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• マンガで歴史れきしを復習ふくしゅうしよう―「桶おけ狭間はざまの戦たたかい」はどう描えがかれてきたか―

鎌倉かまくら幕府ばくふ成立せいりつの年号ねんごうをおぼえるのに「いいくにつくろう」っておぼえたそこのあなた、それまちがってますよ。

源みなもと頼朝よりともの権力けんりょく・統治とうち機構きこうはそれ以前いぜんから確立かくりつされていたので、最近さいきんの教科書きょうかしょでは実質じっしつ的てきな成立せいりつを1185年ねんとして紹介しょうかいされているそうです（「いいはこつくろう」って語呂合ごろあわせですね）。
ちなみに1192年ねんは征夷大将軍せいいたいしょうぐんに任にんじられた年としなので、それはそれでおぼえなくちゃいけない年としではあります。

では織田おだ信長のぶながのメジャーデビューともいえる「桶おけ狭間はざまの戦たたかい」についてはどうでしょう。
みなさんはこれを「谷間たにまで酒盛さかもりしている今川いまがわ義元よしもと（ビジュアルはお歯黒はぐろ）を、織田おだ信長のぶながの軍勢ぐんぜいが雨あめの中なかを崖がけを駆かけ下くだり奇襲きしゅうをかけて討うち取とった」と習ならったのではないでしょうか。

たとえば横山よこやま光輝みつてる先生せんせいの「織田おだ信長のぶなが」（原作げんさくは山岡やまおか荘八しょうはちさん）ではこんなふうに描えがかれています。背後はいごの山やまから狙ねらってますねえ。

講談社こうだんしゃ漫画まんが文庫ぶんこ「織田おだ信長のぶなが」3巻かん

8087 織田おだ信長のぶなが [横山よこやま光輝みつてる, 他た] 描えがき下おろし

描えがき下おろし [1985年ねん〜]

山岡やまおか荘八しょうはちの小説しょうせつを漫画まんが化かした作品さくひん。尾張おわりから出でて、戦国せんごく時代じだい終焉しゅうえんの基もとを作つくった時代じだいの寵児ちょうじ・織田おだ信長のぶながの破天荒はてんこうな人生じんせいを描えがく。

山岡やまおか荘八しょうはちの小説しょうせつを漫画まんが化かした作品さくひん。尾張おわりから出でて、戦国せんごく時代じだい終焉しゅうえんの基もとを作つくった時代じだいの寵児ちょうじ・織田おだ信長のぶながの破天荒はてんこうな人生じんせいを描えがく。

でもこれも鎌倉かまくら幕府ばくふの成立せいりつ年ねん同様どうよう、現在げんざいは否定ひていされてるんです。
（あくまで有力ゆうりょくな説せつが変かわったというだけで、まだ謎なぞは謎なぞのままなんですけどね）

有力ゆうりょくな学説がくせつが変更へんこうになれば、描えがかれるマンガの内容ないようも変かわります。
かつては崖がけを駆かけ下おりた信長のぶながも、いまは「桶おけ狭間はざま山さん」という小高こだかい丘おかの上うえに陣じんをはった義元よしもとに正面しょうめんから攻撃こうげきを仕掛しかけています。しかも雨あめではなく雹（ひょう）が降ふってます。

今日きょうはそんな新あたらしい「桶おけ狭間はざまの戦たたかい」を描えがいた作品さくひんを紹介しょうかいします。

ひとつ目めは宮下みやした英樹ひでき先生せんせいの「センゴク」のスピンオフ作品さくひんでもある「センゴク外伝がいでん 桶おけ狭間はざま戦記せんき」です。
「センゴク」本編ほんぺんは信長のぶながの美濃みの攻ぜめからはじまるので、プロローグ的てきな位置いちづけの作品さくひんです。この作品さくひんでは今川いまがわ義元よしもとが主役しゅやくの扱あつかいです。

「センゴク外伝がいでん 桶おけ狭間はざま戦記せんき」5巻かん

信長のぶながの軍勢ぐんぜいが「桶おけ狭間はざま山さん」に攻せめ上のぼってくる様子ようすが描えがかれています。

「センゴク外伝がいでん 桶おけ狭間はざま戦記せんき」5巻かん

32829 センゴク外伝がいでん 桶おけ狭間はざま戦記せんき [宮下みやした英樹ひでき] 連載れんさい終了しゅうりょう

別冊べっさつヤングマガジン [2007年ねん〜2010年ねん]

今川いまがわ義元よしもとが今川いまがわ家かを嗣つぐところから始はじまる。今川いまがわ義元よしもとの師しとしての太ふと原はら崇たかし孚まこと雪ゆき斎ときが若わかき日ひの今川いまがわ義元よしもとを「戦国せんごく大名だいみょう」として育そだてていく。若わかき日ひの今川いまがわ義元よしもとと織田おだ信長のぶながを軸じくに話はなしが進行しんこうする。戦国せんごく時代じだいを「小しょう氷河期ひょうがきによる米べい不足ふそくに起因きいんする」という視点してんと今川いまがわ義元よしもと再さい評価ひょうかという視点してんで桶おけ狭間はざまの戦たたかいまでの東海とうかい地方ちほうを描えがく。

今川いまがわ義元よしもとが今川いまがわ家かを嗣つぐところから始はじまる。今川いまがわ義元よしもとの師しとしての太ふと原はら崇たかし孚まこと雪ゆき斎ときが若わかき日ひの今川いまがわ義元よしもとを「戦国せんごく大名だいみょう」として育そだてていく。若わかき日ひの今川いまがわ義元よしもとと織田おだ信長のぶながを軸じくに話はなしが進すすむ……

もうひとつは、かわのいちろう先生せんせいの「信長のぶなが戦記せんき」です。
これが今川いまがわ義元よしもとです。この作品さくひんの義元よしもとも信長のぶながが畏怖いふするようなすごい戦国せんごく大名だいみょうとして描えがかれていて、お歯黒はぐろはありません。
（蹴鞠けまりのシーンはありましたが、「なにやってもすごい」という描えがかれ方かたでした）

「信長のぶなが戦記せんき」1巻かん

両りょう軍ぐんの布陣ふじん図ずも今川いまがわ勢ぜいが圧倒的あっとうてき優位ゆういに立たっていることが強調きょうちょうされるように描えがかれています。

「信長のぶなが戦記せんき」1巻かん

35943 信長のぶなが戦記せんき [かわのいちろう] 連載れんさい終了しゅうりょう

コミック乱らん [2009年ねん〜2012年ねん]

「信長のぶなが公こう記き」をベースにして、最新さいしんの学説がくせつ・最新さいしんの解釈かいしゃくで描えがいた織田おだ信長のぶながの伝記でんきコミック。桶おけ狭間はざま合戦かっせん、美濃みの攻略こうりゃく、神かみ箆へら口こう合戦かっせん、姉川あねがわの合戦かっせんまでが描えがかれた。

「信長のぶなが公こう記き」をベースにして、最新さいしんの学説がくせつ・最新さいしんの解釈かいしゃくで描えがいた織田おだ信長のぶながの伝記でんきコミック。桶おけ狭間はざま合戦かっせん、美濃みの攻略こうりゃく、神かみ箆へら口こう合戦かっせん、姉川あねがわの合戦かっせんまでが描えがかれた。

ちなみに「信長のぶなが協奏曲きょうそうきょく」では「桶おけ狭間はざまの戦たたかい」がほとんど描えがかれてないのですが（今川いまがわ義元よしもとは登場とうじょうすらしない）、山上さんじょうから駆かけ下おりる描写びょうしゃがありました。

「信長のぶなが協奏曲きょうそうきょく」3巻かん

32775 信長のぶなが協奏曲きょうそうきょく [石井いしいあゆみ] 連載れんさい中ちゅう

ゲッサン(月刊げっかん少年しょうねんサンデー) [2009年ねん5月がつ〜]

勉強べんきょうが苦手にがてな高校生こうこうせいのサブローは、ひょんなことから戦国せんごく時代じだい、1549年ねん(天文てんもん18年ねん)にタイムスリップしてしまい、そこで出会であった本物ほんものの織田おだ信長のぶながに、病弱びょうじゃくな自分じぶんの代かわりに信長のぶながとして生いきてくれと頼たのまれ、信長のぶながとして生いきていくこととなる。

勉強べんきょうが苦手にがてな高校生こうこうせいのサブローは、ひょんなことから戦国せんごく時代じだい、1549年ねん(天文てんもん18年ねん)にタイムスリップしてしまい、そこで出会であった本物ほんものの織田おだ信長のぶながに、病弱びょうじゃくな自分じぶんの代かわり……

多おおくの研究けんきゅう者しゃの方々かたがたのおかげで少すこしずつ解明かいめいされていますが、歴史れきしにはいまだにあいまいな点てんも多おおいです。
ですので、これを取とり上あげてどれが正ただしくて、どれが正ただしくないとはいえませんし、しょせんマンガの世界せかいなのですから細こまかな部分ぶぶんを指摘してきするよりも、フィクションとしてマンガを楽たのしめばいいと思おもいます。

ただこうして織田おだ信長のぶながという同おなじ人物じんぶつを取とり上あげたマンガを読よみ比くらべてみるのもおもしろいと思おもいますし、教科書きょうかしょの内容ないようが変かわってもその変更へんこう点てんを知しることができないぼくたち大人おとなにとって、最新さいしんの学説がくせつを踏ふまえた歴史れきしマンガを読よむというのはかなりオススメできる復習ふくしゅう法ほうです。

それにこういうのは飲のみ会かいで披露ひろうする小しょうネタにもいいですしね。