絶好調ぜっこうちょうの白石しらいし和彌かずや監督かんとくが最さい新作しんさく「ひとよ」と昨今さっこんのエンタメ業界ぎょうかいを巡めぐる状況じょうきょうを語かたる

映画えいが賞しょうを総そうなめにした「凶悪きょうあく」（2013）や「日本にっぽんで一番いちばん悪わるい奴やつら」（16）、「孤こ狼おおかみの血ち」（18）など強烈きょうれつな作品さくひんを相次あいついで発表はっぴょうし、今いまや名なだたる俳優はいゆうたちが最もっとも出演しゅつえんを熱望ねつぼうしているとも言いわれる白石しらいし和彌かずや監督かんとくの最新さいしん作さく「ひとよ」が、11月8日にち（金かね）から全国ぜんこく公開こうかいされる。今年ことしの公開こうかい作さくとしては「麻雀まーじゃん放浪ほうろう記き2020」「凪なぎ待まち」に続つづく3本ほん目め。佐藤さとう健けん、鈴木すずき亮平りょうへい、松岡まつおか茉優、田中たなか裕子ゆうこら錚々たる演技えんぎ巧者こうしゃたちの共演きょうえんで、家族かぞくをテーマに真正面ましょうめんからじっくりと描えがいた。「新しん境地きょうちに到達とうたつした手応てごたえがある」と語かたる白石しろいし監督かんとくに話はなしを聞きいた。

暴力ぼうりょくから子供こどもを守まもるために夫おっとを殺ころした女性じょせいと、「殺人さつじん犯はんの家族かぞく」として人生じんせいが変かわってしまった3人にんの子供こどもたちが、15年ねん後ごに再会さいかいしたことから始はじまる物語ものがたり。劇団げきだんKAKUTAを主宰しゅさいする桑原くわばら裕子ゆうこの2011年ねんの戯曲ぎきょくが原作げんさくで、一度いちど壊こわれた家族かぞくがもがきながら再生さいせいへと向むかう過程かていを温あたたかい視点してんで描えがき出だしている。

「タイトルの『ひとよ』はひとつの夜よるで『一夜いちや』ですけど、『人世じんせい』、つまり『人ひとと世よの中なか』という意味いみもあると思おもいます」と白石しらいし監督かんとく。「とにかく桑原くわばらさんの戯曲ぎきょくが素晴すばらしい。子供こどもを守まもるために殺人さつじんまで犯おかす母親ははおやの『なんでそこまでできるの？』というところや、『誰だれかにとっては特別とくべつな夜よるでも、誰だれかにとってはいつもと変かわらない夜よる』という台詞せりふにもあるように、まさに人生じんせいそのものが描えがかれている点てんに感銘かんめいを受うけました」

メインキャストは、今いまの日本にっぽん映画えいがを背負せおって立たつ4人にん。さらに佐々木ささき蔵ぞう之の介かいや音おと尾お琢みがく真しん、筒井つつい真理子まりこら、白石しらいし監督かんとく曰いわく「とにかく上手うまい人ひとたち」が集結しゅうけつした。

「メインの4人にんが揃そろった段階だんかいで、『これはいける』と確信かくしんしました。どちらかというとアート系けいの作品さくひんで、よくぞこのメンツが集あつまってくれたと思おもいます。これだけ上手うまい人ひとが出でてくれると、失礼しつれいない方いかたかもしれないけど、演出えんしゅつは楽らくでしたよ（笑）。皆みなさん理解りかいが早はやいですしね」

「その中なかでもやっぱり田中たなか裕子ゆうこさんはすごかった。理解りかいを超こえるような強つよい思おもいを抱かかえた母親ははおやの役やくでしたが、何なんの不自然ふしぜんさもなく演えんじてくれました。同時どうじに、『もしかしたら自分じぶんの選択せんたくは間違まちがっていたのかもしれない』という迷まよいが、小ちいさな仕草しぐさ、表情ひょうじょうから伝つたわってくる。さすがですよね」

一方いっぽう、主演しゅえんの佐藤さとう健けんとは、白石しらいし監督かんとく自身じしんの家族かぞくの話はなしをするなどしながら、キャラクターを組くみ立たてていったという。

「（佐藤さとう）健けんが演えんじる雄二ゆうじは、母おもや兄妹きょうだいのことを誰だれよりも考かんがえているのに、自分じぶんの思おもいを言語げんご化かできず、家いえを出でて上京じょうきょうしたのに何者なにものにもなれていない自分じぶんにイライラしている…という難むずかしい役やくです。演えんじるに当あたっては彼かれも不安ふあんを感かんじていたかもしれませんが、僕ぼくの実体験じつたいけんで、何なん年ねんも音信いんしん不通ふつうになっていた弟おとうとと数すう年ねんぶりに再会さいかいしたときのぎこちない感かんじなどを伝つたえ、ヒントにしてもらったりもしました」

「僕ぼくは長男ちょうなんなので、映画えいがの中なかの鈴木すずき亮平りょうへいの立場たちばでもあるし、境遇きょうぐうは東京とうきょうに出でてきた佐藤さとう健けんに近ちかい。そして今いまは親おやでもある。それぞれのキャラクターに自分じぶんを投影とうえいできる部分ぶぶんがあるので、いろんなことを思おもいながら撮とりました」