いよいよ今年も夏の甲子園(全国高等学校野球選手権大会)がはじまりますね。
"Summer Koshien 2009 Final" by 百楽兎 - 投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.
甲子園といえばやっぱり「ドカベン」そして「大甲子園」です。あらためて読み返してみて感じたのは、この作品は岩鬼というキャラを作ったことが成功要因なんですね。この破天荒キャラのおかげでストーリーがどんどん動く。
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ドカベン
[水島新司]
連載終了
神奈川県の明訓高校野球部に所属する主人公の「ドカベン」こと山田太郎が、同級生でチームメイトの岩鬼正美、殿馬一人、里中智、微笑三太郎などの仲間たちとともに甲子園の舞台で活躍する野球マンガ。当時、魔球などの超人的・非現実的要素の野球マンガが多かった中、配球の読みなどリアルな野球の描写を盛り込んだことは斬新で、その後のスポーツマンガにも影響を与えた。
神奈川県の明訓高校野球部に所属する主人公の「ドカベン」こと山田太郎が、同級生でチームメイトの岩鬼正美、殿馬一人、里中智、微笑三太郎などの仲間たちとともに甲子園の……
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大甲子園
[水島新司]
連載終了
水島新司の代表作である「ドカベン」主人公の山田太郎が属する明訓高校が、「球道くん」の中西球道、「一球さん」の真田一球など、その他の作品に登場する主役級の高校球児たちと甲子園で対決するストーリー。山田たちの高校3年、最後の夏を描く。
水島新司の代表作である「ドカベン」主人公の山田太郎が属する明訓高校が、「球道くん」の中西球道、「一球さん」の真田一球など、その他の作品に登場する主役級の高校球児……
そもそもキャッチャーを主役にしたのは「捕手のリード」という視点で野球を描くという、もう野球バカ(褒め言葉)である水島新司先生にしかできない芸当なんだけど、ただの天才バッターだったら9分の1でしか打順が回ってこないから、なかなかドラマになりにくいわけです。
しかもキャッチャーだから冷静でないと奥深さを表現できないので、この山田太郎の対極に位置するキャラがいるとより個性が強調されると。
そこで岩鬼です。悪球打ちとか、とにかく野球の常識を逸脱しまくるわけです。しかもしゃべりまくるから、いろんなキャラとの対立軸も生まれやすい。
そして彼の素人目線というのは野球に詳しくない読者にとっても感情移入しやすいし、ルールとか高度なプレーを説明・解説する上でも便利(岩鬼に教えてる体裁だけど、じっさいには読者に説明してるわけですね)。
まさに必要不可欠な存在です。余談ですが、この岩鬼的キャラを主役に置いたら「スラムダンク」になるし、井上雄彦先生はたしかインタビューで「ドカベン」好きだったと話されてましたね。
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SLAM DUNK
[井上雄彦]
連載終了
湘北高校に入学した不良少年・桜木花道は、背の高さと身体能力からバスケットボール部主将の妹である赤木晴子にバスケット部への入部を薦められる。バスケットボールは初心者であったが、晴子に一目惚れしたことから花道は彼女目当てに入部することに。花道は日々の練習やライバル校との試合を通じて徐々にバスケットの才能を開花させ、インターハイ出場を目指す。
湘北高校に入学した不良少年・桜木花道は、背の高さと身体能力からバスケットボール部主将の妹である赤木晴子にバスケット部への入部を薦められる。バスケットボールは初心……
ポジショニングマップにするとこんな感じです。
変わり者のふたり(岩鬼、殿馬)がいて、さらにすぐカッカして感情的になるふたり(岩鬼、里中)がいる。こうしてキャラを配置すると、山田の性格的な面での凡庸さが際立って、それがさらに彼の能力面での非凡さを印象強くする。
漫画家の先生はたぶんこういうことをそうとう自覚して設定しているんでしょうね。あらためてすごいと思いました。
さらに途中から微笑三太郎というキャラを入れるのもきっと理由があって、第一に圧倒的なスラッガーである4番山田を敬遠する回数を減らす口実として、そこそこのバッターを5番に置かないといけないという打順の問題。王さんは後ろに長嶋さんがいたから勝負してもらえたって話と同じですね。
それに加えて、あえて山田と同じような位置にキャラを配置することで、山田の冷静さと打者としての能力をより強調させたんだと思います。無糖のコーヒーの隣にあえて微糖を置くような感じ(ちょっとわかりにくいですね)。
「夏だなあ、甲子園の季節だなあ」となんの気なしに読んでたんですけど、こういう視点で見るのもけっこうおもしろいものですね。
それにしてもこの時代のマンガってほんとにすごいです。高校生なのに酒は飲むわ、試合に遅れるからと京都府警のパトカーで甲子園に駆けつけるわ、いまならこんなストーリーはマンガといえども厳しいだろうなあ。
(自主規制も含めて)規制が多くなったのは、いいことなのか考えてしまいますね。別にマンガはマンガだし、ドラマはドラマなわけで、目くじらを立てるほどのことでもないんじゃないかなと思いますけど。
ま、それはともかく、おもしろいマンガはいつ読んでもおもしろいなあと再認識しました。暑い夏は甲子園をテレビ観戦しながら、「ドカベン」を読むのもいいですね。