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石油(セキユ)とは? 意味や使い方 - コトバンク

石油せきゆみ)セキユ英語えいご表記ひょうき)petroleum

翻訳ほんやくpetroleum

デジタル大辞泉だいじせん石油せきゆ」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

せき‐ゆ【石油せきゆ

種々しゅじゅ炭化たんか水素すいそ混合こんごうぶつ主成分しゅせいぶんとする液状えきじょう物質ぶっしつ海底かいてい堆積たいせきたいせきした生物せいぶつ遺体いたいバクテリア作用さようねつ圧力あつりょく分解ぶんかいしてできたとされる。天然てんねんのままのものを原油げんゆとよび、蒸留じょうりゅう精製せいせいしてガソリン灯油とうゆ軽油けいゆピッチなどをる。燃料ねんりょう化学かがく工業こうぎょうよう原料げんりょうとして重要じゅうよう
とくに、灯油とうゆ俗称ぞくしょう
[類語るいご]あぶら脂肪しぼう脂肪しぼう油脂ゆし魚油ぎょゆ香油こうゆオイル原油げんゆ重油じゅうゆ軽油けいゆ灯油とうゆガソリン揮発きはつ精油せいゆグリース

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精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん石油せきゆ」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

せき‐ゆ【石油せきゆ

  1. 名詞めいし
  2. 炭化たんか水素すいそ主成分しゅせいぶんとする天然てんねんさんする液状えきじょう混合こんごうぶつ太古たいこ生物せいぶつたい地中ちちゅう変質へんしつしてしょうじたとかんがえられ、ふつう黒褐色こっかっしょく液体えきたいし、これを原油げんゆといい、みずよりかる臭気しゅうきがある。原油げんゆ種々しゅじゅ装置そうち蒸留じょうりゅう精製せいせいされ、沸点ふってんにより揮発きはつ灯油とうゆ軽油けいゆ重油じゅうゆけられる。灯火ともしびようをはじめ自動車じどうしゃ火力かりょく発電はつでんジェット機じぇっときなどの燃料ねんりょう、また、石油せきゆ化学かがく工業こうぎょう原料げんりょうとする。石炭せきたん。せきゆう。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「きわめて良品りょうひんなる石油せきゆ多分たぶんし」(出典しゅってん朝野あさの新聞しんぶん明治めいじいちいちねん(1878)さんがつさんにち)
    2. [その文献ぶんけん]〔ゆめけい筆談ひつだん雑誌ざっしいち
  3. 原油げんゆ精製せいせい加工かこうした石油せきゆ製品せいひん総称そうしょう。ガソリン・灯油とうゆ軽油けいゆ重油じゅうゆなど用途ようとおうじておおくの種類しゅるいがある。とくに、灯油とうゆをさしていうことがおおい。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「土中どちゅうよりづるいわあぶらにして、これれをせいすれば石油せきゆる」(出典しゅってんようがく読本とくほん(1887)〈西にし邨貞〉なな)
  4. 原油げんゆ関連かんれんして産出さんしゅつするガスじょう炭化たんか水素すいそかたじょう炭化たんか水素すいそ総称そうしょうしていう。

せき‐ゆう‥イウ石油せきゆ

  1. 名詞めいしせきゆ(石油せきゆ
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「蜜柑みかんばこ石油せきゆ(セキイウ)そらばこだいにして、なずらえ(まが)西陣にしじんせた人形にんぎょうふたみっつもかざったいえが」(出典しゅってん東京とうきょう年中ねんじゅう行事ぎょうじ(1911)〈若月わかつき紫蘭しらんがつれき)

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日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)石油せきゆ」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

石油せきゆ
せきゆ
petroleum

天然てんねん地下ちかから産出さんしゅつする原油げんゆおよびこれを精製せいせい加工かこうしてられる各種かくしゅ液体えきたい燃料ねんりょう潤滑油じゅんかつゆなどの石油せきゆ製品せいひんpetroleum productを総称そうしょうして石油せきゆという。石油せきゆはいうまでもなく、現代げんだい、エネルギーげんとして、また化学かがく工業こうぎょう原料げんりょうとして、もっとも重要じゅうよう資源しげんである。地球ちきゅう堆積たいせき(たいせき)そうまれた古代こだい生物せいぶつちゅう有機物ゆうきぶつ由来ゆらいし、石炭せきたんおなじく化石かせき燃料ねんりょう一種いっしゅである。petroleumというかたりラテン語らてんごのterta(いわいし)を語源ごげんとし、ギリシアのpetros(いわ)とoleum(あぶら)からつくられた。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

石油せきゆ利用りよう歴史れきし用途ようと拡大かくだい

石油せきゆ歴史れきしはきわめてふるく、メソポタミア、ペルシアなどの地方ちほうでは、すくなくとも紀元前きげんぜん3200ねんころから人々ひとびとられていたことをしょうする石油せきゆ遺跡いせきがある。ふる記録きろくでは『旧約きゅうやく聖書せいしょ』にノアのはこぶね防水ぼうすいようとしてアスファルト使つかうことがしるされており、日本にっぽんでも668ねん天智天皇てんぢてんのう7)にこし(こし)のくに新潟にいがたけん)からもえゆるみずもえゆる朝廷ちょうてい献上けんじょうしたことが『日本書紀にほんしょき』にしるされている。このもえゆるみずはまた「くそうず」とよばれ、においすいくさ生水なまみずなどの文字もじがあてられた。当時とうじはもちろん地表ちひょう自然しぜんにしみ原油げんゆやアスファルトが採取さいしゅされたにすぎない。

 13世紀せいきころ、ビルマ、カスピ海かすぴかい沿岸えんがんなどで、幼稚ようちりによる原油げんゆ採掘さいくつはじめられたといわれ、16~17世紀せいきころには簡単かんたん石油せきゆ精製せいせいおこなわれたようである。日本にっぽんでも1613ねん慶長けいちょう18)、越後えちご(えちご)の真柄まがら仁兵衛じんべえ(まがらにへえ)がらん引(らんびき)としょうする簡単かんたん蒸留じょうりゅう装置そうちにより灯油とうゆ記録きろくがある。

 その1848ねんイギリスの化学かがくしゃJ・ヤングは、炭坑たんこうから湧出ゆうしゅつ(ゆうしゅつ)した原油げんゆあるいは石炭せきたん乾留かんりゅうタールから、はじめて蒸留じょうりゅう化学かがく処理しょりによる灯油とうゆ潤滑油じゅんかつゆなどの製造せいぞう研究けんきゅうして特許とっきょた。ヤングの方法ほうほうはアメリカにつたわり、石炭せきたんcoal oilとよばれて、従来じゅうらい植物しょくぶつ動物どうぶつにかわり、原油げんゆ石炭せきたんから精製せいせい灯火ともしびよう燃料ねんりょう灯油とうゆ)の製造せいぞうひろまった。

 日本にっぽんでも1850ねんよしみなが3)、新潟にいがた蘭医らんい山下やましたしんとき(しんさい)が、原油げんゆから薬用やくよう灯油とうゆ製造せいぞうしたとつたえられている。しかし19世紀せいき前半ぜんはんころまでは、石油せきゆ灯火ともしびよう防水ぼうすいよう潤滑じゅんかつよう薬用やくようなどとして、一部いちぶ産油さんゆ地域ちいきでわずかに利用りようされたにすぎない。

 石油せきゆ産業さんぎょう今日きょうだいをなすにいたった発端ほったんは、1859ねん、アメリカのセネカ石油せきゆ会社かいしゃ技師ぎしE・L・ドレークがペンシルベニアしゅうオイルクリークで、はじめてつなしき機械きかいりによる油井ゆせい掘削くっさく成功せいこう深度しんど21メートル)したことである。これが近代きんだい油井ゆせいだい1ごうとされ、同年どうねん世界せかい石油せきゆ産業さんぎょう誕生たんじょうとしとされている。

 日本にっぽんでは明治めいじ時代じだいはいって、灯火ともしびようとして植物しょくぶつまさ灯油とうゆ有望ゆうぼうせい着目ちゃくもくした石坂いしざか周造しゅうぞう(1832―1903)が、1871ねん明治めいじ4)義兄ぎけい山岡やまおか鉄舟てっしゅうらの援助えんじょけて長野ながの石炭せきたん会社かいしゃ設立せつりつし、アメリカから油井ゆせい掘削くっさく購入こうにゅうして、長野ながのけん新潟にいがたけん静岡しずおかけん相良さがら(さがら))にかけて試掘しくつすすめたが、結局けっきょく失敗しっぱいした。日本にっぽんはじめて近代きんだいてき油田ゆでんかたちととのえたのは新潟にいがたけん尼瀬あまぜ(あまぜ)油田ゆでんである。この油田ゆでん加藤かとうただしじゅうらにより1880ねん以来いらい試掘しくつすすめられ、1886ねん順調じゅんちょう採油さいゆ成功せいこうした。つづいて1888ねん尼瀬あまぜ油田ゆでん本格ほんかくてき開発かいはつ目的もくてきとして日本石油にほんせきゆ会社かいしゃ設立せつりつされ、1890ねんアメリカからつなしき掘削くっさく導入どうにゅうして生産せいさん拡大かくだいし、はじめて近代きんだいてき油田ゆでん形態けいたい発展はってんした。これが日本にっぽん近代きんだい石油せきゆ産業さんぎょう誕生たんじょうとされる。しかしなお19世紀せいき後半こうはん石油せきゆ用途ようと灯火ともしびようとしての灯油とうゆ生産せいさん主体しゅたいで、ガソリンとめぶんはむしろ危険きけん副産物ふくさんぶつとしてその廃棄はいき苦労くろうしていたのである。

 石油せきゆ用途ようと一変いっぺんし、いちじるしく多様たようしたのは、19世紀せいきまつないし20世紀せいき初頭しょとう以来いらいで、その最初さいしょ動機どうきとなったのは、1879ねんアメリカのT・エジソンによる電灯でんとう発明はつめい、1883ねんG・ダイムラーによるガソリン機関きかん自動車じどうしゃ発明はつめい、1893ねんR・ディーゼルによるディーゼル機関きかん発明はつめいなどであった。さらにだいいちだい世界せかい大戦たいせん石油せきゆ重要じゅうようせいたかまり、石油せきゆ産業さんぎょう発展はってんおおきい影響えいきょうあたえた。

 まず20世紀せいきはいり、電灯でんとう普及ふきゅうにより石油せきゆランプは後退こうたいして灯油とうゆ需要じゅよう減少げんしょうしたが、重油じゅうゆやアスファルトが利用りようされはじめ、自動車じどうしゃ発展はってんによりそれまでの廃棄はいきぶつのガソリンは重要じゅうよう石油せきゆ製品せいひんとなった。とくに1903ねんH・フォードがフォード自動車じどうしゃ会社かいしゃ設立せつりつし、すうねんない独自どくじ量産りょうさん方式ほうしき確立かくりつして以来いらい、ガソリンの需要じゅよう激増げきぞうした。さらにだいいち大戦たいせん契機けいきとして航空機こうくうき急速きゅうそく発達はったつし、これにともなだかオクタン価おくたんかガソリンの製造せいぞうもしだいに発展はってんした。一方いっぽう汽船きせん軍艦ぐんかんなどはしだいにディーゼルすすみ、船舶せんぱくよう燃料ねんりょう石炭せきたんからしだいに重油じゅうゆ転換てんかんした。まただいいちだい大戦たいせんあいだ小型こがた高速こうそくディーゼル機関きかんいちじるしく進歩しんぽし、自動車じどうしゃ機関きかんしゃ、トラクターなどの燃料ねんりょうとして軽油けいゆ利用りよう増大ぞうだいした。これらの内燃ないねん機関きかん進歩しんぽ付随ふずいして、潤滑油じゅんかつゆもしだいに品種ひんしゅ高級こうきゅうみちをたどっている。

 はじ灯火ともしびようとして登場とうじょうした灯油とうゆ家庭かていよう燃料ねんりょう変身へんしんし、とくにだい大戦たいせんおおきい用途ようと開拓かいたくした。同様どうよう戦後せんご家庭かていよう燃料ねんりょうとして普及ふきゅうしたものに、石油せきゆ精製せいせいふくせいする液化えきか石油せきゆガス(LPG)がある。まただい大戦たいせん航空機こうくうき主力しゅりょくはプロペラからジェット機じぇっときうつり、ジェット燃料ねんりょう重要じゅうよう石油せきゆ製品せいひんとなった。同時どうじ自動車じどうしゃエンジンは戦時せんじちゅう航空こうくうエンジンを上回うわまわるなど高性能こうせいのうし、こうオクタン価おくたんかガソリンがもちいられるようになった。

 1950年代ねんだいから中東ちゅうとう地域ちいき世界せかい最大さいだい油田ゆでん開発かいはつされ、石油せきゆ各国かっこく安価あんか大量たいりょう入手にゅうしゅできるようになった。かくしてエネルギーげん王座おうざ石炭せきたんから石油せきゆおおきく転換てんかんして石油せきゆ大量たいりょう消費しょうひ時代じだいはいり、いわゆるエネルギー革命かくめいこした。一方いっぽう石油せきゆ化学かがく工業こうぎょう発展はってんで、化学かがく工業こうぎょう原料げんりょうとしても、石炭せきたんから石油せきゆへの転換てんかん並行へいこうして進行しんこうした。

 この当時とうじ中東ちゅうとう油田ゆでん開発かいはつなど、自由じゆう世界せかい石油せきゆ利権りけんだい部分ぶぶんアメリカ、イギリスなど国際こくさい石油せきゆ資本しほん8しゃ(メジャー)の支配しはいするところであったが、1960ねんサウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、ベネズエラの石油せきゆ輸出ゆしゅつ5かこくはOPEC(オペック)(石油せきゆ輸出ゆしゅつこく機構きこう)を結成けっせいし、その加盟かめいこくも13かこくえ、しだいに資源しげんナショナリズム強化きょうかして発言はつげんりょくくわえた。とくに1970ねんころから国際こくさい石油せきゆ資本しほん8しゃ利権りけん削減さくげんして原油げんゆ価格かかく供給きょうきゅうりょう自主じしゅ調整ちょうせいけんにぎるようになり、1973ねん10がつだいよん中東ちゅうとう戦争せんそうさいし、一方いっぽうてき原油げんゆ公示こうじ価格かかく大幅おおはば値上ねあげ(やく4ばい)を宣言せんげんし、いわゆるだいいち石油せきゆ危機きき(オイル・ショック)を招来しょうらいした。さらに1979ねん、イラン革命かくめいこしただい石油せきゆ危機ききにより、原油げんゆ価格かかくはますます暴騰ぼうとうした(だいいち危機きき以前いぜんくらべてやく20ばい以上いじょう)。これらは世界せかい経済けいざいおおきく影響えいきょうあたえ、激増げきぞうつづけていた石油せきゆ消費しょうひりょう頭打あたまうちとなったが、なお石油せきゆ世界せかいエネルギーの総量そうりょうやく42%をめ、これに石油せきゆけい天然てんねんガスくわえるとやく64%にたっしている。なお近年きんねん、イギリス(北海ほっかい)、メキシコなどOPECこく原油げんゆ増産ぞうさん世界せかいてき石油せきゆ消費しょうひ節減せつげんにより、石油せきゆ価格かかくは1983ねんをピークとして急速きゅうそく低下ていかてんじている。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

成因せいいん

石油せきゆはいろいろな地質ちしつ時代じだい地層ちそうから産出さんしゅつするが、やく60%は中生代ちゅうせいだい(2おく4700まんねんまえから6500まんねんまえまで)にぞくするといわれている。その成因せいいんについては、1800年代ねんだいから無機むき起源きげんせつ有機ゆうき起源きげんせつとで論争ろんそうつづいた。炭化たんか水素すいそ無機むき化学かがくてき合成ごうせいできることから、無機むき起源きげんろんしゃは、炭化たんか水素すいそ地下ちかふかところ炭素たんそ水素すいそから合成ごうせいされたとする地球ちきゅう深部しんぶせつか、地球ちきゅう創世そうせいにすでに炭化たんか水素すいそ存在そんざいしていたとする宇宙うちゅうせつ主張しゅちょうし、いずれの炭化たんか水素すいそなが年月としつきをかけて効率こうりつてき集積しゅうせきして石油せきゆになったとかんがえた。有機ゆうき起源きげんろんしゃは、動植物どうしょくぶつ遺体いたいからなる有機物ゆうきぶつ化学かがく作用さようにより原油げんゆ生成せいせいするとし、実験じっけんてき堆積岩たいせきがん有機ゆうき物質ぶっしつから原油げんゆじょうのものを抽出ちゅうしゅつ有機ゆうきせつとなえた。

 この論争ろんそう決着けっちゃくをつけたのは、現存げんそんする原油げんゆちゅう生物せいぶつたいからしか由来ゆらいしないような物質ぶっしつ生物せいぶつ指標しひょうバイオマーカー)が微量びりょうながら発見はっけんされた事実じじつであった。たとえば、ヘミン(赤血球せっけっきゅうヘモグロビン)やクロロフィル植物しょくぶつ葉緑素ようりょくそ)の誘導体ゆうどうたいであるポルフィリンるい、そのほかコレステリン、カロチン、テルペンの誘導体ゆうどうたいのように光学こうがく活性かっせいゆうする有機物ゆうきぶつ原油げんゆちゅうみとめられた。これにより石油せきゆ有機ゆうき起源きげんせつ確固かっこたるものとなった。

 石油せきゆ起源きげんとなった有機物ゆうきぶつは、太古たいこうみみずうみそこにたまったプランクトンや藻類そうるい、あるいは河川かせんによってはこまれた陸上りくじょう生物せいぶつ遺骸いがい(いがい)などに由来ゆらいし、土砂どしゃとともにすこしずつ堆積たいせきした。堆積たいせきぶつ時間じかん経過けいかとともに地下ちかふか埋没まいぼつし、比重ひじゅう関係かんけい土砂どしゃのなかでもっともほそつぶ粘土ねんどといっしょに堆積たいせきした有機物ゆうきぶつは、岩石がんせきした頁岩けつがん(けつがん)ちゅう濃縮のうしゅくされる。とくに有機物ゆうきぶつおおふくんだ頁岩けつがん石油せきゆ根源こんげんがんとよんでいる。石油せきゆ根源こんげんがんちゅう有機物ゆうきぶつのうちやく90%はケロジェンkerogenという有機ゆうき溶媒ようばい不溶ふよう固体こたい高分子こうぶんし化合かごうぶつ集合しゅうごうたいめている。このケロジェンは、ギリシアのkeros(石油せきゆまたはワックスをつくるもの)に由来ゆらいしている。のこりのやく10%は有機ゆうき溶媒ようばい溶な有機物ゆうきぶつで、抽出ちゅうしゅつせい有機物ゆうきぶつまたはビチューメンとよばれ、炭化たんか水素すいそはこのビチューメンにふくまれる。生体せいたい有機物ゆうきぶつ炭水化物たんすいかぶつタンパク質たんぱくしつ脂質ししつ、リグニンより構成こうせいされ、少量しょうりょう炭化たんか水素すいそおよび色素しきそふくんでいる。これらの成分せいぶん微生物びせいぶつによって、とうアミノ酸あみのさん脂肪酸しぼうさんなどの単体たんたい分解ぶんかいされる。その堆積たいせきぶつまれて、これらの一部いちぶだつ炭酸たんさんだつアミノ作用さようによって炭化たんか水素すいそ変換へんかんされ、ビチューメンとして保存ほぞんされるが、だい部分ぶぶんちぢみあわして腐植ふしょく形成けいせいし、還元かんげん環境かんきょうちぢみあい重合じゅうごうかえしてケロジェンに変化へんかする。ケロジェンをねつ乾留かんりゅうすると石油せきゆさま物質ぶっしつ生成せいせいすること、世界せかい油田ゆでん地域ちいき地下ちかのある深度しんどから石油せきゆ発見はっけんしていることなどから、石油せきゆ根源こんげんがんちゅうのケロジェンが埋没まいぼつともな地温ちおん増加ぞうかによって石油せきゆ炭化たんか水素すいそ生成せいせいするというのが最近さいきん成因せいいんせつである。なお、ケロジェンに変化へんかするまえ有機ゆうき物質ぶっしつ相違そういによって、石油せきゆ生成せいせいしやすい(藻類そうるいなど)タイプ、ガスを生成せいせいしやすい(陸上りくじょう高等こうとう植物しょくぶつなど)タイプに分類ぶんるいされる。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

探鉱たんこう

石油せきゆ根源こんげんがんちゅう生成せいせいされたままでは、石油せきゆ生産せいさんすることはできない。頁岩けつがん粒子りゅうしこまかく、すきまも非常ひじょうちいさいため石油せきゆうごけないのである。生産せいさん可能かのう石油せきゆは、油層ゆそうしゅうしてたくわえられていなければならない。油層ゆそう地下ちか空洞くうどうではなく、すきま(あなすき(こうげき))をじゅう分有ぶんゆうした砂岩さがんあるいは石灰岩せっかいがんなどの岩石がんせきそうである。この岩石がんせき貯留ちょりゅうがんという。石油せきゆ貯留ちょりゅうするためには、貯留ちょりゅうがんを、石油せきゆ移動いどうすることをさまたげる緻密ちみつ(ちみつ)な岩石がんせきぼうがん)でおおうような構造こうぞう必要ひつようである。

 このような構造こうぞうをトラップといい、代表だいひょうてきなものははすがたトラップである。石油せきゆ探鉱たんこうは、この地下ちか存在そんざいするトラップをさがすことであるが、すうひゃくあるいはすうせん平方へいほうキロメートルの広大こうだい地域ちいきにおいて、しかもすうせんメートルの地下ちかねむっている石油せきゆ発見はっけんすることは非常ひじょう困難こんなん仕事しごとである。石油せきゆ開発かいはつするには、まず、対象たいしょう地域ちいき事前じぜん調査ちょうさ鉱業こうぎょうけん申請しんせい利権りけん交渉こうしょう入札にゅうさつなどの手順てじゅんみ、鉱業こうぎょうけん取得しゅとくする。探鉱たんこう初期しょき段階だんかいにおいては、広域こういき地質ちしつ調査ちょうさのために、航空こうくう写真しゃしん解析かいせき航空機こうくうきによる磁気じき探査たんさおよび重力じゅうりょく探査たんさなどのがい査が実施じっしされる。つぎに、地下ちか分布ぶんぷする堆積たいせきぶつ地表ちひょう露出ろしゅつする箇所かしょにおいて地表ちひょう地質ちしつ調査ちょうさサンプリングおこなわれ、化学かがく分析ぶんせき生物せいぶつ調査ちょうさ堆積たいせきがく分析ぶんせき実施じっしされ、そうじょ年代ねんだい岩石がんせき物性ぶっせい根源こんげんがん産油さんゆポテンシャルなどの研究けんきゅう評価ひょうかおこなわれる。精査せいさとして実施じっしされる地震じしん探鉱たんこうは、陸上りくじょうでは火薬かやくまたは機械きかいとう地殻ちかく震動しんどうあたえ、地下ちか地層ちそうめんからの反射はんしゃ受信じゅしん記録きろくして、油田ゆでん構造こうぞう(トラップ)の存在そんざいさがす。海域かいいきでは震源しんげんとして圧縮あっしゅく空気くうき発破はっぱもちいている。これらの調査ちょうさ総合そうごうてき解釈かいしゃくして、試掘しくつ位置いち決定けっていし、油田ゆでん構造こうぞうじょう掘削くっさくする。試掘しくつ深度しんどは3000~4000メートルがおおく、ときには5000メートルにもたっすることがある。1あなあたりの費用ひようは、陸上りくじょうで5~10おくえん海上かいじょうでは30~50おくえんかかる。試掘しくつ結果けっかから、油田ゆでん採算さいさんせい検討けんとうし、生産せいさん開発かいはつ移行いこうするか、鉱業こうぎょうけん放棄ほうきするかを判断はんだんする。試掘しくつによって石油せきゆ発見はっけんするかくりつは10ほんに1ほん割合わりあいで、さらにその石油せきゆ規模きぼてん十分じゅうぶん生産せいさん対象たいしょうとなりうる場合ばあいは4ぶんの1に減少げんしょうする。すなわち、100ほん井戸いどったとしても商業しょうぎょう規模きぼ油田ゆでん発見はっけんできるのは、2~3ほんということになる。石油せきゆ探鉱たんこうは、のどのような事業じぎょうよりもリスクのたか事業じぎょうである。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

原油げんゆ

地下ちかから産出さんしゅつ採取さいしゅされたままの精製せいせい石油せきゆ原油げんゆcrude oilという。一般いっぱん黒褐色こっかっしょくまたはくろ緑色みどりいろねば稠(ねんちゅう)な油状ゆじょう物質ぶっしつで、多少たしょう泥水どろみずぶんふくむ。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

組成そせい

主成分しゅせいぶん炭素たんそ原子げんしすう5~40程度ていど複雑ふくざつ各種かくしゅ炭化たんか水素すいそ混合こんごうぶつであるが、このほかにガスじょう炭化たんか水素すいそ湿性しっせい天然てんねんガス)も溶存ようぞんし、また炭化たんか水素すいそ成分せいぶんとして若干じゃっかん硫黄いおう(いおう)、酸素さんそ窒素ちっそ化合かごうぶつ少量しょうりょう金属きんぞく化合かごうぶつ含有がんゆうする。これらの炭化たんか水素すいそ成分せいぶんは、とくにこう沸点ふってんとめぶんほどおおい。

 石油せきゆ炭化たんか水素すいそ大別たいべつすると、パラフィン、オレフィン、ナフテン(シクロパラフィン)、芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいその4しゅ分類ぶんるいされ、原油げんゆちゅうにはパラフィンおよびナフテン炭化たんか水素すいそがもっともおおく、芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいそ比較的ひかくてきすくない。オレフィン炭化たんか水素すいそ石油せきゆねつ分解ぶんかいすると容易ようい生成せいせいするが、原油げんゆちゅうにはほとんどふくまれていない。これら4しゅ炭化たんか水素すいそ組成そせいはガソリン、灯油とうゆなどのてい沸点ふってんとめぶんでは明確めいかくであるが、重油じゅうゆ潤滑油じゅんかつゆなどのこう沸点ふってんとめぶんでは、1分子ぶんし1個いっこのナフテンたまきながいアルキルがわくさり結合けつごうした「パラフィンせいたか成分せいぶん」や、数個すうこのナフテンたまきのほかに芳香ほうこうぞくたまき結合けつごうした「ナフテンせいたか成分せいぶん」などの複雑ふくざつ混合こんごうぶつよりなり、炭化たんか水素すいそ種族しゅぞく区別くべつ不明ふめいかくとなる。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

性状せいじょう

炭化たんか水素すいそ比重ひじゅう一般いっぱんにナフテンけいよりもパラフィンけいひくく、またどういち種族しゅぞくではこう沸点ふってん成分せいぶんよりもてい沸点ふってん成分せいぶんひくいため、原油げんゆ比重ひじゅうはその組成そせい相関そうかん関係かんけいがあり、原油げんゆ比重ひじゅう大小だいしょうにより分類ぶんるいされることがおおい。国産こくさん原油げんゆでは比重ひじゅう(D15/4℃/4℃のみずたいする15℃における密度みつど)のにより、軽質けいしつ(0.830以下いか)、じゅうしつ(0.905以上いじょう)、この中間ちゅうかんなかしつなどに分類ぶんるいされ、軽質けいしつはパラフィンけいおおく、じゅうしつはナフテンけいおおい。輸入ゆにゅう原油げんゆたいしてはアメリカ石油せきゆ協会きょうかい制定せいていしたAPI使つかわれる。このは、比重ひじゅう(D60/60°F:60°Fのみずたいする60°Fにおける密度みつど)から、つぎしきによってもとめられる。


API通常つうじょう比重ひじゅうとはぎゃくに、軽質けいしつのものほどおおきいとなり、比重ひじゅう1.0ではAPI10となる。パラフィンもと原油げんゆ軽質けいしつパラフィンけい炭化たんか水素すいそみ、ガソリンとめぶんとくりつおおく、ちょくとめガソリンのオクタン価おくたんかひくいが、良質りょうしつ軽油けいゆ潤滑油じゅんかつゆ原料げんりょうとなり、ざんにはパラフィンろうおおふくまれている。一方いっぽうナフテンもと原油げんゆじゅうしつナフテンけい炭化たんか水素すいそみ、ガソリンとめぶんとくりつすくないが、ちょくとめガソリンのオクタン価おくたんか比較的ひかくてきたかく、ざんにはアスファルトぶんおおふくむ。中間なかまもと原油げんゆはこれらのなかあいだてき性質せいしつしめす。このほか硫黄いおうぶんおお原油げんゆをサワー原油げんゆ硫黄いおうぶんすくない原油げんゆをスイート原油げんゆという。

 日本にっぽん輸入ゆにゅう原油げんゆ主力しゅりょく中東ちゅうとうけい原油げんゆは、一般いっぱんにパラフィンもとでサワー原油げんゆおおい。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

原油げんゆ埋蔵まいぞうりょう生産せいさんりょう石油せきゆ消費しょうひりょう


 地球ちきゅうじょう石油せきゆ分布ぶんぷいちじるしく偏在へんざいしており、原油げんゆ確認かくにん埋蔵まいぞうりょうやく1111おくキロリットル(1984)のうちやく57%は中東ちゅうとう諸国しょこくめ、これにきたアメリカ、きゅうソ連それん地域ちいききたアフリカをくわえると、世界せかい原油げんゆの80%以上いじょうはこれらよんだい地域ちいき集中しゅうちゅうしている。一方いっぽう世界せかい原油げんゆ年産ねんさんりょうやく31.5おくキロリットル(1984)のうち50%ちかくはきゅうソ連それん地域ちいき、アメリカ、サウジアラビアのだけでめられている。近年きんねんこのほかに北海ほっかい油田ゆでん開発かいはつしたイギリス、急速きゅうそく石油せきゆ増産ぞうさんすすめたメキシコが有力ゆうりょく産油さんゆこくとしてくわわっている。この原油げんゆ生産せいさんりょうだい部分ぶぶん石油せきゆ消費しょうひりょう相当そうとうするとみなせるが、アメリカは年間ねんかんやく9おくキロリットルの石油せきゆ消費しょうひし、これにきゅうソ連それん日本にっぽんくわえると、世界せかい石油せきゆやく50%はこれら3こくだけで消費しょうひされている。だい大戦たいせんぜんアメリカは石油せきゆ輸出ゆしゅつこくであったが、現在げんざいでは消費しょうひりょう激増げきぞうにより、自国じこくさん石油せきゆ需要じゅようやく65%をたしているにすぎず、世界せかい最大さいだい石油せきゆ輸入ゆにゅうこくとなっている(イギリスは北海ほっかい油田ゆでん開発かいはつ自給じきゅう輸出ゆしゅつこくてんじた)。自国じこくさん石油せきゆ需要じゅよう完全かんぜんたしほか社会しゃかい主義しゅぎこく石油せきゆ供給きょうきゅうしていたソ連それんも、将来しょうらい完全かんぜん自給じきゅう続行ぞっこうできるかかは疑問ぎもんとされている。ともかく、アメリカは最大さいだい石油せきゆ産出さんしゅつこくであるのにたいして、世界せかいだい3石油せきゆ消費しょうひこくである日本にっぽんは、新潟にいがた秋田あきた山形やまがたかくけん油田ゆでん地帯ちたいさんする石油せきゆ資源しげんはきわめてとぼしく(年間ねんかん45まんキロリットル程度ていど)、需要じゅようやく99.8%を中東ちゅうとう地域ちいきそのから輸入ゆにゅうしている。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

年数ねんすう

原油げんゆ年産ねんさんりょうPにたいする確認かくにん埋蔵まいぞうりょうRの(R/P)を年数ねんすうとよび、油田ゆでん寿命じゅみょう石油せきゆ資源しげん寿命じゅみょう推定すいていする目安めやすとしており、1984ねんにおけるこのぜん世界せかいやく35ねんであった。しかし1950ねん当時とうじ年数ねんすうやく20ねん、1960ねんのそれはやく35ねんであったことからみても、このからただちに石油せきゆ寿命じゅみょう判断はんだんすることはできない。これは、従来じゅうらい世界せかい原油げんゆ生産せいさんりょうおよび石油せきゆ消費しょうひりょう逐年ちくねん増大ぞうだいしてきた反面はんめん一方いっぽうでは生産せいさんりょう上回うわまわしん油田ゆでん開発かいはつされ、確認かくにん埋蔵まいぞうりょう年々ねんねん更新こうしんされて、年数ねんすうおおきい変動へんどうがなく、ほぼ平衡へいこう状態じょうたいたもってきたからである。しかし、1970年代ねんだいから世界せかい最大さいだい石油せきゆ宝庫ほうこである中東ちゅうとう地域ちいきしん油田ゆでん発見はっけんりょう激減げきげんし、このあいだ北海ほっかい、アラスカ、メキシコ、中国ちゅうごくなどでしん油田ゆでん開発かいはつがあったが、規模きぼ中東ちゅうとう地域ちいき莫大ばくだい(ばくだい)な開発かいはつりょうおよばず、世界せかい原油げんゆ確認かくにん埋蔵まいぞうりょう増加ぞうかはしだいに頭打あたまうちの傾向けいこうにある。他方たほう前述ぜんじゅつのように1973ねんこった石油せきゆ危機きき影響えいきょうで、1974~1976ねんにわたり、石油せきゆ史上しじょうはじめて石油せきゆ消費しょうひりょう生産せいさんりょう)の低下ていかないし頭打あたまうちがおこり、その増加ぞうか鈍化どんかしている。石油せきゆ危機きき世界せかいてき経済けいざいきょうこしたが、石油せきゆ消費しょうひ節約せつやく促進そくしんし、石油せきゆ寿命じゅみょう多少たしょうでもばす効果こうかをもたらした。

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究極きゅうきょく埋蔵まいぞうりょう

開発かいはつみの油田ゆでんたいする確認かくにん埋蔵まいぞうりょうたいして、発見はっけん油田ゆでんふくめたぜん地球ちきゅう原油げんゆ埋蔵まいぞうりょう究極きゅうきょく埋蔵まいぞうりょうとよぶ。もとよりそのしんることはできないが、ムーディーは、将来しょうらい海底かいてい油田ゆでん掘削くっさく水深すいしん2000メートルまで、採油さいゆりつが40%まで可能かのうになると仮定かていし、地質ちしつがくてき推計学すいけいがくてきにこれを算定さんていして究極きゅうきょく埋蔵まいぞうりょうを3040おくトンと推定すいていしている。このうち1976ねんまでに480おくトンが生産せいさんされ、同年どうねん残存ざんそん推定すいてい埋蔵まいぞうりょうは2560おくトン(発見はっけんかくりつ95%で1550おくトンから、かくりつ5%で4600おくトン)である。今後こんご世界せかい人口じんこう急増きゅうぞうによる世界せかいそうエネルギーりょう増加ぞうかかんがえると、この残存ざんそん埋蔵まいぞうりょう石油せきゆ需要じゅようをまかなうにはすうじゅうねん程度ていど推定すいていされ、エネルギーにめる石油せきゆ主役しゅやくは、21世紀せいき前半ぜんはんまでにはわるとかんがえられている。

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石油せきゆ精製せいせいほう

原油げんゆをそのまま燃料ねんりょうとして使用しようすることもあるが(原油げんゆなまだき)、だい部分ぶぶんはこれを精製せいせいして各種かくしゅ石油せきゆ製品せいひんとする。

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原油げんゆ蒸留じょうりゅう


 まず原油げんゆ水分すいぶん夾雑きょうざつ(きょうざつ)もののぞいたのち、つねあつ蒸留じょうりゅうにより、蒸留じょうりゅうガス、ナフサ、灯油とうゆ軽油けいゆかくとめぶん分別ふんべつし、とめしないこう沸点ふってんとめぶんつねあつざんとなる。この原油げんゆつねあつ蒸留じょうりゅう操作そうさをトッピングtoppingとよぶ。原油げんゆはパイプしき加熱かねつ(パイプスチル)ちゅうのパイプを高速こうそくかよって350℃程度ていど所要しょよう温度おんど加熱かねつされたのち、せいとめとうのやや下段げだん噴射ふんしゃおくいれされる。せいとめとうはがねせいたかとうで、とうないすうじゅうだんのトレイ(たな)があり、たかいトレイほど温度おんどひくたもたれ、沸点ふってんひく成分せいぶんほど上段じょうだんのトレイじょう凝縮ぎょうしゅくする。トレイの構造こうぞうあわかねがた、バルブがたなど各種かくしゅのものがあるが、現在げんざいではバルブがたトレイが主体しゅたいで、これには凝縮ぎょうしゅくえきささえるためのバルブがたぶた(ふた)がついた多数たすうのライザー(あな)がある。せいとめとう下段げだんより上昇じょうしょうするあぶら蒸気じょうきはライザーをとおり、バルブをげてトレイじょう凝縮ぎょうしゅくえきをくぐりける。このえき接触せっしょくにより、かくトレイじょうにはそのたかさにおうじて沸点ふってん範囲はんいことなるとめぶん凝縮ぎょうしゅくし、連続れんぞくてきしらげとめおこなわれる。とうない凝縮ぎょうしゅくしない蒸留じょうりゅうガスおよび最低さいてい沸点ふってんとめぶんのナフサは、とういただきよりあぶら蒸気じょうきとしてとめし、冷却れいきゃくされてナフサは凝縮ぎょうしゅくする。灯油とうゆ軽油けいゆなどのなかあいだとめぶんは、それぞれとうない適当てきとうたかさのトレイからがわりゅうとしてす。また、とうない気化きかしない最高さいこう沸点ふってんとめぶんは、ざんとしてとうそこからされる。通常つうじょう、ナフサはさらに軽質けいしつナフサとじゅうしつナフサに分留ぶんりゅうされ、また軽油けいゆもそのじゅうしつぶんじゅうしつ軽油けいゆとしてけることがおおい。かくとめぶん分留ぶんりゅう温度おんど沸点ふってん範囲はんい)はだいたい、軽質けいしつナフサやく25~100℃、じゅうしつナフサやく80~200℃、灯油とうゆやく150~270℃、軽油けいゆやく200~350℃、じゅうしつ軽油けいゆやく300~350℃、つねあつざんやく350℃以上いじょうである。

 以上いじょうのようにかく分留ぶんりゅう温度おんど厳密げんみつ一定いっていしたものではなく、原油げんゆ種類しゅるいかく製油せいゆしょ生産せいさん計画けいかくなどにしたがって、それぞれの製品せいひん規格きかく適合てきごうする範囲はんいない適当てきとう調整ちょうせいされる。なおせいとめとうがわりゅうとしてられる灯油とうゆ軽油けいゆなどのなかあいだとめぶんは、トレイじょう常時じょうじてい沸点ふってん成分せいぶん蒸気じょうき接触せっしょくしているため、その一部いちぶ溶解ようかいしている。このままではせいとめ不完全ふかんぜんであるため、これをいったんストリッパーにとおし、水蒸気すいじょうきんで溶存ようぞんてい沸点ふってん成分せいぶん蒸発じょうはつさせ、これをいちだんじょうのトレイへおくかえす。この操作そうさストリッピングstrippingという。原油げんゆつねあつ蒸留じょうりゅうられるざんはおもにこのまま重油じゅうゆ製造せいぞう材料ざいりょうもちいられるが、一部いちぶはこれをさらに減圧げんあつ蒸留じょうりゅうして、潤滑油じゅんかつゆやアスファルト、パラフィンろうなどの製造せいぞうおこなわれる。

 ざん蒸留じょうりゅう減圧げんあつおこなうのは、このままさらに高温こうおん蒸留じょうりゅうするとねつ分解ぶんかいしてしまうからで、一般いっぱん水銀柱すいぎんちゅう10~100ミリメートル程度ていど減圧げんあつもちいられる。減圧げんあつ蒸留じょうりゅう装置そうち減圧げんあつ系統けいとう付属ふぞくしているほかは、原油げんゆつねあつ蒸留じょうりゅう装置そうち類似るいじしており、主要しゅようはパイプしき加熱かねつ減圧げんあつせいとめとうからなる。減圧げんあつかく成分せいぶん沸点ふってん低下ていかするてんのぞくと、せいとめ原理げんりつねあつ蒸留じょうりゅうとまったく同一どういつである。この場合ばあいとういただきから減圧げんあつ軽油けいゆじゅうしつ軽油けいゆ)が、またとうがわからはトレイのたかさにおうじて3~4とめぶん各種かくしゅねばたび潤滑油じゅんかつゆとめぶんとめし、とうそこからはアスファルトがされる。とうがわりゅう各種かくしゅとめぶんつねあつ蒸留じょうりゅう場合ばあいおなじように、ストリッパーをとおしてストリッピングをおこなう。また潤滑油じゅんかつゆ製造せいぞうのほかに、接触せっしょく分解ぶんかい原料げんりょうとしての減圧げんあつ軽油けいゆぶんや、重油じゅうゆ間接かんせつ脱硫だつりゅうほうぜん処理しょりとしても、ざん減圧げんあつ蒸留じょうりゅうおこなわれる。以上いじょう原油げんゆつねあつ蒸留じょうりゅうおよびざん減圧げんあつ蒸留じょうりゅうによる分留ぶんりゅうで、すべての燃料ねんりょう潤滑油じゅんかつゆなどの素材そざいられ、これをおおくの精製せいせい工程こうていおくって各種かくしゅ石油せきゆ製品せいひん製造せいぞうされる。

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各種かくしゅ石油せきゆ製品せいひん製造せいぞう用途ようと

石油せきゆ天然てんねんガスを原料げんりょうとして生産せいさんされる燃料ねんりょう潤滑油じゅんかつゆなどを石油せきゆ製品せいひんという。

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ガソリン

石油せきゆ製品せいひんのなかでももっとも複雑ふくざつ工程こうてい必要ひつようとするのはガソリンで、量的りょうてき自動車じどうしゃようガソリンの製造せいぞう中心ちゅうしんとなる。自動車じどうしゃようガソリンとしては、オクタン価おくたんかたかいイソパラフィンや芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいそ主成分しゅせいぶんとする必要ひつようがあるが、原油げんゆちゅうのガソリンとめぶんにあたるナフサは、オクタン価おくたんかひくいノルマル・パラフィンやナフテン炭化たんか水素すいそ主成分しゅせいぶんであり、このままではガソリンとして使用しようできない。通常つうじょう自動車じどうしゃようガソリンは、あらためしつガソリン、接触せっしょく分解ぶんかいガソリン、ちょくとめ軽質けいしつガソリン、異性いせいガソリン、水素すいそ分解ぶんかいガソリン、ねつ分解ぶんかいガソリン、アルキレートなど、各種かくしゅ製法せいほうによるガソリンを適度てきど配合はいごうして調製ちょうせいされる。

 あらためしつガソリンは、白金はっきん‐レニウム触媒しょくばいによりじゅうしつナフサを接触せっしょくあらためただしてその化学かがく構造こうぞうえたこうオクタン価おくたんかガソリンで、自動車じどうしゃようガソリンのしゅ材料ざいりょうもちいられる。そのしゅ反応はんのうはナフテン炭化たんか水素すいそだつ水素すいそによる芳香ほうこうぞくで、芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいそおおふくむ。接触せっしょく分解ぶんかいガソリンは、ゼオライトけいまたはシリカ‐アルミナ触媒しょくばいにより、じゅうしつ軽油けいゆ減圧げんあつ軽油けいゆ)を接触せっしょくてきねつ分解ぶんかい(クラッキング)してられるこうオクタン価おくたんかガソリンで、イソパラフィン、イソオレフィンにみ、あらためしつガソリンに自動車じどうしゃようガソリンのしゅ材料ざいりょうとなる。ちょくとめ軽質けいしつガソリンは、ナフサとめぶんちゅう比較的ひかくてきオクタン価おくたんかたか軽質けいしつナフサをスイートニング悪臭あくしゅう酸性さんせい物質ぶっしつのメルカプタンるい除去じょきょ)または水素すいそ精製せいせいにより精製せいせいしたガソリンで、これ単独たんどくではオクタン価おくたんか不足ふそく使用しようできないが、こうオクタン価おくたんかガソリンへの配合はいごうざいとなる。

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液化えきか石油せきゆガス

原油げんゆ蒸留じょうりゅうガス、接触せっしょくあらためしつ接触せっしょく分解ぶんかい水素すいそ分解ぶんかいなどでふくせいするガスから、ガス回収かいしゅう装置そうちでプロパン、ブタンをおもとする液化えきか石油せきゆガス(LPG)が回収かいしゅうされ、家庭かていよう燃料ねんりょう使用しようされる。なお、プロパン、ブタンはノルマル・パラフィンであるが分子ぶんしりょうちいさいため、比較的ひかくてきオクタン価おくたんかたかく、自動車じどうしゃよう(おもにタクシー)燃料ねんりょうとしても使用しようされる。

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灯油とうゆ軽油けいゆ

おもにストーブよう、こんろようなどの家庭かていよう燃料ねんりょうとして使用しようされ、軽油けいゆはディーゼル自動車じどうしゃのほか鉄道てつどうよう船舶せんぱくようなどの小型こがた高速こうそくディーゼル機関きかんよう燃料ねんりょうとして使用しようされ、これらはガソリンの製造せいぞうくらべると簡単かんたんである。

 精製せいせいしゅ目的もくてき公害こうがいじょう有害ゆうがい成分せいぶんである硫黄いおうぶん除去じょきょで、これには水素すいそ精製せいせいおこなわれる。これは水素すいそ加圧かあつにコバルト‐モリブデンけい触媒しょくばいにより、硫黄いおう酸素さんそ窒素ちっそ化合かごうぶつ選択せんたくてき分解ぶんかい除去じょきょする操作そうさで、軽質けいしつちょくとめガソリンの精製せいせいにも応用おうようされている。

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ジェット燃料ねんりょう

ジェット機じぇっときようのジェット燃料ねんりょうただしくは航空こうくうタービン燃料ねんりょうといわれ、これには灯油とうゆがたとナフサがたがある。前者ぜんしゃ灯油とうゆとめぶん後者こうしゃじゅうしつナフサとめぶんおもとするもので、これらを水素すいそ精製せいせい調合ちょうごうして製造せいぞうされる。ジェット燃料ねんりょう発熱はつねつりょうたか安定あんてい燃料ねんりょうで、もちろんオクタン価おくたんかとは関係かんけいがない。

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重油じゅうゆ

重油じゅうゆつねあつざんじゅうしつ軽油けいゆ混合こんごうによって調製ちょうせいされ、日本にっぽんではA・B・C重油じゅうゆの3しゅ製品せいひんけ、このじゅん軽油けいゆ配合はいごうりょうすくなくなり(C重油じゅうゆだい部分ぶぶんつねあつざん)、しだいにねばたびたか硫黄いおうぶんおお製品せいひんとなる。A重油じゅうゆはおもに船舶せんぱくようなど大型おおがたディーゼル機関きかんよう燃料ねんりょう、C重油じゅうゆはおもに電力でんりょくよう一般いっぱんボイラーよう燃料ねんりょうとして使用しようされ、B重油じゅうゆりょう用途ようと使用しようされる。

 重油じゅうゆ脱硫だつりゅう困難こんなんで、かつては精製せいせい使用しようされたが、現在げんざいではすべて脱硫だつりゅう処理しょりおこなわれている。重油じゅうゆ配合はいごうようじゅうしつ軽油けいゆすんでじゅつのように水素すいそ精製せいせいにより脱硫だつりゅうされているが、つねあつざん配合はいごうまえ水素すいそ脱硫だつりゅうおこなう。この水素すいそ脱硫だつりゅう原理げんりてき灯油とうゆ軽油けいゆ水素すいそ精製せいせい同一どういつであるが、触媒しょくばいにはおもにニッケル‐モリブデンけい使用しようされる。つねあつざん硫黄いおうぶんおおいうえ、触媒しょくばい汚染おせん劣化れっかさせるアスファルトぶんおよび金属きんぞく化合かごうぶつふくむため、通常つうじょう水素すいそ精製せいせいよりもはるかに困難こんなんで、過酷かこく条件じょうけん多量たりょう触媒しょくばい消費しょうひともなう。この困難こんなんけるため、つねあつざん減圧げんあつ蒸留じょうりゅうにより減圧げんあつざん(アスファルトぶん)をのぞいたとめあぶら灯油とうゆ軽油けいゆ同様どうよう水素すいそ精製せいせいしたのち、減圧げんあつざんごうする方法ほうほうおこなわれる。前者ぜんしゃ方式ほうしき直接ちょくせつ脱硫だつりゅうほう後者こうしゃ方式ほうしき間接かんせつ脱硫だつりゅうほうとよび、日本にっぽんではりょう方式ほうしき併用へいようされている。

 日本にっぽん輸入ゆにゅう原油げんゆ硫黄いおうぶんおお中東ちゅうとうけいおもであるため、公害こうがい防止ぼうしじょう重油じゅうゆ脱硫だつりゅう各国かっこく先駆さきがけておこなわれ、硫黄いおうぶんのもっともおおいC重油じゅうゆでは、電力でんりょくよう1%以下いか一般いっぱんよう2%以下いかまで脱硫だつりゅう処理しょりおこなわれている。なお、灯油とうゆ軽油けいゆ重油じゅうゆ水素すいそ精製せいせい脱硫だつりゅう操作そうさ発生はっせいする硫化りゅうか水素すいそから硫黄いおう回収かいしゅうされる。

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潤滑油じゅんかつゆ

潤滑油じゅんかつゆはすべての機械きかい摩擦まさつ減摩げんまようとしてもちいられ、用途ようとによりきわめて種類しゅるい製品せいひんがある。これらはつねあつざん減圧げんあつ蒸留じょうりゅうられたかく潤滑油じゅんかつゆとめぶんから、ねばたびおよび精製せいせいことなる材料ざいりょう製造せいぞうし、これを適度てきど調合ちょうごうしておおくの製品せいひんとする。一般いっぱん潤滑油じゅんかつゆよう材料ざいりょうは、かくとめぶん溶剤ようざいだつろうおよび白土しらつち処理しょりによって精製せいせいされる。溶剤ようざいだつろうは、メチルエチルケトン液化えきかプロパンなどろうぶん溶解ようかいしがたい溶剤ようざい原料げんりょう処理しょり冷却れいきゃくし、凝固ぎょうこてんたかいろうぶん析出せきしゅつさせる操作そうさで、この操作そうさによりパラフィンろうがふくせいする。白土しらつち処理しょりは、酸化さんかされやすい不安定ふあんてい成分せいぶん活性かっせい白土しらつち吸着きゅうちゃく除去じょきょする操作そうさである。

 また内燃ないねん機関きかんよう潤滑油じゅんかつゆなど、ねばたび指数しすうたか安定あんていのよい性質せいしつ要求ようきゅうされる高級こうきゅう潤滑油じゅんかつゆ材料ざいりょうは、だつろうまえ溶剤ようざい抽出ちゅうしゅつおこない、これらの性質せいしつおとるナフテンせいたか成分せいぶん除去じょきょする。この溶剤ようざいとしては、ナフテン成分せいぶん溶解ようかいしやすいフェノール、フルフラールなどがおもにもちいられ、除去じょきょされたナフテン成分せいぶん重油じゅうゆ調合ちょうごうようとする。また高級こうきゅう潤滑油じゅんかつゆでは、白土しらつち処理しょりにかわり、水素すいそ精製せいせいによる不安定ふあんてい成分せいぶん除去じょきょおこなわれることがおおい。

 潤滑油じゅんかつゆには用途ようとにより、酸化さんか防止ぼうしざい凝固ぎょうこてん降下こうかざいねばたび指数しすう向上こうじょうざいなど、各種かくしゅ添加てんかざい適宜てきぎくわえられる。また潤滑じゅんかつ材料ざいりょう金属きんぞくせっけんの混合こんごうによりグリースが製造せいぞうされ、ていねばたび潤滑油じゅんかつゆとめぶん高度こうど精製せいせいして、無色むしょく透明とうめい流動りゅうどうパラフィン製造せいぞうされる。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

その石油せきゆ製品せいひん

以上いじょうのほか、石油せきゆ精製せいせいではじゅうしつ石油せきゆとめぶん過酷かこくねつ分解ぶんかいによるコーキングほうおこなわれ、電極でんきょく材料ざいりょう冶金やきん(やきん)よう炭素たんそ材料ざいりょうとしての石油せきゆコークス製造せいぞうし、このさいねつ分解ぶんかいガソリン、分解ぶんかい軽油けいゆふくせいする。また減圧げんあつざんからは舗装ほそうざい防水ぼうすいざいとしてのアスファルトが製造せいぞうされる。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

日本にっぽん石油せきゆ事情じじょう

石油せきゆ資源しげんとぼしい日本にっぽんでは、需要じゅようやく99.7%を海外かいがいから輸入ゆにゅうしているため、この原油げんゆ輸入ゆにゅうりょうはほぼ石油せきゆ消費しょうひりょう対応たいおうしている。だいいち石油せきゆ危機ききの1973ねん昭和しょうわ48)まで、世界せかい石油せきゆ消費しょうひりょうは10ねんごとに倍加ばいかする上昇じょうしょうしめしたが、日本にっぽんではこの高度こうど成長せいちょう時代じだい消費しょうひりょうは6ねんごとに倍増ばいぞうするいきおいをしめした。この1973ねん日本にっぽん原油げんゆ輸入ゆにゅうりょう過去かこ最高さいこうやく3おくキロリットルにたっしたが、その頭打あたまうちからさらに低下ていかつづけ、年間ねんかん消費しょうひりょうは2.0おく~2.2おくキロリットル程度ていどとなっている。かつて日本にっぽんそうエネルギーちゅうめる石油せきゆ依存いぞんりつは77.4%(1973年度ねんど)にもたっしたが、石油せきゆ危機きき石油せきゆ代替だいたいエネルギーの導入どうにゅう石油せきゆ備蓄びちくなどエネルギー安定あんてい供給きょうきゅう確保かくほのための政策せいさくおこなわれたことによりしょう石油せきゆすすみ、石油せきゆ依存いぞんりつ徐々じょじょ低下ていかし2000年度ねんど平成へいせい12)では51.8%(資源エネルギしげんえねるぎちょう調しらべ)となった。

 石油せきゆ製品せいひん消費しょうひ構造こうぞう各国かっこくによってかなりことなり、日本にっぽんでは石油せきゆ消費しょうひりょう販売はんばいりょう)にめるかく製品せいひん内訳うちわけ(2000)は、ガソリン23%、ナフサ19%、ジェット燃料ねんりょう2%、灯油とうゆ12%、軽油けいゆ17%、重油じゅうゆ24%などとなっている。日本にっぽんしょ外国がいこくくらべて用途ようとべつでは産業さんぎょうようおおく、民需みんじゅようすくないため、重油じゅうゆ石油せきゆ化学かがくようナフサの比率ひりつたかく、ガソリン比率ひりつひくいことがいちじるしい特徴とくちょうである。たとえばアメリカではガソリンの比率ひりつが40%以上いじょうめているのにくらべ、日本にっぽんでは23%(1984ねん当時とうじは15%)にすぎない。日本にっぽん自動車じどうしゃすうはアメリカに世界せかいだい2であるが、駐車ちゅうしゃ施設しせつ道路どうろ事情じじょうなどでそのじつどうりつひくいことをしめしている。日本にっぽん輸入ゆにゅう原油げんゆのナフサ(ガソリンとめぶんとくりつ平均へいきん22%程度ていどで、ガソリン製造せいぞう原料げんりょうとしては余剰よじょうとなり、このぶん石油せきゆ化学かがく工業こうぎょう原料げんりょうとして利用りようされている。かつてはこのバランスがとれていたが、石油せきゆ化学かがく工業こうぎょう発展はってんでナフサが不足ふそくとなり、現在げんざいでは石油せきゆ化学かがくようナフサを一部いちぶ輸入ゆにゅうしている。石油せきゆ危機きき以前いぜん高度こうど成長せいちょう時代じだい石油せきゆ化学かがくようナフサがガソリン消費しょうひりょう上回うわまわっていたが、てい成長せいちょう時代じだいはいりこれが逆転ぎゃくてんし、重油じゅうゆとともにその消費しょうひりょう減少げんしょうした。

 1974ねんOECD(経済けいざい協力きょうりょく開発かいはつ機構きこう)の下部かぶ機構きこうIEA(国際こくさいエネルギー機関きかん)では、石油せきゆ危機きき以来いらい不安定ふあんてい石油せきゆ需給じゅきゅう対応たいおうし、非常時ひじょうじ原油げんゆ相互そうご融通ゆうずう計画けいかくし、加盟かめい各国かっこくに1980ねんまでに消費しょうひ90にちぶん石油せきゆ備蓄びちく勧告かんこくした。これにもとづき日本にっぽんでは1975ねん昭和しょうわ50)石油せきゆ備蓄びちくほう制定せいていして、民間みんかん企業きぎょう処理しょりりょう90にちぶん備蓄びちく義務ぎむづけ、かく石油せきゆ会社かいしゃではかく製油せいゆしょのほか、鹿児島かごしまけん喜入きいれ(きいれ)、沖縄おきなわ北海道ほっかいどうなどに大型おおがた石油せきゆ備蓄びちく基地きちもうけ、1981ねん3がつにこの備蓄びちく達成たっせいした。一方いっぽう政府せいふでは、1978ねんには3000まんキロリットルの備蓄びちく達成たっせいする計画けいかく提唱ていしょう同年どうねんタンカー備蓄びちく開始かいし、1979~1982ねんにかけ半官半民はんかんはんみん石油せきゆ備蓄びちく会社かいしゃ6しゃ青森あおもりけんむつ小川原おがわはら北海道ほっかいどう苫小牧とまこまい(とまこまい)東部とうぶ秋田あきたけん男鹿おが(おが)、福井ふくいけん福井ふくい臨港りんこう福岡ふくおかけん白島はくしま(しらしま)、長崎ながさきけん上五島かみごしま(かみごとう))を設立せつりつした。1983ねんより備蓄びちく基地きちによる保管ほかん開始かいし(タンカー備蓄びちくは1985ねん終了しゅうりょう)、1989ねん計画けいかく達成たっせいした。なお、1987ねんには国家こっか備蓄びちくを3000まんキロリットルから5000まんキロリットルに、民間みんかん備蓄びちくを90にちから70にちにすると提言ていげんし、国家こっか備蓄びちくは1998ねんに5000まんキロリットルを達成たっせいしている。また、2005ねんには石川いしかわけんなななど3かしょ国家こっか石油せきゆガス備蓄びちく基地きち完成かんせいした。

 2007ねん現在げんざい国内こくない稼動かどうしている国家こっか石油せきゆ備蓄びちく基地きちおよび石油せきゆ共同きょうどう備蓄びちく基地きち以下いかの12基地きちである。北海道ほっかいどう共同きょうどう備蓄びちく苫小牧とまこまい東部とうぶ、むつ小川原おがわはら岩手いわてけん久慈くじ(くじ)、秋田あきた新潟にいがた共同きょうどう備蓄びちく福井ふくい愛媛えひめけん菊間きくま白島しらしま上五島かみごとう鹿児島かごしまけん串木野くしきの(くしきの)、鹿児島かごしまけん志布志しぶし(しぶし)。国家こっか民間みんかん備蓄びちくをあわせた日本にっぽん石油せきゆ備蓄びちくりょうは9218まんキロリットル、182にちぶん(2007ねん12がつまつ時点じてん保有ほゆうりょう)である。

はら しんむべ佐藤さとう俊二しゅんじ

石油せきゆ学会がっかいへんしん石油せきゆ事典じてん』(1982・朝倉書店あさくらしょてん)』日本石油にほんせきゆ株式会社かぶしきがいしゃへん石油せきゆ便覧びんらん』(1982・石油せきゆ春秋しゅんじゅうしゃ)』石油せきゆ学会がっかいへんしん石油せきゆ精製せいせいプロセス』(1984・こう書房しょぼう)』


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改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん石油せきゆ」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

石油せきゆ (せきゆ)
petroleum

油井ゆせいから生産せいさんされたままの,液状えきじょう炭化たんか水素すいそ主成分しゅせいぶんとし,微量びりょう硫黄いおう窒素ちっそ酸素さんそ金属きんぞくなどをふく天然てんねん化合かごうぶつ原油げんゆといい,炭化たんか水素すいそけい天然てんねんガスとともに石油せきゆ総称そうしょうされる。各種かくしゅ燃料ねんりょう潤滑油じゅんかつゆ,アスファルトなどの石油せきゆ製品せいひん広義こうぎには石油せきゆのなかにふくまれる。

石油せきゆ成因せいいんについては19世紀せいき初頭しょとう以来いらい有機ゆうき生物せいぶつ起源きげんせつ無機むき無生物むせいぶつ起源きげんせつとが対立たいりつしてきた。当初とうしょ有力ゆうりょくだったのは無機むきせつであって,このなかには火山かざん起源きげんせつ炭酸たんさんガスとアルカリ金属きんぞくとの接触せっしょくによるとのせつ,カーバイドとみずとの反応はんのうによるとのせつがあり,化学かがくしゃによって提案ていあんされたものがおおい。現在げんざいでもロシアでは無機むきせつ有機ゆうきせつとのはげしい論争ろんそうつづいているが,世界せかいてき傾向けいこうとしては,だい2大戦たいせんはほぼ有機ゆうきせつ統一とういつされている。このひとつは,石油せきゆのなかにポルフィリンがふくまれていることで,この物質ぶっしつ生物せいぶつのヘモグロビンやクロロフィルから変化へんかしたものである。有機ゆうき成因せいいんせつのなかでも石炭せきたん起源きげんせつりくしげる植物しょくぶつせつみずなり植物しょくぶつせつなどのような提案ていあんおこなわれたが,石油せきゆうみ成層せいそう分布ぶんぷする場合ばあいおおいので,現在げんざいうみなり生物せいぶつ由来ゆらいするというかんがかた有力ゆうりょくである。しかし,りく成層せいそうのなかに分布ぶんぷする石油せきゆも,アラスカ,中国ちゅうごく,リビアなどでしだいにひろ発見はっけんされるようになり,世界せかい全体ぜんたい石油せきゆの1/3ちかくはりくしげるのものという推定すいていもある。とくに研究けんきゅうすすんでいるのはケロジェン起源きげんせつである。ケロジェンkerogenは地球ちきゅうじょうもっと多量たりょう存在そんざいする有機物ゆうきぶつで,ねつ作用さようによってケロジェンから石油せきゆけい炭化たんか水素すいそ生成せいせいされることは実験じっけんてきにも証明しょうめいされた(〈石油せきゆ根源こんげんがん〉のこう参照さんしょう)。

これまでの石油せきゆさんじょうかんする資料しりょうから,世界せかい油田ゆでんおおくは地温ちおんこうばいおおきいところでは比較的ひかくてきあさ地層ちそうに,地温ちおんこうばいちいさいところでは比較的ひかくてきふか地層ちそう石油せきゆ存在そんざいする傾向けいこうがある。

 世界せかいおおくの原油げんゆ分析ぶんせき結果けっかによると,元素げんそ組成そせいはだいたいつぎ範囲はんいにある。炭素たんそ83~87%,水素すいそ11~14%,硫黄いおう0.05~2%,窒素ちっそ0.1~2%,酸素さんそ0~2%。石油せきゆ炭化たんか水素すいそ成分せいぶん化合かごうぶつ分子ぶんし構造こうぞうのタイプによって一般いっぱんに,パラフィンけい,オレフィンけい,ナフテンけいおよび芳香ほうこうぞくけい区分くぶんされる。パラフィンけい炭化たんか水素すいそはCnH2n+2分子ぶんししき飽和ほうわくさりしき化合かごうぶつ,オレフィンけい炭化たんか水素すいそじゅう結合けつごうをもち,じゅう結合けつごう1個いっこ場合ばあいはCnH2n一般いっぱんしきしめされるくさりしき化合かごうぶつ,ナフテンけい炭化たんか水素すいそすくなくとも1個いっこ飽和ほうわたまき(ナフテンたまき)をふく一般いっぱんしきはCnH2nたまきしき化合かごうぶつ芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいそすくなくとも1個いっこ芳香ほうこうぞくたまきふくたまきしき化合かごうぶつで,その原型げんけいはベンゼンである。一方いっぽう天然てんねんガスにふくまれるおもな炭化たんか水素すいそはメタン,エタン,プロパン,イソブタン,ノルマルブタン,ペンタンである。

通常つうじょう油田ゆでんからおさむされる原油げんゆのほかに,おさむ技術ぎじゅつ未熟みじゅくであり,現在げんざいあぶらでは商業しょうぎょう困難こんなんであるがゆえに在来ざいらいがた原油げんゆばれる石油せきゆけい炭化たんか水素すいそ資源しげんがあり,オイルサンド(タールサンド)鉱床こうしょうオイルシェール鉱床こうしょうふくまれる。前者ぜんしゃ普通ふつう原油げんゆ地下ちか浅所あさどころ,または地表ちひょう露出ろしゅつして,揮発きはつぶん気化きかしたり,天水てんすい空気くうきとの接触せっしょくにより分解ぶんかいおこなわれてじゅうしつしたものである。カナダのアルバータしゅうのアサバスカ鉱床こうしょう,ベネズエラのオリノコ鉱床こうしょう巨大きょだい鉱床こうしょうとしてられている。オイルシェールはケロジェンを大量たいりょうふくんだ特殊とくしゅ有機ゆうきしつ岩石がんせきで,成因せいいんてきには石油せきゆ石炭せきたんとの中間ちゅうかんくらいし,生成せいせい環境かんきょうみずうみまたはきわめてあさうみ推定すいていされる。アメリカのコロラドしゅう,オーストラリアなどにだい鉱床こうしょう分布ぶんぷする。

 天然てんねんガスについても在来ざいらいがたガスと総称そうしょうされるものがあり,このなかにはバイオマス,廃棄はいきぶつなどより生成せいせいされるガス,石炭せきたん地下ちかガス,ガスすい和物あえもの(メタンハイドレート)などのガスもふくまれるが,現在げんざいアメリカでもっと有望ゆうぼうかんがえられているのはタイトフォーメーション・ガス,コールベットメタンとデボニアンシェール・ガスである。タイトフォーメーション・ガスはロッキー山脈さんみゃく地域ちいき大量たいりょう分布ぶんぷするタイト(硬質こうしつ砂岩さがんなかのガスをフラクチャリング(破砕はさいほうによっておさむする。デボニアンシェール・ガスはアパラチア地域ちいきのデボンシェール(ケツがん)のなかのガスをやはりフラクチャリングによって回収かいしゅうする。

石油せきゆ天然てんねんガスの探鉱たんこう開発かいはつは,地下ちか資源しげん同様どうように,特定とくてい地域ちいきについて鉱業こうぎょうけん設定せっていされる。この石油せきゆ利権りけんが,産油さんゆこく民族みんぞく意識いしき高揚こうようとともに,鉱業こうぎょうけん国有こくゆうあるいは政府せいふ経営けいえい参加さんかというかたち圧迫あっぱくけている。しかし,産油さんゆこく国営こくえい石油せきゆ会社かいしゃは,自力じりき石油せきゆ探鉱たんこう開発かいはつおこな能力のうりょく十分じゅうぶんでなく,先進せんしんこく石油せきゆ会社かいしゃ請負うけおいまたは生産せいさん分与ぶんよ契約けいやくむすんでいる。

 石油せきゆ天然てんねんガスの開発かいはつ事業じぎょうは,まず地下ちか潜在せんざいするあぶらガスそうさが探鉱たんこうから着手ちゃくしゅする。石油せきゆ探鉱たんこう手段しゅだん近年きんねん飛躍ひやくてき向上こうじょうしてはいるが,商業しょうぎょうてき採算さいさんがとれる油田ゆでん発見はっけんりつ平均へいきんして試掘しくつ100あなあたすう油田ゆでんである。さいわいにあぶらガスそう発見はっけんされたら,その埋蔵まいぞうりょう計算けいさんし,開発かいはつ採算さいさんせい調査ちょうさする油層ゆそう評価ひょうかおこない,開発かいはつ移行いこう決定けっていされたら詳細しょうさい開発かいはつ計画けいかく生産せいさん計画けいかくとを策定さくていする。

 石油せきゆ開発かいはつ生産せいさん油層ゆそううち流体りゅうたいがもっている天然てんねん自噴じふんエネルギーを利用りようして,石油せきゆ地表ちひょうまであげすることにはじまる。エネルギーが枯渇こかつしてくるとポンプでくみげる。しかし,天然てんねんのエネルギーだけにたよって採油さいゆおこなうと,平均へいきんてきには地下ちかそんするあぶらりょうの5~30%程度ていどしか回収かいしゅうできない。油層ゆそうみずまたはガスを圧入あつにゅうしたり,油層ゆそう直接ちょくせつ加熱かねつしたり,界面かいめん活性かっせいざい,ポリマーまたは炭酸たんさんガスなどを注入ちゅうにゅうしてあぶらおさむりつ回収かいしゅうりつ)をたかめるためのさまざまな方法ほうほう研究けんきゅうされている。これらの方法ほうほう改良かいりょうがたおさむほう(IOR)あるいは増進ぞうしん回収かいしゅうほう(EOR)と総称そうしょうする。近年きんねんにおける遺伝子いでんしぐみえ,細胞さいぼう融合ゆうごうなどのバイオテクノロジーの急速きゅうそく進歩しんぽ基礎きそとして,バクテリアを利用りようしてあぶら回収かいしゅうりつ向上こうじょうさせる方法ほうほう有望ゆうぼうされている。

 原油げんゆおよび天然てんねんガスの埋蔵まいぞうりょう計算けいさんほうは,JISで容積ようせきほう物質ぶっしつ収支しゅうしほうおよび減退げんたい曲線きょくせんほうの3種類しゅるいさだめられている。埋蔵まいぞうりょう原始げんし埋蔵まいぞうりょう埋蔵まいぞうりょうとにけられ,またそれぞれはあぶらガスそうそん確実かくじつおうじて確認かくにん推定すいていおよび予想よそうみっつのカテゴリーに区分くぶんされる(〈埋蔵まいぞうりょう〉のこう参照さんしょう)。

石油せきゆ人類じんるい利用りようされるようになったのは紀元前きげんぜん3000ねんころからで,アスファルトの利用りようからはじまったといわれる。以後いご18世紀せいきまつまでは,地表ちひょうにしみしている石油せきゆ防腐ぼうふざい薬剤やくざい灯火ともしび炊事すいじなどに利用りようしたにとどまった。

 19世紀せいきなかごろにアメリカで石油せきゆから良質りょうしつのランプ製造せいぞうされるようになり,石油せきゆ需要じゅよう急速きゅうそくびて,地表ちひょうにしみしている石油せきゆおさむしているだけでは不十分ふじゅうぶんとなり,井戸いどって石油せきゆ採取さいしゅするようになった。1855ねんにビスルG.H.Bissellはペンシルベニアしゅうのタイタスビルに世界せかい最初さいしょ石油せきゆ会社かいしゃ設立せつりつした。この会社かいしゃ工事こうじ主任しゅにんとしてむかえられたE.L.ドレークは,塩水えんすい技術ぎじゅつもちいて,59ねん世界せかい最初さいしょあぶら目的もくてきとしたあなによる石油せきゆ発見はっけん成功せいこうした。いまからひゃくすうじゅうねんまえにすぎない。ドレークあぶらちょうなかの,地形ちけいてきにはクリークじょう低地ていち掘削くっさくされた。当時とうじ石油せきゆ低地ていちにたまるものとしんじられていた。しかし,そのまもなく,カナダ地質調査所ちしつちょうさしょのハントT.S.Huntが石油せきゆ鉱床こうしょうはす構造こうぞう関係かんけいについて注目ちゅうもくし,いで85ねんにペンシルベニアしゅう地質調査所ちしつちょうさしょのホワイトI.C.Whiteがはすせつ確立かくりつした。はす構造こうぞう現在げんざいでももっと有力ゆうりょくなトラップ型式けいしきである。

 19世紀せいきちゅうごろまでは,照明しょうめいよう燃料ねんりょうとして鯨油げいゆ樹脂じゅしからろうそくがつくられていた。しかし,このころから炭鉱たんこうのなかの浸出しんしゅつ油分ゆぶん多量たりょうふく石炭せきたん一種いっしゅ天然てんねんアスファルトを原料げんりょうとする〈石炭せきたん〉の製造せいぞう企業きぎょうされるようになった。これに呼応こおうして,ドレーク成功せいこう契機けいきとして石油せきゆ産業さんぎょう急速きゅうそく発展はってんした。この時代じだい石油せきゆ利用りよう灯油とうゆとめぶんだけに限定げんていされていたが,19世紀せいきまついたって重油じゅうゆだい規模きぼ利用りようみちひらかれるようになった。20世紀せいきはいると,ガス灯がすとう電灯でんとう普及ふきゅうして灯火ともしびようとしての石油せきゆ需要じゅよう減少げんしょうしたかわりに,重油じゅうゆ内燃ないねん機関きかんよう灯油とうゆ需要じゅよう増加ぞうかした。1908ねんフォードしゃてい価格かかく乗用車じょうようしゃ(Tがたフォード)を発表はっぴょうし,量産りょうさんはじまったので,そのすう年間ねんかんでガソリンはもっと重要じゅうよう石油せきゆ製品せいひんとなった。

 だい2大戦たいせんだい1大戦たいせんにもして,石油せきゆ重要じゅうようせい認識にんしきさせたことはいうまでもないが,この時期じき前後ぜんごして中東ちゅうとう地域ちいき膨大ぼうだい石油せきゆ資源しげん発見はっけんされ,大量たいりょうかつ安価あんか石油せきゆ供給きょうきゅう可能かのうになった。30年代ねんだい以降いこう,エネルギーは石炭せきたんから石油せきゆへの〈流体りゅうたい革命かくめい〉が急速きゅうそく進行しんこうした。石油せきゆ交通こうつう機関きかん動力どうりょくげん産業さんぎょう家庭かてい熱源ねつげん電力でんりょく発生はっせいげんとしての主力しゅりょくめているほか,石油せきゆ化学かがく製品せいひんとして日常にちじょう生活せいかつのすべてのめん浸透しんとうしている。

 しかし陸上りくじょう石油せきゆ開発かいはつ余地よちがしだいにせばめられるにともなって,海洋かいよう石油せきゆ資源しげん注目ちゅうもくされるようになった。とくに水深すいしんやく200mまでの大陸棚たいりくだなは,地質ちしつ学的がくてきには陸地りくちとまったくかわりがなく,海洋かいよう石油せきゆ資源しげんの90%ちかくが大陸棚たいりくだな分布ぶんぷするものと期待きたいされている。本格ほんかくてき海洋かいよう石油せきゆ掘削くっさくは,47ねんにメキシコわん浅海せんかい開始かいしされ,しだいに深海しんかいかった。83ねんには掘削くっさくせんによってアメリカ東海岸ひがしかいがんおき水深すいしん2300mにおいて掘削くっさくおこなわれた。しかし,実際じっさい石油せきゆおさむしている最深さいしん水深すいしんは,97ねんにブラジルおきのカンポス堆積たいせきぼんでペトロブラス国営こくえい石油せきゆ会社かいしゃ記録きろくした1710mである。現在げんざい海洋かいよう油田ゆでんからの生産せいさんりょうは,世界せかい石油せきゆそう生産せいさんりょうやく30%をめているが,将来しょうらいはそのシェアがえる傾向けいこうにある。

 産油さんゆこくは1960ねん世界せかい全体ぜんたい原油げんゆ生産せいさんりょうやく2100まんバレル/であったころにOPEC(オペツク)(石油せきゆ輸出ゆしゅつこく機構きこう)を結成けっせいし,原油げんゆ価格かかく上昇じょうしょう積極せっきょくてき攻勢こうせいをかけた。とくに73ねんだい4中東ちゅうとう戦争せんそうをきっかけとして,あぶら一挙いっきょすうばい高騰こうとうした(だい1石油せきゆ危機きき)。いで77ねんあきごろから不穏ふおん政治せいじ情勢じょうせいおちいっていたイランにおいて,78ねん2がつにイスラム革命かくめい政権せいけん成立せいりつした。79ねん史上しじょう最高さいこう原油げんゆ生産せいさんりょうやく6240まんバレル/にち)であったころ,イランの石油せきゆ生産せいさんはほとんど停止ていしして,石油せきゆ需給じゅきゅうふたた逼迫ひっぱく(ひつぱく)し,だい2石油せきゆ危機ききむかえた。その結果けっか,1年余ねんよ石油せきゆふたたび2ばい以上いじょう高騰こうとうした。石油せきゆ資源しげんりょうはかなり膨大ぼうだいであるとしても,有限ゆうげん化石かせき燃料ねんりょう資源しげんであることは事実じじつであり,石油せきゆが“低廉ていれんかつ豊富ほうふ”なエネルギーげんであった時代じだいったのである。

 しかしそのは,先進せんしんこく中心ちゅうしんしょうエネルギー,だつ石油せきゆおよび石油せきゆ代替だいたいエネルギーへの移行いこうすすんで石油せきゆ需要じゅよう下降かこうし,83ねんにはやく5300まんバレル/にちまでんだ。さらに世界せかいてき景気けいき低迷ていめいしていること,イラン・イラク戦争せんそう勃発ぼっぱつ消費しょうひこく通常つうじょう水準すいじゅんよりもかなりおおくなった石油せきゆ備蓄びちくくずしていることなども需要じゅよう減少げんしょう原因げんいんである。石油せきゆ供給きょうきゅうめんでは,OPEC自由じゆう諸国しょこく石油せきゆ生産せいさん増加ぞうかし,そのぶんOPECの生産せいさん減少げんしょうしている。イギリスは81ねんはじめてじゅん石油せきゆ輸出ゆしゅつこくとなった。西欧せいおう諸国しょこくでは,距離きょりてきちかくかつ割安わりやす北海ほっかい原油げんゆたいする需要じゅよう増加ぞうかしている。また先進せんしん各国かっこくとも安定あんていてき供給きょうきゅう確保かくほ見地けんちから,原油げんゆ購入こうにゅうさき分散ぶんさんをはかっている。

 90ねん8がつ,イラクのクウェート侵攻しんこうにより湾岸わんがん危機きき勃発ぼっぱつしたが,91ねん2がつ停戦ていせん,クウェートの油田ゆでん炎上えんじょうとイラク原油げんゆ輸出ゆしゅつ禁止きんしによる供給きょうきゅうりょうみを,サウジ,アブ・ダビー,イラン,ベネズエラの増産ぞうさんわせたため,だい3石油せきゆ危機きき回避かいひされた。

一方いっぽう日本にっぽんでも石油せきゆかんする記録きろくふるく,天智天皇てんぢてんのうのころ(668)越後えちごくにより〈えるみず〉〈える〉が献上けんじょうされたのをはじめとして,数々かずかず伝承でんしょうがある。江戸えど時代じだいには灯油とうゆ薬用やくようとして一部いちぶ使用しようされてきたが,石油せきゆ商品しょうひんとしてひろあつかわれるようになったのは,明治めいじになって灯油とうゆ輸入ゆにゅうされるようになってからである。明治めいじ初年しょねんには,新潟にいがたけん中心ちゅうしんとする日本海にほんかいがわ石油せきゆ採掘さいくつブームがこったが,当時とうじ零細れいさい業者ぎょうしゃばかりであった。近代きんだい石油せきゆ産業さんぎょうとしての第一歩だいいっぽは1888ねん日本石油にほんせきゆ,92ねん宝田たからだ石油せきゆ設立せつりつはじまる。日本石油にほんせきゆ新潟にいがたけん尼瀬あまぜ海岸かいがんにおいて海中かいちゅう桟橋さんばし構築こうちくし,機械きかいりに成功せいこうした(1891)が,これは世界せかい最初さいしょ海洋かいよう掘削くっさくであった。

 1890年代ねんだい後半こうはんからは,外国がいこく石油せきゆ会社かいしゃ日本にっぽん進出しんしゅつし,日宝にっぽう両社りょうしゃはげしい販売はんばい競争きょうそうつづいたが,両社りょうしゃは1921ねん合併がっぺいしてあたらしい日本石油にほんせきゆ発足ほっそくした。同社どうしゃは24ねんころから国産こくさん原油げんゆ採掘さいくつ精製せいせいよりも,輸入ゆにゅう原油げんゆ精製せいせい販売はんばい部門ぶもん重点じゅうてん転換てんかんしていった。31ねん満州まんしゅう事変じへん契機けいきとして,それ以降いこうにちちゅう戦争せんそう太平洋戦争たいへいようせんそうへとなが戦時せんじ統制とうせい時代じだいつづいた。41ねんには特殊とくしゅ法人ほうじんとして帝国石油ていこくせきゆ設立せつりつされ,各社かくしゃ採掘さいくつ部門ぶもん統合とうごうされた。

 だい2世界せかい大戦たいせんによる石油せきゆ精製せいせいぎょう被害ひがい甚大じんだいであった。当初とうしょアメリカの占領せんりょう政策せいさくは,石油せきゆ産業さんぎょうたいしてもきびしく,太平洋たいへいようがわ精油せいゆしょ復旧ふっきゅうみとめられなかった。しかし,49ねんにはアメリカの政策せいさくは180転換てんかんし,既存きそん精油せいゆしょ再開さいかいによる輸入ゆにゅう原油げんゆ精製せいせい開始かいしされた。日本にっぽん精製せいせいぎょうは,原油げんゆ安定あんてい輸入ゆにゅう確保かくほするために次々つぎつぎ外資がいし導入どうにゅうおこなった。62ねん公布こうふされた石油せきゆ業法ぎょうほうによって,日本にっぽん石油せきゆ精製せいせいぎょうはさまざまな規制きせいした事業じぎょうおこなっていくことになり,現在げんざいいたっている。

 73ねんだい4中東ちゅうとう戦争せんそうはしはっした石油せきゆ危機ききたいして,日本にっぽん政府せいふは〈石油せきゆ緊急きんきゅう対策たいさく要綱ようこう〉をベースとする石油せきゆ消費しょうひ抑制よくせい指導しどうし,いで〈石油せきゆ需給じゅきゅう適正てきせいほう〉および〈国民こくみん生活せいかつ安定あんてい緊急きんきゅう措置そちほう〉を公布こうふ施行しこうした。石油せきゆ危機ききともなってあぶらは4ばい高騰こうとうし,これが石炭せきたん天然てんねんガス,LNG,ウランなどのそののエネルギー価格かかくにも波及はきゅうし,ぜん世界せかいてきなエネルギーだか価格かかく時代じだいむかえた。

 78ねんのイランの政変せいへんともなだい2石油せきゆ危機ききおよび80ねんのイラン・イラク戦争せんそう勃発ぼっぱつは,消費しょうひ節減せつげん景気けいき下降かこうなどによって,日本にっぽん石油せきゆ需要じゅよう大幅おおはば減少げんしょうした。このため石油せきゆ需給じゅきゅう混乱こんらん軽微けいびですんだが,石油せきゆ精製せいせいぎょうにとっては設備せつび遊休ゆうきゅうという深刻しんこく事態じたいいたった。石油せきゆ企業きぎょう収益しゅうえき圧迫あっぱくされ,過当かとう競争きょうそう激化げきかするという状況じょうきょうもとで,現在げんざい業界ぎょうかい統合とうごうさい編成へんせいすすめられている。

 戦後せんご日本にっぽん企業きぎょうによる海外かいがい石油せきゆ資源しげん開発かいはつは,1958ねん設立せつりつされたアラビア石油あらびあせきゆがサウジアラビアとクウェートのあいだにある中立ちゅうりつ地帯ちたいにおいて,カフジ油田ゆでん発見はっけんした(1960)ことにはじまる。海外かいがい事業じぎょう日本にっぽんとしては基盤きばんあさく,また多大ただいなリスク資金しきんようするので,自主じしゅ開発かいはつ原油げんゆ増産ぞうさん促進そくしんするために,67ねん石油せきゆ開発かいはつ公団こうだん(のち石油せきゆ公団こうだんげん独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん石油せきゆ天然てんねんガス・金属きんぞく鉱物こうぶつ資源しげん機構きこう)が設立せつりつされた。これ以降いこう日本にっぽん企業きぎょうによるくに内外ないがいにおけるプロジェクトは急速きゅうそく増加ぞうかした。
石油せきゆ産業さんぎょう →油田ゆでん
執筆しっぴつしゃ

世界せかい石油せきゆそう生産せいさんりょうは,1981ねんやく29おくt,そのうちのやく10おくtという膨大ぼうだいりょう海上かいじょう輸送ゆそうされている。このうちのやく0.1%以上いじょうがなんらかのかたちうみ流出りゅうしゅつしているといわれている。1971ねん新潟港にいがたこうおきジュリアナごう原油げんゆ流出りゅうしゅつ事故じこ,74ねん水島みずしま重油じゅうゆ流出りゅうしゅつ事故じこ,79ねんのメキシコわんイクソトク油井ゆせいばく噴,83ねんのイラク攻撃こうげきによるペルシアわん海底かいてい油田ゆでん損傷そんしょうなど,大量たいりょうあぶら流出りゅうしゅつ事故じこ周辺しゅうへん海域かいいき水産すいさん生物せいぶつ資源しげん多大ただい被害ひがいあたえてきたが,この傾向けいこう近年きんねん海底かいてい油田ゆでん開発かいはつ増加ぞうかと,タンカーの大型おおがたともなって増加ぞうか様相ようそうしめしている。ここであぶらとは,原油げんゆ重油じゅうゆ潤滑油じゅんかつゆ軽油けいゆ灯油とうゆ揮発きはつ,アスファルト,その原油げんゆ,および原油げんゆから抽出ちゅうしゅつされる炭化たんか水素すいそをいう。

 あぶら汚染おせんは,水生すいせい生物せいぶつたいして物理ぶつりてき化学かがくてき作用さよう直接ちょくせつおよぼし,成育せいいく繁殖はんしょくなどの機能きのう阻害そがいしたり,死滅しめつさせたりするだけでなく,間接かんせつてきには,大気たいき水中すいちゅうとの酸素さんそ交換こうかんひかり透過とうかさまたげたり,水温すいおん変化へんかをもたらすことで,生物せいぶつ生息せいそく条件じょうけん悪影響あくえいきょうあたえる。干潮かんちょう露出ろしゅつする海藻かいそうなどは,あぶら汚染おせんされたまま日照ひでりにさらされると枯死こしすることがあり,また,光合成こうごうせい作用さよう阻害そがいされたり,色素しきそ退色たいしょくすることがられている。貝類かいるいあぶら成分せいぶん体内たいないにとりむことによってえさ機能きのう麻痺まひし,ついには斃死へいし(へいし)する。表層ひょうそうぎょでは,えらにあぶら付着ふちゃくすると細胞さいぼう破壊はかいされて死亡しぼうする。ケロシンなど軽質けいしつでは,水中すいちゅう濃度のうど0.01ppmでちゃくしゅうみとめられる。魚介ぎょかいるいえさりょうとなる浮遊生物ふゆうせいぶつは,石油せきゆによる汚染おせん海域かいいきでは成長せいちょう阻害そがい死滅しめつこる。あぶら汚染おせんによる水産すいさんぎょう被害ひがいは,流出りゅうしゅつりょう拡散かくさん範囲はんい気象きしょううみきょうをはじめ,その海域かいいき漁業ぎょぎょう状況じょうきょうによって,その程度ていど内容ないようことなってくる。被害ひがい内容ないようとしては,漁獲ぎょかくぶつ汚染おせん死亡しぼうおよび成育せいいく異常いじょう漁船ぎょせん漁具ぎょぐ養殖ようしょく施設しせつなどの汚損おそん休業きゅうぎょうないし漁獲ぎょかく減少げんしょう漁場ぎょじょうまたは漁法ぎょほう転換てんかん漁獲ぎょかくぶつ販売はんばい不能ふのう返品へんぴん価格かかく低落ていらくなどがある。さらに,あぶら除去じょきょ漁場ぎょじょう清掃せいそうなどにあたる漁業ぎょぎょうしゃ負担ふたんおおきい。

 あぶら汚染おせんによる被害ひがいは,流出りゅうしゅつ事故じこのような突発とっぱつてきなものばかりでなく,タンカーなどから排出はいしゅつされるタンク洗浄せんじょうすい,バラストすいやビルジなど廃油はいゆが,風波ふうはによっていわゆる廃油はいゆボールとなり,沿岸えんがん漂着ひょうちゃくして沿岸えんがん漁業ぎょぎょう悪影響あくえいきょうあたえ,さらに海浜かいひんのアメニティをがいする。このようなあぶらによるうみ汚染おせん国際こくさいてき防止ぼうしする目的もくてきで,1978ねん〈1973ねん船舶せんぱくによる汚染おせん防止ぼうしのための国際こくさい条約じょうやくかんする1978ねん議定ぎていしょ(MARPOL73/78条約じょうやく)〉がロンドンにおいて採択さいたくされた。この議定ぎていしょは82ねん10がつ1にち付属ふぞくしょⅠ(あぶらるい)について発効はっこう要件ようけん充足じゅうそくされたことにより,83ねん10がつ2にち効力こうりょくしょうじ,日本にっぽんにおいても〈海洋かいよう汚染おせんおよ海上かいじょう災害さいがい防止ぼうしかんする法律ほうりつ〉の一部いちぶ改正かいせいおこなっている。

 あぶら海上かいじょう流出りゅうしゅつしたり,漁場ぎょじょう流入りゅうにゅうした場合ばあい水産すいさん被害ひがい最小限さいしょうげんにくいとめるために,一刻いっこくはや効果こうかてき対策たいさくをたて処理しょりすることがたいせつである。そのために一連いちれん通報つうほう体制たいせいが,海上保安庁かいじょうほあんちょう地方自治体ちほうじちたい漁業ぎょぎょう協同きょうどう組合くみあい中心ちゅうしんとして構成こうせいされている。あぶらによる汚染おせん防除ぼうじょ処理しょりには,まずオイルフェンスかこんで拡散かくさんふせぐ。ついで,あぶら回収かいしゅうせんあぶら吸引きゅういん装置そうちあぶらすい分離ぶんり装置そうちあぶら吸収きゅうしゅうざいなどで回収かいしゅうする。水深すいしんふかく,しかも海水かいすい交流こうりゅうおおきいところではあぶら物理ぶつりてき回収かいしゅうくわえて,あぶら処理しょりざい流出りゅうしゅつ乳化にゅうか分散ぶんさんさせる方法ほうほうかんがえられている。水深すいしんあさいところ,いそなどでは,あぶら処理しょりざい使用しようは,海産かいさん生物せいぶつへの影響えいきょうかんがえられるのでのぞましくない。生物せいぶつ影響えいきょうのよりすくないあぶらゲルざいによる処理しょり回収かいしゅう有効ゆうこう手段しゅだんである。
海洋かいよう汚染おせん
執筆しっぴつしゃ

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百科ひゃっか事典じてんマイペディア石油せきゆ」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

石油せきゆ【せきゆ】

天然てんねんさんする各種かくしゅ炭化たんか水素すいそ主成分しゅせいぶんとする可燃かねんせい鉱物こうぶつせいあぶら,およびそれを精製せいせいしてられる潤滑油じゅんかつゆアスファルトなど石油せきゆ製品せいひん総称そうしょう狭義きょうぎには原油げんゆ,あるいは灯油とうゆのみをさすこともある。成因せいいんについては石炭せきたんほどはっきりせず,定説ていせつはないが,大陸棚たいりくだななどの海底かいてい繁殖はんしょくした生物せいぶつ遺体いたい堆積たいせきし,バクテリアやあつ地熱じねつなどの作用さよう分解ぶんかいしてできたとする有機ゆうきせつ有力ゆうりょく。ほとんどがオルドビスだい三紀みき地層ちそうちゅう存在そんざいするが,とく採油さいゆ対象たいしょうとなる程度ていど集積しゅうせきしているものを石油せきゆ鉱床こうしょうといい,これははす構造こうぞうはす,ドーム断層だんそうおおい(油層ゆそう)。石油せきゆ鉱床こうしょう発見はっけんするには,各種かくしゅ石油せきゆ探査たんさおこない,発見はっけんされたらボーリングおこな油井ゆせいにより採油さいゆする。採油さいゆしたままの加工かこう鉱油こうゆ原油げんゆという。 原油げんゆ直接ちょくせつ石油せきゆ製品せいひんとして使用しようすることはほとんどなく,各種かくしゅ精製せいせいおこなって製品せいひんとする。すなわち,脱水だっすいだつしおした原油げんゆはまず加熱かねつ加熱かねつされたのちせいとめとうつねあつ蒸留じょうりゅうされ,ガソリン灯油とうゆ軽油けいゆ残留ざんりゅうぶん重油じゅうゆ)に分離ぶんりされる。重油じゅうゆおおくはさらに減圧げんあつ蒸留じょうりゅうにより潤滑油じゅんかつゆぶん残留ざんりゅうぶんけられ,前者ぜんしゃからはパラフィン後者こうしゃからはアスファルトや石油せきゆピッチなどを製造せいぞう。これらかくとめぶん割合わりあい原油げんゆ種類しゅるいによってことなり,ガソリンとう軽質けいしつとめぶんすくない場合ばあいには軽油けいゆとうじゅうしつ分解ぶんかいにより増産ぞうさんする。これにはふるねつ分解ぶんかいおこなわれたが,ガソリン機関きかん発達はったつによりこうオクタン価おくたんかのガソリンが要求ようきゅうされるようになると,触媒しょくばいもちいた接触せっしょく分解ぶんかい開発かいはつされ,さらに近年きんねんではていオクタン価おくたんかのガソリンとめぶんあらためただしてオクタン価おくたんかたかめるリフォーミング(あらためしつほう)がおこなわれている。また,蒸留じょうりゅうによってられるかくとめぶんには硫黄いおう酸素さんそ窒素ちっそなどの化合かごうぶつのほか,各種かくしゅ不純物ふじゅんぶつふくまれているため,硫酸りゅうさん苛性かせいソーダ,酸性さんせい活性かっせい白土しらつち合成ごうせいゼオライトなどによる化学かがく精製せいせいおこなう(脱硫だつりゅう)。 石油せきゆ発見はっけん利用りよう人類じんるい太古たいこはじまり,最初さいしょしゅとして灯火ともしびよう使つかわれたが,やがて内燃ないねん機関きかん発達はったつとともにその燃料ねんりょうとして大量たいりょう消費しょうひされるにいたった。だい大戦たいせんはエネルギー資源しげんとして,さらには石油せきゆ化学かがく製品せいひん基礎きそ原料げんりょうとして重要じゅうようせいくわえた。世界せかい石油せきゆ確認かくにん埋蔵まいぞうりょうやくちょう195おくバレル(1997ねん)。中東ちゅうとう北米ほくべい中南米ちゅうなんべいきゅうソ連それんきたアフリカが,世界せかいのおもな石油せきゆ産地さんちとしてあげられる。また日本にっぽんでは新潟にいがた秋田あきたなどの,おもにグリーンタフ地域ちいきしんだい三紀みき地層ちそうちゅうからさんする。→海底かいてい油田ゆでん石油せきゆ産業さんぎょう油田ゆでんオイルサンドオイルシェール石油せきゆ代替だいたいエネルギー
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化学かがく辞典じてん だい2はん石油せきゆ」の解説かいせつ

石油せきゆ
セキユ
petroleum

天然てんねん地下ちかから産出さんしゅつする原油げんゆ,およびこれを精製せいせいしてられる各種かくしゅ石油せきゆ製品せいひん総称そうしょう現在げんざい世界せかいてきにエネルギーげん,および化学かがく工業こうぎょう原料げんりょうとしてもっとも重要じゅうよう物質ぶっしつ石油せきゆ主成分しゅせいぶん各種かくしゅ炭化たんか水素すいそ複雑ふくざつ混合こんごうぶつであるが,原油げんゆちゅうにはこのほかに若干じゃっかん硫黄いおう酸素さんそ窒素ちっそかく化合かごうぶつふくまれている.一般いっぱんに,これらの炭化たんか水素すいそ成分せいぶん含有がんゆうりょうすくないが,原油げんゆによってはかなり多量たりょう(すう%)の硫黄いおう化合かごうぶつふくむものがある.炭化たんか水素すいそ大別たいべつすると,アルカンアルケンシクロアルカンおよび芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいその4種類しゅるい分類ぶんるいされる.原油げんゆ主成分しゅせいぶんはアルカンおよびシクロアルカンで,芳香ほうこうぞく炭化たんか水素すいそりょう比較的ひかくてきすくなく,またアルケンは通常つうじょう原油げんゆちゅうふくまれないが,たね炭化たんか水素すいそねつ分解ぶんかいによって容易ようい生成せいせいする.しかし,これらの炭化たんか水素すいそは,重油じゅうゆ潤滑油じゅんかつゆのように分子ぶんしりょうおおきいとめぶんになると,1ふん子中こなかにシクロアルカン,芳香ほうこうぞくたまき,アルキルがわくさりがともに結合けつごうし,その区別くべつ不明ふめいかくとなる.石油せきゆ成因せいいんについては種々しゅじゅ学説がくせつがあって,なおあきらかでないてんおおいが,現在げんざいでは,古代こだいうみせい動物どうぶつおよび植物しょくぶつ,とくにプランクトンるい根源こんげんとするせつ有力ゆうりょくである.この学説がくせつによれば,古代こだいからのプランクトンるい遺体いたい海底かいてい沈積ちんせきし,これにふくまれる有機物ゆうきぶつちゅう酸素さんそが,まず嫌気いやけせいバクテリアの作用さようにより消費しょうひ除去じょきょされて石油せきゆしつ母体ぼたい生成せいせいした.これが地殻ちかく変動へんどうにより地層ちそうちゅう埋没まいぼつして,地熱じねつあつ地下ちか鉱物こうぶつ触媒しょくばい作用さようなどにより,しだいに石油せきゆ炭化たんか水素すいそ変化へんかし,地層ちそうちゅう移動いどう集積しゅうせきして今日きょう石油せきゆ鉱床こうしょう形成けいせいしたというものである.このようにして生成せいせいした石油せきゆ地球ちきゅうじょうにおける分布ぶんぷは,いちじるしく偏在へんざいしており,2007ねん初頭しょとうにおいて確認かくにんされた世界せかい石油せきゆ埋蔵まいぞうりょう2090おく kL のうち,やく56% はサウジアラビア,イラク,クウェート,イランなどの中東ちゅうとう諸国しょこくめている.これら中東ちゅうとう諸国しょこくのほかでは,ロシア,アメリカ,リビア,ナイジェリア,インドネシア,ベネズエラなどがおもな石油せきゆ産出さんしゅつこくである.これにたいして,2006ねんまつ石油せきゆ生産せいさんおよび消費しょうひりょう世界せかい合計ごうけいやく42おく kL で,消費しょうひりょうはアメリカがもっともおおく,中国ちゅうごく日本にっぽんがこれにつぎ,この3こくぜん消費しょうひりょうやく40% をめる.わがくに石油せきゆ輸入ゆにゅうりょう経済けいざい高度こうど成長せいちょうともな急速きゅうそく増加ぞうかしめし,1965ねんには1おく kL,1973ねんには2.9おく kL にたっした.しかし,にわたる石油せきゆ危機ききさかいとするてい成長せいちょうへの移行いこうしょうエネルギーの浸透しんとうにより,輸入ゆにゅうりょう減少げんしょうし,ふたたび増加ぞうかてんじたが,1994ねんの2.7おく kL をピークに減少げんしょうし,2005ねんでは2.5おく kL にとどまっている.ただし,このほかに石油せきゆ製品せいひんとしての輸入ゆにゅうやく0.4おく kL あり,国内こくないそうエネルギーのやく48% をめている.わがくにでは,新潟にいがた秋田あきた山形やまがたけん,などがおもな油田ゆでん地帯ちたいであるが,その生産せいさんりょうはきわめてすくなく,国内こくない需要じゅようりょうの0.3% 以下いかにすぎない.このためだい部分ぶぶん石油せきゆは,海外かいがいからの輸入ゆにゅうたよっており,その90% ちかくを中東ちゅうとう地域ちいき依存いぞんしている.原油げんゆから各種かくしゅ石油せきゆ製品せいひんへの精製せいせいだいいち段階だんかいは,原油げんゆつねあつ蒸留じょうりゅう(トッピング)で,沸点ふってんにより,ナフサ(軽質けいしつじゅうしつ),灯油とうゆ軽油けいゆなどのかくとめぶんおよび蒸留じょうりゅうざん分留ぶんりゅうする.軽質けいしつナフサのだい部分ぶぶんは,わがくにでは石油せきゆ化学かがく原料げんりょうもちいられるが,一部いちぶ水素すいそ精製せいせい処理しょりによりガソリンのブレンドざいとして使用しようされている.じゅうしつナフサからは,接触せっしょくあらためしつによってこうオクタン価おくたんかあらためしつガソリン製造せいぞうする.また,じゅうしつ軽油けいゆ接触せっしょく分解ぶんかいにより,こうオクタン価おくたんか接触せっしょく分解ぶんかいガソリンがられ,これら各種かくしゅのガソリンの配合はいごうによって市販しはんガソリンが生産せいさんされる.灯油とうゆ軽油けいゆとめぶん水素すいそ精製せいせいして硫黄いおうぶんなどをのぞき,減圧げんあつ軽油けいゆ水素すいそ分解ぶんかい生成せいせいぶつくわえて,灯油とうゆディーゼル燃料ねんりょうなどの製品せいひんとなる.またじゅうしつナフサ,灯油とうゆ一部いちぶは,水素すいそ精製せいせいしてジェット燃料ねんりょう製造せいぞうされ,水素すいそ脱硫だつりゅうしたつねあつざん軽油けいゆとの配合はいごうにより,各種かくしゅ品位ひんい重油じゅうゆ製造せいぞうされる.つねあつざん一部いちぶは,さらに減圧げんあつ蒸留じょうりゅう種々しゅじゅ精製せいせい工程こうていて,各種かくしゅ潤滑油じゅんかつゆ製造せいぞうされ,この工程こうていパラフィンろうアスファルトふくせいする.

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ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん石油せきゆ」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

石油せきゆ
せきゆ
petroleum

天然てんねんさんする炭化たんか水素すいそ主成分しゅせいぶんとする可燃かねんせい物質ぶっしつ総称そうしょう広義こうぎには,可燃かねんせい天然てんねんガス液体えきたい原油げんゆ固体こたいアスファルトふくむが,狭義きょうぎには原油げんゆだけをさすことがおおい。天然てんねん石油せきゆ精製せいせい石油せきゆるい区別くべつするため原油げんゆばれる。液体えきたい原油げんゆおよび天然てんねんガスは地中ちちゅう共存きょうぞんして同時どうじ回収かいしゅうされ,化石かせき燃料ねんりょうちゅう最大さいだい燃料ねんりょうげんとなる。石油せきゆ非常ひじょうおおくの成分せいぶんふくむが,主成分しゅせいぶん炭化たんか水素すいそでパラフィンけい,ナフテンけい芳香ほうこうぞく大別たいべつされる。パラフィンけい天然てんねんガスになるメタンから,精製せいせいされてガソリンになる液体えきたい結晶けっしょうせいワックスまで範囲はんいひろい。ナフテンけい揮発きはつせい液体えきたいからタールしつのアスファルトまでをふくみ,芳香ほうこうぞくけいはおもにベンゼンからなる。比重ひじゅうは 0.60~1.0でみずく。沸点ふってんは 200~400℃で化学かがくてき低級ていきゅう炭化たんか水素すいそほどひくい。
地表ちひょう浸出しんしゅつした液状えきじょう石油せきゆは,古代こだいより人々ひとびとられていた。イラン,イラクその地域ちいき採取さいしゅされた石油せきゆいち形態けいたいである瀝青れきせいやアスファルトは,ふね防水ぼうすいみち舗装ほそうなどに利用りようされてきた。だい航海こうかい時代じだいのヨーロッパじんも,アメリカとインドネシアで同様どうようくろ液状えきじょう浸出しんしゅつ発見はっけんしている。現代げんだい石油せきゆ産業さんぎょうへのおおきな転機てんきは,ランプの鯨油げいゆわって灯油とうゆ照明しょうめい燃料ねんりょう利用りようされたことである。石油せきゆ目的もくてきとしたはじめての採掘さいくつは,エドウィン・ローレンタイン・ドレークにより 1859ねんペンシルバニアしゅうタイタスビルでおこなわれ,すうじゅうねんのうちに原油げんゆ採掘さいくつはアメリカ,ヨーロッパ,中東ちゅうとうひがしアジアへとひろまった。まもなく自動車じどうしゃ発達はったつで,石油せきゆはガソリンの原料げんりょうとしてあらたな脚光きゃっこうびることになった。今日きょうではケロシン,軽油けいゆ潤滑油じゅんかつゆ重油じゅうゆ原料げんりょうとして,また溶剤ようざい,ペンキ,アスファルト,プラスチック,人造じんぞうゴム,繊維せんい石鹸せっけん洗剤せんざい,ワックス,ワセリン,薬品やくひん爆薬ばくやく化学かがく肥料ひりょうなどさまざまなものに精製せいせい加工かこうされる。
石油せきゆ成因せいいんにはいくつかのせつがあるが,有機ゆうき成因せいいんせつ有力ゆうりょくである。すなわち,すうおくねんまえ生息せいそくした水生すいせい植物しょくぶつ動物どうぶつ遺骸いがいもってどろすなじりい,なが年月としつき堆積岩たいせきがんちゅう地質ちしつがくてき変化へんかげて生成せいせいされたとするものである。古生代こせいだいやく 5おく4200まんねんまえから 2おく5100まんねんまえ)に,有機物ゆうきぶつ徐々じょじょ密度みつどおおきな粘土ねんどから多孔たこうせい浸透しんとうせいのある岩石がんせきへと移行いこうし,最後さいご砂岩さがんシルトになった。こうして最終さいしゅうてき形成けいせいされた堆積たいせきぶつ油層ゆそうという。おな岩石がんせき組織そしきをもつ一連いちれん油層ゆそう岩石がんせき組織そしきちがってもちかそうにある一連いちれん油層ゆそうをまとめて油田ゆでんび,どういち地質ちしつがく環境かんきょう油田ゆでんぐんのある地帯ちたい石油せきゆ地帯ちたいという。石油せきゆ地球ちきゅうじょうひろ分布ぶんぷしているが,量的りょうてきには中東ちゅうとう中心ちゅうしんきたアフリカ,カフカス,カスピ海かすぴかい,インドネシアをつらねるテチスうみ沿岸えんがんや,南北なんぼくアメリカの一部いちぶ,ウラル,ボルガ,西にしシベリア,アフリカ西岸せいがん中国ちゅうごく一部いちぶなどに集中しゅうちゅうてき存在そんざいする。おもな石油せきゆ産出さんしゅつこく中東ちゅうとう諸国しょこく,ロシア,アメリカである。
石油せきゆ天然てんねんガスの生産せいさんは,試掘しくつ掘削くっさく回収かいしゅうの 3段階だんかいおこなわれる。陸上りくじょう石油せきゆ埋蔵まいぞうとされる地域ちいき大半たいはんはすでに掘削くっさくちゅうであり,近海きんかい海底かいてい油田ゆでん注目ちゅうもくされている。地質ちしつがく油田ゆでん探鉱たんこう貢献こうけんできるのは,埋蔵まいぞう有望ゆうぼう岩石がんせき組織そしき位置いち決定けっていするまでで,実際じっさい石油せきゆ存在そんざいするかどうかは試掘しくつして確認かくにんするよりほかない。現代げんだい回転かいてん掘削くっさくは 9000m以上いじょうふかさの油井ゆせいることができる。発見はっけんされた石油せきゆはさまざまな方法ほうほう回収かいしゅうされる。地下ちか油層ゆそうめられた天然てんねんガスやみず圧力あつりょくしょう石油せきゆげるが,自然しぜん圧力あつりょくりなければ人工じんこうてきみず蒸気じょうき注入ちゅうにゅうして圧力あつりょくたかめる。さらに回収かいしゅうりつげるため,石油せきゆ粘性ねんせい毛細管もうさいかん作用さようひくくする二酸化炭素にさんかたんそじゅう合体がったい溶剤ようざいなどを注入ちゅうにゅうすることもある。石油せきゆはパイプラインやタンカーで製油せいゆしょはこばれる。パイプラインのなかには 1にちに 50まんバーレル以上いじょう輸送ゆそうできるものもある。
精製せいせい基本きほん蒸留じょうりゅうで,この過程かてい原油げんゆ沸点ふってんことなるとめぶん(ガソリン,ケロシン,潤滑油じゅんかつゆなど)にけられる。さらに脱硫だつりゅうなどにより不純物ふじゅんぶつ除去じょきょしたり,品質ひんしつ向上こうじょうのため分解ぶんかいあらためしつなどの化学かがく処理しょりくわえられる。ねつ分解ぶんかいほう石油せきゆとめぶん高熱こうねつまでねっするもので,使用しよう範囲はんいせま重油じゅうゆ分子ぶんしちいさな軽油けいゆ分子ぶんしえ,とめぶん価値かちたかくするのによく利用りようされる。あらためしつほう特定とくてい試薬しやく接触せっしょくさせ,分子ぶんしこまかくすることなく構造こうぞうえるもので,パラフィンけいガソリンのオクタン価おくたんかげるのにひろ利用りようされている。

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山川やまかわ 世界せかいしょう辞典じてん 改訂かいてい新版しんぱん石油せきゆ」の解説かいせつ

石油せきゆ(せきゆ)

石油せきゆ使用しよう紀元前きげんぜん3000ねんまでさかのぼれるといわれているが,当初とうしょはアスファルト,灯火ともしび炊事すいじなどに使用しようされるだけであった。エネルギーとしての大量たいりょう生産せいさんは,19世紀せいきのアメリカで油井ゆせい掘削くっさく技術ぎじゅつ開発かいはつされて以降いこうである。20世紀せいきになると,自動車じどうしゃ船舶せんぱく航空機こうくうきなどへの利用りよう激増げきぞうし,エネルギーの中心ちゅうしん石炭せきたんから石油せきゆ移行いこうした(流体りゅうたい革命かくめい)。石油せきゆ価格かかく当初とうしょ,メジャーズといわれる欧米おうべいけい企業きぎょう支配しはいしたが,それからの脱却だっきゃくをめざして1960ねん石油せきゆ輸出ゆしゅつこく機構きこう(OPEC)結成けっせいされる。だい4中東ちゅうとう戦争せんそうさいし,アラブ産油さんゆこく発動はつどうした石油せきゆ戦略せんりゃく世界中せかいじゅう石油せきゆ危機ききまねいた。しかし,その石油せきゆ市場いちば商品しょうひんし,OPECの影響えいきょうりょくにもかげりがみえている。

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世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうち石油せきゆ言及げんきゅう

【エネルギー革命かくめい】より

…エネルギー消費しょうひ構成こうせい急激きゅうげきおおきく変化へんかすることをいう。産業さんぎょう革命かくめいにおける人力じんりき水力すいりょくから蒸気じょうきりょく(石炭せきたん利用りよう)への転換てんかんいちれいであるが,一般いっぱんには,だい2世界せかい大戦たいせん世界せかいてきこった石炭せきたんから石油せきゆへの急激きゅうげきなエネルギーげん転換てんかんをさす。固体こたいエネルギーから流体りゅうたいエネルギーへの転換てんかんであることから,〈エネルギーの流体りゅうたい〉ともいわれる。…

【エネルギー資源しげん】より

…エネルギーは人類じんるい生存せいぞんにとってくことのできないものであるが,今日きょうしゅとして利用りようされているのは,石油せきゆ石炭せきたん天然てんねんガス,水力すいりょくかく燃料ねんりょうなどによるものである。このほか,太陽たいようひかりねつかわながれ,ふう,あるいは牛糞ぎゅうふん廃品はいひんなど,対価たいか支払しはらわずに利用りようされているエネルギーも大量たいりょうにあるが,通常つうじょう,エネルギー資源しげんという場合ばあいには,対価たいか支払しはらい必要ひつようとする商業しょうぎょうてき資源しげんしている。…

原油げんゆ】より

油井ゆせいから採取さいしゅされたままの天然てんねん石油せきゆをいう。原油げんゆ一般いっぱん黒褐色こっかっしょくねば液体えきたいである。…

炭化たんか水素すいそ】より

一方いっぽう,(3)脂肪しぼうぞく芳香ほうこうぞくかで炭化たんか水素すいそ二分にぶんする分類ぶんるいひろもちいられている。
性質せいしつ
 メタンやエタンのような気体きたい分子ぶんし石油せきゆやベンゼンのような液体えきたい分子ぶんし,ナフタレンのような固体こたい分子ぶんしがあるが,いずれもみずけにくくエーテルなどの有機ゆうき溶媒ようばいけやすい。飽和ほうわ炭化たんか水素すいそ一般いっぱん安定あんていであるが,条件じょうけんによってはラジカル反応はんのうける。…

※「石油せきゆ」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

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