アジアのコンテンツビジネスイベント「2022 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ」が、去さる11月3日にちから13日にちまで台湾たいわん・台北たいぺいの松山まつやま文ぶん創そう園その区くなどで開催かいさいされた。文化ぶんか部ぶ（※）傘下さんかの行政ぎょうせい法人ほうじん・台湾たいわんクリエイティブコンテンツエージェンシー（略称りゃくしょうTAICCA）が主催しゅさいするこのイベントは、台湾たいわん文化ぶんかコンテンツのPRや、国内外こくないがい企業きぎょうとの取引とりひきの場ばであり、今年ことしで開催かいさい3年ねん目め。マンガやアニメ、ドラマ、映画えいがなど台湾たいわん産さんポップカルチャーの数々かずかずが海外かいがいへと羽はばたく場ばとなっている。

コミックナタリー編集へんしゅう部ぶは開催かいさい地ちの台北たいぺいへ飛とび、今年ことしのTCCFの模様もようと、台湾たいわん産さんマンガの流行りゅうこうやクリエイターの現状げんじょうを取材しゅざい。「台湾たいわんでの人気にんきジャンルとクリエイターの特徴とくちょう」「TAICCAのマンガ支援しえん施策しさく」「メディアミックスの可能かのう性せいを秘ひめる台湾たいわんの人気にんきマンガ」の3つの柱はしらで紹介しょうかいしていく。海外かいがい旅行りょこう先さきとしても親したしみ深ふかい台湾たいわんに、マンガを通つうじて触ふれてみよう。

※台湾たいわんの行政ぎょうせい院いんに所属しょぞくする省庁しょうちょうの1つ。日本にっぽんの文部もんぶ科学かがく省しょうのような役割やくわりを担になっている。

取材しゅざい・文ぶん / 佐藤さとう希のぞみ

台湾たいわんではどんなマンガが人気にんき？
ジャンルとクリエイターの特徴とくちょう

高たかい画が力りょくと作家さっかの思おもいを反映はんえいした濃密のうみつな世界せかい観かん、台湾たいわんマンガの特徴とくちょうをピックアップ

台湾たいわんのマンガ家かの大おおきな特徴とくちょうは高たかい画が力りょく。近年きんねん日本にっぽんでは阮光民みん（ルアン・グアンミン）「用もちい九きゅう商店しょうてん」、高こう妍（ガオ・イェン）「緑みどりの歌うた」など台湾たいわん出身しゅっしんのマンガ家かによる作品さくひんが日本にっぽんでも注目ちゅうもくされているが、いずれも人物じんぶつをはじめ背景はいけいに至いたるまで高たかい描写びょうしゃ力りょくが光ひかる作品さくひんだ。今回こんかいのTCCFでは、メディアミックスの可能かのう性せいを秘ひめたマンガを紹介しょうかいする「IP in Focus:Taiwan Comics」も開催かいさいされ、ラインナップに並ならんだ張ちょう季き雅みやび（チャン・ジア）による歴史れきしマンガ「異人いじん茶ちゃ跡あと」は繊細せんさいな描えがき込こみで参加さんか者しゃの目めを引ひいた。台湾たいわんマンガは、我々われわれ日本人にっぽんじんに馴染なじみ深ふかい白黒しろくろで描えがかれるスタイルのほか、フランスのバンドデシネやアメリカンコミックのようなグラフィックノベルなど、多彩たさいな画風がふうも持もち味あじとなっている。グラフィックノベルの分野ぶんやでは、李り尚しょう喬たかし（リ・シャンチャオ）原作げんさく、葉は長ちょう青あお（イエ・エバーグリーン）作画さくがによる「蜉蝣かげろう之の島しま」などが近年きんねん注目ちゅうもくを集あつめた。

「蜉蝣之島」より。 ©Slowork Publishing & Studio Reals

また台湾たいわんでは、シナリオから作画さくがの仕上しあげまで、マンガ作づくりをすべて1人ひとりで担当たんとうするマンガ家かが少すくなくない。近年きんねんデジタル作画さくがに移行いこうする作家さっかが増ふえていることも要因よういんとして挙あげられるが、TAICCA担当たんとう者しゃによると「作画さくがアシスタントを担当たんとうできる人員じんいんがいない、などマンパワー不足ふそくにより、1人ひとりで描えがかざるを得えないという状況じょうきょうも事実じじつとしてある」とのこと。しかしい換いかえれば、寡作かさくではあるものの、作品さくひんの隅々すみずみまで作者さくしゃの手てが入はいった、濃密のうみつな世界せかい観かんの作品さくひんも生うまれやすい環境かんきょうでもある。

台湾たいわんはアニメもハイクオリティ！
アニメの未来みらいを議論ぎろんする「PROJECT TO SCREEN：ANIMATION」

今年ことしのTCCFではアニメ作品さくひんの出資しゅっしや制作せいさくパートナーを募つのる提案ていあん会かい「PROJECT TO SCREEN：ANIMATION」も開催かいさい。「白雪姫しらゆきひめ」を土台どだいに紡つむがれる近きん未来みらいバトルアクション、仮想かそう空間くうかんに迷まよい込こんだ子供こどもたちの成長せいちょうを描えがく教育きょういくアニメや、メタバースの世界せかいを舞台ぶたいにAIとの戦たたかいを描えがくSFなどのほか、タピオカミルクティーなど台湾たいわんの夜市やじで有名ゆうめいなグルメの数々かずかずをキャラクター化かしたものまで、多彩たさいな9作品さくひんがラインナップされた。各かく作品さくひんの監督かんとくやプロデューサーが登壇とうだんし、PR映像えいぞうとともにあらすじや参加さんかスタッフ、受賞じゅしょう歴れきなどをアピール。それぞれ作品さくひんのジャンルはまったく異ことなるものの、「舞台ぶたいが台湾たいわんである」「台湾たいわんの文化ぶんかを劇げき中ちゅうで描えがく」など、地元じもとの要素ようそを積極せっきょく的てきに取とり入いれて表現ひょうげんしようとしている点てんが印象いんしょう的てきだった。またラインナップの中なかにはマンガを原作げんさくとした作品さくひんも多おおく、TAICCAによると今後こんご台湾たいわんでは日本にっぽん同様どうようにマンガを原作げんさくとしたメディアミックスに力ちからを入いれていきたいという。

提案ていあん会かいには台湾たいわんのみならず各国かっこくのバイヤーやアニメ制作せいさく会社かいしゃの関係かんけい者しゃが参加さんか。参加さんか者しゃとの質疑しつぎ応答おうとうでは、ターゲット層そうや、制作せいさくスパン、アニメ以外いがいにゲームやグッズ化かなどのビジネス上じょうの展開てんかいを問とうものが続々ぞくぞくと寄よせられた。中なかには、「今こん主人公しゅじんこうとして描えがかれているキャラクターではなく、別べつの人物じんぶつの視点してんで描えがくことは考かんがえなかったのか？」「日本にっぽんのアニメですでに一般いっぱん化かしたモチーフを台湾たいわん版ばんに焼やき直なおししているだけでは？」といった、作品さくひんの中核ちゅうかくまで深ふかく踏ふみ込こんだ意見いけんも。スタッフ・参加さんか者しゃが一緒いっしょになり、各かく作品さくひんの未来みらいについて約やく2時じ間あいだにわたる濃こい意見いけん交換こうかんが行おこなわれた。なお今回こんかいラインナップされた作品さくひんには台湾たいわんを飛とび出だして世界せかいでの公開こうかいを目指めざすものも多おおく、この日ひの議論ぎろんを経へてブラッシュアップした“名作めいさく”が、日本にっぽんで楽たのしめる日ひが近ちかい将来しょうらいに来くるのかもしれない。

公的こうてき機関きかんがマンガを宣伝せんでん、TAICCAのマンガ支援しえん施策しさくを紹介しょうかい

TCCFを主催しゅさいするTAICCAは、台湾たいわんで生うまれた文化ぶんかコンテンツの産業さんぎょう化かと国際こくさい化かの促進そくしんを目指めざして、2019年ねんに創設そうせつ。ドラマや映画えいが、マンガ、アニメ、キャラクターコンテンツなど台湾たいわん発はつのあらゆる文化ぶんか的てきコンテンツを支援しえんし、海外かいがい発信はっしんとビジネスの活性かっせい化かのため活動かつどうしている。マンガにスポットを当あてると、TAICCAは作品さくひんそのものの海外かいがい展開てんかい事業じぎょうのほか、クリエイターの支援しえんも行おこなっている。今回こんかいはTAICCAによるマンガ支援しえん施策しさくの一部いちぶを紹介しょうかいしていく。

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Webマンガサイトの運営うんえいとアシスタントの養成ようせいで台湾たいわんの“マンガ力りょく”を高たかめる

台湾たいわんマンガのトレンドがわかるCCC創作そうさく集しゅう

元もとは季刊きかんのマンガ誌しとして創刊そうかんされ、2020年ねんにオリジナルマンガを集あつめたWebサイトとしてリニューアル。アクション、恋愛れんあい、コメディ、ファンタジーと、枠わくにこだわらない豊富ほうふな連載れんさいラインナップが特徴とくちょうだ。CCC創作そうさく集しゅうオリジナルマンガのほか、出版しゅっぱん社しゃと連携れんけいして台湾たいわんオリジナルマンガも集あつめ、台湾たいわんマンガに特とく化かしたプラットフォームとして機能きのうしている。なお作家さっかインタビューや現地げんちで最もっとも権威けんいのあるマンガ賞しょう・金きむ漫賞の特集とくしゅうなど、台湾たいわんマンガの旬しゅんを感かんじ取とることのできる読よみ物ものも公開こうかいされているので、ぜひチェックしてみよう。

CCC創作そうさく集しゅう

一いち棟むねまるごとマンガに特とく化かした台湾たいわん漫画まんが基地きち

「マンガの未来みらいを育はぐくむ」という目的もくてきで、台湾たいわんの交通こうつうの要よう・台北たいぺい駅えきよりほど近ちかい繁華はんか街がいに2019年ねん1月がつにオープン。台湾たいわんマンガを中心ちゅうしんに約やく2500点てんを揃そろえる書店しょてんや、テーマ展てん・原画げんが展てん会場かいじょうとして使用しようされる展示てんじスペース、作画さくが用ようタブレット端末たんまつを備そなえたクリエイタールームを兼かね備そなえた、“マンガのための”ビルとなっている。マンガ家かを目指めざす利用りよう者しゃのため、作画さくがのコツやシナリオの練ねり方かたなどを指導しどうするワークショップも盛さかん。クリエイタールームは広ひろく一般いっぱんに解放かいほうされており、作画さくがアシスタントの養成ようせいもここで行おこなわれている。

台湾たいわん漫画まんが基地きち | 公式こうしきサイト

コミックナタリーでは台湾たいわん漫画まんが基地きちを取材しゅざいしたコラムを掲載けいさい！

台湾たいわんマンガの流行りゅうこう発信はっしん地ち！台湾たいわん漫画まんが基地きちに潜入せんにゅう | コミックナタリー

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海外かいがいに羽はばたく台湾たいわんマンガ、KADOKAWAとのコラボも

東京とうきょうで美味おいしい台湾たいわんドリンクと上質じょうしつなマンガを、台湾たいわん漫画まんが喫茶きっさ

台湾たいわんのドリンクとマンガを一遍いっぺんに堪能たんのうできるカフェスペースで、2022年ねん7月がつから8月がつにかけて、東京とうきょう・コレド室町むろまちテラス内ないの誠まこと品ひん生活せいかつ日本橋にほんばしに期間きかん限定げんていでオープン。厳選げんせんされた台湾たいわんオリジナルマンガ35作品さくひんが並ならび、「緑みどりの歌うた」作者さくしゃ・高こう妍のトークイベントや、出版しゅっぱん社しゃ向むけの交流こうりゅうイベントも実施じっしされた。

日本語にほんご訳やくされた台湾たいわんマンガが読よめる！Taiwan Comic City

TAICCA厳選げんせんによる台湾たいわんの人気にんきマンガを集あつめ、多言たげん語ごに翻訳ほんやくして紹介しょうかいするWebマンガサービス。翻訳ほんやくは日本語にほんごのほか、英語えいご、フランス語ふらんすごにも対応たいおうしており、現在げんざい50作品さくひんを読よむことができる。ラインナップは今後こんごも拡大かくだいされる予定よていで、一部いちぶ作品さくひんはボイスコミック化かもされているため、合あわせて楽たのしんでみよう。

Taiwan Comic City

ComicWalkerで特集とくしゅうを展開てんかい、KADOKAWAとの協業きょうぎょう

KADOKAWAのWebマンガサイトComicWalkerにて、台湾たいわんマンガを集あつめた特集とくしゅうページ「台湾たいわんマンガはじめました！」を公開こうかい中ちゅう。現在げんざい4作品さくひんの日本語にほんご訳やく版ばんが掲載けいさいされている。2022年ねん7月がつから8月がつにかけては、投票とうひょう企画きかく「＃続つづきが気きになる台湾たいわん漫画まんが大賞たいしょう」がSNS上じょうで実施じっしされ、大賞たいしょうを獲得かくとくした楊基政せい「僕ぼくの声こえを聞きいてほしい!!」の日本語にほんご訳やく版ばんが、今冬こんとうComicWalkerで掲載けいさい予定よていだ。