創業100年を迎えた大阪の洗浄剤メーカーが、原点に立ち返り家庭用の固形せっけんを半世紀ぶりに復活させる。併せて2025年大阪・関西万博に出展するため、環境負荷の低い粉せっけん開発にも取り組んでおり「ようやく社名の通り、せっけんメーカーと胸を張れる」と意気込んでいる。
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1924年創業の木村石鹸(せっけん)工業(大阪府八尾市)は今年4月、創業100年を迎えた従業員56人の中小企業だ。近年の主力製品はシャンプーやハンドソープで、その多くで昔ながらの「釜焚(だ)き」製法を採用している。ココヤシなどの天然油脂を大釜で焚き、アルカリ剤で反応させて原料を作る。職人がその日の天気や気温に応じて、材料を混ぜるタイミングを変えるなど経験と勘に頼る部分が多い。
創業当初は顔を洗う化粧用や洗濯用の固形、粉せっけんが主力だったというが、太平洋戦争中の44年に材料の入手困難で廃業。54年に再興し、60年代に銭湯やクリーニング店向けなどの粉洗剤がヒットした。時期ははっきりしないが、業務用にシフトする中で家庭用のせっけんの製造をやめたという。
ITから家業、最初は気乗りせず
固形復活は創業者のひ孫の木村祥一郎社長(52)が決断した。家業を継ぐのが嫌で、京都の大学在学中に知人とITベンチャーを起業した。一方、木村石鹸工業は、76年に法人化した父幸夫さん(82)が2回にわたって社長を務めたが、後継者が決まらない状況だった。こうした中、父に説得され13年に入社した。
当時は、業務用の主力製品がOEM(相手先ブランドによる受託生産)で、しかも売り上げの大半を2社に頼っていた。経営上のリスクを少しでも小さくするため、個人消費者向けの自社ブランド製品開発に取り組んだ。…