中学ちゅうがく時代じだいまで、私わたしは共学きょうがくで義務ぎむ教育きょういくを受うけてきた。それは3歳さい年上としうえの兄あにもだった。

兄あには理数りすう系けいに強つよい男子校だんしこうへ進学しんがく。理数りすう系けいの科目かもくが強つよいからと、男子校だんしこうへの進学しんがくが確定かくていした兄あに。確たしかに女子じょしのイメージは少すくないので、兄あにのポテンシャルが羨うらやましくなる。

一方いっぽうの私わたしは、唯一ゆいいつの得意とくい科目かもくが英語えいご。こちらは男子だんしより女子じょしの方ほうがイメージが多おおいのかもしれない。そして高校こうこう受験じゅけんの時ときは、悩なやんでいた段階だんかいで選択肢せんたくしに女子じょし校こうしか該当がいとうしなかった。共学きょうがくに進学しんがくしたかったのは心しんのどこかで思おもっていたけれど、自分じぶんの学力がくりょくでは進学しんがく後ごに上手うまくバランスを取とれるかどうかを踏ふまえた決断けつだんとなった。

高校こうこうから女子じょし校こうに進学しんがくし、カルチャーショックを受うけることが多おおかった

初はじめての女子じょし校こう。ドラマやアニメで観みると少すこし怖こわいイメージがあって不安ふあんが大おおきかった。それはクラスの雰囲気ふんいきや協調きょうちょう性せいによって、構築こうちくされる信頼しんらい関係かんけい次第しだいで変かわっていく。

それに加くわえて先生せんせい方かたのサポートが手厚てあつい私立しりつ高校こうこう。少すこしずつ周まわりに頼たよっていきながら成長せいちょうできれば、青春せいしゅんを謳歌おうかすることが実現じつげん出来できる。

別べつ学校がっこうに進学しんがくして、カルチャーショックを受うけることが多おおかった。先生せんせい方かたへの話はなし方かたや体育たいいくの着替きがえの時とき、学がく食しょくでの人気にんきメニュー……。私わたしの在籍ざいせきしていたコースは英語えいごに特とく化かしていることもあり、常つねに新鮮しんせんな空気くうきを味あじわうことができた。

ここで気付きづいたのは、自分じぶんが臆病おくびょうになりすぎていたということ。今いまでは1歩ほ踏ふみ出だす勇気ゆうきが、別べつ学がくへの進学しんがくなのだと思おもえる。あの時ときがあるから今いまがあるんだ。

別べつ学がくでも共学きょうがくでも恋愛れんあいの話はなしは必かならず話題わだいに出でるだろう。もし私わたしが共きょう学校がっこうへ進学しんがくしていたらと想像そうぞうしてもしっくりこない。恋愛れんあいの話はなしもきっと、付ついて行いけなかったと思おもう。その点てん、別べつ学がくだからこそ未来みらいで出会であう人ひとへのアプローチ手段しゅだんのヒントが見みつかって、勉強べんきょうになることが増ふえた。

高こう2の時とき、入はいっていた演劇えんげき部ぶで「彼氏かれしがいる女子高じょしこう生せい」の役やくをもらった

「え、彼氏かれしいるんだ。お付つき合あいしてどのくらいなの？」。「えー、1年ねんくらいかな。この前ぜんチュープリ撮とった」。彼氏かれしがいるという女子じょしのスマホを覗のぞき込こんでプリクラを見みながら、クラスメイトたちは大おおいに盛もり上あがっていた。

「え……？！もうチューしたの？チューするの何なん回かい目め？どんな感かんじ？」。彼氏かれしがいなくて良よかった、と心しんの底そこからそう思おもってしまった。プリクラには、甘あまい口付くちづけを交かわす男女だんじょの姿すがたが見受みうけられる。リアル充実じゅうじつは恋愛れんあいに限かぎるのか……？ 考かんがえると悲かなしくなるとわかっていながら、考かんがえてしまう。

その後ご、担任たんにんへと彼氏かれしの事ことが広ひろまって、他たクラスまで浸透しんとうしていた。本人ほんにんたちが幸しあわせなら青春せいしゅんを謳歌おうかしている証拠しょうこではないか。私わたしたち外野がいやは、2人ふたりを遠とおくから見守みまもっていよう。それもまた、青春せいしゅんを謳歌おうかしていることになるのだから。

「……今こん名前なまえを言いった人ひとは、次つぎの文化ぶんか祭さいに出演しゅつえんする人達ひとたちです」。それは演劇えんげき部ぶに入はいって2年ねん目めの夏なつだった。

先輩せんぱいから私わたしの名前なまえを呼よばれる日ひが来きた。配くばられた台本だいほんを見みると、10人にんいる女子高じょしこう生せいの1人ひとりを演えんじることになる内容ないようで、配役はいやくについては顧問こもんの先生せんせいからい渡いわたされた。そして、「あなたの役柄やくがらは彼氏かれしがいる女子高じょしこう生せいです。他ほかにも何なん人にんか同おなじ役柄やくがらはあるけれど、どんな彼氏かれしなのかを簡単かんたんにまとめておいてください。そして、あなたの役やくは劇げきの鍵かぎを握にぎっているから台詞せりふは飛とばさないようにね？」と顧問こもんの先生せんせいから忠告ちゅうこくも受うけた。

友達ともだちの限度げんどや基準きじゅんは人ひとそれぞれで、距離きょり感かんが難むずかしいから共学きょうがくに通かよいたい

問題もんだいは彼氏かれしがいる設定せっていで役やく作づくりをする上じょうで、重要じゅうよう視しするところはどこなのかに変かわった。そこでクラスメイトの事ことを考かんがえた。彼女かのじょのように、どんなデートをしていて、お互たがいの私服しふくについて抱いだく印象いんしょうは何なになのか。深ふかく掘ほり下さげて役やく作づくりするには、身近みぢかなところからヒントが見みつけられた。

「彼氏かれしかぁ……」。まるで想像そうぞうがつかない。その時とき好すきだったアイドルで性格せいかくと趣味しゅみを考かんがえていく。後あとで読よみ返かえすと何なんだかムズ痒かゆい。

自分じぶんの好このみは、小学生しょうがくせいの頃ころと随分ずいぶん変かわっていた。さわやか系けいを好このんでいた自分じぶんが、格闘技かくとうぎをやっているワイルド系けいを好このんでいる。好このみは年齢ねんれいを重かさねる毎ごとに変かわっていくものとよく聞ききながら育そだってきた側がわとしては、不思議ふしぎな感かんじがする。こんなにも好このみが変かわるのか。

共学きょうがくに進学しんがくしても好このみは自然しぜんと変かわる。クラスメイトとどんな話はなしをするんだろう。自分じぶんからは話はなしかける勇気ゆうきはないけれど、もし気きになる人ひとができたら眺ながめているだけでいいし、同おなじ空気くうきを吸すえていることが奇跡きせきなんじゃないかと思おもう。結むすばれる事ことは望のぞんでいない。

友達ともだちの限度げんどや基準きじゅんだって人ひとそれぞれ。距離きょり感かんは難むずかしいから先さきの読よめない展開てんかいという意味いみでは、共学きょうがくに通かよい直なおしたい。通かよい直なおせたら、自分じぶんから何なにか発信はっしんしていこうという気持きもちで演劇えんげき部ぶに入はいって、楽たのしく卒業そつぎょうして思おもい出でを作つくると決きめているのだから。