玉井たまい（読よみ）タマノイ

能のうの曲目きょくもく。初はつ番ばん目め物ぶつ。観世かんぜ(かんぜ)・金きむ剛つよし(こんごう)・喜多きた(きた)流りゅう現行げんこう曲きょく。観世かんぜ小次郎こじろう信光のぶみつ(のぶみつ)作さく。『日本書紀にほんしょき』を典拠てんきょとする。魚さかなにとられた兄あにの釣つり針ばりを取とり戻もどすべく、彦火々出で見み尊みこと(ひこほほでみのみこと)（ワキ）は海うみの都とに至いたり、豊玉とよたま(とよたま)姫ひめ（前まえシテ）・玉たま依よ(たまより)姫ひめ（ツレ）姉妹しまいと会あい、豊玉とよたま姫ひめと結婚けっこんして月日つきひが流ながれる。貝かいたち（間あいだ(あい)狂言きょうげん）の祝宴しゅくえんの場面ばめんののち、2人ふたりの姫ひめ（後こうツレ）は潮うしお満みつる玉だま(しおみつたま)・潮干しおひ玉だま(しおひるたま)を贈おくり、父親ちちおやの老ろう竜王りゅうおう（後こうシテ）は釣つり針ばりを捜さがし出だして捧ささげ(ささ)げ、尊みことを陸地りくちに送おくる。古代こだいの異い民族みんぞく交婚説話せつわを描えがく、雄大ゆうだいで舞台面ぶたいめんのにぎやかな作品さくひん。前段ぜんだんのシテとツレが後段こうだんでは子方こかたとして登場とうじょうする演出えんしゅつもあるのは、竜王りゅうおうを強調きょうちょうする能のうの遠近えんきん法ほうである。

［増田ますだ正造しょうぞう］