粉ごふんしゅ代赭たいしゃたいしや)をもちいても,すみ意味いみ補足ほそくする〈淡彩たんさい〉。(4)輪郭りんかくせんなしに物象ぶっしょうあらわす〈ぼつ骨法こっぽう〉(これはすみ場合ばあいにもいう)。(5)おなじく輪郭りんかくせんなしだが,いろ物象ぶっしょう生態せいたいそくうつしてき描写びょうしゃする〈づけ立法りっぽう〉。(6)吸湿きゅうしつせい利用りようする〈ふくさがき〉。(7)反対はんたい絵具えのぐ紙面しめんにしみませず,たまった絵具えのぐそうった偶然ぐうぜん効果こうかつ〈たらしこみ〉。(8)きむ銀箔ぎんぱく画面がめんく〈はく押〉。(9)それをこまかくして蒔(ま)く〈砂子すなご〉。以上いじょうのようにいろいろあるが,しだいにあつりとなり,マチエールの迫力はくりょくにたよるようになってきて,従来じゅうらいとちがった表現ひょうげん様相ようそうていするようになってきた。
執筆しっぴつしゃ


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日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)日本にっぽん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

日本にっぽん
にほんが

日本にっぽん伝統でんとうてき絵画かいが日本にっぽん名称めいしょう確立かくりつするのは明治めいじ10年代ねんだい(19世紀せいきまつ)で、西洋せいよう油絵あぶらえたいするかたりとしてまれ、伝統でんとうてき日本にっぽん絵画かいが流派りゅうは様式ようしき区別くべつなしに、一括いっかつして「日本にっぽん」と呼称こしょうするようになった。したがって、今日きょう日本にっぽんとよばれている絵画かいが領域りょういきには、広義こうぎには大和やまと(やまと)(やまと倭絵やまとえ)、から(からえ)、水墨すいぼく南画なんが洋風ようふうをはじめ、浮世絵うきよえなどの風俗ふうぞくまですべてをふくむことになるが、狭義きょうぎには、大和絵やまとえから交流こうりゅうによってまれた狩野かの(かのう)や、江戸えど時代じだい中期ちゅうき以降いこう発展はってんした円山まるやま(まるやま)、さらに明治めいじ以降いこう流行りゅうこうした大和絵やまとえふう平面へいめんてき装飾そうしょくてき絵画かいがをさす。

 平安へいあん時代じだい中国ちゅうごくからつたわったいわゆるからは、日本にっぽん自然しぜん風土ふうど適合てきごうした絵画かいが表現ひょうげんとなり、せんかたいろ配合はいごうなどに日本人にっぽんじん感覚かんかくかした繊細せんさい優美ゆうびほう案出あんしゅつされ、冊子さっし(さっし)や絵巻物えまきものいろどった。これを大和絵やまとえという。鎌倉かまくら室町むろまち時代じだい大陸たいりくからつたわった水墨すいぼくは、桃山ももやま時代じだいさわへい(しょうへい)大作たいさくとなって発展はってんした。これに大和絵やまとえ手法しゅほうれて、金箔きんぱく(きんぱく)や金泥きんでい(きんでい)をふんだんに使つかった(だみえ)の手法しゅほうで、寺院じいん書院造しょいんづくりのふすまをかざったのが狩野かのひさしとく(えいとく)らの桃山ももやまきむあおい(きんぺき)さわへいである。大和絵やまとえはそうした大作たいさくのほか、細密さいみつ描写びょうしゃ風俗ふうぞく表現ひょうげんめんでいかんなく本領ほんりょう発揮はっきしたが、このような大和絵やまとえのもつ装飾そうしょくせいも、日本にっぽん伝統でんとうてき特色とくしょくひとつにあげられる。江戸えど時代じだい狩野かの幕府ばくふ御用ごよう絵師えしとして勢力せいりょくるったが、江戸えど中期ちゅうきになって円山まるやま応挙おうきょ(おうきょ)は西洋せいよう透視画法とうしがほう日本にっぽん大和絵やまとえ装飾そうしょくてき表現ひょうげん融合ゆうごうさせてあたらしい様式ようしきした。この円山まるやま画風がふうは、今日きょう京都きょうと画壇がだんつたえられている。

 明治めいじ以後いごは、岡倉おかくら天心てんしん(てんしん)がとなえた伝統でんとうてき日本にっぽん絵画かいがさい発見はっけん認識にんしきのうえにたって、横山よこやま大観たいかん(たいかん)らがあたらしい日本にっぽんてた。その中心ちゅうしん発表はっぴょう機関きかんとなったのが、日本にっぽん美術びじゅついん天心てんしん没後ぼつご再興さいこう日本にっぽん美術びじゅついん)による「院展いんてん」で、今日きょうでは「日展にってん」と「そう画会がかい」とともに日本にっぽんさんだい勢力せいりょく形成けいせいしている。今日きょう日本にっぽん洋画ようが接近せっきんし、発想はっそうから表現ひょうげんまでほとんど洋画ようがことならず、油絵あぶらえのようにあつりにする作家さっかて、ただ材料ざいりょう画家がか出身しゅっしんによってのみ区別くべつされる傾向けいこうにある。

 日本にっぽんこう物質ぶっしつ顔料がんりょうおもで、天然てんねんいわくだいて粉末ふんまつにしたいわ群青ぐんじょう(ぐんじょう)、緑青ろくしょう(ろくしょう)など)、金属きんぞく粉末ふんまつなどの泥絵どろえ黄土おうど(おうど)、しゅたん(たん)、金銀きんぎんどろなど)、みずける水絵みずえ代赭たいしゃ(たいしゃ)、あい(あい)、臙脂えんじ(えんじ)など)の3しゅがあり、きむ銀箔ぎんぱくなども併用へいようされ、かみまたはきぬえがかれる。そのさい、まえもって礬水どうさ(どうさ)(明礬みょうばん(みょうばん)をかしたみずにかわ(にかわ)をぜたもの)をひき、すみのにじみをふせ必要ひつようがある。技法ぎほうてきにも、せん運筆うんぴつ技法ぎほう色彩しきさいのぼかしの技法ぎほうなど、日本にっぽん独自どくじ伝統でんとうがあり、油絵あぶらえ技法ぎほうくらべて、すぐにだれにでもできるというものではなく、かなりの修練しゅうれん必要ひつようとする。

 また、旧来きゅうらい日本にっぽんじくそう屏風びょうぶ(びょうぶ)仕立したてて、がく巻物まきものなどのかたちおもであったが、今日きょうでは洋画ようがおながくそうによる発表はっぴょうおおい。これも家屋かおく洋風ようふうと、日本にっぽん屋内おくない個人こじん鑑賞かんしょうから展覧てんらんかいによる会場かいじょう芸術げいじゅつへと変貌へんぼう(へんぼう)しつつある証左しょうさであろう。

中村なかむらけいおとこ

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日本にっぽん【にほんが】

明治めいじ以後いご西洋せいようから輸入ゆにゅうされた油絵あぶらえ洋画ようが)にたいしてつくられたかたりで,日本にっぽん古来こらい技法ぎほう様式ようしきによるをいう。いわ絵具えのぐ水絵具みずえのぐにかわ(にかわ)みずでといて絹地きぬじかみえがく。院展いんてんひとしのように日本にっぽんだけの展覧てんらんかいもあり,日展にってんでも日本にっぽん洋画ようが区別くべつがあるが,材料ざいりょう技法ぎほうとう複雑ふくざつ多様たようになっている現代げんだい美術びじゅつにおいては明確めいかく区別くべつがつけにくくなっている。
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山川やまかわ 日本にっぽんしょう辞典じてん 改訂かいてい新版しんぱん日本にっぽん」の解説かいせつ

日本にっぽん
にほんが

きぬ和紙わし顔料がんりょう染料せんりょうえが伝統でんとうてき形式けいしき絵画かいが明治めいじ以降いこう西洋せいよう絵画かいがたいする日本にっぽん伝統でんとう形式けいしき絵画かいがをさす。日本にっぽんという用語ようご概念がいねんは,明治めいじ20年代ねんだい洋画ようがさかんにえがかれるようになったことにより,これに対応たいおうするかたちで成立せいりつした。以後いごだい2大戦たいせんまで,地域ちいきてきには京都きょうと画壇がだん東京とうきょう画壇がだんけい社会しゃかいてきには日本にっぽん美術びじゅついん中心ちゅうしんとする革新かくしんけい新派しんぱ日本にっぽん美術びじゅつ協会きょうかい中心ちゅうしんとする保守ほしゅけい旧派きゅうは中道ちゅうどうけい中心ちゅうしんとするかんてんけいという基本きほん構図こうずのうえで展開てんかいした。だい2大戦たいせん概念的がいねんてき技法ぎほうてき社会しゃかいてきにも多様たようし,日本にっぽん概念がいねんをめぐる拡散かくさん収束しゅうそくをくりがえしている。

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日本にっぽん文化ぶんかいろは事典じてん日本にっぽん」の解説かいせつ

日本にっぽん

日本にっぽんとは、伝統でんとうてき日本にっぽんほうもちいてえがかれた絵画かいがのことです。日本にっぽんたいし、西洋せいようほうもちいてえがかれた洋画ようがびます。日本にっぽん日本にっぽん文化ぶんか発達はったつとともに様々さまざま発展はってんげてきました。チラシやポスターなど、江戸えど時代じだい風俗ふうぞくあらわした浮世絵うきよえ日本にっぽん四季しき素晴すばらしさをはな々ととりたち表現ひょうげんした花鳥かちょう・・・。日本にっぽんからは、日本人にっぽんじんのその時代じだい時代じだい風俗ふうぞく心情しんじょうてとれます。日本にっぽん文化ぶんかいろは事典じてんでは「い」に意味いみ目的もくてき特徴とくちょうを、「ろ」にえがかれがれてきた歴史れきしを、「は」にその描画びょうが方法ほうほう紹介しょうかいしています。

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日本にっぽん
にほんが

日本にっぽん古来こらい伝統でんとうてき表現ひょうげん様式ようしきもとづく絵画かいが明治めいじ時代じだい西洋せいよう摂取せっしゅさかんになると,狩野かの土佐とさ円山まるやま四条しじょう南画なんがなど江戸えど時代じだい以来いらい伝統でんとうてき表現ひょうげん様式ようしきもとづく絵画かいが西洋せいよう区別くべつする必要ひつようしょうじ,それらを一括いっかつして日本にっぽんんだ。

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