2022.12.29(Thu)

児童じどう館かんの館長かんちょう、10年間ねんかん勤つとめ年収ねんしゅう250万まん円えん以下いかのまま　行政ぎょうせいは予算よさんを削けずるばかりで涙なみだの訴うったえ「待遇たいぐうの低ひくさはもちろん、運営上うんえいじょうとても危険きけん」

指定してい管理かんりの「児童じどう館長かんちょう」で手取てどり月がつ約やく15万まん円えん、賞与しょうよ含ふくめても年収ねんしゅう250万まん円えん以下いか。物価ぶっかは高騰こうとう、増税ぞうぜいされるばかりなのに、10年ねん以上いじょう勤つとめても年収ねんしゅうは変かわらない現実げんじつ。そんな現状げんじょうに対たいして世間せけんにSNSを通つうじて訴うったえたのは、地方ちほうで児童じどう館かんの館長かんちょうを務つとめる、さとうひろこさん（仮名かめい）です。

公共こうきょうの施設しせつのトップでありながら、年収ねんしゅうが250万まん円えんに満みたないという衝撃しょうげきの事実じじつ。SNSでは、「手取てどり15万まん！給料きゅうりょうと仕事しごと内容ないよう見合みあってないんだよ！冗談じょうだんじゃないよ！」「子供こどもに関かかわる人ひとの待遇たいぐうが低ひくすぎる。大変たいへんさに反比例はんぴれいしてる」といった収入しゅうにゅうや待遇たいぐうの悪わるさに驚おどろく声こえが多数たすう寄よせられました。

ほかにも「子こどもが小ちいさかった頃ころ、児童じどう館かんのお世話せわになった一人ひとりの親おやとして、憤いきどおり以外いがいの感情かんじょうが湧わかない。地域ちいき社会しゃかいの解体かいたいした現代げんだい社会しゃかいで、児童じどう館かんは子育こそだてに必須ひっすのインフラなんだよ」などの怒いかりのコメントや「指定してい管理かんり制度せいど、この件けんに限かぎらず現場げんばは薄給はっきゅう、過重かじゅう労働ろうどうで大変たいへんなんだよね」「指定してい管理かんり者しゃ制度せいどは人ひとを相手あいてとする公共こうきょう施設しせつの管理かんりにはそぐわない」という制度せいどを批判ひはんする声こえも寄よせられました。

なお、国税庁こくぜいちょうの「民間みんかん給与きゅうよ実態じったい統計とうけい調査ちょうさ」（2021年ねん12月31日にち付づけ）によると、日本にっぽん国内こくないの給与きゅうよ所得しょとく者しゃの1人ひとりあたりの平均へいきん給与きゅうよは461万まん円えん。男女だんじょ別べつでは男性だんせいが567万まん円えん、女性じょせいが280万まん円えんの結果けっかと比較ひかくすると、さとうさんの年収ねんしゅうは約やく30万まん円えん少すくない計算けいさんです。

年収ねんしゅうが上あがらない原因げんいんは何なになのか。地域ちいき社会しゃかいでの児童じどう館かんの役割やくわりも含ふくめて、さとうさんに話はなしを聞ききました。

次世代じせだいにこの現状げんじょうを繋つないではいけない

――今回こんかいの、ご自身じしんの現状げんじょうを訴うったえられたきっかけは？

「指定してい管理かんり制度せいどの実態じったいを知しってほしいという強つよい気持きもちでした。専門せんもん性せいの高たかい職種しょくしゅについている人ひとの中なかには、私わたしのように年収ねんしゅうが上あがらない人ひともいます。これでは“官製かんせい貧困ひんこん”と言いわれても仕方しかたがない。これから専門せんもん職しょくになろうとしている若わかい世代せだいに、この現状げんじょうを繋つないでしまってはいけないと考かんがえています」

――児童じどう館かんとはどのような施設しせつ？

「0歳さいから18歳さいまでの子こどもなら誰だれでも利用りようできる、学校がっこうでも家庭かていでもない“第だい3の居場所いばしょ”のような児童じどう福祉ふくし施設しせつです。児童じどう館かんに集あつまる子こどもたちが遊あそびを通つうじて仲間なかまを作つくることで、社会しゃかい性せいや自主じしゅ性せい、自己じこ肯定こうてい感かんなどを育はぐくむ環境かんきょうづくりを行おこなっています。

ほか、各かく家庭かていの親子おやこが安全あんぜんで気軽きがるに交流こうりゅうできるようにサポートしたり、希薄きはくになってしまった地域ちいき社会しゃかいと子こどもたちを繋つなげる関係かんけいづくりにも力ちからを入いれたりしています。

ちなみに同おなじ児童じどう福祉ふくしの“放課後ほうかご児童じどうクラブ（学童がくどう）”は、原則げんそくでは、共働ともばたらきなどで十分じゅうぶんな保育ほいくができない留守るす宅たくの子こども（小学しょうがく6年生ねんせいまで）を預あずかり、健全けんぜんに育そだてる役割やくわりがあります。一方いっぽうで、児童じどう館かんは子こどもを預あずかって育そだてる保育ほいく機能きのうはなく、どちらかと言いえば子こどもたちが集あつまれる場所ばしょを提供ていきょうする意味いみが強つよいですね」

――館長かんちょうの仕事しごととは？

「子供こどもと接せっすることが最もっとも重要じゅうような仕事しごとで、館長かんちょう業務ぎょうむの8割わりにあたります。たとえば職員しょくいんから『あの子こ、こんな様子ようすでちょっと気きになっています』といったように報告ほうこくがあると、その子こが今いまどんな様子ようすなのかを目視もくしで確認かくにんしています。

残のこりの2割わりは職員しょくいんのマネージメントや事務じむ処理しょり、行政ぎょうせいや学校がっこう、地域ちいきとの連携れんけい、調整ちょうせい、施策しさくの企画きかくなどです。ケースによっては虐待ぎゃくたいを通報つうほうすることもあります」

――児童じどう館かんの利用りよう者しゃはどれくらい？

「1日にちに50～60人にんの子こどもが来館らいかんしています。小学校しょうがっこう1校こうあたり200人にんに満みたない地域ちいきに当館とうかんがありますので、保育園ほいくえん児じや中高生ちゅうこうせいも含ふくめても地元じもとの子こどもの約やく1/４が毎日まいにち来館らいかんしています。年間ねんかんでは2万まん人にんほどですね。

職員しょくいんは私わたしを入いれて5名めいです。1日にちに3名めいのシフトで勤務きんむしているので、スタッフ1名めいで約やく20人にんの子こを担当たんとうしている計算けいさんになります」

――3名めいの勤務きんむは現実げんじつ的てきに厳きびしいのでは？

「確たしかに非常ひじょうに厳きびしくはありますが、職員しょくいんは館内かんないを見回みまわりながら目めが届とどくように配慮はいりょしていて、安心あんしんと安全あんぜんを担保たんぽしています。

私わたしたちは、中学生ちゅうがくせいや高校生こうこうせいが小学校しょうがっこう低てい学年がくねんの面倒めんどうを見みるといったように、子供こどもたちが自みずからルールやコミュニティを作つくる“斜ななめの関係かんけい”の環境かんきょう作づくりに力ちからを入いれています」

予算よさんは減へることはあっても増ふえることはない現実げんじつ

――年収ねんしゅうが上あがらない理由りゆうは、指定してい管理かんり者しゃ制度せいどによるもの？

「あくまで当館とうかんの事情じじょうに限かぎりますが、恐おそらく完全かんぜんに民間みんかん運営うんえいであればこの年収ねんしゅうにはならないと思おもいます。

指定してい管理かんり者しゃ制度せいどとは、小泉こいずみ内閣ないかく時代じだいの平成へいせい15年ねんに作つくられた、公共こうきょう施設しせつの管理かんり・運営うんえいを民間みんかん事業じぎょう者しゃが担になう制度せいどです。民間みんかんの運営うんえいノウハウによって、公共こうきょうサービスの向上こうじょうとコストカットを目的もくてきとする制度せいどですから、予算よさんが減へることはあっても増加ぞうかは考かんがえにくいですね。

行政ぎょうせい側がわとしては指定してい管理かんり者しゃ制度せいどなしでの施設しせつの存続そんぞくはあり得えないでしょう。ただ今後こんご、もしかしたら民間みんかんに施設しせつごと渡わたしていくようなこともありうるかもしれませんが、公共こうきょう施設しせつである以上いじょうは“官製かんせいワーキングプア”の状態じょうたいのままだと思おもいます」

――行政ぎょうせいに来期らいきの予算よさんが削けずられると聞ききました。

「行政ぎょうせいが決きめ打うちで私わたしたちの予算よさんを決きめています。その予算よさんが、今期こんきより約やく10％少すくなくなりました。今いまでも限界げんかいなのに、さらに減へってしまいました。人件じんけん費ひが最もっとも高たかくつくので、来期らいきどのように運営うんえいすればよいか頭あたまが痛いたいですね。

行政ぎょうせいが児童じどう館かんの運営うんえい予算よさんをカットした理由りゆうについては、個人こじん的てきには児童じどうが少すくない地域ちいきであることをふまえて、他たにかかるコストよりも児童じどう館かんが優先ゆうせんされてしまったのかな、と」

――「予算よさんはカットするけれども、専門せんもん性せいはボランティアを使つかって、品質ひんしつを担保たんぽしてくれ」という話はなしを行政ぎょうせいから言いわれたとか。

「ボランティアさんが安心あんしんして活動かつどうするためにも、職員しょくいんは絶対ぜったい必要ひつようです。ボランティアさんと職員しょくいんとでは、責任せきにんの重おもさも立たち位置いちも違ちがいますし。

子供こどもたちの動うごき一ひとつ一ひとつに責任せきにんがともなう私わたしたちと同おなじように、ボランティアさんにも、その責任せきにんを背負せおってくださいとはお願ねがいできません。責任せきにんの度合どあいが全まったく違ちがいますよね。

私わたし達たちは一応いちおうその道みちのプロとして、プロの目線めせんで子こどもたちを見みています。子こどもに遊あそばせて、その中なかから課題かだい発見はっけんをしていくのが仕事しごとですが、ボランティアさんにその課題かだいを発見はっけんしろというのは違ちがいますよね。

責任せきにんの度合どあいも、立たち位置いちも違ちがうボランティアさんがいなければ回まわらないという現場げんばは、運営上うんえいじょうとても危険きけんだと思おもっています」

◇　◇

最後さいごに、児童じどう館かんの厳きびしい運営うんえい体制たいせいについて、今後こんごどのように変かわってほしいか聞ききました。

「子こどもの政策せいさくを担になう「こども家庭かてい庁ちょう」が2023年ねん4月がつ1日にちから創設そうせつされることによって、児童じどう館かんや子こどもの居場所いばしょに対たいする考かんがえ方かたが大おおきく変かわっていけばと期待きたいしています。児童じどう館かんが地域ちいき社会しゃかいにとって重要じゅうような施設しせつであることが意識いしきづけされたなら、子こどもの居場所いばしょを支ささえる人ひとたちをどのように支ささえていくのか、支援しえんする仕組しくみを行政ぎょうせいにはしっかり作つくっていただきたいですね」。

ツイッターには、このようなコメントも挙あがっていました。「この手ての話題わだいがでると、必かならずと言いっていいほど「じゃあ転職てんしょくすれば？」って言いう馬鹿ばかがわくんだけど給料きゅうりょう安やすいで転職てんしょくしたらその仕事しごと回まわらなくなるじゃん。介護かいごとか保育ほいくとかアニメーターとか給料きゅうりょう安やすい人ひとがどうやったら高たかい給料きゅうりょうもらえるかを国くにが考かんがえなきゃダメなのに」。