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遺言(イゴン)とは? 意味や使い方 - コトバンク

遺言ゆいごんみ)イゴン

デジタル大辞泉だいじせん遺言ゆいごん」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

い‐ごん〔ヰ‐〕【遺言ゆいごん

ひとが、死亡しぼう法律ほうりつじょう効力こうりょくしょうじさせる目的もくてきで、遺贈いぞう相続そうぞくぶん指定してい相続そうぞくじん廃除はいじょ認知にんちなどにつき、民法みんぽううえ一定いってい方式ほうしきしたがってする単独たんどく意思いし表示ひょうじ。→遺言ゆいごん証書しょうしょゆいごん(遺言ゆいごん
いげん(遺言ゆいごん
[類語るいご]遺言ゆいごんじょう遺言ゆいごんしょ遺書いしょ

ゆい‐ごん【遺言ゆいごん

(スル)死後しごのためにいいのこしておくこと。また、その言葉ことば法律ほうりつ用語ようごでは「いごん」とむ。「財産ざいさん分与ぶんよについて遺言ゆいごんしておく」→いごん(遺言ゆいごん1
[類語るいご]遺言ゆいごんじょう遺言ゆいごんしょ遺書いしょ

い‐げん〔ヰ‐〕【遺言ゆいごん

にぎわに言葉ことばのこすこと。また、その言葉ことば。いごん。ゆいごん。
先人せんじん生前せいぜんったこと。また、その言葉ことば。いごん。
[類語るいご]遺言ゆいごんじょう遺言ゆいごんしょ遺書いしょ

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精選せいせんばん 日本にっぽん国語こくごだい辞典じてん遺言ゆいごん」の意味いみみ・例文れいぶん類語るいご

ゆい‐ごん【遺言ゆいごん

  1. 名詞めいし
  2. 死後しごのために生前せいぜんいのこすことば。いげん。いごん。ゆいげん。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「もち請庶おとうといねこうめいえびす麿まろいちよくかたり遺言ゆいごんいちもの」(出典しゅってん万葉集まんようしゅう(8Cよんろくななひだりちゅう)
    2. 「ゆいごんしきて、きゅうひぬ」(出典しゅってん宇津うつたもつ物語ものがたり(970‐999ごろしゅんかげ)
  3. 自分じぶん死後しご法律ほうりつじょう効力こうりょく発生はっせいさせる目的もくてきで、遺贈いぞう相続そうぞくぶん指定してい認知にんちなどにつき、一定いってい方式ほうしきしたがってする単独たんどく意思いし表示ひょうじ現代げんだい法律ほうりつでは習慣しゅうかんとして「いごん」とむ。

遺言ゆいごんかたり

( 1 )ふるくから現在げんざいいたるまで、呉音ごおんよみのユイゴンが使つかわれているが、中世ちゅうせい辞書じしょうんしょくしゅう」「いろは」などには呉音ごおん漢音かんおんわせたユイゲンのかたちえる。
( 2 )近世きんせい文献ぶんけんではユイゴンがおもだが、ユイゲンも使つかわれており、とき漢音かんおんよみのイゲンもられる。明治めいじ時代じだいにもこの三種さんしゅ併用へいよう状態じょうたいつづくが、一般いっぱんにはユイゴンがもちいられた。
( 3 )現在げんざい法律ほうりつ用語ようごとして慣用かんようされるイゴンといういいかたは、もっと一般いっぱんてきなユイゴンをもとにして、「遺書いしょ」「遺産いさん」など、「のこ」のかたとしてもっと普通ふつうな、漢音かんおんのイをわせたかたちで、法律ほうりつじょう厳密げんみつ意味いみになわせるかたりとして明治めいじまつとしごろから使つかわれはじめた。


い‐げんヰ‥遺言ゆいごん

  1. 名詞めいし
  2. ゆいごん(遺言ゆいごん
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「むようのいげんを書置かきおきけると」(出典しゅってん浮世草子うきよぞうし真実しんじつ伊勢物語いせものがたり(1690)さん)
    2. [その文献ぶんけん]〔春秋しゅんじゅうひだりでんあいこうさんねん
  3. 先人せんじん生前せいぜんったこと。また、その言葉ことば後世こうせいひと立場たちばからいう。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「天孫てんそん(かつて)遺言ゆいごん(イゲン)すらくわがくにだいなる寇(あた)なり」(出典しゅってん読本とくほん椿つばきせつ弓張月ゆみはりづき(1807‐11)ざん)
    2. [その文献ぶんけん]〔荀子‐勧学かんがく
  4. いごん(遺言ゆいごん

ゆい‐げん【遺言ゆいごん

  1. 名詞めいしゆいごん(遺言ゆいごん
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「遺言ゆいごん(ユイゲン)に、ところぶんじょう中陰ちゅういんぎてもん(ひら)くべきよしうんきてければ」(出典しゅってん米沢よねざわほんすなせきしゅう(1283)いちほん)

い‐ごんヰ‥遺言ゆいごん

  1. 名詞めいし
  2. いげん(遺言ゆいごん
  3. 法律ほうりつで、ひとが、死亡しぼう法律ほうりつじょう効力こうりょくしょうじさせる目的もくてきで、遺贈いぞう相続そうぞくぶん指定してい認知にんちなどにつき、一定いってい方式ほうしきしたがって単独たんどくおこなう最終さいしゅう意思いし表示ひょうじ一般いっぱんでは「ゆいごん」という。

いい‐ごんいひ‥遺言ゆいごん

  1. 名詞めいし ( 「ゆいごん(遺言ゆいごん)」の変化へんかしたかたり ) 死後しごにいいのこすこと。また、そのことば。いいげん。いげん。
    1. [初出しょしゅつ実例じつれい]「げんきよしにはまえふべきよし、いひごんせられしによって」(出典しゅってん申楽さるがくだん(1430)べつほん聞書ききがき)

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改訂かいてい新版しんぱん 世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん遺言ゆいごん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

遺言ゆいごん (ゆいごん)

〈いごん〉ともいう。自己じこ死亡しぼうとともに効力こうりょく発生はっせいさせる目的もくてきおこな単独たんどく意思いし表示ひょうじのこと。

元来がんらい人間にんげんは,その死後しご身分みぶんじょうおよび財産ざいさんじょうのことをかんがえて,生前せいぜんに,なんらかの措置そちこうじておきたいとねんずるのがつねである。また子孫しそん近親きんしんが,その意思いし尊重そんちょうして,その意思いし実現じつげんはかることは,徳義とくぎじょう要請ようせいされているともいえるだろう。われわれは,そこに,遺言ゆいごん制度せいど基礎きそいだすことができる。

 ところで,遺言ゆいごん制度せいど源流げんりゅうは,これを古代こだいローマにもとめることができる。紀元前きげんぜん5世紀せいきのころのものと推定すいていされる古代こだいローマの〈じゅうひょうほうちゅうには,すでに遺言ゆいごんかんするしょ規定きてい散見さんけんされ,すくなくとも紀元前きげんぜん200ねんころには,遺言ゆいごんすることが普通ふつう一般人いっぱんじん慣行かんこうとなっていたといわれているからである。しかし,ローマのほかは,ギリシアにもインドにも遺言ゆいごんふる歴史れきし見当みあたらず,ゲルマン民族みんぞくも,C.タキトゥスの《ゲルマニア》がかれた時代じだいはまだ遺言ゆいごんらなかったらしい。ドイツ,フランスとう遺言ゆいごん制度せいど導入どうにゅうされたのは,12世紀せいきまつから13世紀せいきにかけてのことであり,遺言ゆいごん慣行かんこう一般いっぱん庶民しょみんにまで浸透しんとうしはじめたのは,フランスでは14世紀せいき,ドイツでは15世紀せいきになってからである。中世ちゅうせいにおける遺言ゆいごん制度せいど成立せいりつ背景はいけいには,キリスト教きりすときょう普及ふきゅうとそれにともな死生しせいかん変化へんかがあり,遺言ゆいごんしょ普及ふきゅうには教会きょうかいおおきな役割やくわりたした。古来こらい共同きょうどうたいむすびついた財産ざいさんとはことなる個人こじん財産ざいさん観念かんねん形成けいせいされ,個人こじんれいすくいのために教会きょうかい遺産いさん寄進きしんすることが遺言ゆいごんしょ主要しゅよう内容ないようであった。

 日本にっぽんにおける遺言ゆいごんほう歴史れきしは,養老ようろうれいにまでさかのぼる。養老ようろうれいにみられる生前せいぜんにおける死後しごのための処分しょぶん意味いみした〈そん処分しょぶん〉は,その源流げんりゅうであるといわれている。しかし,それが普及ふきゅうするにいたったのは,江戸えど時代じだいになってからのことであり,当時とうじ庶民しょみんあいだでは,頓死とんしなど不慮ふりょのため遺言ゆいごんをなしえない場合ばあいのぞくほかは,遺言ゆいごん相続そうぞく原則げんそくてきおこなわれていた。しかし,当時とうじも,武士ぶしあいだでは,しゅたる財産ざいさんふうろくであり,その相続そうぞく君主くんしゅ意思いし依存いぞんしていたから,遺言ゆいごん相続そうぞく庶民しょみんあいだのごとくには普及ふきゅうしなかった。

 きゅう民法みんぽう(1890公布こうふ)は,フランス民法みんぽうにならい,遺言ゆいごんをもって遺贈いぞうをなす方法ほうほうみとめ,贈与ぞうよとともに財産ざいさん取得しゅとくへんなかにその規定きていもうけていた。しかし,相続そうぞくじん指定してい身分みぶん制度せいど内容ないようとする遺言ゆいごんについては規定きていいていた。明治めいじ民法みんぽう(1898公布こうふ)は,その欠点けってんおぎなうべく,相続そうぞくへんだい6しょうに〈遺言ゆいごん〉なる1しょうもうけ,ひろ各種かくしゅ遺言ゆいごんつうずる規定きていかかげることにした(1060~1129じょう)。明治めいじ民法みんぽう規定きてい方法ほうほうは,そのまま現行げんこう民法みんぽう(960~1027じょう)に継承けいしょうされている。

遺言ゆいごんないし遺言ゆいごん制度せいどをどのようなものとして理解りかいし,それにいかなる法的ほうてき性質せいしつ付与ふよするかは,相続そうぞく根拠こんきょ相続そうぞく形態けいたい遺言ゆいごん相続そうぞく制度せいどなかにおいてめる地位ちいとうによってかならずしも一様いちようではないが,日本にっぽん現行げんこう相続そうぞくほうじょう遺言ゆいごん制度せいどとしては,一応いちおう遺言ゆいごんしゃが,その死亡しぼうとともに効力こうりょくしょうぜしめる目的もくてきをもって,一定いってい方式ほうしきしたがってなす,相手方あいてがたのない単独たんどく意思いし表示ひょうじ単独たんどく行為こうい)であるということができる。したがって,それは,単独たんどくのしかも相手方あいてがたのない意思いし表示ひょうじであるてんにおいて,おなじく表意ひょういしゃ死亡しぼうとともに効力こうりょくしょうずる意思いし表示ひょうじであっても,双方そうほう合意ごういによって成立せいりつする死因しいん贈与ぞうよ契約けいやくとは,その本質ほんしつことにする。それゆえ,Aを受遺しゃとして,Aに特定とくてい財産ざいさん遺贈いぞうするむね遺言ゆいごんにおいても,また,Bを認知にんちするという遺言ゆいごんにおいても,そのA,Bは,遺言ゆいごん目的もくてきであって,相手方あいてがたではない。さらにまた,遺言ゆいごんは,一定いってい方式ほうしきようする要式ようしき行為こういであるてんにおいて,おなじくおわり処分しょぶんであっても,要式ようしき必要ひつようとしない死因しいん贈与ぞうよ契約けいやくとは,その法的ほうてき性質せいしつことにする。

現行げんこう民法みんぽうは,遺言ゆいごんは,この法律ほうりつさだめる方式ほうしきしたがわなければ,これをすることができない(民法みんぽう960じょうむね規定きていし,方式ほうしきさだめている。それゆえ,かく遺言ゆいごんしゃは,その方式ほうしきによって遺言ゆいごんしなければ,その遺言ゆいごんは,遺言ゆいごんとしての法的ほうてき効力こうりょくしょうじない。民法みんぽうさだめる遺言ゆいごんには,つぎ種別しゅべつがあり,それぞれにその方式ほうしきさだめられている。まず普通ふつう方式ほうしきとして,自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごん秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごんがある。つぎ特別とくべつ方式ほうしきとして,危急ききゅう遺言ゆいごんへだたしゃ遺言ゆいごんがあり,前者ぜんしゃ死亡しぼう危急ききゅうしゃ遺言ゆいごん船舶せんぱく遭難そうなんしゃ遺言ゆいごんべつがあり,後者こうしゃは,伝染でんせんびょう隔離かくりしゃ遺言ゆいごんざいふねしゃ遺言ゆいごんべつがある。

(1)自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん 民法みんぽうは,この方式ほうしき遺言ゆいごんをするには,遺言ゆいごんしゃが,その全文ぜんぶんにちづけおよび氏名しめい自書じしょし,これにしるしさなければならないむね規定きていしている(民法みんぽう968じょう1こう)。だから,この方式ほうしきによる遺言ゆいごんをしようとする遺言ゆいごんしゃは,まず,全文ぜんぶん本文ほんぶんのみならず日付ひづけ氏名しめいふくむ)を自分じぶんくことが必要ひつようである。他人たにん代書だいしょもしくは口述こうじゅつ筆記ひっきさせたり,タイプライターでったり,テープ吹込ふきこみによってすることはできない。たとえこれらによっても,その遺言ゆいごん無効むこうである。用字ようじ用語ようごは,略字りゃくじ略語りゃくご速記そっき文字もじでもまた外国がいこくでもさしつかえなく,用紙ようし筆記用具ひっきようぐ自由じゆうである。日付ひづけは,絶対ぜったい必要ひつようであり,日付ひづけのないものはもちろん,たん日付ひづけしるししてあるにすぎないものも無効むこうである。氏名しめいは,かならずしも戸籍こせき簿じょうのそれであることは必要ひつようでなく,ペンネーム雅号がごう芸名げいめいでもさしつかえない。しるしも,かならずしも実印じついんであることをようせず,認印みとめいん拇印ぼいんでもさしつかえないものとほぐされている。ようは,だれが,いつしたためた遺言ゆいごんであるかが正確せいかく認識にんしきされうるものであればりる。したがって,最近さいきん学説がくせつ判例はんれいは,そのてん確認かくにんできさえすれば効力こうりょくみとめむべく要件ようけん緩和かんわ方向ほうこうしている。だから,最高さいこう裁判所さいばんしょもまた,自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんは,すうようにわたるときでもいちつう遺言ゆいごんしょとして作成さくせいされているときは,その日付ひづけ署名しょめい捺印なついんいちようにされておれば有効ゆうこうかいし(1961ねん判決はんけつ),また,遺言ゆいごんしゃ外国がいこくじんであるときなどは,遺言ゆいごんしゃ署名しょめいがあれば,捺印なついんがなくても有効ゆうこうかいしている(1974ねん判決はんけつ)。しかし,いわゆる〈吉日きちじつ遺言ゆいごん〉(年月としつき記載きさいのみで日付ひづけ吉日きちじつ記載きさいしているもの)を有効ゆうこうするまでにはいたっていない(1979ねん判決はんけつ)。自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんは,文字もじけるものならだれでも自分じぶんだけで作成さくせいでき,公証こうしょうじん証人しょうにん立会たちあいじん必要ひつようでなく,費用ひようもかからず,作成さくせい事実じじつ内容ないよう秘密ひみつにしておける利点りてんがあるので,もっとひろ利用りようされているが,法律ほうりつ知識ちしきとぼしいもの場合ばあいには,方式ほうしき不備ふび無効むこうとされるおそれもあり,また,公証こうしょうじんなどおおやけ責任せきにんある個人こじんもしくは機関きかんによって保管ほかんされるわけではないから,紛失ふんしつ滅失めっしつ偽造ぎぞう発見はっけんのおそれもあり,遺言ゆいごんしゃ死後しご,その真実しんじつせいあらそわれることがおおいという欠点けってんがある。

 自筆じひつ証書しょうしょちゅう加除かじょその変更へんこうは,遺言ゆいごんしゃが,その場所ばしょ指示しじし,これを変更へんこうしたむね付記ふきして,とくにこれに署名しょめいし,かつ,その変更へんこう場所ばしょしるしさなければ,その効力こうりょくしょうじない(968じょう2こう)。その場所ばしょ変更へんこうしたむね付記ふきしたうえ署名しょめい要求ようきゅうされているてんにおいて,通常つうじょう文書ぶんしょ加除かじょ訂正ていせい場合ばあいよりも,要件ようけん加重かじゅうされている。遺言ゆいごんしゃ真意しんい確保かくほ改竄かいざんかいざん)の防止ぼうしさんがためであるが,最近さいきんでは,学説がくせつ判例はんれいは,これらの要件ようけんをも緩和かんわする傾向けいこうにある。それゆえ,最高さいこう裁判所さいばんしょも,自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんにおける証書しょうしょ記載きさい自体じたいからみてあきらかな誤記ごき訂正ていせいについては,民法みんぽう968じょう2こう所定しょてい方式ほうしき違背いはいがあっても,その違背いはいは,遺言ゆいごん効力こうりょく影響えいきょうおよぼさないとの態度たいどしている(1981ねん判決はんけつ)。ちなみに,この加除かじょ訂正ていせい要件ようけんかんする968じょう2こう規定きていは,後述こうじゅつ秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごんのそれにも準用じゅんようされている(970じょう2こう)。

(2)公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごん 公正こうせい証書しょうしょによって遺言ゆいごんする場合ばあいには,証人しょうにん2にん以上いじょう立会たちあいがあること,遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごん趣旨しゅし公証こうしょうじん口述こうじゅつし,公証こうしょうじんが,その遺言ゆいごんしゃ口述こうじゅつした内容ないよう筆記ひっきし,これを遺言ゆいごんしゃおよび証人しょうにんかせ,遺言ゆいごんしゃおよび証人しょうにんが,筆記ひっき正確せいかくなことを承認しょうにんしたのち各自かくじこれに署名しょめいし,しるしすことをようすることのみならず,公証こうしょうじんは,その証書しょうしょは,みぎしょ要件ようけん具備ぐびしたものであるむね付記ふきして,これに署名しょめいし,しるしさなければならない(969じょう)。このようにして作成さくせいされた遺言ゆいごん公正こうせい証書しょうしょ原本げんぽんは,公証こうしょうじん役場やくばに20年間ねんかん保存ほぞんされ(公証こうしょうじんほう施行しこう規則きそく27じょう1こう2ごう),その正本しょうほんは,遺言ゆいごんしゃ請求せいきゅうもとづいて交付こうふされる(公証こうしょうじんほう47じょう1こう)。それゆえ,公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごんは,無筆むひつでもこれをすることができ,原本げんぽんは,公証こうしょうじん役場やくば保存ほぞんされるから偽造ぎぞう変造へんぞう焼失しょうしつなどのおそれがなく,死後しごその効力こうりょくあらそわれる可能かのうせいすくなく,きわめて確実かくじつであるという利点りてんがある。しかし,一方いっぽうでは,手続てつづきがめんどうで,費用ひようもかかり,内容ないよう秘密ひみつにしておくことができない不都合ふつごうがある。しかし,最近さいきんでは,この利点りてん重視じゅうししてか,この方式ほうしきによる遺言ゆいごん着実ちゃくじつ増加ぞうか傾向けいこうをみせている。そしてまた,最近さいきんでは,この公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごんについても要件ようけん緩和かんわ傾向けいこうがみられ,最高さいこう裁判所さいばんしょも,遺言ゆいごんしゃ署名しょめいすることができない場合ばあいについての拡大かくだい解釈かいしゃくこころみ(1962ねん判決はんけつ),盲人もうじんにも証人しょうにん適格てきかくみとめるまでになっている(1980ねん判決はんけつ)。

(3)秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごん この方式ほうしき遺言ゆいごんをするには,遺言ゆいごんしゃが,その証書しょうしょ署名しょめい捺印なついんし,その証書しょうしょふうじ,証書しょうしょもちいた印章いんしょうをもって封印ふういんし,さらに遺言ゆいごんしゃが,公証こうしょうじん1にんおよび証人しょうにん2にん以上いじょうまえ封書ふうしょ提出ていしゅつして,自己じこ遺言ゆいごんしょであるむねならびにその筆者ひっしゃ氏名しめいおよび住所じゅうしょ申述もうしのべすることをようするのみならず,みぎ公証こうしょうじんは,その証書しょうしょ提出ていしゅつした日付ひづけおよび遺言ゆいごんしゃさるじゅつふうじ記載きさいしたのち遺言ゆいごんしゃおよび証人しょうにんとともにこれに署名しょめいし,しるしさなければならない(970じょう1こう)。しかし,遺言ゆいごんしゃ言語げんごはっすることのできないものであるときには,遺言ゆいごんしゃは,公証こうしょうじんおよび証人しょうにんまえで,その証書しょうしょ自己じこ遺言ゆいごんしょであるむねならびにその筆者ひっしゃ氏名しめいおよび住所じゅうしょふうじ自書じしょして申述もうしのべえることができ,その場合ばあいには,公証こうしょうじんは,そのむねふうじ記載きさいしなければならない(972じょう1こう)ので上記じょうき規定きていは,その中身なかみたる遺言ゆいごん内容ないよう明記めいきした遺言ゆいごんしょ自体じたい作成さくせい方式ほうしきさだめたものではない。それゆえ中身なかみは,かならずしも全文ぜんぶん自書じしょされた自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん要件ようけんをそなえたものでなくてもさしつかえない。しかし,上記じょうき秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごん方式ほうしきそなわっていない場合ばあいでも,その中身なかみが,自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんとしての要件ようけんをそなえたものであるときは,その中身なかみは,自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんとしては有効ゆうこうとしてあつかわれる(いわゆる〈無効むこう行為こうい転換てんかん〉)(971じょう)。秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごんは,無筆むひつひと遺言ゆいごんしようとする場合ばあいやくだち,遺言ゆいごんしょ存在そんざい明確めいかくにしておきながら,内容ないよう秘密ひみつにしておけるという利点りてんがある。しかし,一方いっぽうでは,証書しょうしょ成立せいりつ効力こうりょくについてはあらそいをしょうずるおそれがあるのみならず,公証こうしょうじん役場やくば保存ほぞんされるわけではないから,紛失ふんしつ滅失めっしつなどの危険きけんがあるという欠点けってんがあり,あまり利用りようされていない。

(4)危急ききゅう遺言ゆいごん これは臨終りんじゅうにある遺言ゆいごんしゃがなす遺言ゆいごんで,疾病しっぺいその事由じゆうによって死亡しぼう危急ききゅうせまったもののなす〈死亡しぼう危急ききゅうしゃ遺言ゆいごん(976じょう)〉と,船舶せんぱく遭難そうなんのために,船舶せんぱくちゅうにあって死亡しぼう危急ききゅうせまったもののなす〈船舶せんぱく遭難そうなんしゃ遺言ゆいごん(979じょう)〉とがある。これらの危急ききゅう遺言ゆいごんは,証人しょうにん1人ひとりまたは利害りがい関係かんけいじんから遅滞ちたいなく家庭かてい裁判所さいばんしょ請求せいきゅうして,その確認かくにんをえなければ,それは遺言ゆいごんとしての法的ほうてき効力こうりょくしょうじない(976じょう2こう,979じょう2こう)。ここに〈確認かくにん〉とは,それが遺言ゆいごんしゃ真意しんいたものであるかどうかの判定はんていであり,家庭かてい裁判所さいばんしょ審判しんぱんとしておこなわれる(家事かじ審判しんぱんほう9じょう1こうかぶとるい33ごう)。しかし,確認かくにんをえたことは,その遺言ゆいごん有効ゆうこうであることを意味いみするものではなく(1925ねん大審院だいしんいん判決はんけつ),また,その執行しっこうさいしては,さらにのちにべる家庭かてい裁判所さいばんしょの〈けんみとめ〉をけることを必要ひつようとする。これらのことは注意ちゅういようするてんである。

(5)へだたしゃ遺言ゆいごん これは,さきの危急ききゅう遺言ゆいごんのようには,臨終りんじゅうというせまった事情じじょうはないが,遺言ゆいごんしゃが,一般いっぱん社会しゃかいから隔絶かくぜつした場所ばしょにあるため,普通ふつう方式ほうしきによることが困難こんなんおもわれる場合ばあい遺言ゆいごんである。伝染でんせんびょうのため行政ぎょうせい処分しょぶんによって交通こうつう遮断しゃだんされた場所ばしょもののなす〈伝染でんせんびょう隔離かくりしゃ遺言ゆいごん〉(民法みんぽう977じょう)と,船舶せんぱくちゅうもののなす〈ざいふねしゃ遺言ゆいごん〉(978じょう)とがあり,その具体ぐたいてき要件ようけん規定きていされている。しかし,特殊とくしゅ遺言ゆいごん形態けいたいのため,実際じっさい利用りようされることはきわめてすくない。

(1)遺言ゆいごん能力のうりょく 遺言ゆいごんは,遺言ゆいごんしゃ自身じしん単独たんどくでなすべき行為こういであり,代理だいり同意どういにはしたしまない。しかも,生存せいぞんちゅう遺言ゆいごんしゃ不利益ふりえきをもたらすものでもないので,民法みんぽうは,遺言ゆいごん能力のうりょくについては,通常つうじょう行為こうい能力のうりょくかんする規定きてい適用てきよう排除はいじょしている(961,962じょう)。それゆえ,まん15さいたっすれば,禁治産者きんちさんしゃじゅん禁治産者きんちさんしゃでも,意思いし能力のうりょくがあるかぎり,単独たんどく有効ゆうこう遺言ゆいごんをすることができる(963じょう)。

(2)遺言ゆいごん事項じこう つぎに,遺言ゆいごんさだめうる事項じこうすなわち遺言ゆいごん内容ないようは,公序良俗こうじょりょうぞくはんしてはならない。しかし,公序良俗こうじょりょうぞくはんするものでなければ,どのような遺言ゆいごんでもすることができるものと単純たんじゅんすることはできない。それゆえ,民法みんぽうは,遺言ゆいごん事項じこう法定ほうていしている。これには,遺言ゆいごんによってのみなしうる事項じこうと,生前せいぜん行為こういでもなしうる事項じこうとがある。前者ぜんしゃぞくするものは,後見人こうけんにん指定してい(839じょう1こう),相続そうぞくぶん指定していおよびその委託いたく(902じょう1こう),遺産いさん分割ぶんかつ禁止きんし(908じょう),遺言ゆいごん執行しっこうしゃ指定していおよびその委託いたく(1006じょう1こう),遺贈いぞう減殺げんさい方法ほうほう指定してい(1034じょう但書ただしがき)などであり,後者こうしゃぞくするものは,認知にんち(781じょう2こう),推定すいてい相続そうぞくじん廃除はいじょおよびその取消とりけし(893,894じょう2こう),財産ざいさん処分しょぶんすなわち遺贈いぞう(964じょう)および寄付行為きふこうい(41じょう2こう)などである。ちなみに,遺言ゆいごんは,法律ほうりつ関係かんけい変動へんどうという法律ほうりつ効果こうかをともなうものでなければならないから,たんなる遺志いし遺訓いくん親族しんぞくない今後こんご交際こうさい家事かじ整理せいり葬儀そうぎ方法ほうほうなどにかんする事項じこうは,法律ほうりつじょう遺言ゆいごんとしては,その効力こうりょくしょうじない。

(3)証人しょうにん立会たちあいじん 自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん以外いがい遺言ゆいごんしょ作成さくせいさいしては,証人しょうにん立会たちあいが要求ようきゅうされている(969じょう1ごう,970じょう1こう3ごう,976じょう1こう,977,978じょう,979じょう1こう)。ここに証人しょうにんとは,遺言ゆいごん遺言ゆいごんしゃ真意しんいたことを証明しょうめいするひとである。民法みんぽうは,かく遺言ゆいごん証人しょうにん遺言ゆいごん作成さくせいわせているから,それは同時どうじ立会たちあいじんでもあるわけである。しかし,元来がんらい立会たちあいじんとは,遺言ゆいごん作成さくせい居合いあわせて,その作成さくせいされた事実じじつ証明しょうめいするものゆびしょうする。民法みんぽうさだめる遺言ゆいごん作成さくせいさいしての固有こゆう立会たちあいじんは,伝染でんせんびょう隔離かくりしゃ遺言ゆいごんさい警察官けいさつかんざいふねしゃ遺言ゆいごんさい船長せんちょうまたは事務じむいんのみである(977,978じょう)。また,民法みんぽうは,禁治産者きんちさんしゃ遺言ゆいごんにつき,2人ふたり医師いし立会たちあいを要求ようきゅうしている(973じょう1こう)が,この医師いしは,遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごんをするときにおいて心神喪失しんしんそうしつ状況じょうきょうになかったむね立証りっしょうする役目やくめになっているとほぐされている。なお,民法みんぽうは,証人しょうにん立会たちあいじん共通きょうつう欠格けっかく事由じゆうとして,未成年みせいねんしゃ禁治産者きんちさんしゃじゅん禁治産者きんちさんしゃ推定すいてい相続そうぞくじん,受遺しゃ等々とうとう規定きていしている(974じょう)。

(4)共同きょうどう遺言ゆいごん禁止きんし 民法みんぽうは,2人ふたり以上いじょうもの同一どういつ証書しょうしょで,遺言ゆいごんすることを禁止きんししている(975じょう)。それは,遺言ゆいごんは,遺言ゆいごんしゃ最終さいしゅう真意しんいもとづき,自主じしゅ独立どくりつてきに,しかも明確めいかくになされることをようするからである。

(1)遺言ゆいごん解釈かいしゃく 遺言ゆいごんにおいては,遺言ゆいごんしゃ最終さいしゅう意思いし高度こうどないし絶対ぜったいてき尊重そんちょうされなければならない。それゆえ,その解釈かいしゃくにあたっては,できるだけ遺言ゆいごんしゃ真意しんい探究たんきゅうされなければならない。そのためには,遺言ゆいごん文言もんごんのみにこだわることなく遺言ゆいごん作成さくせい当時とうじしょ事情じじょうなどを考慮こうりょして,しかも,できるだけ有効ゆうこうならしめる方向ほうこう解釈かいしゃくされることがのぞましいものとほぐされている。

(2)遺言ゆいごん効力こうりょく発生はっせい時期じき 遺言ゆいごんは,遺言ゆいごんしゃ死亡しぼうのときから,その効力こうりょくしょうずる(985じょう1こう)。また,民法みんぽうは,遺言ゆいごんにも条件じょうけんしうることを当然とうぜん前提ぜんていとして,停止ていし条件じょうけん(〈条件じょうけん〉のこう参照さんしょう)のつけられた遺言ゆいごん事項じこう効力こうりょく発生はっせい時期じきにつき,その条件じょうけん遺言ゆいごんしゃ死亡しぼう成就じょうじゅしたときは,遺言ゆいごんは,その条件じょうけん成就じょうじゅしたときから,効力こうりょくしょうずるむね規定きていしている(985じょう2こう)。

(3)遺言ゆいごん取消とりけし つぎに,民法みんぽうは〈遺言ゆいごん取消とりけし〉なる表題ひょうだいのもとに,1022~1027じょう特別とくべつ規定きていもうけている。しかし,ここにいう取消とりけしは,民法みんぽう総則そうそくじょうのいわゆる取消とりけしのごとく,行為こうい成立せいりつ過程かていにおける瑕疵かし(かし)にもとづいて,いったん発生はっせいした効果こうかはじめにさかのぼって消滅しょうめつさせるものではなく,遺言ゆいごん効力こうりょくしょうずることを,その効力こうりょく発生はっせいまえ阻止そしする行為こういである。だから,理論りろんじょうは,撤回てっかいにほかならない。遺言ゆいごん撤回てっかい自由じゆうみとめつつも,撤回てっかいが,遺言ゆいごんしゃによってなされる場合ばあいには,遺言ゆいごん方式ほうしきによってなされるべきむね規定きていする(1022じょう)と同時どうじに,つぎのよっつの場合ばあいに,撤回てっかい擬制ぎせいしている。すなわち,(a)前後ぜんこうふたつの遺言ゆいごん内容ないよう抵触ていしょくする場合ばあい(1023じょう1こう),(b)遺言ゆいごんしゃみずからが,さきの遺言ゆいごん抵触ていしょくする生前せいぜん処分しょぶんその法律ほうりつ行為こういをした場合ばあい(1023じょう2こう),(c)遺言ゆいごんしゃ故意こい遺言ゆいごんしょ破棄はきした場合ばあい(1024じょう前段ぜんだん),(d)遺言ゆいごんしゃ故意こい遺贈いぞう目的もくてきぶつ破棄はきした場合ばあい(1024じょう後段こうだん)が,それである。そして,いったん撤回てっかいされた遺言ゆいごんは,撤回てっかい遺言ゆいごんによると撤回てっかい擬制ぎせいによるとをわず,詐欺さぎ強迫きょうはくによる場合ばあいのほかは,たとえ,その撤回てっかい行為こういのちされまたは効力こうりょくしょうじなくなるにいたったときでも,その効力こうりょく復活ふっかつしない(1025じょう)。この場合ばあいに,まえ遺言ゆいごん回復かいふくしようとおもえば,あらためてまえ遺言ゆいごん同一どういつ内容ないよう遺言ゆいごんをしなければならない。民法みんぽうは,遺言ゆいごんしゃは,その遺言ゆいごん取消とりけしけんすなわち,撤回てっかいけん放棄ほうきすることができないむね規定きていしている(1026じょう)。これは,遺言ゆいごんしゃ最終さいしゅう意思いし確保かくほせんがためである。

(1)遺言ゆいごん執行しっこうけんみとめ 遺言ゆいごん執行しっこうとは,遺言ゆいごん内容ないよう具体ぐたいてき実現じつげんはかることである。そのためには,遺言ゆいごんしょ保管ほかんしゃは,まず,相続そうぞく開始かいしったあと遅滞ちたいなく,これを家庭かてい裁判所さいばんしょ提出ていしゅつして,そのけんみとめもとめなければならない(1004じょう1こう)。ここに〈けんみとめ〉とは,遺言ゆいごんしゃ真意しんい確保かくほするために,公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごん以外いがい遺言ゆいごんにつき,遺言ゆいごんしょ形式けいしきその状態じょうたい調査ちょうさ確認かくにんし,後日ごじつにおける遺言ゆいごんしょ偽造ぎぞう変造へんぞうふせぎ,その保存ほぞん確実かくじつにすることを目的もくてきとする一種いっしゅ検証けんしょう手続てつづきであり(1004じょう1,2こう),家庭かてい裁判所さいばんしょかぶとるい審判しんぱん事項じこうひとつとされている(家事かじ審判しんぱんほう9じょう1こうかぶとるい34ごう)。それは,おなじくかぶとるい審判しんぱん事項じこうひとつである死亡しぼう危急ききゅうしゃ遺言ゆいごん船舶せんぱく遭難そうなんしゃ遺言ゆいごん要求ようきゅうされている〈確認かくにん〉(民法みんぽう976,979じょう家事かじ審判しんぱんほう9じょう1こうかぶとるい33ごう)とは,本質ほんしつことにする。それゆえ,確認かくにんをえた遺言ゆいごんについてもけんみとめけることをようする。しかし,けんみとめ確認かくにん遺言ゆいごん方式ほうしき適否てきひ有効ゆうこう無効むこう決定けっていするものではない。注意ちゅういようするてんである。ちなみに,封印ふういんのある遺言ゆいごんしょは,家庭かてい裁判所さいばんしょにおいて,相続そうぞくじんまたはその代理人だいりにん立会たちあいをもってしなければ,これを開封かいふうすることができず(民法みんぽう1004じょう3こう),遺言ゆいごんしょ提出ていしゅつすることをおこたり,そのけんみとめないで遺言ゆいごん執行しっこうし,または家庭かてい裁判所さいばんしょがいで,その開封かいふうをしたものは5まんえん以下いか過料かりょうしょせられる(1005じょう)。

(2)遺言ゆいごん執行しっこうしゃ選任せんにん解任かいにん つぎに,遺言ゆいごん執行しっこうしゃは,遺言ゆいごんしゃみずからの指定していまたは指定してい委託いたくによって選任せんにんされる(1006じょう1こう)。遺言ゆいごん執行しっこうしゃ指定してい委託いたくけたものは,遅滞ちたいなく,その指定していをして,これを相続そうぞくじん通知つうちしなければならず,その指定してい委託いたくけたものが,その委託いたく辞退じたいしようとするときは,遅滞ちたいなくそのむね相続そうぞくじん通知つうちしなければならない(1006じょう2,3こう)。また,遺言ゆいごん執行しっこうしゃは,家庭かてい裁判所さいばんしょによっても選任せんにんされることがある。しかし,それは,遺言ゆいごん執行しっこうしゃ遺言ゆいごん指定していされていない場合ばあい,または遺言ゆいごん執行しっこうしゃがなくなった場合ばあいで,利害りがい関係かんけいじんからの請求せいきゅうがあるときにかぎられている(1010じょう)。いずれの場合ばあいでも,無能力むのうりょくしゃおよび破産はさんしゃは,遺言ゆいごん執行しっこうしゃとなることができない(1009じょう)。のこ問題もんだいは,相続そうぞくじんもまた遺言ゆいごん執行しっこうしゃたりうるかである。別段べつだん規定きていはないが,相続そうぞくじん廃除はいじょ内容ないようとする遺言ゆいごんについては,相続そうぞくじん執行しっこうしゃとなることはゆるされないとかいすべきであろう。しかし,その事項じこう内容ないようとする遺言ゆいごんについては,相続そうぞくじん絶対ぜったいてき除外じょがいすることはできないものとほぐされている。

(3)遺言ゆいごん執行しっこうしゃ職務しょくむ権限けんげん 遺言ゆいごん執行しっこうしゃは,実質じっしつてきには,遺言ゆいごんしゃ代理人だいりにんとして,その意思いし具現ぐげんすべきものであるが,死者ししゃ代理だいりということはありえないので,民法みんぽうは,それを相続そうぞくじん代理人だいりにんとみなし(1015じょう),遺言ゆいごん執行しっこう効果こうか相続そうぞくじん帰属きぞくせしめている。遺言ゆいごん執行しっこうしゃ就職しゅうしょく承諾しょうだくしたときは,まず,相続そうぞく財産ざいさん目録もくろく調整ちょうせいして,これを相続そうぞくじん交付こうふしなければならない。そして,この目録もくろくしたがって,受任じゅにんしゃてき地位ちいって,相続そうぞく財産ざいさん管理かんりその遺言ゆいごん執行しっこう必要ひつようないっさいの行為こういをなす権利けんりゆう義務ぎむう(1012じょう)。遺言ゆいごん執行しっこうしゃすうにんある場合ばあいにおいて,遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごん別段べつだんさだめをなしていないときは,保存ほぞん行為こういのぞくほかは,その任務にんむ執行しっこうは,過半数かはんすうけっしておこなうものとされている(1017じょう)。遺言ゆいごん執行しっこうしゃが,上記じょうきにより相続そうぞく財産ざいさん管理かんり遺言ゆいごん執行しっこうをする場合ばあいには,相続そうぞくじん自身じしんは,みずから相続そうぞく財産ざいさん処分しょぶんしたり,その遺言ゆいごん執行しっこうさまたげるべき行為こういをすることはできない(1013じょう)。

 なお,遺言ゆいごん執行しっこうしゃたいする報酬ほうしゅうは,遺言ゆいごんしゃが,その遺言ゆいごんさだめることがのぞましいが,それがさだめられていないときは,相続そうぞく財産ざいさん状況じょうきょうその諸般しょはん事情じじょう考慮こうりょして,家庭かてい裁判所さいばんしょさだめることができる(民法みんぽう1018じょう家事かじ審判しんぱんほう9じょう1こうかぶとるい36ごう)。また,遺言ゆいごん執行しっこうようする費用ひようは,相続そうぞくじん遺留分いりゅうぶん侵害しんがいしない限度げんどで,相続そうぞく財産ざいさんから支弁しべんするものとさだめられている(民法みんぽう1021じょう)。

(4)遺言ゆいごん執行しっこうしゃ解任かいにん辞任じにん 最後さいごに,遺言ゆいごん執行しっこうしゃ任務にんむは,執行しっこう完了かんりょう執行しっこうしゃ死亡しぼうまたは欠格けっかく事由じゆう無能力むのうりょくまたは破産はさん)の発生はっせいによってはもちろん,解任かいにんおよび辞任じにんによっても終了しゅうりょうする。民法みんぽうさだめる解任かいにん事由じゆうは,遺言ゆいごん執行しっこうしゃ任務にんむ懈怠けたい,その正当せいとう事由じゆうがあることであり,そのような事由じゆうがある場合ばあいには,利害りがい関係かんけいじんは,その解任かいにん家庭かてい裁判所さいばんしょ請求せいきゅうすることができるが,遺言ゆいごん執行しっこうしゃも,正当せいとう事由じゆうがあるときは家庭かてい裁判所さいばんしょ許可きょかをえて,その任務にんむ辞退じたいできる(1019じょう)。

最後さいごに,比較ひかくほう資料しりょうとして,フランスと西にしドイツの遺言ゆいごん制度せいど言及げんきゅうしておこう。

 フランスでは,遺言ゆいごんかんする規定きてい民法みんぽうだい3へんだい2しょうもうけられている。それによれば,遺言ゆいごんは,遺言ゆいごんしゃがもはや生存せいぞんしないときのために,その財産ざいさん全部ぜんぶまたは一部いちぶ処分しょぶんする行為こういであり,遺言ゆいごんしゃは,それをいつでも撤回てっかいすることができるものとされている(895じょう)。だから,フランスにおける遺言ゆいごんは,無償むしょう名義めいぎ要式ようしき行為こういであり,取消とりけし可能かのうせいある一方いっぽうてき法律ほうりつ行為こういであるといわれている。しかし,遺言ゆいごんは,第三者だいさんしゃのためであれ,交互こうごおよび相互そうご処分しょぶんとしてであれ,2人ふたりまたはすうにん同一どういつ証書しょうしょにおいておこなうことができない(共同きょうどう遺言ゆいごん禁止きんし,968じょう)。そして,遺言ゆいごん方式ほうしきには,普通ふつう方式ほうしき自筆じひつ公証こうしょう秘密ひみつ。970~980じょう)と,特別とくべつ方式ほうしき軍人ぐんじん伝染でんせんびょう隔離かくり離島りとうざいふねしゃ。981~1001じょう)とがある。ちなみに,遺言ゆいごんによってなしうることは,基本きほんてきには,遺贈いぞう包括ほうかつ包括ほうかつ名義めいぎ特定とくてい。1002~1024じょう)であるが,それにかぎらず,こん外子そとこ認知にんち(335じょう),後見人こうけんにん指定してい(398じょう),遺言ゆいごん執行しっこうしゃ選任せんにん(1025じょう)などの財産ざいさんてきなものにもおよんでいる。

 つぎに,ドイツ(きゅう西にしドイツ)では,遺言ゆいごんかんするドイツ民法みんぽう(BGB)の規定きてい一部分いちぶぶん方式ほうしき作成さくせいかんする部分ぶぶん。2064じょう,2229~2267じょう,2272~2273じょう)は,1938ねんの〈遺言ゆいごんおよび相続そうぞく契約けいやく作成さくせいかんする法律ほうりつ〉により,BGBよりはずされていたが,1953ねんの〈民法みんぽう領域りょういきにおける法律ほうりつ統一とういつ再建さいけんほう〉によって,若干じゃっかんしん規定きていともふたたびBGBのなかにとりれられている。したがって,現在げんざいでは,西にしドイツの遺言ゆいごんについては,BGBの規定きてい適用てきようされている。それによれば,遺言ゆいごんは,相続そうぞく契約けいやくとともに死後しご処分しょぶん一種いっしゅであり,相続そうぞくじんのなす,受領じゅりょうようしない一方いっぽうてき意思いし表示ひょうじから法律ほうりつ行為こういであって,相続そうぞくじん死後しご効力こうりょくしょうずるものとほぐされている。そして,その方式ほうしきには,普通ふつう方式ほうしき遺言ゆいごん自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん--2231じょう2ごう,2247じょう--,判事はんじまたは公証こうしょうじん立会たちあいのもとでなされるおおやけ遺言ゆいごん--2232じょう以下いか--)と,特別とくべつ方式ほうしき遺言ゆいごん市町村しちょうそんちょう面前めんぜんにおいてなす遺言ゆいごん--2249じょう--,特別とくべつ事情じじょう遮断しゃだんされた場合ばあい遺言ゆいごん--2250じょう--,航海こうかいちゅう遺言ゆいごん--2251じょう--)とがある。遺言ゆいごんは,これらの方式ほうしきによらなければ無効むこうである。有効ゆうこう遺言ゆいごんであっても,遺言ゆいごんしゃ自由じゆう撤回てっかいしうるのであるから,遺言ゆいごんは,相続そうぞくじん最終さいしゅう意思いしとみられる(2253じょう)。ちなみに,西にしドイツにおいては,夫婦ふうふかぎひとつの書面しょめんによってなす共同きょうどう遺言ゆいごんみとめられている(2265~2273じょう)。つぎに,遺言ゆいごんによってなしうることは,相続そうぞくじんならびに予備よび相続そうぞくじん指定してい(1937じょう,2096~2098じょう),さき相続そうぞくじんおよびこう相続そうぞくじん指定してい(2100~2109じょう),遺贈いぞう(2147~2191じょう),負担ふたん(たとえば,相続そうぞくじんはか世話せわかんする義務ぎむすることなど--1940じょう,2192~2196じょう),遺言ゆいごん執行しっこうしゃ指定してい(2197~2200じょう)などがおもなものであるが,さらに,後見人こうけんにん指定してい排除はいじょ(1777,1782じょう)などの親族しんぞくほうじょう行為こういをその内容ないようとすることもできる。
執筆しっぴつしゃ

外国がいこくじん日本人にっぽんじんがその本国ほんごく以外いがいくに遺言ゆいごんをしたり,外国がいこくにある不動産ふどうさんにつき遺言ゆいごんをするようなときには,どのくにほうしたがって遺言ゆいごんをすればよいのかという問題もんだいしょうじる。遺言ゆいごん成立せいりつ要件ようけん効力こうりょくについて諸国しょこくほう一致いっちしていないからである。さらに,渉外しょうがいてき遺言ゆいごん適用てきようされるほう遺言ゆいごん準拠じゅんきょほう)がなにかについてさだめている諸国しょこく国際こくさい私法しほうもまた世界せかいてき統一とういつされているわけではないので,問題もんだい遺言ゆいごんがどのくに問題もんだいになるかにより,その遺言ゆいごん成立せいりつ効力こうりょく判断はんだんするほうことなってくるのである。

 日本にっぽん渉外しょうがいてき遺言ゆいごん問題もんだいとなった場合ばあいには,法例ほうれい27じょうおよび〈遺言ゆいごん方式ほうしき準拠じゅんきょほうかんする法律ほうりつ〉が指定していするほうによって,遺言ゆいごん成立せいりつ効力こうりょくおよび取消とりけしの問題もんだい判断はんだんされる。

法例ほうれい27じょう1こう遺言ゆいごん成立せいりつおよび効力こうりょくにつき,その成立せいりつ当時とうじにおける遺言ゆいごんしゃ本国ほんごくほう適用てきようされると規定きていしている。この場合ばあい成立せいりつには方式ほうしき問題もんだいふくまれていない。そして,ここでいう成立せいりつは,遺言ゆいごんそのものの成立せいりつかんする遺言ゆいごん能力のうりょく意思いし表示ひょうじ瑕疵かしとう問題もんだいをさし,遺言ゆいごんによってなされる遺贈いぞう認知にんち,あるいは信託しんたくといった遺言ゆいごん実質じっしつてき内容ないようふくまない。これらの身分みぶんじょう財産ざいさんじょう行為こうい遺言ゆいごんでなすことができるかという問題もんだいは,それぞれの行為こうい準拠じゅんきょほうるのである。また遺言ゆいごん効力こうりょく遺言ゆいごんそのものの効力こうりょく発生はっせい時期じき意味いみする。

遺言ゆいごん方式ほうしき

遺言ゆいごん方式ほうしきについては,〈遺言ゆいごん方式ほうしき準拠じゅんきょほうかんする法律ほうりつ〉にる。この法律ほうりつは,ハーグ国際こくさい私法しほう会議かいぎによる1961ねんの〈遺言ゆいごん方式ほうしきかんする法律ほうりつ抵触ていしょくかんする条約じょうやく〉(1997ねん4がつ17にち現在げんざい締約ていやくこく35ヵ国かこく)を日本にっぽん批准ひじゅんするにあたり,1964ねんに,制定せいていされたものであって,法例ほうれい特別とくべつほうである。どうほうは,遺言ゆいごん方式ほうしきじょうできるかぎ有効ゆうこうなものとして成立せいりつさせようとする遺言ゆいごん保護ほご立場たちばから,遺言ゆいごん方式ほうしきどうほう列挙れっきょされているほうのうちのどれかにってさえいれば方式ほうしきじょう有効ゆうこうであるとしている。列挙れっきょされているほうは,(1)行為こういほう,(2)遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごん成立せいりつ当時とうじまたは死亡しぼう当時とうじ本国ほんごくほう住所じゅうしょほうまたは常居所じょうきょしょほう,そして,(3)不動産ふどうさんかんする遺言ゆいごんについては以上いじょうのほかに不動産ふどうさん所在地しょざいちほう,である(2じょう)。

遺言ゆいごん取消とりけし つまり,すでに有効ゆうこうになされている遺言ゆいごん撤回てっかいは,法例ほうれい27じょう2こうにより,取消とりけし当時とうじ遺言ゆいごんしゃ本国ほんごくほうる。ただし,その方式ほうしき前記ぜんきの〈遺言ゆいごん方式ほうしき準拠じゅんきょほうかんする法律ほうりつ〉3じょうさだめにしたがう。どうじょうは,遺言ゆいごん遺言ゆいごん方式ほうしきについては,どうほう2じょうることをさだめるほかに,従前じゅうぜん遺言ゆいごんを,2じょう規定きていにより,有効ゆうこうとしている法律ほうりつひとつに,その遺言ゆいごん遺言ゆいごん方式ほうしき適合てきごうしているときには,それは方式ほうしきじょう有効ゆうこうであるむねさだめている。したがって,この場合ばあいには,方式ほうしきじょう無効むこうとなるかくりつはさらにひくくなっている。
執筆しっぴつしゃ

天皇てんのう生前せいぜん死後しご皇位こうい継承けいしょう葬送そうそうやそのについて指示しじしたものはのこみことのり(ゆいしよう)・のこみことのり(ゆいちよく)という。古代こだいでは《万葉集まんようしゅう》にだいおさむそち大伴旅人おおとものたびとやまいさいし,庶弟のいねこうやおいのえびす麿まろびよせて〈遺言ゆいごん〉をしようとしたとあり,予期よきしたときに遺言ゆいごんすることがおこなわれていたことがられる。また直前ちょくぜんではなくとも,子孫しそん門下もんかつたえるべきことをのこ(のこ)すこともあり,これは遺訓いくん(ゆいくん)・遺誡いかい(ゆいかい)とよばれた。代表だいひょうてきなものに《寛平かんぺい遺誡いかい(かんぴようのごゆいかい)》《九条くじょう殿どの遺誡いかい》などがある。

 財産ざいさん相続そうぞくにかかわる遺言ゆいごんかんしては,れいせい遺産いさん相続そうぞくほう条文じょうぶんであるれいおうぶんじょうに,〈ほろびじんそん処分しょぶん〉すなわち生前せいぜん遺言ゆいごんまたは生前せいぜん譲与じょうよみとめる規定きてい養老ようろうれいにある。この規定きてい養老ようろうれいまえ制定せいていされた大宝たいほうれいではみとめられていなかったが,養老ようろうれい実態じったいちかづけて改正かいせいされたとかんがえられる。ただしこの場合ばあい生前せいぜん譲与じょうよのほうが一般いっぱんてきであったといわれている。
執筆しっぴつしゃ 中世ちゅうせい財産ざいさん相続そうぞくには,処分しょぶん相続そうぞく処分しょぶん相続そうぞくふたつがあった。処分しょぶん相続そうぞくとは,相続そうぞくじんが,処分しょぶんじょうつくり,処分しょぶん文言もんごん(もんごん)をしるして,どこの所領しょりょうをだれに処分しょぶんするかというけんかんする自己じこ意思いし明確めいかくにしたとき,成立せいりつしうるものであった。これが中世ちゅうせい財産ざいさん相続そうぞく基本きほんがたであったことは,現在げんざいおおくの処分しょぶんじょう譲状ゆずりじょう(ゆずりじよう)が残存ざんそんしている事実じじつからもたしかめられる。ところが,相続そうぞくじんになんらかの故障こしょうがあって,かれ上記じょうきのような手続てつづきをとることなく死亡しぼうした場合ばあいには〈処分しょぶん〉となる。この場合ばあいには,その後家ごけ(ごけ)かどもたちが共同きょうどうしてその処分しょぶん代行だいこうするのが一般いっぱんてきであった。ただ,おなじく処分しょぶんであっても,相続そうぞくじん遺言ゆいごんじょう(これには,処分しょぶん文言もんごん記載きさいがない)があれば,これにもとづいて遺産いさん配分はいぶんおこない,また遺言ゆいごんじょうがなくても口頭こうとう遺言ゆいごんがあって,故人こじん生前せいぜんにおける意思いし明確めいかくなときは,これにしたがうのを慣例かんれいとしていた。しかし,こうした遺言ゆいごんも,中世ちゅうせい後期こうきから江戸えど時代じだいにかけて,財産ざいさん嫡子ちゃくし単独たんどく相続そうぞくせい一般いっぱんてきになるにともない,しだいにその意義いぎうしなうことになる。
執筆しっぴつしゃ 江戸えど時代じだいには遺言ゆいごんじょうのことを書置かきおき(かきおき),譲状ゆずりじょうなどとしょうした。はんによっては百姓ひゃくしょう農地のうち相続そうぞくかんし,遺言ゆいごん相続そうぞくみとめないところもあったが,一般いっぱんてきには,百姓ひゃくしょう町人ちょうにん相続そうぞく遺言ゆいごんによる相続そうぞく原則げんそくであった。このため一家いっか主人しゅじんは,かなら譲状ゆずりじょうをしたためて遺産いさん処分しょぶん方法ほうほうさだめておくべきものとかんがえられた。譲状ゆずりじょうには町役人まちやくにん人組にんぐみばんすることがおおく,相続そうぞくじん死後しご一同いちどう立会たちあいのした開封かいふうされた。江戸えど京都きょうと大津おおつ伏見ふしみ金沢かなざわとうまちでは,相続そうぞくをめぐる紛争ふんそうふせぐため,遺言ゆいごんじょう作成さくせいとその町内ちょうないまたは奉行ぶぎょうしょへの寄託きたくが,ほうによって義務ぎむづけられていた。武士ぶしふうろく主君しゅくんによってあたえられるものであるから,遺言ゆいごん相続そうぞく余地よちはなく,武士ぶし衣類いるい家具かぐとう動産どうさん遺言ゆいごん処分しょぶんできるだけであった。
執筆しっぴつしゃ


遺言ゆいごん (いごん)

遺言ゆいごん(ゆいごん)

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日本にっぽんだい百科全書ひゃっかぜんしょ(ニッポニカ)遺言ゆいごん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

遺言ゆいごん(いごん)
いごん

死後しご法律ほうりつ効果こうか発生はっせいさせることを目的もくてきとして、本人ほんにん独立どくりつ意思いしもとづき、法律ほうりつさだめられた方式ほうしきしたがっておこなわれる意思いし表示ひょうじをさす。一般いっぱんには「ゆいごん」ともよばれる。遺言ゆいごん本人ほんにん死亡しぼうによって法律ほうりつ効果こうか発生はっせいするが、遺言ゆいごんによりその死後しごにも自己じこ財産ざいさん自由じゆう処分しょぶんできることになる。これは遺言ゆいごん自由じゆう原則げんそくとよばれる。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

歴史れきし

古代こだいローマでは、紀元前きげんぜん5世紀せいきごろの『じゅうひょうほう』にすでに遺言ゆいごんほうがみられ、ぜん200ねんごろには遺言ゆいごん一般いっぱん慣行かんこうになっていたといわれる。古代こだいローマの遺言ゆいごん元来がんらい相続そうぞくじん指定していのためのもので、いえ財産ざいさんいえにとどめ、1人ひとり相続そうぞくじんがせるための手段しゅだんであった。これが近代きんだいになると、財産ざいさんおわり処分しょぶん死者ししゃ最終さいしゅう意思いしによる処分しょぶん)に重点じゅうてん遺贈いぞう(いぞう)遺言ゆいごんになってくる。古代こだいのインドやギリシアには遺言ゆいごんかんするふる歴史れきしはなく、ゲルマニア時代じだいのゲルマン民族みんぞくもまだ遺言ゆいごんらなかった。ドイツやフランスで遺言ゆいごん一般いっぱん庶民しょみんによりおこなわれるようになったのは、ほぼ12世紀せいき以後いごのこととされている。こうした遺言ゆいごん慣行かんこうはやがてイギリスにもつたえられ、J・S・ミルらの「遺言ゆいごん自由じゆう原則げんそく」の主張しゅちょうによって、18世紀せいきまでにはスコットランドをのぞくイギリス全域ぜんいきで、遺言ゆいごん自由じゆうみとめられるようになった。しかし1938ねん相続そうぞく財産ざいさんほう制定せいていによって、家族かぞく相続そうぞくけん保護ほご立場たちばから、この自由じゆうにも大幅おおはば制約せいやくくわえられるようになった。イギリスでは遺言ゆいごん習慣しゅうかんがややすたれたものの、今日きょう世界せかいにおいてもっともおお遺言ゆいごんおこなわれているくにといえよう。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

日本にっぽん

すでに養老ようろうれい(ようろうりょう)(718)に「そん処分しょぶん」として、遺言ゆいごん処分しょぶんみとめられていたが、中世ちゅうせいにおいては、生前せいぜん処分しょぶんじょう作成さくせい財産ざいさんけをするのが普通ふつうで、遺言ゆいごん処分しょぶん例外れいがいになった。封建ほうけん時代じだいには、武士ぶし階級かいきゅう庶民しょみんとでは事情じじょうことなっていた。すなわち、武士ぶしはそのしゅたる財産ざいさん主君しゅくんからふうろく(ほうろく)としてけている関係かんけいで、これを自由じゆう処分しょぶんすることはできなかったので、遺言ゆいごんは、まったく私的してき財産ざいさんについてわずかにおこなわれたにすぎなかった。これにたいして、庶民しょみんあいだでは遺言ゆいごん相続そうぞくがむしろ原則げんそくとなり、その内容ないよう財産ざいさん分配ぶんぱいのみにとどまらず、相続そうぞくじん指定してい後見人こうけんにん指定していにまでおよんだ。これらは書置かきおき(かきおき)、譲状ゆずりじょう(ゆずりじょう)などとよばれ、普通ふつう自筆じひつ捺印なついん(なついん)のうえ人組にんぐみなどがばん(かはん)し、町内ちょうない寄託きたくされた。このように庶民しょみんあいだひろおこなわれた遺言ゆいごん慣行かんこうも、明治めいじ時代じだいはいると急速きゅうそくおとろえ、しょ外国がいこくくらべて遺言ゆいごんおこなわれることが比較的ひかくてきすくなかった。現行げんこう民法みんぽうでは、遺言ゆいごんかんする事項じこうは「相続そうぞくへん」の3ぶんの1以上いじょうめ(民法みんぽう960じょう~1027じょう)、その内容ないようにおいて改正かいせい影響えいきょうがもっともすくない部分ぶぶんである。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

遺言ゆいごん能力のうりょく

遺言ゆいごんは、死者ししゃ最終さいしゅう意思いし尊重そんちょうすることを根本こんぽん制度せいどであるから、できるだけその効力こうりょくみとめるため、いちおうの意思いし能力のうりょくそなえるとおもわれるまん15さい標準ひょうじゅんとして、それにたっしたもの自分じぶん遺言ゆいごんすることができる(遺言ゆいごん能力のうりょくがある)とされている(民法みんぽう961じょう)。また、後見こうけん開始かいし審判しんぱんけた成年せいねん後見人こうけんにんも、事理じりわきまえ識する能力のうりょく一時いちじ回復かいふくしたときは、2人ふたり以上いじょう医師いし立会たちあいがあれば遺言ゆいごんできる(どうほう973じょう)。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

方式ほうしき

遺言ゆいごん本人ほんにん死亡しぼう効力こうりょく発生はっせいするものであるから、それがはたして本人ほんにん真意しんいであるかどうかの証明しょうめいがむずかしく、真偽しんぎ本人ほんにんたしかめるすべもないので、遺言ゆいごんには厳格げんかく方式ほうしきさだめられている(民法みんぽう967じょう以下いか)。その方式ほうしきしたがわない遺言ゆいごん法律ほうりつてき効力こうりょくがないとされる。大別たいべつして普通ふつう方式ほうしきによる遺言ゆいごんと、特殊とくしゅ場合ばあい特別とくべつ方式ほうしきによる遺言ゆいごんとがある。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

普通ふつう方式ほうしきによる遺言ゆいごん

(1)自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん 遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごんしょ全文ぜんぶん日付ひづけ氏名しめい自書じしょして押印おういん(おういん)する方式ほうしき遺言ゆいごん民法みんぽう968じょう1こう)。ひつやタイプライター、盲人もうじんよう点字てんじかれたものは原則げんそくとして無効むこうとされる。しかし、この自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんでは、財産ざいさん目録もくろく全文ぜんぶん自書じしょしなければならないため、財産ざいさん多数たすうある場合ばあいには遺言ゆいごんしゃにとっておおきな負担ふたんとなっていた。そこで、2018ねん平成へいせい30)の相続そうぞくほう改正かいせいにより、自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんに、自書じしょによらない財産ざいさん目録もくろく添付てんぷすることができるようになった(どうほう968じょう2こう前段ぜんだん)。すなわち、パソコンで財産ざいさん目録もくろく作成さくせいしたり、預金よきん通帳つうちょうのコピーを添付てんぷすることができる。ただし、財産ざいさん目録もくろくのすべてのページ(まい)に署名しょめい押印おういんをしなければならず(どう後段こうだん)、これによって偽造ぎぞう防止ぼうしされることになる。なお、日付ひづけ年月としつきだけでは不十分ふじゅうぶんで、年月日ねんがっぴまで必要ひつようであるが、なんにちであるかが確定かくていできればよく、たとえば銀婚式ぎんこんしきなどというかたでもよい。

 また、遺言ゆいごんしょ財産ざいさん目録もくろくふくむ)の文中ぶんちゅう加除かじょその変更へんこうをしたい場合ばあいは、遺言ゆいごんしゃはその場所ばしょ指示しじし、変更へんこうしたむね付記ふきして署名しょめいし、変更へんこう場所ばしょ押印おういんしなければ変更へんこう効力こうりょくがない(どうほう968じょう3こう)。

 自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんは、もっとも簡易かんいで、もっとも秘密ひみつまもられる方式ほうしきである。しかしその反面はんめん素人しろうと(しろうと)が1人ひとりでつくるので、方式ほうしきどおりでなく無効むこうになるおそれがある。また、文意ぶんいがあいまいであらそいをしょうずることもあり、偽造ぎぞう変造へんぞう隠匿いんとくなどの危険きけんおおきい。そこで、自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん紛失ふんしつ偽造ぎぞう変造へんぞう隠匿いんとくなどをふせぎ、自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんをより利用りようしやすいものとするため、法務局ほうむきょく自筆じひつ証書しょうしょによる遺言ゆいごんしょ保管ほかんする制度せいど創設そうせつされた(法務局ほうむきょくにおける遺言ゆいごんしょ保管ほかんとうかんする法律ほうりつ)。

(2)公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごん 証人しょうにん2にん以上いじょう立会たちあいのもとに、遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごん趣旨しゅし公証こうしょうじん口授くじゅし、公証こうしょうじんがそれを筆記ひっきし、これを遺言ゆいごんしゃ証人しょうにんかせ、遺言ゆいごんしゃ証人しょうにん筆記ひっき正確せいかくなことを承認しょうにんしたのち、各自かくじこれに署名しょめい押印おういんするという方式ほうしき遺言ゆいごんどうほう969じょう)。公証こうしょうじん関与かんよするので文意ぶんい不明ふめいであったり方式ほうしきどおりでないなどのおそれはすくなく、紛失ふんしつ隠匿いんとく破棄はきのおそれもないという長所ちょうしょがある。その反面はんめん公証こうしょうじん証人しょうにん遺言ゆいごん内容ないようられるという短所たんしょがある。この方式ほうしきは、口述こうじゅつさえできれば文字もじけないものもできるよう便宜べんぎはかられていたが、口述こうじゅつかせができない言語げんご聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃ利用りようできなかった。しかし1999ねん平成へいせい11)12月の民法みんぽう改正かいせいで、口述こうじゅつのかわりに手話しゅわ通訳つうやく筆談ひつだんでもできることになり、また、内容ないようかせなくても閲覧えつらんさせればよいこととなった(どうほう969じょうの2)。

(3)秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごん 遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごんかれた証書しょうしょ自筆じひつまたは代筆だいひつ)にみずか署名しょめい押印おういんし、その証書しょうしょふうじ、証書しょうしょもちいた印章いんしょうでこれを封印ふういんし、公証こうしょうじん1にん証人しょうにん2にん以上いじょうまえ提出ていしゅつして、自分じぶん遺言ゆいごんであるむねと、筆者ひっしゃ氏名しめい住所じゅうしょもうべて(言語げんごはっせられないひと手話しゅわ通訳つうやくにより、または自書じしょで)、公証こうしょうじんがそれを証明しょうめいする方式ほうしき遺言ゆいごんどうほう970じょう)。遺言ゆいごんしょ文中ぶんちゅう変更へんこうなどは自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごんおな方法ほうほうおこなう。秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごんとしての方式ほうしきける場合ばあいであっても、自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん方式ほうしきそなえているときは、自筆じひつ証書しょうしょによる遺言ゆいごんとしての効力こうりょくをもつ(どうほう971じょう)。この方式ほうしきは、(2)の秘密ひみつまもれないという欠点けってんのぞいたものであるが、公証こうしょうじん関与かんよようするてんでめんどうである。

 なお、未成年みせいねんしゃのほか、遺言ゆいごんしゃ推定すいてい相続そうぞくじん、受遺しゃおよびその配偶はいぐうしゃならびに直系ちょっけい血族けつぞくは、これらの遺言ゆいごん証人しょうにんまたは立会たちあいじんとなることはできず、これらのものった遺言ゆいごん無効むこうとなる(どうほう974じょう)。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

特別とくべつ方式ほうしきによる遺言ゆいごん

(1)死亡しぼう危急ききゅうしゃ遺言ゆいごん 瀕死ひんし(ひんし)の病人びょうにん遺言ゆいごんをしようとするとき、証人しょうにん3にん以上いじょう立会たちあいのもとにその1人ひとり遺言ゆいごん趣旨しゅし口授くじゅして筆記ひっきさせ、これを遺言ゆいごんしゃ証人しょうにんかせ、または閲覧えつらんさせ、かく証人しょうにん筆記ひっき間違まちがいのないことを承認しょうにんしたのち、これに署名しょめい押印おういんする方式ほうしきによる遺言ゆいごん民法みんぽう976じょう)。なお、言語げんご聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃについてはとくそくがある。遺言ゆいごんから20日はつか以内いない家庭かてい裁判所さいばんしょ確認かくにんなければ効力こうりょくしょうじない。(2)伝染でんせんびょう隔離かくりしゃ遺言ゆいごん 伝染でんせんびょうのため行政ぎょうせい処分しょぶんによって交通こうつうたれた場所ばしょものは、警察官けいさつかん1人ひとり証人しょうにん1にん以上いじょう立会たちあいで遺言ゆいごんをすることができる(どうほう977じょう)。

 このほか、(3)ざいふねしゃ遺言ゆいごんどうほう978じょう)、(4)船舶せんぱく遭難そうなんしゃ遺言ゆいごんどうほう979じょう)がある。以上いじょう特別とくべつ方式ほうしきによる遺言ゆいごんは、病気びょうき快復かいふくその理由りゆう遺言ゆいごんしゃ普通ふつう方式ほうしきによって遺言ゆいごんをすることができるようになったときから6かげつあいだ生存せいぞんしたときは効力こうりょくうしなう。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

遺言ゆいごん事項じこう

遺言ゆいごんさだめることができる事項じこう遺言ゆいごん事項じこう)は法律ほうりつさだめるものに限定げんていされ、それ以外いがいに、たとえば遺骸いがい(いがい)はどこそこに埋葬まいそうせよなどというような事柄ことがらしるしても、道徳どうとくてき訓戒くんかいとしての意味いみべつとして、法律ほうりつじょう拘束こうそくりょくはない。

 法律ほうりつさだめられた事項じこうとしては、(1)財団ざいだん法人ほうじん設立せつりつのための寄付行為きふこうい一般いっぱん法人ほうじんほう164じょう2こう)、(2)遺贈いぞう(いぞう)(民法みんぽう964じょう)、(3)認知にんちどうほう781じょう2こう)、(4)後見人こうけんにんまたは後見こうけん監督かんとくじん指定していどうほう839じょう・848じょう)、(5)相続そうぞくじん廃除はいじょまたはその取消とりけし(どうほう893じょう・894じょう)、(6)相続そうぞくぶん指定していまたは指定してい委託いたくどうほう902じょう)、(7)遺産いさん分割ぶんかつ方法ほうほうまたは指定してい委託いたくどうほう908じょう)、などがある。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

遺言ゆいごん効力こうりょく撤回てっかい

遺言ゆいごんは、ひと最終さいしゅう意思いし尊重そんちょうする趣旨しゅしもとづく制度せいどで、遺言ゆいごんしゃ死亡しぼうしたときに効力こうりょくしょうずるものであり、その死亡しぼうまえにはいかなる権利けんり義務ぎむ発生はっせいしない。したがって、遺言ゆいごんしゃはいつでも自由じゆう遺言ゆいごん全部ぜんぶまたは一部いちぶ撤回てっかいすることができる(民法みんぽう1022じょう)。前後ぜんごふたつの遺言ゆいごん内容ないようちがうときは、遺言ゆいごんまえ遺言ゆいごん撤回てっかいされたとみなされる。遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごん内容ないよう矛盾むじゅんする行為こうい生前せいぜんった場合ばあい(たとえば、遺言ゆいごんしょかぶと遺贈いぞうするといてあるものおつにやってしまったような場合ばあい)は、その部分ぶぶん遺言ゆいごん撤回てっかいされたとみなされる(どうほう1023じょう)。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

遺言ゆいごんしょ開封かいふうけんみとめ

公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごんのぞきその遺言ゆいごんしょ保管ほかんしゃは、遺言ゆいごんしゃ死亡しぼうしたことをったときは、ただちに遺言ゆいごんしょ家庭かてい裁判所さいばんしょ提出ていしゅつしてけんみとめけなければならない。けんみとめとは、遺言ゆいごん存在そんざいしていること、およびその内容ないよう確認かくにんする手続てつづきをいい、以後いご偽造ぎぞう変造へんぞうふせぐためにおこなわれる。封印ふういんのある遺言ゆいごんしょは、家庭かてい裁判所さいばんしょにおいて相続そうぞくじんまたはその代理人だいりにん立会たちあいいのうえでなければ開封かいふうできない(民法みんぽう1004じょう)。これらの手続てつづきおこたった場合ばあい過料かりょうしょせられるが(どうほう1005じょう)、遺言ゆいごんそのものは無効むこうとなるわけではない。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

遺言ゆいごん執行しっこう

遺言ゆいごんしゃ死亡しぼうによって効力こうりょくしょうじた遺言ゆいごん内容ないよう実現じつげんするために必要ひつよう事務じむ処理しょりする行為こうい遺言ゆいごん執行しっこうといい、その行為こういをするもの遺言ゆいごん執行しっこうしゃという。執行しっこうかんする費用ひよう遺留分いりゅうぶん(いりゅうぶん)をおかさないかぎ相続そうぞく財産ざいさんからまかなわれる(民法みんぽう1021じょう)。遺言ゆいごん執行しっこうしゃは、遺言ゆいごん指定していまたは遺言ゆいごん指定していされた第三者だいさんしゃ指定していによってさだめられる(指定してい遺言ゆいごん執行しっこうしゃどうほう1006じょう)。指定していがないときは、家庭かてい裁判所さいばんしょ利害りがい関係かんけいじん請求せいきゅうによって選任せんにんする(選任せんにん遺言ゆいごん執行しっこうしゃどうほう1010じょう)。遺言ゆいごん執行しっこうしゃは、相続そうぞくじん代理人だいりにんとみなされ、その権限けんげんないにおいて遺言ゆいごん執行しっこうしゃであることをしめしてした行為こういは、相続そうぞくじんたいして直接ちょくせつ効力こうりょくしょうじることになる(どうほう1015じょう)。そして、遺言ゆいごん執行しっこうしゃは、遺言ゆいごん内容ないよう実現じつげんするために、遺言ゆいごん執行しっこう必要ひつようないっさいの行為こういをする権利けんり義務ぎむゆうする(どうほう1012じょう1こう)。また、遺言ゆいごん執行しっこうしゃがある場合ばあいには、相続そうぞくじん相続そうぞく財産ざいさん処分しょぶんなど遺言ゆいごん執行しっこうさまたげる行為こういをすることができず(どうほう1013じょう1こう)、これに違反いはんしてなされた行為こうい無効むこうとなる(どうほう1013じょう2こう本文ほんぶん)。ただし、その無効むこうは、遺言ゆいごんはんしてなされた行為こういであることをらない第三者だいさんしゃには、主張しゅちょうすることができない(どうほう1013じょう2こう但書ただしがき)。

 なお、遺言ゆいごん執行しっこうしゃがいても、相続そうぞくじん債権さいけんしゃは、相続そうぞく財産ざいさんについてその権利けんり行使こうしすることができる(どうほう1013じょう3こう)。

高橋たかはし康之やすゆき野澤のざわただしたかし 2019ねん7がつ19にち

国際こくさい私法しほうじょう遺言ゆいごん

日本にっぽんでも遺言ゆいごんをするひとえてきているが、欧米おうべいではふるくから遺言ゆいごんをするひと割合わりあい日本にっぽんくらべて格段かくだんおおい。そして、各国かっこく遺言ゆいごんかんする法律ほうりつ内容ないようことなっている。たとえば、遺言ゆいごんけんみとめ制度せいどについて、日本にっぽんほうによればこれは遺言ゆいごんしょ状態じょうたい検証けんしょうし、のち変造へんぞうされることがないようにその保存ほぞん確実かくじつにする手続てつづきであるが、英国えいこくほうによれば、法定ほうてい方式ほうしきしたがって遺言ゆいごん能力のうりょくがあるもの作成さくせいしたものであるかかを決定けっていする手続てつづきとされている。このようなちがいのため、遺言ゆいごん成立せいりつおよび効力こうりょくをめぐって、いずれのくに法律ほうりつ適用てきようするかという国際こくさい私法しほう問題もんだいしょうずることがすくなくない。

 日本にっぽん国際こくさいわたし法典ほうてんである「ほう適用てきようかんする通則つうそくほう」(平成へいせい18ねん法律ほうりつだい78ごう)では、だい37じょう遺言ゆいごん準拠じゅんきょほう規定きていされている。それによれば、遺言ゆいごん成立せいりつおよび効力こうりょくはその成立せいりつ時点じてんにおける遺言ゆいごんしゃ本国ほんごくほうによるとされている。しかし、この規定きてい適用てきようにおいて注意ちゅういしなければならないのは、ここでいう「遺言ゆいごん成立せいりつおよび効力こうりょく」とは、遺言ゆいごん能力のうりょく意思いし表示ひょうじ瑕疵かし(かし)、遺言ゆいごん効力こうりょく発生はっせい要件ようけん効力こうりょく発生はっせい時期じきなどの遺言ゆいごん作成さくせいしゃ意思いしつたえることにかんする事項じこうだけであるというてんである。遺言ゆいごん内容ないようとして財産ざいさん処分しょぶんをするむね意思いし表示ひょうじがある場合ばあい、そのとおりに実現じつげんされるかかをけっするのは、どうほうだい36じょうによりさだまる相続そうぞく準拠じゅんきょほうである。相続そうぞく準拠じゅんきょほうじょう遺留分いりゅうぶんみとめられていれば、それを侵害しんがいするような遺言ゆいごんみとめられない。遺言ゆいごんについても相続そうぞくについても日本にっぽんではともに本国ほんごくほうによるとされているが、遺言ゆいごん準拠じゅんきょほう遺言ゆいごん成立せいりつ本国ほんごくほうであり、相続そうぞく準拠じゅんきょほう相続そうぞくつまり死亡しぼう本国ほんごくほうであるので、遺言ゆいごんをしたのち国籍こくせき変更へんこうして本国ほんごくほうわれば、両者りょうしゃ準拠じゅんきょほうことなることになる。おなじく、遺言ゆいごんにおいて、認知にんちをしたり、信託しんたくをしたりする場合ばあいには、その認知にんち信託しんたく成立せいりつおよび効力こうりょくはそれぞれどうほうだい29じょうによりさだまる認知にんち準拠じゅんきょほうだい7じょうによりさだめる信託しんたく準拠じゅんきょほうによる。

 「ほう適用てきようかんする通則つうそくほうだい37じょう2こうは、遺言ゆいごん取消とりけしは取消とりけしの時点じてんにおける遺言ゆいごんしゃ本国ほんごくほうによると規定きていしている。ここでいう取消とりけしとは、有効ゆうこう成立せいりつした遺言ゆいごん撤回てっかいである。

みち垣内かきうち正人まさと 2022ねん4がつ19にち

遺言ゆいごん方式ほうしき準拠じゅんきょほう

遺言ゆいごん方式ほうしき準拠じゅんきょほう決定けっていについては、「ほう適用てきようかんする通則つうそくほう」の一部いちぶ規定きていのほか、「遺言ゆいごん方式ほうしき準拠じゅんきょほうかんする法律ほうりつ」(昭和しょうわ39ねん法律ほうりつだい100ごう)が適用てきようされる。これは、ハーグ国際こくさい私法しほう会議かいぎ作成さくせいし、1961ねん昭和しょうわ36)に署名しょめいされた条約じょうやく批准ひじゅんしてそれを国内こくないほうしたものである。遺言ゆいごん外部がいぶ形式けいしき、すなわち、遺言ゆいごん作成さくせいにあたって書面しょめん作成さくせいする必要ひつようがあるか、自筆じひつでなければならないかといった問題もんだいかんして、いくつかの法律ほうりつ並列へいれつてきさだめ、そのいずれかに適合てきごうする方式ほうしきによる遺言ゆいごんは、方式ほうしきじょう有効ゆうこうあつかうことをさだめている。規定きていされている準拠じゅんきょほうは、行為こういほう遺言ゆいごん作成さくせいした法律ほうりつ)、遺言ゆいごんしゃ遺言ゆいごん成立せいりつまたは死亡しぼう国籍こくせき住所じゅうしょまたは常居所じょうきょしょゆうしていた法律ほうりつ不動産ふどうさんかんする遺言ゆいごんについては、その不動産ふどうさん所在地しょざいちほう以上いじょうである。このように選択せんたくてきおおくの法律ほうりつ列挙れっきょしているのは、一定いってい関連かんれんせいのある法律ほうりつじょう方式ほうしきしたがっていれば、それでよいことにしようという遺言ゆいごん保護ほごかんがかたもとづいて、できるだけ遺言ゆいごんしゃ意思いし有効ゆうこうなものとしてあつかわれるようにするというほう政策せいさくがあるからである。

 なお、日本にっぽんほう準拠じゅんきょほうとなる場合ばあいにも、外国がいこくてき要素ようそふく事案じあんであれば、純粋じゅんすい国内こくない事件じけんとはことなるほう適用てきようがなされることがある。たとえば、国籍こくせきのスラブじんとしてロシアでまれ18さいのときに来日らいにちして以来いらい40年間ねんかん日本にっぽん居住きょじゅうし、遺言ゆいごん作成さくせいの1ねん9かげつまえ日本にっぽん帰化きかした遺言ゆいごんしゃが、署名しょめいはしたものの捺印なついん(なついん)を自筆じひつ遺言ゆいごん証書しょうしょのこして死亡しぼうした事件じけんにおいて、遺言ゆいごんしゃ片言かたこと日本語にほんごはできたものの、しゅとしてロシア英語えいごもちいて日本にっぽん社会しゃかいにはなじまない生活せいかつをしていたとの事実じじつ認定にんていもとづき、そのような事情じじょうのもとでは、捺印なついんようするむね規定きていしている民法みんぽうだい968じょう1こう解釈かいしゃくとして、署名しょめいだけしかなくても有効ゆうこうとしてよいとした判例はんれいがある(最高裁判所さいこうさいばんしょ昭和しょうわ49ねん12月24にち判決はんけつみんしゅう28かん4ごう83ぺーじ)。

みち垣内かきうち正人まさと 2022ねん4がつ19にち


遺言ゆいごん(ゆいごん)
ゆいごん

遺言ゆいごん

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普及ふきゅうばん どおり遺言ゆいごん」のみ・字形じけい画数かくすう意味いみ

遺言ゆいごん】い(ゐ)げん

古人こじん遺訓いくん。〔勧学かんがく先王せんおうげんかざれば、學問がくもんだいなるをらざるなり。ゆいごん。〔ひだりでんじょうじゅうよんねんすわえつよりる。そっす。はた(まさ)にせんとし、げんしてかのえいいふ、かなら(えい)に(しろきづ)けと。

どおりのこ」の項目こうもく

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ブリタニカ国際こくさいだい百科ひゃっか事典じてん しょう項目こうもく事典じてん遺言ゆいごん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

遺言ゆいごん
いごん

ひと自分じぶん死後しご,その効力こうりょく発生はっせいさせる目的もくてきで,あらかじめのこしておく意思いし表示ひょうじ遺言ゆいごん法律ほうりつじょう効果こうかしょうじるためには,民法みんぽうさだめる一定いってい方式ほうしきしたがってなされることをようする(→遺言ゆいごん証書しょうしょ。960じょう)。遺言ゆいごんでなしうる行為こういは,認知にんち後見人こうけんにん指定してい相続そうぞくじん廃除はいじょ遺贈いぞう寄付行為きふこうい相続そうぞくぶん(→相続そうぞく)の指定してい遺産いさん分割ぶんかつ方法ほうほう指定してい,そのほか法律ほうりつさだめられているものにかぎられ,それ以外いがい事項じこうかんするものは法的ほうてき効果こうかしょうじない。遺訓いくん遺誡いかいなどの道徳どうとくてき内容ないようのものは法律ほうりつじょう遺言ゆいごんではない。まん 15さいたっし,意思いし能力のうりょくのあるもの独立どくりつして遺言ゆいごんをすることができる(961,962,963じょう)。ただし,成年せいねん後見人こうけんにん(→成年せいねん後見こうけん制度せいど)が遺言ゆいごんをするには医師いし 2にん以上いじょういをようする(973じょう)。なお,遺言ゆいごん内容ないよう実現じつげんするため特別とくべつ行為こうい必要ひつようなときは,遺言ゆいごん執行しっこうしゃかれる(1006じょう以下いか)。

遺言ゆいごん
ゆいごん

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百科ひゃっか事典じてんマイペディア遺言ゆいごん」の意味いみ・わかりやすい解説かいせつ

遺言ゆいごん【ゆいごん】

生前せいぜん死後しご法律ほうりつ関係かんけいさだめておくために,一定いってい方式ほうしきしたがってなす単独たんどく意思いし表示ひょうじ民法みんぽう960じょう以下いか)。法律ほうりつじょうは〈いごん〉という。遺言ゆいごんしゃ死亡しぼうによって効力こうりょくしょうずる。その内容ないようは,遺贈いぞう相続そうぞくぶん指定してい遺産いさん分割ぶんかつ方法ほうほう指定してい相続そうぞくじん廃除はいじょ認知にんちとう法律ほうりつみとめた一定いっていのものにかぎられる。まん15さいたっしていれば遺言ゆいごんすることができる。遺言ゆいごん執行しっこうするまえに,遺言ゆいごんしょ保管ほかんしゃ家庭かてい裁判所さいばんしょ提出ていしゅつしてけんみとめけなければならない。→遺言ゆいごん証書しょうしょ相続そうぞく

遺言ゆいごん【いごん】

遺言ゆいごん(ゆいごん)

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知恵ちえぞう遺言ゆいごん」の解説かいせつ

遺言ゆいごん

ひと自分じぶんんだとき所有しょゆうする財産ざいさんとうをどのように処分しょぶんするかを書面しょめんのこし、この故人こじん意思いし尊重そんちょうする制度せいどふるくからある。財産ざいさん処分しょぶん自由じゆう死後しごにおいても反映はんえいさせたのが遺言ゆいごんで、相続そうぞくじん最終さいしゅう意思いし確保かくほする制度せいど他者たしゃによる変造へんぞうとう防止ぼうしするために、遺言ゆいごん方式ほうしき厳格げんかく法定ほうていされ、それにしたがっていない遺言ゆいごん無効むこうとなる。とく日付ひづけ不可欠ふかけつ自筆じひつ遺言ゆいごん公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごん代表だいひょうてき方式ほうしき遺言ゆいごんできる法律ほうりつ関係かんけい財産ざいさんじょう身分みぶんじょうだけで、それ以外いがい事項じこうたとえば「はは大切たいせつに」といった遺訓いくんてきなものは法律ほうりつじょう効果こうかはない。遺言ゆいごん法定ほうてい相続そうぞく優先ゆうせんするのが原則げんそく

(吉岡よしおかひろし 弁護士べんごし / 2007ねん)

出典しゅってん (かぶ)朝日新聞あさひしんぶん出版しゅっぱん発行はっこう知恵ちえぞう知恵ちえぞうについて 情報じょうほう

とっさの日本語にほんご便利べんりちょう遺言ゆいごん」の解説かいせつ

遺言ゆいごん

自己じこ死亡しぼう財産ざいさん身分みぶんかんする事項じこうさだめる法律ほうりつ行為こうい遺言ゆいごんしゃ単独たんどく意思いし表示ひょうじであり、いつでも撤回てっかいでき、遺言ゆいごんしゃ死亡しぼうまえには法律ほうりつじょう権利けんりしょうじさせない。民法みんぽうさだめる遺言ゆいごん証書しょうしょには、自筆じひつ証書しょうしょ遺言ゆいごん公正こうせい証書しょうしょ遺言ゆいごん秘密ひみつ証書しょうしょ遺言ゆいごん三種さんしゅがあり、いずれも要件ようけん具備ぐびしないと無効むこうとく日付ひづけ不可欠ふかけつ

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世界せかいだい百科ひゃっか事典じてん旧版きゅうばんうち遺言ゆいごん言及げんきゅう

遺贈いぞう】より

遺言ゆいごんによって財産ざいさん他人たにん無償むしょうあたえること。贈与ぞうよ贈与ぞうよしゃ生前せいぜん行為こういであり,しかも受贈じゅぞうしゃとの契約けいやくであるのにたいし,遺贈いぞう遺言ゆいごんしゃ一方いっぽうてき意思いし表示ひょうじによって,遺言ゆいごんしゃ死後しご効力こうりょくしょうずる単独たんどく行為こういであるてん両者りょうしゃことなる。…

遺言ゆいごん】より

自己じこ死亡しぼうとともに効力こうりょく発生はっせいさせる目的もくてきおこな単独たんどく意思いし表示ひょうじのこと。
遺言ゆいごん制度せいど歴史れきし
 元来がんらい人間にんげんは,その死後しご身分みぶんじょうおよび財産ざいさんじょうのことをかんがえて,生前せいぜんに,なんらかの措置そちこうじておきたいとねんずるのがつねである。また子孫しそん近親きんしんが,その意思いし尊重そんちょうして,その意思いし実現じつげんはかることは,徳義とくぎじょう要請ようせいされているともいえるだろう。…

遺産いさん分割ぶんかつ】より

…このことは,とくに農家のうか相続そうぞくについて問題もんだいとなっている。
遺産いさん分割ぶんかつ方法ほうほう
 (1)遺言ゆいごんによる分割ぶんかつ指定してい だい1には相続そうぞくじん意思いしまる。すなわち,遺言ゆいごんかく共同きょうどう相続そうぞくじん取得しゅとくする財産ざいさん指定していすることもできるし,第三者だいさんしゃ指定していすることを委託いたくすることもできる(908じょう)。…

※「遺言ゆいごん」について言及げんきゅうしている用語ようご解説かいせつ一部いちぶ掲載けいさいしています。

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