「SF」も「SM」も未知みちのもの。だからこそ興味きょうみが持もてる

──新作しんさく、すごくよかったです。音響おんきょう的てきにも妥協だきょうがないし、なおかつしょぼいスピーカーで聴きいたとしてもきちんと伝つたわる。さすがのFPMクオリティですね。

そこにはこだわってますね。自分じぶんの表現ひょうげんの中心ちゅうしんには、いかにダンスフロアで機能きのうするかというところへの追求ついきゅうがあるし、「ダンスミュージックはキックの音おとひとつが最高さいこうの鳴なりであれば勝かち」という価値かち観かんに共感きょうかんする部分ぶぶんもあるんだけど、もちろんそれだけじゃ満足まんぞくできないし、FPMの商品しょうひんとしては成立せいりつしない。だからこそ、そこにメロディだったり、初期しょきから地続じつづきになっているラウンジーで心地ここちよいエッセンスというのを混まぜ込こんでいくわけなんですけど、かといって、ダンスミュージックとポップスの間あいだを取とり持もつ仲人なこうどとか親善しんぜん大使たいしみたいに思おもわれるのも嫌いやなんですよ。

──（笑）欲張よくばり抜ぬいてますね。

両方りょうほうを諦あきらめたくないんですよね。そういう挑戦ちょうせんというのは2001年ねんの「beautiful.」ぐらいから始はじまっているんですけど、あれから10年ねん近ちかくの実験じっけんがあったわけで、当然とうぜんそれなりの高たかみには達たっすることができたという自負じふはあります。いまのダンストラックって、音圧おんあつだったり音域おんいきだったりがすごく凶暴きょうぼうでしょう？ 耳みみにガツンとくる音おとばかりが詰つめ込こまれてて、プロのエンジニアさんだったら御法度ごはっとな周波数しゅうはすうというのが平気へいきで使つかわれてる。

──あえてタブーの部分ぶぶんを凝縮ぎょうしゅくしたようなトラックは多おおいですよね。

やっぱ若わかい子この初期しょき衝動しょうどうはすごいよなぁ、って思おもうんです。ただ、自分じぶんとしては、そういうインパクトというのも認みとめつつ、同おなじぐらいエッジのあるものを、ものすごくハイエンドなサウンドで作つくりたいんです。音楽おんがくも音質おんしつも諦あきらめず、なおかつ「ダンスミュージック以外いがいの音楽おんがくと並ならべて聴きかれたときに一蹴いっしゅうされることのないダンスミュージック」を作つくりたい。それは欲張よくばりというよりもワガママなのかもしれないけど（笑）。

──田中たなかさんの中なかにタブーというのはありますか？

タブーだと感かんじたものをタブーだからという理由りゆうで排除はいじょするのはタブーですね（笑）。たとえば性的せいてきなものというのは、すごく身近みぢかにあるものにもかかわらず、音楽おんがくの世界せかいでは排除はいじょされがちなものじゃないですか。だったら僕ぼくはそこに挑戦ちょうせんしたいし、少すこしグロテスクに思おもえるぐらいのイメージを表現ひょうげんしていきたいというのはあります。ただ、それは自分じぶん自身じしんにアブノーマルな性癖せいへきがあるとか、人ひとには言いえない猟奇りょうき性せいを隠かくしているとか、そういうことではないんですよ。

──興味きょうみはあるけど趣味しゅみはないと。

そうそう。だからこそ安心あんしんして制作せいさくできるというのはありますね。僕ぼくの考かんがえに、「SMはSFだ」というのがあるんですけど、それはどういう意味いみかといえば、いくら性的せいてきなものでも、自分じぶん自身じしんにその趣味しゅみがないものに関かんしては、SFと同おなじぐらいに未知みちなものであるということ。だからこそ、興味きょうみが沸わいてくるんです。僕ぼくの本棚ほんだなはすごいですよ。中国ちゅうごくの王様おうさまに愛人あいじんがどれだけいたかとか、カニバリズムについての考察こうさつだとか（笑）。つまりは過剰かじょうなフィクションに映うつるほどのノンフィクションが好すきなんですね。

確たしかに大だいネタは危険きけん。でも、そこで躊躇ちゅうちょしたら負まけだと思おもう

──過剰かじょうなフィクションといえば、リードトラックの「If You Do, I Do（威風いふう堂々どうどう）」が象徴しょうちょう的てきですよね。世界一せかいいち過激かげきな（エドワード）エルガーのカバーバージョン。僕ぼくは、暴風雨ぼうふううに向むかって逆ぎゃく走はしするエレクトリカルパレードの中央ちゅうおうを半裸はんらのトップモデルとパンクスが生なまクリームでベトベトになりながら転ころげ歩あるいている、みたいな絵えが浮うかびました（笑）。

（笑）まさにそんな感かんじ。これは活動かつどう15周年しゅうねんの記念きねん祝典しゅくてんみたいな意識いしきで完成かんせいさせたんです。もともとはUNIQLOのWEBコンテンツのために制作せいさくしたトラックなんですけど、それをアルバムの出だし囃子ばやしとして再さい構築こうちくしたんですね。「威風いふう堂々どうどう」というのはクラシックの中なかでも最もっとも有名ゆうめいな曲きょくで、世界中せかいじゅうの誰だれが聴きいてもアガる曲きょく。「Strings Of Life」でもここまではアガらないだろうという。

──（笑）ただ、クラシックをモチーフにした楽曲がっきょくというのは、遊ゆう助すけが「G線上せんじょうのアリア」を歌うたってしまうこの時代じだいに、危険きけんといえば危険きけんなコンセプトですよね。

そこは危険きけんだからいいんですよ。危険きけんであればあるほど、大だいネタであればあるほどやりがいがある。そこで躊躇ちゅうちょしたら負まけだと思おもいますね。「威風いふう堂々どうどう」を徹底的てっていてきに粉砕ふんさいして、その上うえでDMCチャンプ（DJ YASA）にコスりまくってもらうぐらいじゃないと（笑）。

──攻せめてますね。

はい。今いままさに作つくり始はじめようとしている曲きょくもクラシックの大だいネタだし。僕ぼく、そういうアイデアは無限むげんに沸わいてくるんですよ。