永瀬正敏らがツァイ・ミンリャン「あなたの顔」へ賛辞、公開日は4月25日に決定
2020年3月24日 17:00
3 映画ナタリー編集部
ツァイ・ミンリャンが監督したドキュメンタリー「あなたの顔」の公開日が4月25日に決定。メイキング写真と本作を鑑賞した著名人のコメントが到着した。
俳優リー・カンションと台湾に暮らす市井の人々の顔を、極端なクロースアップで捉えた本作。洗練されたライティングによって顔に刻まれたしわを細部まで映し出し、彼らが生きてきた人生を見つめる。
本作が最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した台北金馬奨で審査員を務めていた永瀬正敏は「とてつもなく、シンプルなのにそれぞれの過ごしてきた時間・環境・人となりがとてつもなく、強烈に、伝わってくる。世界中でツァイ・ミンリャン監督にしか作れなかった作品」と絶賛。またマンガ家・コラムニストの辛酸なめ子は「人の顔をじっと凝視するというタブーに挑戦するのは新鮮な体験でした。舌ペロペロおばさん、ハーモニカおじさんなど個性的な顔から目が離せません」と述べ、演劇作家の岡田利規(チェルフィッチュ)は「歳月を経た顔の豊かさ美しさをまざまざと見せてくれる、アンチ・アンチエイジング映画」とコメントを寄せている。
坂本龍一が音楽を担当した「あなたの顔」は東京のシアター・イメージフォーラムほか全国で順次公開される。
※「あなたの顔」は、新型コロナウイルスによる感染症の拡大を受けて公開延期となりました。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
永瀬正敏 コメント
とてつもなく、シンプルなのに
それぞれの過ごしてきた時間・環境・人となりが
とてつもなく、強烈に、伝わってくる。
世界中でツァイ・ミンリャン監督にしか作れなかった作品。
藤代冥砂(写真家・小説家)コメント
この映画を見なければ、私は他人の顔というものを知らずにいただろう。
こんなに動く顔をじっと見つめたことはなかった。
造形、皺、質感。それらは一時も停滞せずに、まるで動く地図のようだった。
人は誰もが各々の地図を持っている。
複雑な地図、単純な地図、私たちは常に地図を書き換えながら、生きている。
辛酸なめ子 コメント
人の顔をじっと凝視するというタブーに挑戦するのは新鮮な体験でした。
舌ペロペロおばさん、ハーモニカおじさんなど個性的な顔から目が離せません。
業や人生や性質が露わになる顔を人に見せるのが怖くなってきました。
U-zhaan(タブラ奏者)コメント
最初は「いったい僕は何を鑑賞しているんだろうか」という気分になったが、冒頭に登場する女性がふいに笑みを浮かべ、過剰さの全くない音楽が絶妙なタイミングで鳴り出したあたりで一気に画面に引き込まれ、見終わってみたらとてつもない非日常の感覚がなぜか残る不思議な作品だった。
中村佑子(映画監督)コメント
ラストの建築空間のロングショットで、ようやく深く息を吸うことができた。建物に光が射したり翳ったりする様子は美しく、浄化を感じたし、そこには「私」の感情が入る余地があった。逆にいえばそれまでの時間、他者の顔を見続けた「私」が、どれだけ精神を張りつめていたかということだ。人間の顔とはなんと多くの意味を隠しもち、こちらの想像を超越したものなのか。ユダヤ人としてドイツ軍に収容され、親族のほとんどを亡くした経験をもつ哲学者レヴィナスは、人間の顔こそが「汝殺すなかれ」と、他者に倫理を要請してくると言った。他に開かれてある「顔」が有している、深い不可触性に打たれた。あいかわらずツァイ・ミンリャンは人を戦慄させる監督だ。
岡田利規 コメント
人の顔に現れている歴史の厚み、情報の密度の濃さは、こんなにも長い時間、味わっていられるのか!
できそうでできない、未知の体験を与えてくれる映画。
歳月を経た顔の豊かさ美しさをまざまざと見せてくれる、アンチ・アンチエイジング映画。
東直子(歌人・作家)コメント
ひたすら続く顔のみの映像と向かい合いながら、何を見てるのか分からなくなる。自分の顔を眺めているような、自分があちら側にいて見られているような錯乱がおきる。これは、問いなのだろう。監督から一三人への。一三人から私たちへの。私から私への。とにかく、初めての映像体験だった。
遠山純生(映画評論家)コメント
風化した石を思わせる匿名の顔たちに堆積した時間。その顔たちが「カット」の声がかからない決まり悪さに耐えつつ、キャメラの無遠慮な視線に反応したりしなかったりする時間。顔をめぐるさまざまな時差を包み込むのは、最後に映し出される台北中山堂だ。自身の人生の時間が畳み込まれているというこの建物もまた、蔡明亮は「顔」として撮る。
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