「土どを喰くらう十じゅう二にヵ月かげつ」松まつたか子こが沢田さわだ研二けんじの演技えんぎ語かたる、土井どい善晴よしはるは“初対面しょたいめん”を回想かいそう

「土どを喰くらう十じゅう二にヵ月かげつ」の初日しょにち舞台ぶたい挨拶あいさつが本日ほんじつ11月がつ11日にちに東京とうきょう・新宿しんじゅくピカデリーで行おこなわれ、キャストの松まつたか子こ、料理りょうりを担当たんとうした土井どい善晴よしはる、監督かんとくの中江なかえ裕司ゆうじが登壇とうだんした。

水上みずかみ勉つとむによるエッセイ「土どを喰くう日々ひび―わが精進しょうじん十じゅう二にヵ月かげつ―」を原案げんあんにした本ほん作さく。人里ひとざと離はなれた長野ながのの山荘さんそうで実みやきのこを採とり、畑はたけで育そだてた野菜やさいを料理りょうりして、季き節ぶしの移うつろいを感かんじながら原稿げんこうをしたためる作家さっかツトムの姿すがたが描えがかれる。沢田さわだ研二けんじがツトム、松まつがツトムの担当たんとう編集へんしゅう者しゃであり25歳さい下かの恋人こいびと・真知子まちこを演えんじた。

まず中江なかえは「始はじめたときのことも撮影さつえい中ちゅうのことも覚おぼえていません（笑）。その日ひその日ひでやっていって、脚本きゃくほんを書かき始はじめてから4年ねんくらい。やっとここまでたどり着つきました」と安堵あんどの表情ひょうじょうを見みせる。松まつは「中江なかえ監督かんとくに声こえを掛かけていただいて、沢田さわださんとご一緒いっしょできて、土井どいさんの料理りょうりも付ついてくる。私わたしは季き節ぶしが変かわるたびに山やまに行いっておいしいものを食たべる。こんな素晴すばらしい仕事しごとは近年きんねんなかったと思おもうくらい、いいお仕事しごとをさせていただきました」と話はなし、撮影さつえい現場げんばを「静しずかで淡々たんたんとしていました。こだわりはあっても押おし付つけず、みんなで『これどう？』と持もち寄よるような素敵すてきな場所ばしょでした」と振ふり返かえった。

初はじめて映画えいがでの料理りょうり担当たんとうを務つとめた土井どいは「何なにを作つくろうかというより、お天道てんとうさん、時間じかん、人ひとといった“場ば”によって、自おのずから献立こんだては浮うかび上あがってくるものです。この時季じきはこれが合あうだろうというものをただ湯ゆがいたり焼やくだけ」とコメント。「『早はやよ芋いもを煮にえるようにしてくれ』と言いってもそれはできません」「人間にんげんの都合つごうだけではなく、そういった時間じかんもきちんと共有きょうゆうするというのが今回こんかいの映画えいが（のテーマ）。人間にんげんの勝手かってにはできないという当あたり前まえのことが今いまは忘わすれられがちですよね」と語かたる。

料理りょうりシーンに関かんして中江なかえは「長野ながのの白馬はくば村むらで撮とったんですが、その辺あたりで採とって来きたものを土井どいさんに料理りょうりしていただきました。ただ土井どいさんは1回かいしか作つくらないんです。撮影さつえい側がわの都合つごうとして何なん回分かいぶんか撮とりたかったんですが、土井どいさん曰いわく『料理りょうりがおいしいのは1回かいだけでしょ』と。その通とおりだと思おもって、覚悟かくごを持もって撮どりました」と当時とうじを回想かいそう。また中江なかえが「沢田さわださんもほとんどワンテイクです。もちろんNGが出でれば何なん度どもやり直なおしてくれるんですが、やっぱり1回かい目めがいいんですよね。そして料理りょうりもすごくいい“役者やくしゃ”ですので、そこは土井どいさんに監督かんとくしていただいたような気持きもちです」とたたえると、土井どいは「お料理りょうりには流ながれがあります。物ものが用意よういされてないと滞とどこおりますから、あるべきところに醤油じょうゆがあり匙さじがあり杓子しゃくしがあるようにしました。ツトムさんにはそれを自然体しぜんたいで利用りようしてもらえるよう準備じゅんびしました」と意識いしきした点てんを述のべた。

沢田さわだの印象いんしょうを尋たずねられると、松まつは「さりげなく面白おもしろいお芝居しばいをやれる方かた。結果けっかとしてお芝居しばいが面白おもしろく見みえた、というのとはまた違ちがうんですよね」とその巧たくみさを称賛しょうさん。中江なかえは「普通ふつうは役やくの像ぞうがあって、役者やくしゃはそれに近付ちかづいていって演えんじることが多おおいと思おもいます。でも沢田さわださんは自分じぶんのほうに役やくを引ひき寄よせる。そして自分じぶんの中なかにある役やくを撮とればツトムになるよという感かんじで、ドキュメンタリーのような気持きもちで撮とっていきました」と述懐じゅっかいする。

「僕ぼくは沢田さわだ研二けんじさんとお会あいしたのかな？」と言いう土井どいは、「現場げんば初日しょにちの前まえに会食かいしょくをさせていただいたんですが、彼かれが沢田さわださんなのかツトムなのかわからなくて。ほとんどものもおっしゃらないので、僕ぼくも当あたり障さわりのないように振ふる舞まっていました。現場げんばに入はいっても沢田さわださんは休憩きゅうけい中ちゅうもずっとツトムで、ツトムとしか会あっていないなと思おもっていたんです。でも僕ぼくが撮影さつえいで最後さいごの役割やくわりを終おえて帰かえるときに、沢田さわださんが車くるまに乗のった僕ぼくを追おいかけて来きてくれました。『ありがとうございました』ときちっと言いっていただいて、そのときに初はじめて沢田さわだ研二けんじさんと会あったんじゃないかと思おもったんです」とエピソードを披露ひろうした。

「土どを喰くらう十じゅう二にヵ月かげつ」は全国ぜんこくで公開こうかい中ちゅう。