「廻まわり刻こくの勇者ゆうしゃ」主人公しゅじんこうの愚直ぐちょくなまでの姿すがたが愛あいおしくてたまらない！ 「パリピ孔明こうめい」の原作げんさく者しゃが新あらたな切きり口くちで描えがく“死しに戻もどり”成長せいちょう譚たん

文ぶん / 太田おおた祥さち暉あきら

「パリピ孔明こうめい」の原作げんさく者しゃが新あらたな切きり口くちで描えがく“死しに戻もどり”ファンタジー

あの諸しょ葛かずら亮あきら孔明こうめいが現代げんだいの渋谷しぶやに転生てんせいし、シンガーソングライターの少女しょうじょの夢ゆめを叶かなえるべく軍師ぐんしとしての才能さいのうを発揮はっきするマンガ「パリピ孔明こうめい」。アニメ化かや連続れんぞくドラマ化かもされ、原作げんさくを読よんでいなくともそのタイトルは聞きいたことがあるという人ひとは多おおいかもしれない。そんな「パリピ孔明こうめい」はマンガとして生うみ出だされた作品さくひんであるが、そもそも原作げんさく者しゃの四よん葉よう夕ゆうトがライトノベル作家さっかであることを皆みなさんはご存知ぞんちだろうか？

四葉よつばは「小説しょうせつ家かになろう」投稿とうこう作さくを対象たいしょうに行おこなわれる、ネット小説しょうせつ大賞たいしょうの第だい4回かいを受賞じゅしょうした「エリィ・ゴールデンと悪戯いたずらな転換てんかん」でデビュー。その後ごライトノベル作家さっかとして活動かつどうしながら、「パリピ孔明こうめい」でマンガの世界せかいにも進出しんしゅつ。そこからはライトノベル、マンガ原作げんさくの双方そうほうを手てがけている。

そんな四葉よつばの最新さいしん作さくは、勇者ゆうしゃとしての過酷かこくな運命うんめいを背負しょわされた少年しょうねんが「死しに戻もどり」をしながら、誰だれも死しなない未来みらいを掴つかみ取とるための成長せいちょう譚たん。異い世界せかい転生てんせい・転移てんいものではもはや定番ていばんとなった「死しに戻もどり」能力のうりょくを軸じくにしながら、新あらたな切きり口くちで描えがく少年しょうねんマンガらしい熱血ねっけつファンタジーだ（なお本ほん作さくは転生てんせいも転移てんいもしないので厳密げんみつには異い世界せかい転生てんせい・転移てんいものではないことをお伝つたえしておく）。

周囲しゅういの人ひとを救すくうため奔走ほんそうする、主人公しゅじんこうの愚直ぐちょくな姿すがたが愛あいおしくてたまらない！

さて、異い世界せかいファンタジーものにおける「死しに戻もどり」といえば、明確めいかくな理由りゆうが明あかされないまま主人公しゅじんこうが遭遇そうぐうし、なぜ自身じしんだけは死しんでもとある時点じてんに戻もどるのか、その謎なぞを探さぐっていく……というものが多おおい。

そこで本ほん作さくの主人公しゅじんこう・バルトを見みてみよう。バルトは、17歳さいになることで勇者ゆうしゃとしての能力のうりょくが覚醒かくせいする。しかし、17歳さいを迎むかえる0時じ直前ちょくぜん、自身じしんを守まもるためにに幼おさななじみたちは魔物まものに殺ころされてしまう。そして、その姿すがたを目まの当あたりにし、絶望ぜつぼうのあまり自刃じじんしたバルトは、3年ねん前まえに死しに戻もどってしまう……というところから、物語ものがたりはスタート。そのため、「死しに戻もどり」はあくまで勇者ゆうしゃとしての能力のうりょくの1つとなっており、主眼しゅがんは幼おさななじみたち仲間なかまを魔物まものから救すくうことにある。つまり、「死しに戻もどり」を活用かつようして敵てきに勝かつのではなく、来くるXデーに向むけて成長せいちょうして仲間なかまを救すくうことが本ほん作さくの軸じくなのだ。

そもそも異い世界せかいファンタジーの主人公しゅじんこうといえば、何なにかしらの強つよい力ちから（転生てんせいした際さいに女神めがみからチート級きゅうの能力のうりょくをもらうなど）を持もっていて、それを駆使くししながら冒険ぼうけんすることが多おおい。対たいして本ほん作さくは、17歳さいの誕生たんじょう日びを迎むかえないとバルトは勇者ゆうしゃの力ちからを使つかえないし、なんなら幼おさななじみのサリアにすら負まけてしまう（17歳さいになるまでに3000連敗れんぱいするほど）ほど無力むりょく。加くわえて勇者ゆうしゃとしてのプレッシャーもあったため、死しに戻もどってからは勇者ゆうしゃの力ちからだけに頼たよらず、とにかく力ちからを付つけて、周囲しゅういの人ひとを救すくおうと奔走ほんそうしていくのだ。その愚直ぐちょくなまでの思おもいが愛あいおしくてたまらない！

騎士きし団だんに入はいって。さらには剣聖けんせいとまで謳うたわれる強つよさの男おとこ・ゼノンの近ちかくにいるようになって。それからも直向ひたむきにバルトは鍛錬たんれんを重かさねていく。すべては幼おさななじみたちを救すくうために。

新しん基軸きじくのストーリー、ストレートで熱あついファンタジーアクション

ただ、敵てきもすぐに倒たおされる存在そんざいではない。本来ほんらいの歴史れきしであれば剣聖けんせいも殺ころされ、騎士きし団だんも壊滅かいめつ状態じょうたいにさせられるほど強大きょうだいな力ちからを持もっている。特とくに魔王まおう軍ぐんの第だい六ろく軍団ぐんだん長ちょう・サディストスは強大きょうだいな力ちからを持もって、バルトの前まえに立たち塞ふさがる。17歳さいを迎むかえる直前ちょくぜん、またもサリアや幼おさななじみたちを失うしなってしまったバルトは、このときも自刃じじんして「死しに戻もどり」能力のうりょくを行使こうし。3年ねん前まえに戻もどり、彼かれを殺ころして、仲間なかまたちを救すくうことを誓ちかう。

──と、ここまで見みてきたように、本ほん作さくは勇者ゆうしゃが魔王まおうを倒たおすお話はなしであること、勇者ゆうしゃにはチート級きゅうの能力のうりょくが備そなわっていること、「死しに戻もどり」能力のうりょくを使つかうことなど、異い世界せかいファンタジーものの流ながれを汲くんだ基礎きそ設定せっていではあるものの、ストーリーの流ながれは新しん基軸きじく。覚醒かくせいすれば魔物まものにも対抗たいこうできる力ちからを持もつ主人公しゅじんこうが、仲間なかまを救すくうために「死しに戻もどり」を選えらび、自みずからを鍛きたえ上あげ、敵てきを倒たおす。ストレートで熱あついファンタジーアクションなのだ。そんな物語ものがたりに滾たぎらない人ひとはいるだろうか。いや、いない！

思おもい返かえせば、四葉よつばは「パリピ孔明こうめい」でも諸しょ葛かずら亮あきら孔明こうめいが現代げんだいに転移てんいして軍師ぐんしとして才能さいのうを発揮はっきするという、異い世界せかいものの流ながれを汲くみつつも新あらたな切きり口くちを提示ていじし人気にんきを集あつめた作家さっか。本ほん作さく「廻まわり刻こくの勇者ゆうしゃ」でもその才能さいのうが発揮はっきされることは間違まちがいない!?