前回ぜんかいのあらすじ

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時ときは幕末ばくまつ・元もと治ち2年ねん（1865年ねん）2月がつ、同志どうしを募つのる使命しめいを帯おびて長州ちょうしゅう藩はん（現げん：山口やまぐち県けん西部せいぶ）を発たった志士しし4名めい。

一いち、岡元おかもと太郎たろう敦あつし(おか もとたろうあつし)
一いち、井原いはら応おう輔徳道どう(いはら おうすけのりみち)
一いち、島しま浪なみ間あいだ義親よしちか(しま なみまよしちか)
一いち、千屋せんや金策きんさく孝こう成なり(ちや きんさくたかしげ)

使命しめいを胸むねに長州ちょうしゅう藩はんを発たった4志士しし（イメージ）。

御家おいえの存亡そんぼうを賭かけた使命しめいを胸むねに東ひがしへ進すすんだ4名めいは、勝田かつた郡ぐん百々どうど村むら(現げん：岡山おかやま県けん久米くめ郡ぐん美咲みさき町まち)にある造つくり酒屋ざかや・池いけ上屋うわや文左衛門ぶんざえもん（いけがみや ぶんざゑもん）に資金しきん援助えんじょを申もうし出でます。

しかし「尊皇そんのう護国ごこくの志士ししを騙かたった強請きょうせい（ゆす）りだろう」と侮辱ぶじょくされ、怒おこった4名めいが抜刀ばっとうすると文左衛門ぶんざえもんは逃亡とうぼう、その妻つまと番頭ばんがしらが非礼ひれいを詫わびて金子かねこ（きんす）の包つつみを差さし出だします。

「怖こわがらせてしまって申もうし訳わけないが、この金子かねこは尊皇そんのう護国ごこくのために役立やくだたせていただく」

そう金子きんすを受うけ取とり、立たち去さった4人にんを怨うらんだ文左衛門ぶんざえもんは……？

強盗ごうとうの疑うたがいをかけられ、必死ひっしの逃走とうそう

「強盗ごうとうだ！強盗ごうとうが出でたぞ！」

さて、4人にんが立たち去さったのを確認かくにんして店みせへ戻もどった文左衛門ぶんざえもんは、彼かれらを強盗ごうとうとして奉行ぶぎょう所しょへ訴うったえ、同時どうじに村人むらびとたちをけしかけました。

4志士ししを追おう農民のうみんたち（イメージ）。

「まだ遠とおくへは行おこなっていない筈はずだ！探さがせ！探さがせ！今いますぐ殺ころせ！」

農民のうみんたちは竹槍たけやりや火縄銃ひなわじゅうを手てに手てに結集けっしゅうし、街道かいどうを進すすんで4人にんを追おいかけます。

「いたぞ！逃にがすな！」

「浪人ろうにんを捕とらえれば懸賞けんしょう金きんがもらえるぞ！」

「いいから殺ころせ！八やつ裂ざきだ！」

迫せまり来くる農民のうみんたちの様子ようすに、自分じぶんたちが強盗ごうとうの疑うたがいをかけられたことを察さっした4人にんは必死ひっしで逃にげます。

「おのれ池ち上屋うわや！我われらを訴うったえおったな！」

「弁明べんめいしたとて聞きく耳みみなかろう……とにかく今いまは逃にげろ！」

逃にげても逃にげても執拗しつように追おいかけて来くる農民のうみんたちから身みを守まもるには、英田あいだ郡ぐん土居とい村むら（現げん：岡山おかやま県けん美作みさく市し）に住すんでいた尊皇そんのう護国ごこくの同志どうし・安東あんどう正ただし虎とら（あんどう まさとら）を頼たよるほかありません。

「無事ぶじにたどり着つければよいが……」

しかし、土居とい村むらは天領てんりょう（幕府ばくふの直轄ちょっかつ領りょう）なので関所せきしょが設もうけられており、間あいだの悪わるいことに「4人組にんぐみの強盗ごうとうがこっちへ逃にげて来くる」という報しらせが回まわっていました。

果はたして関所せきしょは通とおれるか（イメージ）。

「うぬらは賊ぞくであろう！神妙しんみょうに致いたせ！」

「違ちがう！我われらは……」

いくら弁明べんめいしても聞きく耳みみを持もってくれず、あくまで4人にんを捕とらえようとする態度たいどに対たいして、疲つかれと怒いかりでカッとなった岡おかは、関所せきしょの番卒ばんそつを一刀いっとうに斬きり捨すててしまいます。

「あぁ……これで進退しんたい窮きわまった……」

もはや弁明べんめいの余地よちもない過あやまちを恥はじた岡おかは、軽挙けいきょの責任せきにんをとって切腹せっぷく。井原いはらと島しまも刺さし違ちがえて自害じがいしますが、井原いはらは急所きゅうしょを外はずしてしまい、絶命ぜつめいするまで半日はんにちにわたって苦くるしみ続つづけました。

「どうか、どうか介錯かいしゃく（トドメ）を……」

やがて追おいついた農民のうみんたちは、その様子ようすをニヤニヤと遠巻とおまきに眺ながめるばかりで放置ほうち、ただ村むら医者いしゃの福田ふくだ静斎せいさい（ふくだ じょうさい）ひとりが懸命けんめいに手当てあてするばかりだったそうです。

2ページ目め 非業ひごうの最期さいごと、惨むごたらしい仕打しうち