宇垣うがき美里みさと、小島こじま秀夫ひでお、森もり達也たつやらが映画えいが「関心かんしん領域りょういき」語かたる　こがけん「ひたすらに怖こわい」

第だい96回かいアカデミー賞しょうで国際こくさい長編ちょうへん映画えいが賞しょうと音響おんきょう賞しょうを受賞じゅしょうした映画えいが「関心かんしん領域りょういき」の見みどころを解説かいせつした特別とくべつ映像えいぞうがYouTubeで公開こうかい。本ほん作さくを鑑賞かんしょうした著名ちょめい人じんのコメントも到着とうちゃくした。

マーティン・エイミスの小説しょうせつを映画えいが化かした本ほん作さくは、アウシュヴィッツ強制きょうせい収容しゅうよう所しょそばの屋敷やしきに住すむ所長しょちょうルドルフ・フランツ・フェルディナント・ヘスとその家族かぞくの暮くらしを描えがく物語ものがたり。特別とくべつ映像えいぞうの中なかで監督かんとくのジョナサン・グレイザーは「庭にわの壁かべの反対はんたい側がわは強制きょうせい収容しゅうよう所しょなんだ。観客かんきゃくには、彼かれらに自分じぶんの姿すがたを重かさねて見みてもらいたい。彼かれらが望のぞむものは私わたしたちと変かわらない」と語かたっている。

フリーアナウンサーで俳優はいゆうの宇垣うがき美里みさとは「生活せいかつの合間あいまに漏もれ聞きこえる不穏ふおんな音おとの数々かずかずは、やがて私わたしたちの耳みみを支配しはいし、その平和へいわの歪いびつさを突つきつける。楽園らくえんに漂ただよう腐臭ふしゅうから目めを背そむけ淡々たんたんと暮くらす家族かぞくに、今いまの自分じぶんたちを重かさね、上映じょうえい後ごなかなか立たち上あがれなかった」と述のべ、芸人げいにんのこがけんは「収容しゅうよう所しょの中なかが映うつされないことも ただただ、家族かぞくの平穏へいおんな暮くらしが描えがかれていることも 整備せいびされた庭にわも 赤あかく染そまる夜空よぞらも ただ、ひたすらに怖こわい」とつづった。

またゲームクリエイターの小島こじま秀夫ひでおは「壁かべ越ごしに訴うったえてかけてくる音響おんきょうと、敢あえてなにも見みせないという拷問ごうもんで、観客かんきゃくの脳のう内ないからイメージを引ひき出だす。あなたの“関心かんしん領域りょういき”を試ためし、逆説ぎゃくせつ的てきに“ホロコースト”の風化ふうかをいまに問とう。なんという映画えいがだ」とコメント。映画えいが監督かんとくで作家さっかの森もり達也たつやは「かつてのルドルフ・ヘスの家いえはない。今いまは敷地しきちだけだ。妻つまと子供こどもたちをドイツから呼よび寄よせたヘスは、ここで仲なか睦むつまじく暮くらしていた。振ふり返かえって衝撃しょうげきを受うけた。すぐ傍はたには高たかい塀へいと焼却しょうきゃく炉ろの煙突えんとつ。煙けむりはここまで漂ただよってきたはずだ。その衝撃しょうげきが映画えいがになった。しかも時空じくうを超こえた。すごい映画えいがだ。それしか言葉ことばがない」と伝つたえた。そのほかの著名ちょめい人じんのコメントは下記かきの通とおり。

映画えいが「関心かんしん領域りょういき」は5月24日にちに東京とうきょう・新宿しんじゅくピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国ぜんこくで公開こうかい。

映画えいが「関心かんしん領域りょういき」特別とくべつ映像えいぞう

逢坂おうさか冬ふゆ馬ば（小説しょうせつ家か）コメント

映画えいがは強制きょうせい収容しゅうよう所しょ内部ないぶの虐殺ぎゃくさつではなく、その隣となりのホームドラマを映うつす。観客かんきゃくはその生活せいかつ感かんあふれるホームドラマにこそ恐怖きょうふするだろう。そこにいるのは虐殺ぎゃくさつ者しゃであり、略奪りゃくだつ者しゃであり、しかし、紛まぎれもなく自分じぶんたちと同おなじ人間にんげんだ。

東あずま浩ひろし紀きの（批評ひひょう家か）コメント

アウシュヴィッツは言葉ことばにできない。映像えいぞうにできない。多おおくの哲学てつがく者しゃがそう論ろんじてきた。その困難こんなんをこれほど見事みごとに逆手さかてに取とり、警鐘けいしょうに変かえた映画えいがをほかに知しらない。語かたられて目めに入はいらなければ、ひとはどんなことでも忘わすれることができるのだ。

宇垣うがき美里みさと（フリーアナウンサー / 俳優はいゆう）コメント

生活せいかつの合間あいまに漏もれ聞きこえる不穏ふおんな音おとの数々かずかずは、やがて私わたしたちの耳みみを支配しはいし、その平和へいわの歪いびつさを突つきつける。楽園らくえんに漂ただよう腐臭ふしゅうから目めを背そむけ淡々たんたんと暮くらす家族かぞくに、今いまの自分じぶんたちを重かさね、上映じょうえい後ごなかなか立たち上あがれなかった。

荻おぎ上じょうチキ（評論ひょうろん家か・ラジオパーソナリティ）コメント

壁かべの向むこうの声こえが聞きこえるか。
そのグロテスクさに目めを向むけられるか。
暗闇くらやみの先さきにある歴史れきしと現代げんだいを同時どうじに映うつす怪かい作さく。

久米くめ宏ひろし（フリーアナウンサー）コメント

高たかくて長ながい塀へいに沿そって建たつ住宅じゅうたく
陽ひ当あたりも良よく　庭にわも手入ていれが行いき届とどいている
妻つまも美うつくしく　子供こどもは可愛かわいくて元気げんきだ
耳みみを澄すますと　微かすかな重じゅう低音ていおんが聞きこえるような気きがする
細ほそい煙けむりが立たち上のぼるのが見みえたりする
家族かぞくは　そのような事ことを気きにする素振そぶりもない
（ほとんどのドイツ国民こくみんは皆みなこうであったのだ
塀へいの向むこうで起おきていた事ことは何なにも知しらなかった
高たかくて長ながい塀へい　今いまでもあちこちにあるのだ）

こがけん（芸人げいにん）コメント

怖こわい
収容しゅうよう所しょの中なかが映うつされないことも
ただただ、家族かぞくの平穏へいおんな暮くらしが描えがかれていることも
整備せいびされた庭にわも
赤あかく染そまる夜空よぞらも
ただ、ひたすらに怖こわい
ふいに差さし込こまれる
ブラックアウトの画面がめん
音おとだけの闇やみの中なかに忌いまわしい出来事できごとを想像そうぞうしてしまう
なんという体験たいけんだろう
まるで、僕ぼくらの関心かんしん領域りょういきを測はかられているかのようだ
思考しこう停止ていしで盲目もうもくになっている人間にんげんを逃のがさない
恐おそろしい映画えいがだ

小島こじま秀夫ひでお（ゲームクリエイター）コメント

ジョナサン・グレイザーはまたトンデモない映画えいがを時代じだいに放はなった。映画えいがとは“何なにかを知しるキッカケ”になるものだ。ところが、本ほん作さくはその真ま逆ぎゃくをいく。日常にちじょうの壁かべの向むこうに隠蔽いんぺいされた“ジェノサイド”には一切いっさい近ちかづかない。しかし、あの“民族みんぞく浄化じょうか”に関心かんしんがある観客かんきゃくには、向むこう側がわの“地獄じごく絵え”が鮮明せんめいにフラッシュバックする。壁かべ越ごしに訴うったえてかけてくる音響おんきょうと、敢あえてなにも見みせないという拷問ごうもんで、観客かんきゃくの脳のう内ないからイメージを引ひき出だす。あなたの“関心かんしん領域りょういき”を試ためし、逆説ぎゃくせつ的てきに“ホロコースト”の風化ふうかをいまに問とう。なんという映画えいがだ。

林はやし響ひびき太朗たろう（映像えいぞう監督かんとく / 写真しゃしん家か）コメント

人ひとという動物どうぶつを体感たいかんする映画えいが。目めで美うつくしさを感かんじ、背中せなかで悍ましさを観みる。幾何きか学がく的てきで人ひとの気配けはいを感かんじないアングルの美うつくしさとそこで繰くり広ひろげられる生いきる活動かつどう。不協和音ふきょうわおんと映像えいぞうのハーモニー。そしてどこまでも続つづいていくような漆黒しっこく。大おおきな物体ぶったいとなった見みえない恐怖きょうふが、私わたしの心しんの中なかに植うえ付つけられたような気きがします。

ピーター・バラカン（ブロードキャスター）コメント

ジェノサイドは現在げんざいも行おこなわれています。地理ちり的てきに離はなれたところでも、その情報じょうほうが瞬時しゅんじに届とどくこの時代じだいには皆みなの関心事かんしんじなので、何なんらかの行動こうどうを起おこさなければ我々われわれもヘス家かの人ひとたちを非難ひなんする立場たちばではありません。

舛添ますぞえ要一よういち（国際こくさい政治せいじ学者がくしゃ）コメント

楽たのしい家庭かてい生活せいかつを送おくる強制きょうせい収容しゅうよう所しょ所長しょちょうの家いえの向むこう側がわで行おこなわれているホロコースト、その残虐ざんぎゃく行為こういの写真しゃしんも映像えいぞうも映画えいがでは使つかわれていない。それが却かえって前代未聞ぜんだいみもんの人道じんどうへの罪つみを浮うきたせる。

マライ・メントライン（ドイツ公共こうきょう放送ほうそうプロデューサー）コメント

本ほん作さくで徹底的てっていてきに描えがかれるのは「正常せいじょう化かバイアスの恐おそろしさ・醜みにくさ」であり、それは過去かこのどのナチ映画えいがよりも精神せいしん的てきに地続じつづきなものとして、観客かんきゃくに迫せまる。人ひとはどれほど見みて見みぬふりをできるのか。どこかで行おこなわれている非人ひにん間あいだ的てき搾取さくしゅを前提ぜんていにしながら日々ひびの生活せいかつを営いとなむ我々われわれと「彼かれら」を分わかつ絶対ぜったい的てきポイントは存在そんざいするのか。これぞ本当ほんとうに現代げんだいが求もとめるホロコースト作品さくひんといえる。必見ひっけん。

森もり達也たつや（映画えいが監督かんとく / 作家さっか）コメント

かつてのルドルフ・ヘスの家いえはない。今いまは敷地しきちだけだ。妻つまと子供こどもたちをドイツから呼よび寄よせたヘスは、ここで仲なか睦むつまじく暮くらしていた。振ふり返かえって衝撃しょうげきを受うけた。すぐ傍はたには高たかい塀へいと焼却しょうきゃく炉ろの煙突えんとつ。煙けむりはここまで漂ただよってきたはずだ。
その衝撃しょうげきが映画えいがになった。しかも時空じくうを超こえた。すごい映画えいがだ。それしか言葉ことばがない。

山崎やまざきまどか（コラムニスト）コメント

主人公しゅじんこうの家族かぞくの目めには映うつらないもの、耳みみで聞きこえているはずなのに素通すどおりするもの。
描えがかれていないものに観客かんきゃくが想像そうぞう力りょくの触手しょくしゅを伸のばそうとするとき、
感傷かんしょうも冷笑れいしょうもしりぞけた先さきにある人間にんげん性せいが見みえてくる。
残酷ざんこくさが人ひとに与あたえるダメージも見みえてくる。

綿谷わたやエリナ（ラジオDJ / マルチリンガルタレント）コメント

ドイツでも話題わだいになった本ほん作さく、アウシュヴィッツを題材だいざいとした映画えいがとしては珍めずらしく加害かがい者しゃやその家族かぞくの日常にちじょう視点してんで描えがかれており、歴史れきしやあらゆる暴力ぼうりょくと向むき合あう新あたらしい形かたちがまたひとつ生うまれたように思おもいました。暴力ぼうりょく的てきな描写びょうしゃはなく、無音むおんならば、郊外こうがいにある庭付にわつきの広ひろいお屋敷やしきで暮くらす家族かぞくの日常にちじょうを描えがいた物語ものがたりにも見みえます。しかし、その牧歌ぼっか的てきな映像えいぞうには似につかわしくない、塀へいの向むこう側がわから聞きこえてくる誰だれかの叫さけび声ごえや怒号どごう、銃声じゅうせいが風景ふうけいに溶とけ込こみ、観みている人ひとはそれでも平然へいぜんと暮くらす家族かぞくに嫌悪けんお感かんを抱いだきます。何気なにげない会話かいわや行動こうどうに狂気きょうきすら感かんじます。それこそが「凡庸ぼんような悪あく」の姿すがたであり、奪うばわれる心配しんぱいのない者ものが持もつ残酷ざんこくさなのです。また、アウシュヴィッツの中なかで起おこっていることを見みせずに透明とうめい化かし、音おとで存在そんざいを印象いんしょう付つけることに成功せいこうした、耳みみで観みる映画えいがだと思おもいます。